高橋さん、小川さん、新垣さんによるいじめは延々と続きました。
つんくさんの所へ行って、センターを取り消せと脅すのです。
デビュー仕立ての私がつんくさんや事務所に逆らえるはずの無いことを知ってて。
そのときです。再び部屋の扉が開きました。そこへ現れたのは…
「オラァ!ミキティ様のおでましだ!いじめなんて臭えことしてんのはどいつだぁ!」
同期の藤本美貴さんです。どうやらいじめを止めに来てくれたみたいです。
助かった。私はそう思いました。こんなとき藤本さん程頼り甲斐のある人はいません。
これでこの苦しみから解放される…そう思ったのに…
「うわああああああああん。亀井さんがいじめるんですー!」
頭が混乱しました。それまで黙って冷笑していたさゆみが突然泣き出したのです。
「私はお前みたいな落ちこぼれと一緒にしないでって。ヒック…ヒック…」
(そんなこと言ってない…嘘だ嘘だ)
それを見たれいなも合わせて、隣で泣いた振りを始めました。
「役立たずは田舎へ帰れって言われとー。グスッグスッ」
「そうなんだよ美貴ッチ。亀井がこの二人をいじめててさ。うちらが今止めてた所なの」
「そーそー。それでこいつ反抗して、私にまで暴力を使うんだぜ。見てこの足跡」
小川さんと新垣さんの言葉に、藤本さんの敵意は完全に私へと向けられました。
絶望が全身を包みました。体中が震えて止まらなくなった。
藤本さんの見るも恐ろしい視線が、私を捕らえて放そうとしないのです。
「違います…違います…私」
「何が違うってんだ。最低だなテメー、調子こいてんじゃねえぞ」
手で覆ったさゆみの口元が、また冷笑に変わりました。
私がもっとも恐ろしい黒幕の正体を知ったのは、このときでした。