1 :
:
保田はすぐに辞めろ
年内にも辞めろ
いや明日にでも辞めろ
2 :
名無し募集中。。。:02/12/03 22:58 ID:2qMC7gLY
2GET
3 :
名無し募集中。。。:02/12/03 22:59 ID:2qMC7gLY
3もGET
4 :
名無し募集中。。。:02/12/03 22:59 ID:d8JxMB+5
3GET
5 :
名無し募集中。。。:02/12/03 22:59 ID:d8JxMB+5
5GET
6 :
名無し募集中。。。:02/12/03 23:00 ID:d8JxMB+5
6GET
7 :
セニョール馬淵 ◆ZcH7tfoDq. :02/12/03 23:00 ID:4p593X61
12でも取っとくかやれやれ
8 :
名無し募集中。。。:02/12/03 23:00 ID:2qMC7gLY
9 :
無し募集中。。。:02/12/03 23:01 ID:NOB2bjuN
6GET
10 :
名無し募集中。。。:02/12/03 23:04 ID:d8JxMB+5
11 :
:02/12/03 23:05 ID:ZcpNsA+D
保田はすぐに辞めろ
年内にも辞めろ
いや明日にでも辞めろ
12 :
名無し募集中。。。:02/12/03 23:06 ID:d8JxMB+5
12GET
13 :
名無し募集中。。。 :02/12/03 23:08 ID:dE1Pfbju
二桁ゲト
14 :
?:02/12/03 23:09 ID:yVqrg/IA
14
15 :
名無し募集中。。。 :02/12/03 23:12 ID:OW9VQicU
今・・・!
今まさに俺は屁をコこうとしている・・・!
もし・・・!
もし俺が屁をコいたら・・・!
>>1は・・・!
>>1はどうなる・・・!
∧_∧
( )
────-o────/ \────────
\\ //\ \
.. \\// \ \
\/ ) ∴)ヾ)
/ / ⌒ヽ
/ /| | | ←
>>1 / / .∪ / ノ
/ / . | ||
( ´| ∪∪
| | | |
| | | |
| | | |
| | | |
(´ ノ (´ ノ
16 :
:02/12/03 23:15 ID:ZcpNsA+D
18 :
名無し募集中。。。:02/12/03 23:17 ID:XCd3IKA9
>>1は何をあわてているんだ?
∧_∧
∧_∧ (´<_` ) さあな。
( ´_ゝ`) / ⌒i
/ \ | |
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
__(__ニつ/ FMV / .| .|____
\/ / (u ⊃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
19 :
糞スレ認定:02/12/03 23:18 ID:egoybg6X
\もうね、アボガド/ \バナナかと/
┌┐
ヽ / /
γ⌒^ヽ / / i
/:::::::::::::ヽ | (,,゚Д゚)
/::::::::(,,゚Д゚) |(ノi |)
i:::::(ノDole|) | i i
゙、:::::::::::::ノ \_ヽ_,ゝ
U"U U" U
20 :
:02/12/03 23:19 ID:ZcpNsA+D
ようやくクソスレ認定GET!
やったね
21 :
:02/12/03 23:21 ID:DNG2XZ2k
あっそふんじゃえ!
22 :
:02/12/03 23:22 ID:ZcpNsA+D
(・∀・)ニヤニヤ
∋8ノハ8∈
( ;´D`;) やすらさんはひつようれす・・。あくもなべのうちれす・・。
_____(つ___と)___
/\\ ___ \
/+ \_____|i\ __ヽ.
〈\ + + .|i i|.====B|i.ヽ
\ \_ ─ |\.|___|__◎|_i‐>
`、_ |. | ̄ ̄ ̄ ̄|
\| .|
 ̄ ̄ ̄ ̄
>>23 たまにはね。
25 :
名無し募集中。。。:02/12/04 00:28 ID:EIGCLz9e
一人ぃーぼーっちでー少しぃー 退屈ぅーなーよーるー
>>1 革命さん、名前入れ忘れてますよ
>>24 ののさん、いいこと言った!
27 :
つんつんく:02/12/04 01:11 ID:OBDXn0gf
今・・・!
今まさに俺は屁をコこうとしている・・・!
もし・・・!
もし俺が屁をコいたら・・・!
>>保田は・・・!
>>保田はどうなる・・・!
∧_∧
( )
────-o────/ \────────
\\ //\ \
.. \\// \ \
\/ ) ∴)ヾ)
/ / ⌒ヽ
/ /| | | ←>>保田
/ / .∪ / ノ
/ / . | ||
( ´| ∪∪
| | | |
| | | |
| | | |
| | | |
(´ ノ (´ ノ
28 :
17:02/12/04 21:19 ID:Vi8KgJ3V
ほー
st
ho
串test
ほ
すまぬ、勝手に小説始めてよろしいかな?
