「お疲れ〜乙カレ〜!いきなり乗せられてあれだけの動きが出来きれば大したもんだ!」
うんうんと頷きながら田代が早足で向かって来た、
加護ちゃんチョット後ずさり…
「ほら、これ――――」
といって持っていた缶ジュースを渡そうとしたが、
俺がもう加護ちゃんからもらったのを持っているのに気がつくと、
少し慌てた様子でそれを背中に隠した。
「あー・・・なんだ、戻って来て早速で悪いが、
ちょっと社員達の紹介でもしようか?」
それを見た加護ちゃんが、小さくクスリと笑っていた。
「はぁ…」
本当はすぐにでもつんく♂に
辞める事を伝えたかったが、あいにく姿が見えなかったので
取りあえず了解した。
「よぉし!みんな初日出撃のスーパールーキーに
早く会いたがってたからな!」
だったら出迎えくらいしてほしい。
なんてことを思ったが、もちろんそれは胸の中に…
「田代!」
白衣を着た30才前後の女研究員に呼ばれて、
田代が振り向く
「なんだ中澤?俺はこれから忙しいのだが…」
明らかに嫌悪感丸出しの目で中澤と呼ばれた研究員に返事をした。
「別にあなたには用はないけど、あなたの
脳みそを借りたいのよ…」
こちらも負けないくらい睨み付けている。
「ふむ、俺の頭は下らん事には使えないのだが…?」
「四号機のACのモバイル通信なんだけど?」
田代は思い出したようにポンっと手を叩き
「アシスタントシステムの件か!
うんうん、そりゃお前らにゃ無理だろう!
すぐに向かう!吉澤!加護ちゃん!またあとでね!!!」
と、言い、通常の三倍のスピードで走っていてしまった。
ふっと、中澤さんの目つきが優しくなり
俺の方に向きかえった。
「あなたが5人目の吉澤さんね、私は中澤。
主にあなたが乗ってる四号機の監督をしているの。」
言葉は標準語だが、時々アクセントに関西の訛りが
入っていて、少し聞き取りにくかった。
「はぁ…どうも…」
少しビクビクしながら、ぺこりと頭を下げた。
「だからって訳じゃないし、昨日の今日で出来っこないのは分かってるけど…」
中澤の髪の毛をかき上げる姿を見ていると、
少しだけ額に小じわが見え、年齢を感じさせた。
「もうちょっと、丁寧に扱ってくれる?
戦闘兵器といっても精密機械だし、
四号機は基本的に格闘戦向きじゃなくて、
中距離が主体のデザインなの。
今回履かされた装甲だの、倒れた時に壊れた
部品とかの修理には億単位のお金がいるの、
もうすぐ国が私たちを必要として、経費を出してくれるにしても
それは無限じゃないし、万が一建物の中に人がいたりして、その建物を
破壊しちゃったりでもしたら…・・・・今度から、気を付けてね。」
人の命と聞いて、俺には罪悪感のような物が浮き沈みした。
「はい…。」
「解かればよろし!じゃあ私は戻るから、加護ちゃん!」
「へい!」
「吉澤さんに、これからお世話になる人を
紹介してあげなさい。あと、今日のお礼も。」
「え、私が・・・ですか…?
あんまり私も社員の人とかの名前…知らないんですけど…」
中澤がため息をつく
「じゃあ、覚えてる範囲でいいから…。」
「あ、解かりましたぁ〜!
よっすぃ〜!いこ!!」
「あ、うん。」
二人で中澤さんに頭を下げて、
その場を離れた。
それにしても、広いな…ここ…。