亀井絵里はどうよ

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603作者エリ
六期を加えた新生モーニング娘新曲発表ライブがいよいよ始まる。
期待に胸を焦がす数多くのファン達が会場に足を運んでいた。
開演10分前である。すでに客席は一杯に埋まりつつある。

「ちょっと何やってるのよあいつら!」

リーダーの飯田圭織はステージ衣装のまま舞台裏を駆け回っていた。
15人の大所帯、その半分ものメンバーが突然姿を消したのだ。

「こっちにはいません!」

紺野が大声で叫ぶ。小川や新垣も同様に捜している。
スタッフも総出で動いていた。とにかく娘が揃わなくては始まらない。
向こうで加護と高橋が何か相談しているのが見える。
辻はさっきからずっと飯田の腕にくっついていた。
彼女は誰より敏感に感じ取っているのだ。何かが起きようとしていることを。
飯田は歯軋りを覚えた。本来なら今頃アレをしている頃だ。
モーニング娘全員の手と手を重ね「がんばっていきまっしょーい!」
それができない。今まで当たり前に思っていたその行為ができない。
まさかそれがこれ程怖い事とは思ってもいなかった。飯田は軽く身震いした。
604作者エリ:03/04/18 02:06 ID:80jAiyRX
開演の時間。しかし一向にモーニング娘が現れる気配はない。
徐々に観客の中へ不満が広がってゆく。やがてそれがブーイングへと変わる。
困り果てたスタッフが飯田に誘導を促す。

「仕方ない!いる者だけでもステージへ!」
「出て行って何て説明すればいいんですか!?」
「そ、それは…」

策の無い飯田とスタッフの前に、加護が走りこんだ。

「30分や、それ以上もたへんで」
「あいぼん…それに高橋…のんちゃんまで」
「私達が一先ず場を繋ぎます。飯田さん。その間にみんなを捜して下さい」
「ミニモニ。オンステージなのれす!」

この三人がいてくれたことを、飯田は本当に頼もしく思った。
と同時に、リーダーなのに何もできない自分を恥ずかしくさえ思った。
振り返ると後ろには紺野小川新垣がいた。飯田は大声で吼えた。

「いいあんた達!モーニング娘は絶対にあきらめたりしないの!探すよ!」
605作者エリ:03/04/18 02:06 ID:80jAiyRX
「まっりぺ、見てみ。ミニモニがやってるよ」
「フン。あれはミニモニじゃないよ。おいらがいないもん」

モニターに映る会場の様子を、安倍なつみは微笑んで眺めていた。
矢口真里はモニターを決して見ようとせず、そっぽを向いている。
ここは会場脇の駐車場、その隅に停まったロケバスの中。
安倍と矢口以外に4人の娘、そして数人の男が乗っている。
一番奥の座席で、娘の一人が頭を抱えて震えていた。
吉澤ひとみである。
彼女は今始めて、半ば強引に真実を聞かされたのだ。

「酷えよ…ひどすぎるよ…そんなの」

さっきからそう呟いている。あまりにショックが大き過ぎた様だ。
その様子を後藤真希と石川梨華が心配そうに見つめている。
福田明日香は目を閉じて座席に座っていた。出番が来るその時まで力を溜めるかの如く。
(ぱっぱっぱっぱっ〜うたおぅさわごぅ♪)
車内に、社会現象にまでなったミニモニのデビュー曲が流れる。
その間矢口真里は一言も口を開こうとしなかった。