こんな時間に聞くのもなんだが。
ちなみにハァハァはできませぬ。
始めちゃいます。
「紺野ッ!!何度言ったら分かるの?!そこのステップがワンテンポずれてる!!」
夏先生の怒声に、私は肩をすくめた。
怒鳴られるのには慣れている・・・けれど、やっぱり怖い。
私だってここを注意されたのが、2度や3度でないことなんか分かってる。
できるなら、こんなに注意されたくなんかない。
麻琴ちゃんみたいに、すいすい踊れちゃうのは、正直うらやましい。
休憩時間中もひたすら夏先生の個人レッスンを受ける私を、
メンバーのみんなは気の毒そうに見ている。
ううん・・・あの人は別。
あの人は、私のダンスがいかに駄目であるか、逐一チェックしてる。
多分『間奏8小節目のターンが4分の1拍遅れ、
全体的に音を聴いて動きに入っているきらいがあり。有効な改良法は・・・』
とか書いてるんだ。
この間、歌のレッスンがボロボロだった時だって、一晩中調整された。
今日だって・・・多分、徹夜なんだろうなぁ・・・・
「はぁ・・・多分、もう疲れちゃってるから反応できなくなってるんだ。
いいや、紺野はこの部分、明日までの宿題」
夏先生が解放してくれる。まあ、多分呆れちゃったんだろう。
息をつく私の目には、満足そうにメモ帳をたたむ保田さんの姿。
やっぱり・・・徹夜ですね。
声に出してもいないのに、私と目が合った保田さんは、大きく頷いた。
夜、保田さんのマンション。
「うーん、今度の新曲はテンポ早いからなぁ・・・反応速度がおっつかないんだよね」
昼間書いていたメモ帳片手に、保田さんは偉そうにメガネをかけなおす。
出たな、メガネケメ子め・・・
心の中で呟いてみる。
「はぁ・・・何度やってもダメな理由が分かりました」
製作者がこう言う以上、今の私には不可能なのだろう。
とりあえず自分の努力が足りないことの証明では無いと知って、私は安堵した。
「うん、紺野は今までも良くがんばってるよ。だから、いちいちできないことを気にすんな」
やっぱり見透かされてしまう。
保田圭・・・私の製作者。
私、紺野あさ美は保田さんによって造られた。
起動からそろそろ3年になる。
もっとも、私を造り始めたのはずっと前からだ、と聞いている。
何の狙いがあるのか分からないけれど、保田さんは私を造った上、
更にモーニング娘。に加入させた。
戸籍なんてものはないから、当然裏口。
世間では里沙ちゃんのことをそんな風に言っているみたいだけど、実は私がそれ。
よくもまあ、保田さんのコネが効いたもんだ、と思っていたけれど、
『通用するコネが、金や地位だけだと思ったら大間違いよ』
と言われてしまった。
この人が裏で何をやっているのか、『裏』の一部である私もよく分からない。
励ましの言葉に元気に頷いた私の頬を、保田さんは満足そうに撫でてくれる。
「とりあえず、これから反応速度を速めるように調整しような」
と、携帯の着信音が鳴り響いた。
「お、ブブカからだ・・・・・・そうか、次のネタを入れる日だったかな」
保田さんは携帯の画面を確かめると、廊下に向かう。
どうやら私には聞かれたくない話らしい。
さて・・・ぶぶか、って何だろうか?
メモリーには
『セルゲイ=ブブカ・・・棒高跳びの世界記録保持者。ウクライナ人。記録は6mと十何cm。既に引退。鳥人』
まさか・・・保田さんが、鳥人と知り合い?
困惑する私を尻目に、保田さんはドアの所で振り帰ると、私を指差した。
「どーでもいいが、紺野。心の中で私をメガネケメ子呼ばわりするのはやめろ。
親の私がこんなにも必死に、お前のリアリティーを高めてやろうと思ってるのになぁ・・・」
やっぱり私の思ってることは、この人には見透かされてる。
「は、はい!!すみません!」
「ま、いいや。お、紺野・・・次のネタは『止まらない激太り・・・クビ宣告か?』と
『ダンスも歌もダメ、ついにクビか?』のどっちがいい?」
「はぁ・・・よく趣旨が分からないんですけど・・・じゃあ、ダンスの方で」
『どっち道クビじゃん』と思うが、とりあえず怒られたばかりなので、無駄なことは言わない方がいい。
「おっけー。いやぁ、我が娘に自分のゴシックネタまで選ばせてやるとは、
ダーヤスさんも優しいなぁ・・・」
意味不明な高笑いを響かせて、保田さんは去っていった。
ゴシック・・・・・・?
保田さん、裏で何をなさってるんですか?
