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作者エリ:
「チッ」
その場に辻加護がいることを知り、藤本はあからさまに舌打ちしてみせた。
高橋が藤本の腕を引く。「止めろ」という合図だ。
(止めろ?辻さん加護さんがいるから、下手な真似するなっていうのか?)
(冗談じゃねえ!この美貴様がどうしてこんなガキ共に気を使わなきゃいけねえ!)
(俺は辻加護より下か?高橋てめえとは違う!俺は藤本美貴だ!)
藤本は止まらない。まっすぐにエリの方へと向かってゆく。
「…!!」
本能がエリに恐怖を悟らせていた。逃げ出したかった。でもエリは歌い続けた。
(ここで逃げたら今までと何も変わらない!エリは変わるんだ!)
そのとき、エリの目の前に小さな…だけどとても大きな背中が立ちふさがった。
「今、練習中なんだけど…なあに?」
辻であった。エリと藤本の間に辻希美が割って入ったのだ。
(どういうつもりだ、このガキ)
予想外の事態に藤本は一瞬戸惑いの色を見せた。しかしこれで引く女ではない。