亀井絵里はどうよ

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596作者エリ
「おはよ」

いつもの様に早朝練習をしていたエリは、驚いて喉をつまらせた。
(おはよ…?あいさつ?加護さんが…?エリに?)
頭の中に次々と疑問系が浮かぶ。だがそんな疑問はすぐに吹き飛んだ。

「おはよーございます!!!」
「朝から声でかいねん!耳鳴りするわ!」

だが加護のつっこみもエリの耳には届いていなかった。
(加護さんが声かけてくれた。初めて挨拶してくれた!)
頭の中が喜びでいっぱいだったからだ。
加護がエリを認めた。もちろんそれは昨日の件もある。
しかし理由はそれだけでない。それまでの努力を見てきたからだ。
エリの頑張りが加護亜依を認めるに至らせたのだ。
そしてさらに…
597作者エリ:03/04/16 22:51 ID:tX3tXp/Q
「何飲む?」

練習後のことだった。自販機の前で突然辻さんが言った。
私は慌てて辺りを見渡した。その場には他に誰もいない。エリに言ったのだ。

「えっ、あの…、えっと…」
「遅〜い。じゃあののと同じね」

自販機から出てきたジュースを、辻さんは無造作にエリへ押し付けた。
私はそのジュースを胸に抱えながら、辻さんに言った。

「あの、お金…」
「いいよそんなの」

辻ねえさんはそっけなく言って、仕事場へと歩いていった。
暖まったエリの体がジュースの冷たさでヒンヤリした。
私はそれを頂いた。今まで飲んだどんなものよりおいしいと思った。
598作者エリ:03/04/16 22:52 ID:tX3tXp/Q
その日は新曲の振り付け全体練習をした。
高橋さんだけいなかった。体調が悪いので休んだらしい。
同期メンとはまだぎくしゃくがあるが、先輩達は皆普通に接してくれた。
藤本さんは何故かエリを避けている様だった。
でもこんなに普通にお仕事できるのは、ずいぶん久しぶりな気がした。
(あれ?)
仕事後、携帯を見ると着信やメールがいっぱいになっていた。
もう絶交されたと思っていた昔のトモダチ達からだった。
メールの内容を読んで私は絶句した。
今日休んでいた高橋さんがトモダチ全員の所へ謝りに回ったとあった。
ひとりひとりの家へわざわざ出向き、間違いを説明し頭を下げたと。
トップアイドルの彼女が、恥も外聞も捨て頭を下げたと。
私は声をあげて嗚咽していた。
何かが胸に込み上げ、じっとなんかしていられなくなった。
スモークがかった夜空に思いっきり叫んだ。涙も全部吹き飛ばすくらいに。
やがて胸に去来した確かな想い――――みんなの気持ちに応えるということ。

そして7月20日。
亀井絵里の、モーニング娘の命運を分けるその日は訪れた。