帰りはいやにスムーズだった。
俺の時間の感覚が変だっただけかもしれないが
これで最後になるであろうロボットの操縦を存分に楽しんだ。
格納庫に入れる入り口が一つしかないため
先に黒帯が収納され、その後、壁に肩をぶつけながらも
ようやく格納庫に収める事ができた。
[プシュゥゥゥゥ]
腕を締め付けていた鎧が取れて、久しぶりに自分の手を見られた気がして
すこし清々しくおもった
「首輪とベルトを外して降りてこい。」
田代の声に従いベルトを外し、
ちょっと手間取ったが座席と繋がっている首輪も外れた。
これでやっと、尖がり帽子と別々になれ訳だ…
いつの間にやら尖がり帽子の首は、俺が降りられるように
五階の搭乗口まで伸びていた。
降りたらすぐにみんながいるものだと思っていたが、
そこには人はほとんどおらず、数人の作業員と
缶ジュースを持った加護ちゃんだけだった。
「よっすぃ〜!おつかれ。はいこれ!」
「ありがと。」
「えへへ…じゃあよっすぃ〜、みんな待ってるから。
司令室に行こう!」
そうだ…つんく♂さんに言わなきゃ…辞めます!って…
そう思いながらも、なんだか心のどこかで躊躇している自分がいる事を
このときにはうすうす気づいていた・・・
「ん?どしたの?よっすぃ〜」
「あ〜…ううん。何でもない。
司令室ってどこなの?」
取りあえず言うんだ、こんな危険な事…続けてなんてられない!
「中央エレベーターの一番下だよ。
えっと、50階だね。」
そう説明しながら加護ちゃんはエレベーターの[↓]ボタンを押した。
すぐにドアが開き、俺達を招き入れる。
「でもすごいなぁ…」
ボタンが押されドアが閉まると同時に、加護ちゃんが
ため息交じりに話し始めた。
「え、何が?」
「よっすぃ〜がだよ!今日知ったばっかで
あんなに軽々と動かしちゃうんだもん…。
私なんてコクピットに座るまでにも丸まる一週間
講習受けてたんだから…。」
「でも、俺なんか何にもしなっかたよ!マジで!
ただネズミに押し倒されてただけ…」
そこで加護ちゃんは吹き出した、
俺もつられて笑い出す、
少し曇りかけていた加護ちゃんの笑顔が元に戻ったので
俺は内心ほっとした。
「にしても…あの途中から来てくれた…黒帯だっけ?
カッコよかったな〜!あれこそ正義のヒーローだね!」
「うん。凄いんだよ!紺野ちゃんは!」
「紺野ちゃんって言うの?あれに乗ってたの、」
「うん、紺野あさみちゃん。私がここに来たのが三年前で、
紺野ちゃんはちょうど一年後に入って来た4人目なんだけど、
とにかく凄いの!私なんてバンバン抜いて、
思った通りにロボットを動かして…
あーゆーのを天才って呼ぶんだよ!」
スゴイ誉めちぎりようだなぁ、あとで合えるかな?
「それに比べて私は…ちっとも上達しないよ…」
また笑顔が無くなりかけたので慌てて話題を振る、
なぜだかこの娘には、ずっと笑顔でいて欲しい…
「っていうか三年も前からここにいるの!?」
「うん、そうだよ。別に私の[大耳]はあんまり筋力とか関係ないから。
あ、もう着くよ。」
[ピーン]
例の効果音が鳴り、ドアが開いた。
[パチパチパチパチ…]
間の抜けた一人の拍手で、俺は迎え入れられた。