410 :
書いた人:
はてさて・・・どうしたものか。
うP再開→途中に目次→マズ−
というのは困ったチャンなので、目次殿を待っているのですが。
22時まで待ってこられなかったら、始めちゃいましょう。
(根気が足らんな、私)
411 :
書いた人:03/03/02 22:00 ID:OhNKL/7h
終章 「リング」
412 :
書いた人:03/03/02 22:02 ID:OhNKL/7h
「愛ちゃーん!!里沙ちゃーん!!先行っちゃうよ!」
「待って、まこっちゃん・・・あ、ねえ、里沙ちゃん、あのスカート・・・可愛くない?」
背後で愛ちゃんの声が聞こえる。
鬱陶しい梅雨が明けて、初めてのオフ。
今日は六期の子達とお買い物・・・・・・・・・のはず。
約束の時間は迫っているのに、二人は足を止めては、ウインドを覗く。
413 :
書いた人:03/03/02 22:03 ID:OhNKL/7h
先輩になったのに、こういうところはちっとも変わってないんだから。
ホント、保田さん相手だったら一喝されてると思う。
あの一喝・・・・・・もう二度と味わえない、いや、味わいたくない恐怖。
保田さんが卒業してから、もう2ヶ月。
あんなに怒鳴られることは、二度と無いけれど。
でも、何かそれが悲しい。
私はそんなことを思って、ボケーッと道の真ん中に突っ立っていた。
414 :
書いた人:03/03/02 22:04 ID:OhNKL/7h
「あの・・・すみません。小川・・・・・・麻琴さんですよね?」
くいくい、と袖を引っ張られる感触に振り返る。
中学生くらいの女の子が、私の顔を覗き込んでいた。
背が矢口さんくらいに小さくて、可愛い顔立ち。
ピンクのロングスカートが眩しい。
お買い物に、精一杯お洒落をしてきた感じだった。
415 :
書いた人:03/03/02 22:04 ID:OhNKL/7h
しまった・・・裏道だからって油断してた。
通りの向こうでは、その子の友人なんだろうか。
『やめときなよー』
とか言ってる。
ホントなら、ここで否定しなくちゃいけないんだけど・・・
まるでその暇を与えまい、とするかのように、彼女は一気にまくし立てた。
416 :
書いた人:03/03/02 22:06 ID:OhNKL/7h
「あ、あの・・・私、モーニング娘。の、いえ、小川さんの大ファンなんです。
えっと・・・・・・ほら、ケータイにも小川さんのシール貼ってるし、それから・・・
うーんと、えっと・・・」
何だ彼女は一人で勝手に混乱していて。
そんな姿が、なんとなくあさ美ちゃんを思い出させる。
たまには・・・いいかな?
私はまだ錯乱している女の子に、右手を差し出した。
「ありがとう・・・・・・これからも、応援よろしくね」
417 :
書いた人:03/03/02 22:06 ID:OhNKL/7h
その言葉を聞いた彼女といったら・・・
驚きと、喜びと、戸惑いがいっぺんに来た感じ。
なんだか不思議な動作を交えながら、彼女は私の右手を痛いほど握った。
いや、痛かったのは握力だけじゃない。
指輪・・・か。
東京の中学生は、指輪とか普通にするんだよなぁ・・・
そう思いつつ、目を指輪に落とす。
見慣れた細工。
私とお揃い・・・・・・・
いや、私とあさ美ちゃんで二人で買ったペアリングと、お揃いだった。
418 :
書いた人:03/03/02 22:08 ID:OhNKL/7h
動悸が早くなる。
よくある指輪だし、ただの偶然だってことは分かってる。
でもその指輪を見たら、まるでなだれ込むようにあさ美ちゃんの姿が思い出された。
ダンスが下手で、歌も酷くて、
それでも頑張ってて、笑顔が眩しかった。
あさ美ちゃんの脚から出ていたコード。
例え機械であっても、あさ美ちゃんはあさ美ちゃんなのだ。
彼女のことを思い出していると、
涙が、溢れた。
419 :
書いた人:03/03/02 22:09 ID:OhNKL/7h
「あの・・・・・・小川・・・さん?」
目の前には私にいつまでも右手を離してもらえず、動揺した彼女の顔があった。
「あ、はは・・・ごめんね」
照れ隠しに、手の甲で涙を拭う。
ダメだな・・・・・・止めよう、って思えば思うほど、涙は出てくるんだから。
涙で霞む、そして自分の手の甲で遮られている視界の中で、
かすかに彼女が笑っているように見えた。
420 :
書いた人:03/03/02 22:10 ID:OhNKL/7h
いや、笑っている。
嘲笑ではない、親が子供を見ているみたいないな、微笑。
見た目からも、どう考えても年下の子なのに、その笑顔が凄くよく似合う。
その口が開いて息を吸うと、彼女は呟いた。
「元気そうだね・・・・・・安心したよ。
頑張ってるみたいだけど、焦っちゃダメ。
まこっちゃんは、自分のペースで走っていけばいいんだよ」
