今年のセンター英語出題者はモーヲタだった!?

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61透明に
透明ヤグチ〜第3話・透明に〜

コンコンッ──。ガチャ。
「誰か、私の携帯知らない?」
マネージャーが楽屋のドアを開けて聞く。
「さぁ?…誰か知らない?」
「知りませんよー。」
飯田はメンバーに問いかけたが、みな首を横に振る。
「あれ?矢口の姿が見当たらないけど。」
部屋には矢口の姿がなかった。
ここ最近、矢口が楽屋から『姿を消す』ことが、しばしばあったのだ。

「トイレにでも行ったんじゃないですか。」
「あ、そう…。……携帯、どこ行ったんだろ。」
マネージャーは髪をクシャクシャとかき回すと、部屋を後にした。

ガチャン──。
ドアが閉まると同時に、辻と加護が顔を見合わせた。
「……やばいよね。」
「うん、やばいかもしんない。」
そう言うと、二人は楽屋を飛び出した。
62透明に:03/02/18 07:10 ID:zvDwbCRF
「おっ、ちょっ…、どこ行くんだお前ら!」
「あっ、矢口さん。ちょっと行ってきます。」
矢口の横をすり抜け、辻と加護は猛スピードで廊下を駆けていった。
「……何だ、あいつら。」

矢口が楽屋に戻ると、安倍が声をかけた。
「あ、矢口どこ行ってたの?」
「へへへっ、ちょっとトイレ…。
 今、凄い勢いで辻加護出てったけど、何?」
「知らなぁい。ところで矢口、マネージャーの携帯見なかった?」
「さぁ?なくなったの?」
「そうみたい。てか、矢口最近トイレ多いね。」
「そ、そう?…おばちゃんになったのかな。」


──実を言うと、矢口はまだあの透明の服を着てはいなかった。
目の前で実演されても、透明人間なんてどだい信じるに易くはないし、
それに、着てしまうとあの山田とか言う男の策略にはめられた気もする。
しかも、ビキニである。
簡単に着られる代物ではなかった。
が、やはり気になってしまうのはしょうがなく、
1日何度もトイレに入って紙袋からビキニを取り出しては眺めていたのだった。

「はぁああ、何やってんだろ、私。」
呟く矢口の顔を、安倍は怪訝そうに覗いた。
63透明に:03/02/18 07:12 ID:zvDwbCRF
バタンッ──!!
と、再び楽屋のドアが開き、肩で息をする辻と加護がそこにいた。

「ハァッ、矢口さん、ハァッ、聞いて下さい。」
「あのですね、携帯がですね、ハァ、ハァ。」
「な、何だよお前ら。落ち着けって。」
ゴクリとツバを飲むと加護は、矢口に耳打ちした。
「はぁ!?お前らがマネージャーの携帯なくした!?」
「シーーーー。声が大きいです。」
「はぁあ。…で、どこでなくしたの。」
「あのですね、玄関ロビーで携帯で遊んでたんですよ。
 で、そのまま置いてきちゃって──。」
「今見たら無かったんです。」
辻が言葉を添えた。
「玄関って……。お前らアホかー!!
 あれにはウチらの番号も入ってんだぞぉ!!」
「で、矢口さんにしか、こんなこと言えないなって……。」
「お前らなぁ……。まぁ、いいよ。探してやるよ、もう。
 その代わり、お前ら一週間オヤツ抜きな…。」
「えーーー。」
「えー、じゃない。ホントに無かったらどーすんの。」
矢口は、しぶしぶ玄関へ向かった。
64透明に:03/02/18 07:17 ID:zvDwbCRF
「無いねぇ。」
「無いなぁ。」
辻と加護は、ロビーのテーブルの下を覗き込む。
「はぁあ、しょうがないな。…ったく。あの、スミマセン。」
矢口は受付嬢に声をかけた。
「あのー、携帯の落し物なかったですか?」
「いえ、お預かりしておりませんが。」
「そうですか…。じゃあ、あのお子ちゃまがいる辺りに
 携帯とかって無かったですかね?」
矢口は、お尻を突き出してテーブルに潜る二人を指差した。
「ああ、それなら、さっき男の人が持って行きましたよ。」
「えっ?」
「あ、あの人です。ホラ、あの小太りの。」
受付嬢が指したのは、人でごった返す道路だった。
「うぉおおい!!どーすんだよ!」

ガンッ──。
「…あてててて。」
矢口の声に反応して、辻加護はテーブルに頭をぶつけたようだった。
外には多くの人が行き来している。
受付嬢が指した男は、今にも人の波に消えようとしていた。
「こんな人ごみの中、透明にでもならなきゃ出れねぇよ。
 ……透明にでもならなきゃ──。」
矢口は自分で言っておきながら、少しばかりのわざとらしさを感じていた。