亀井絵里はどうよ

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291作者エリ
「私はいじめなんてしない!みんなも早く目を覚ましなさい!」

紺野がそう怒鳴り付けると、同期の面々は我に返った様にうろたえだした。

「あさ美ちゃんの言う通りだわ。私等なんてことしてたんやろ」
「ごめんなさい、絵里ちゃん。さぁ立って」
「私達は仲良しモーニング娘だもんね」

五期が一つにまとまる所を見て、後輩である六期の面々も手を取り合った。

「嗚呼、本当にごめんね絵里ちゃん。私達が馬鹿だったわ」
「ううん、もういいの。私達も先輩の様に、一緒に頑張ろう!」

亀井絵里に笑顔が戻った。田中も道重も、ミキティすらも微笑みに満ちている。
(そうよ、これがモーニング娘の団結力よ)
紺野は改めて、自分がモーニング娘の一員であることを誇りに思った。
めでたしめでたし…。
292作者エリ:03/03/12 16:45 ID:AJSa+WYP
「…おいっ!紺野!聞いてんのかよ!」

耳元で怒鳴る藤本の声にて、コンコン妄想ワールドは幕を下ろした。
現実では相変わらず絵里がいじめられていて、みんな卑屈な笑みを浮かべている。
(…あんなこと…言えっこないよ)
紺野は手にしたボールをモジモジともてあましていた。
いじめなんてしたくない。でもやらないと私もいじめられてしまう。
紺野の頭の中で天使と悪魔が囁き合っていた。すぐ横で藤本が催促する。

「もしかしてお前?俺達の敵に回るつもりか?」
「そ、そんなことないよ…」
「じゃあやれよ。このボールを亀井の顔目掛けて全力で投げつけろ」
「で、でも…」
「大丈夫よあさ美。ほらこうやってやればいいの。簡単簡単」

同期の小川や新垣までもが、実際に亀井目掛けてお手本を見せ、紺野を誘う。
もう紺野は後戻りできなかった。ゆっくりとボールを上部に構えた。
絵里の、捨てられた小犬の様な瞳が、紺野の胸をきつく締め付けた。
293作者エリ:03/03/12 16:46 ID:AJSa+WYP
まさに紺野がボールを手から放そうとしたそのとき、その声は発せられた。

「お昼の時間やで〜」
「ごはん、たべにいくのれす!」

加護と辻が大声で騒ぎながら、ホールに駆け込んできたのだ。
場の空気が一瞬にして和んだ。紺野は慌ててボールを隠す。
高橋達も素知らぬ振りを決め込む。野蛮な藤本でさえも動揺を隠せずにいた。
ハロプロにおいて辻加護という存在は絶対的なものであった。
中澤、飯田、安倍等…重鎮達のお気に入り。ハロプロのマスコット。
決して敵に回してはいけない存在…辻加護を敵に回すことはハロプロを敵に回すこと。
藤本は本能でこれを感じ取っていた。そして、絵里の本能もこれに感づいた。
(この人達しかいない!)
(いじめから私を助けてくれるのは、辻さんと加護さんしかいない!)

亀井は身を起こすと、辻と加護の所へ走り込んだ。

「辻さん!加護さん!助けて下さい!」