外見からは似合わない言葉が漏れる。
時が、止まった。
421 :
書いた人:03/03/02 22:11 ID:OhNKL/7h
私はまだ彼女の右手を離せずに。
涙はその量をますます増して。
そしてそんな私を、彼女は慈しむように見ていた。
ずっとずっと、二人で手を握ったまま。
まるで路上のここだけ、別世界みたいに。
5秒くらい・・・いや、30秒、1分もやっていたのかもしれないけれど、
彼女は遠くに目をやると、もう一度私に向き直った。
422 :
書いた人:03/03/02 22:12 ID:OhNKL/7h
「あ・・・愛ちゃんと里沙ちゃん、もう来ちゃうね。
まこっちゃんのことが心配で出てきたけど・・・大丈夫そうだね。
それじゃ、私行くから」
一生捕まえておきたかったはずの感触なのに、
彼女の右手はいともたやすく私の手から逃れた。
何か言いたいはずなのに、喉から声が出てこない。
全て嗚咽に代わっていた。
423 :
書いた人:03/03/02 22:12 ID:OhNKL/7h
「それじゃあ、ホントに、ありがとうございました!!」
場違いに大きな声でそれだけ言うと、彼女は友達のもとへ走り去った。
『大丈夫だったの?』
『うん、とってもいい人だったよ!』
『私も行けばよかったかな〜?』
そんな声が聞こえてきた。
私はその姿を眺めながら、一言も口を聞けなかった。
ただ言葉の代わりに、涙だけが出てきた。
424 :
書いた人:03/03/02 22:13 ID:OhNKL/7h
あさ美ちゃん、あさ美ちゃん、あさ美ちゃん・・・・・・
声に出したい、どうしても。
今なら、呼び止められる。
今なら、彼女の手を握って『また会えたね!!』って言える。
でも、保田さんの言葉が耳の奥で木霊した。
『仮にこいつを動かすとしても、もう紺野ではない全く別人格として、だな』
話しちゃいけない。
だってあの子は、もう『紺野あさ美』ではないから。
私は呆然として、道の真ん中に突っ立っているしかなかった。
涙で、視界がかすんだ。
425 :
書いた人:03/03/02 22:14 ID:OhNKL/7h
「なぁ〜にやってんの?まこっちゃん?」
気がつくと、愛ちゃんと里沙ちゃんが私の顔を不審げに覗き込んでいた。
「え?ええ?なんでもないよ!」
とりあえず返事だけ。
あたりを見回してみたけれど、彼女達の姿はもう、どこにもなくなっていた。
「変なまこっちゃん・・・・・・」
里沙ちゃんと愛ちゃんは顔を見合わせて、首を傾げた。
そして2人で頷きあうと、
「ほらっ、行くよ!!早くしないと後輩たちが怒っちゃう!」
私の腕を引いて、走り始めた。
426 :
書いた人:03/03/02 22:16 ID:OhNKL/7h
私は引かれながら、まだ考えていた。
さっきの出来事が、まるで白昼夢みたいで。
でも彼女の姿を見て、ちょっと安心もしていた。
私とあさ美ちゃんの道は、あの時に別れた。
あさ美ちゃんは、『紺野あさ美』ではなくなって、
そして私はまだ、娘。として走りつづけている。
あさ美ちゃんは今でもきっと私を、いや、娘。を応援してくれているんだ。
427 :
書いた人:03/03/02 22:17 ID:OhNKL/7h
そう考えると、なんだか里沙ちゃんと愛ちゃんに引っ張られているこの身体も、
自然とスピードを出せる気がした。
無理なんかしない、私自身のベストのスピード。
私は2人の腕を振り払う。
驚いたように、二人は私に振り返った。
「よっし!!待ち合わせの場所まで競争!!」
そう宣言すると、私は一気に歩行者天国の道を駆け抜けた。
キカイノココロ おわり。
428 :
書いた人:03/03/02 22:22 ID:OhNKL/7h
―――― あとがき
キカイノココロは終了です。
今まで読んでくださっていた方、本当にありがとうございました。
元が半分冗談で始めたようなものだったので、
実際に工学を学んでいる方には、『な〜に言ってんだか』みたいな場面が多かったと思います。
その辺は見逃してください。
今までレスを下さった方々。
最初に私にレスをしてくれた方――あなたがいなかったら、私は続けませんでした。
隠れた名作スレに紹介してくださった方、
『おすすめ』にしてくれた総合スレの報告人様。
本当にありがとうございました。
長いので次のレスに続きます。
429 :
書いた人:03/03/02 22:26 ID:OhNKL/7h
―――― あとがき続き。
深く考察してくださった方、私あそこまで考えてませんでした。
始まり方がシャレで始めちゃったようなものですので。
ただこのスレ名が気に入った、というのは事実です。
当分の間、小説も書けないと思います。
私が再び書く頃には、このスレも海の底で役割を終えていることでしょう。
