亀井絵里はどうよ

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497作者エリ
「7月20日にイベントがあるって。6期を加えたモーニングの新曲発表」
「ドームに一万人集めて、大々的に新しくなったモーニング娘を売り出すみたいだべさ」

矢口と安倍の説明に耳を傾ける娘が三人。
石川梨華。
後藤真希。
福田明日香。
ここに吉澤と亀井を加えたメンバーが新生モーニングである。

「悪いけど、この日発表されるのは事務所が作った新モーニング娘じゃない!」
「おいら達の新モーニング娘だ!」

矢口は新曲ライブのっとり計画を皆に説明しだした。
石川はどこかソワソワしながら、後藤は俯きながら、福田はじっと黙って、それを聞いた。

「以上よ。何か質問はある?」
「ねぇ、よっすぃーは?」
「まだ言ってない。多分反対すると思うから。直前まで黙ってることにする」
498作者エリ:03/03/31 12:13 ID:YQCxjvDK
安倍の答えに後藤は頷いた。確かに、あのよっすぃーが簡単に納得するとは思えない。
強引に計画を推し進めた後で説明するしかなさそうだ。
それでも吉澤は何と言うだろうか?
それを考えると、後藤は胸が痛んだ。親友を騙している気がして…。

「で結局、加護ちゃんと辻ちゃんは外すの?」

石川の問いに、矢口は顔を曇らせながら肯定した。
直接二人と絡んでいない福田以外のメンバーが、同様に顔を落とした。
矢口にとってはミニモニで一番世話を焼かされ、それだけに想いも強い二人だ。
安倍にしろ、特に辻とはいつもべったりくっついている程の仲。
それでも辻加護は新生モーニングには障害となる、と判断したのだ。
二人の苦渋の決断を石川は悟った。

「もう後戻りはできないから、みんなよろしくね」

安倍のその言葉で話し合いは終了した。
仕事後の集まりなので、もう時間も遅い。皆それぞれ家路につく。
後藤も家に帰る気でいた。そのとき、ぽんと肩を叩かれた。
福田明日香だった。
499作者エリ:03/03/31 12:14 ID:YQCxjvDK
「まさか貴方まで参加するとはね。驚いたよ」
「それはこっちのセリフですよ、福田さん」

線路沿いを並んで歩く二人。後藤真希と福田明日香である。
一緒に帰ろうと福田が後藤を誘ったのだ。
二人はこの日が初対面であった。もちろんその存在は互いに良く知っていたが。

「なっちとマリッペ、相当悩んでたみたい。昔とは変わった…」
「……」
「ねぇ、後藤さん。貴方こんな無謀な計画が本当に成功すると思ってる?」

福田の確信を突いた質問に、後藤は驚きを見せた。
同じ疑問を後藤も持っていたからだ。だけど、それでも参加したのは…

「わかりません。だけど何かしなくちゃいけない…って思います」
「ナニカ…ね」
「正直、ソロになって良かったのか、わからなくなってます。もしまだ私が…」
「わかるよ。私も何千回何万回と考えてきた。もし…って」

(もし私があのときモーニング娘をやめていなかったら?)
500作者エリ:03/03/31 12:15 ID:YQCxjvDK
「なんてね。もう遅いのかも。何をしてももう無駄なのかもしれない…」
「……福田さん」
「もう希望はないよ…」

二人は足を止めた。気がつくととあるビルの前に来ていた。
見慣れた場所である。ここでモーニング娘の楽曲は生まれてきた。
どちらからとなく、二人はその場所まで歩いてきたのだ。
中から、小さな歌声が聞こえてきた。福田と後藤は顔を見合わせた。

「電気点いてる?こんな時間なのに…」

二人は窓からそっと中の様子を覗き込んだ。
広いホールにたった一人で、下手くそな唄を歌っている娘がいた。
汗だくで涙ぐみながら、それでも必死になって歌い続けている。
後藤はその少女を知っていた。
後藤は頬を緩ませ、言った。

「小さな希望なら…あるかもしれませんよ。福田さん」