プロジェクトM
リーダーは疑問を感じていた。
「最近UFはおかしい。私からタンポポを、命よりも大切なタンポポを奪った。
…それはまだ許せるとして、誰よりもmusumeを愛していたケメコを首にした。
誰よりもがんばっていたみっちゃんを捨てた。他にもあげればきりが無い。
はたしてこのままUFについていって、♂についていって良いのだろうか。」
ずっと感じていたこの疑問を思い切って阿部にうちあけた。
同期の阿部は真剣に聞いてくれた。
阿部も同じ事で悩んでいた。
阿部が言った。
「マリーに聞いてみようよ。彼女は賢い子だよ。何か答えが出るかも。」
マリーは黙って二人の話を聞いていた。話が終わった。
マリーは立ち上がり、二人にこう告げた。
「また明日ね。」
次の日、マリーは二人をアパートに呼び出した。
寝ていないのか、目の下にひどい隈を作っていた。
「二人が相談してくれたとき、私涙が出るほど嬉しかった。
二人が私と同じ気持ちでいてくれたことが嬉しかった。一人じゃなかったんだって。
私だって許せない。確かにUFや♂さんのおかげでここまでこれたよ。
それは感謝してるの。でも、もう限界だよ。
UFや♂さんを恨むのはスジ違いかも知れないけど、限界だよ。そこでね…。」
彼女は驚くべきプロジェクトを二人に伝えた。それは、
脱退
驚く二人にマリーはこう説明した。
「みんなでmusumeを辞めるの。そして私たちで最初からはじめるの!」
言葉を失うふたりにマリーはこう続けた。
「あんたたちだって0から這い上がってきたんでしょ?手売りで5万枚、
そのころの気持ちを忘れたの?」
阿部は口を開いた
「…やる!私やるよ!3人でもいい!今のままここにいるよりずっといい!
ダメでいいからやってみる!」
リーダーがそれに続いた。
「そうよね、細々とやっていこう。大好きな歌を歌えるのなら、私マリーを信じるわ。」
マリーは言った。
「みんな!」
マリーの後ろの部屋の扉が開いた。阿部とリーダーは目を疑った。
ケメコ、牧、理科、ヨッシー、ノノ、籠がそこから出てきたのだ。
「昨日寝ないで一人一人にこの話をしたの!みんな気持ちは同じだった!
特に理科なんてわんわん泣いて大変だったんだから!」
理科は照れくさそうに俯いた。
リーダーは泣いていた。
「また…またタンポポで歌が歌えるの?」
「あったりまえじゃん!」
合図もないのに、皆が一斉にそういった。
皆の気持ちが一つになったとき、マリーは言った。
「これからこのプロジェクトの核心を話します。」
場が一瞬にして静まり返った。
「最初に言っておくけど、テレビの番組も全部出られなくなる。そしてなにより、
独立して成功したアイドルなんていない。分かってる?」
牧が口を開いた。
「ウチら、だれもやって来なかったことをずーっとやってきたんだよ。」
マリーは大きく頷いた。
「そっか、テレビ局の人に迷惑かけちゃうね。Musumeがいなくなったら。」
理科が呟いた。
マリーがそれに答えた。
「そのために5期、6期を残してきたんだよ。この1年、5期達は不遇だったけど
、芯は強い子ばっかり。それに6期たちも4人加わるんだから、
8人で頑張っていけるよ。あの子達を信じよう!」
さらにマリーは続けた。
「これを発表する日は1月19日!」
「えッ!?」
誰とは無く、皆が驚きの声をあげた。
「脱退するのに私達の力でメディアを呼べない。
6期の入ってくる生放送の19日が最高のチャンスってわけ!」
納得し、高ぶる皆をよそに、マリーはこう呟いた。
「でもUFを敵に回して、私達がこの世界で受け入れてもらえるかな?
多分UFは私達を消そうとするよ。」
ヨッシーはそれにこう答えた。
「それでいいよ。テレビになんて出れなくっていい。
コンサートの場所は体育館でも何でもいいじゃない!みんなで頑張ろうよ!」
いつもはバカやってるヨッシーが、この日はとても頼もしく見えた。ノノ籠と言えば、
深く考えず、みんなと一緒にいたいだけだと言う。
かくして、大革命計画は実行に移された。
1月19日
予想通り6期は4人、番組がシメに入る直前、マリー以下7名が卒業を告げた。
UFは激怒し、追放しようとした。しかし、メディアがそれを許さなかった。
メディアにしてみればこんなおいしい事件はない。卒業のことを大々的に報じ、
各地のアナウンサーはこれに共感した。
数週間後、
皆のお金を叩いて大きな体育館を借り、卒業初のコンサートの日、UFは強硬手段にでた。
「人の会社の歌を歌うと警察沙汰にしてやる」とコンサート会場で叫んだ。
しかしそこはヲタと呼ばれる人たちが許さなかった。
このようなことをいち早く予期する能力をもつのがヲタ。
人知れず準備していた対策は万全であった。
コンサートは無事に進み、それは全国で流された。
この一連の事件は、人々の涙を誘い、共感を生み、
卒業組はあらゆるメディアに再び出演するようになった。
来年の1月19日は、赤穂浪士よろしくドラマになるらしい。題名は、
プロジェクトM
End