このスレはどうぞ、誰か小説でもネタでも書いてあげてください。
それでは取りあえず、私の肩の荷も下りたな、ということで。
乾燥書いて下さい、いや、マジで。
泣いた
431 :
書いた人:03/03/02 22:30 ID:OhNKL/7h
>>429 ×乾燥 → ○感想
最後まで校正甘いですね、私。
=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT (1/3) =-=-=
* *
*
>>36-50 . .第1章「キカイノココロ」 *
* (2002.12.25) ver12.32 *
*
>>66-83 . .第2章「デジタル」 *
* (2003.01.05) ver12.33 *
*
>>90-103 .第3章「シンパシー」 *
* (2003.01.13) ver12.34 *
*
>>106-124 第4章「好き」 *
* (2003.01.19) ver13.00 *
*
>>130-159 第5章「目的」 *
* (2003.01.28) ver13.00 *
* *
=-=-=-=-=-=-=-= ###NOW ??????????????? MODE### =-=-=-=-=-=-=-=
=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT (2/3) =-=-=
* *
*
>>164-183 第6章「光は闇でこそ輝く」 *
* (2003.01.29) ver13.00 *
*
>>189-216 第7章「美意識」 *
* (2003.02.05) ver13.00 *
*
>>221-246 第8章「永続性」 *
* (2003.02.11) ver13.00 *
*
>>250-272 第9章「いつか来るべき瞬間」 *
* (2003.02.13) ver13.00 *
*
>>283-308 第10章「最終課題」 *
* (2003.02.16) ver14.00 *
* *
=-=-=-=-=-=-=-= ###NOW ??????????????? MODE### =-=-=-=-=-=-=-=
=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT (3/3) =-=-=
* *
*
>>328-345 第11章「共同作業」 *
* (2003.02.26) ver14.00 *
*
>>351-372 第12章「ホントノココロ」 *
* (2003.03.01) ver14.00 *
*
>>378-406 第13章「我は我が咎を知る、我が罪は常に我が前に在り」 *
* (2003.03.02) ver14.00 *
* ##################################################### *
*
>>411-427 . 終章「リング」 *
* (2003.03.02) ver14.00 *
*
>>428-429 . あとがき (
>>431 修正) *
* (2003.03.02) ver14.00 *
* *
=-=-=-=-=-=-=-= ###NOW ??????????????? MODE### =-=-=-=-=-=-=-=
>>作者様へ
まずは完結おめでとうございます。
毎回楽しく読ませていただきました。
それで、んーと、目次が遅れたのはですね、
第13章のタイトルが長くて今までの枠内に入らない→全体的に広げる→本文長すぎエラー→
デザイン変更及び分割して作り直し→これでよし、さてアップしよう→えっ、最終回始まってる…
というわけでした。…とにかくすみません、遅れて。しかも
>>434の
>*
>>411-427 . 終章「リング」 *
>* (2003.03.02) ver14.00 *
> ~~~~~~~~
>*
>>428-429 . あとがき (
>>431 修正) *
>* (2003.03.02) ver14.00 *
> ~~~~~~~~
波線部削除しようとして忘れました、すみません。
最後に今までお疲れ様でした。
ステキなお話をありがとう。
437 :
書いた人:03/03/02 22:57 ID:l/xCBJq6
>>435 なるほど。そういうわけでしたか。
実は自分でも『長いんじゃないの?』って思ってましたが、
あの言葉は非常に好きで、しかもぴったりだと思ったのでつけてしまいました。
あなたもお疲れさまでした。
あと返事忘れ。
>>408、430 その一言で、書いてよかったなって、思います。
>>409 例によって気にしておりませぬよ 。