10分後、ホクホク顔で保田さんが帰ってきた。
聞いてみたところ、どうやら保田さんは、
私が機械であるとばれないために、色々な工作をしているらしい。
「ゴシックが出るくらいなら、誰も紺野は機械だ、って思わないでしょ?」
「そんなもんですかねぇ・・・」
「まあ、パラパラ踊っちゃうどっかの人型ロボットは、雑誌にも載るけどさ。
ダーヤスさんの科学力は、あいつらの遥か上の成層圏を行ってるからね。
誰もあんたがメカだって、疑ってないよ」
どうやら『ブブカ』とは、雑誌の名前らしい。ふむふむ・・・また一つ賢くなりました。
保田さんがしている工夫は、これだけではない。
例えば、私の体型や顔を、少し太らせたり痩せさせたり、なんてこともする。
『周りのメンバーがあんなに体型の変化がめまぐるしいと、
あんただけ変わってないのっておかしいでしょ?』
だそうだ。この理由には、私も頷いた。
正直、娘。に入った当初、識別コードを調整するのがかなり大変だった。
データの書き換えを頻繁にするのは負担が大きいので、
私は最初に保存されたデータに基づいて人の顔を識別する。
でも・・・まあ、誰と言っちゃなんだけど、
約3人については、随時データを更新するように改良した。
そんな中で、私だけが入ったときからそのまま・・・というのは確かに不自然。
この年頃の女の子、というのは変化が激しいらしいから、尚更だ。
他にも、私を食べ物大好きキャラにしたのも、機械であることのカムフラージュらしい。
じゃあ、なんで私を空手経験者にしたり、おとぼけキャラにしたんだろう?
空手をやっていない人間の女の子も沢山いるのに。
私の知りたがり病が始まった。
病・・・いや、感染してるわけじゃないですが、ウイルスだと思ってくださいね。
保田さんは・・・・・・キッチンかな?
キッチンからがさがさと音がする。
多分、いつものように少し腹ごしらえをしているんだろう。
「あのぅ・・・保田さん?」
「ん?」
夜食のカップラーメンを啜っていた所だった。
こちらを向いた保田さんのメガネは真っ白。口からは数本、麺が見える。
ある意味すごく前衛的な光景だ。
このまま肝試しに連れて行ったら、絶対ヒロインになれる。
もちろん脅かす側の。
うーん・・・こんなどうでもいいことなのに、私の人工頭脳は、おかしな方面に考えを巡らす傾向が強い。
最初からこうだったのか、それとも段々こうなったのか。分からないや。
それはさておき、先ほどの疑問をぶつけてみた。
「ああ、そりゃ簡単よ」
質問に答える時は、いつも背筋を伸ばして、私の目を見つめてくれる。
私が保田さんのことを好きな理由はここにある。
「それはね・・・」
「それは?」
「そんなキャラクターだと、萌える奴が多いと思ったから」
「萌える?」
さてさて・・・なんだ?この言葉は。
『燃える』とは明らかに発音が違ったから、どうやら別種の言葉らしい。
メモリーにはヒットしたけれど、よく分からない。
どうやら感覚的なニュアンスが強いらしい。
「うーん・・・・・・なんだろう。
説明するの難しいけど、同年代や年下の女の子からもてるよりは、年上の男にもてるようにした、ってこと。
ちょっとぼけぼけ、っとしてて、でも実は運動神経よかったりすると、なんだか放っておけない存在でしょ?」
「いや、それって・・・矢口さんがよく言ってる『ヲタ』目当て・・・じゃ?」
「まあ、ね。別に嫌がることじゃないよ」
そんなものなのかなぁ・・・よく分からないや。
矢口さんの喋りっぷりを聞く限り、とても好ましいことには思えないけど。
「さ、それより・・・早いとこメンテしないと・・・
今日は反応速度を早める調整しなくちゃいけないんだから・・・」
保田さんはこの話題が続くのが嫌なようだ。
食べかけのカップラーメンをおくと、そそくさと私を調整室に促す。
こういうときは、これ以上聞くのはタブー。
素直に従うとしよう。
なんだかうやむやで、気分の悪い空気。
そんなに触れちゃいけない話題だったのかな?
私はこの空気が嫌で、何とか話題を振ろうとする。
機械だって、それくらいの気は遣うのだ。
・・・保田さんに極めて関係がなさそうで、
それでいて2人の共通事項、しかも話題が途切れてないようなもの・・・
「あ・・・そうだ、私がうたばんで怪我したの・・・あの時のメンテ、大変でしたよね」
うーん、我ながら最良の話題を選択!
あれは酷かった。まさか、あれが保田さんの仕業なわけないけど・・・
しかし保田さんは親指をぐっと立てると、私にウィンク。
回路が異常をきたす前に、視覚情報をシャットダウンしなくちゃ。
「そう言えば・・・それ、私が仕組んだ!だって、怪我する機械なんていないだろ?
あれで誰もお前が機械だなんて疑わないって。だいじょーぶ!!
このわたしが隅から隅まで気を配って、誰にもばれないように仕組んだから!
いやぁ、紺野に言うの、すっかり忘れてたわ・・・ありがとな、思い出させてくれて」
あれれ、あの時は『自分がダメダメなんだ』って思って、結構辛かったのに・・・・・・
ああ、ロボット三原則に反してみようと、って気持ち、こんなのだったんだ。
また一つ勉強になったなぁ・・・
私はひとりごちて、調整室のドアを押し開けた。
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver12.32電源を切ります。
必要改良事項の確認・・・
・ 眼鏡をかけた保田さんを、メガネケメ子と呼ばない・・・辞書システム改変。
・ 本体の反応速度上昇に伴い、対応可能に全システム調整。
・ 「対人不可侵害」レベルを、保田さんに限り上昇。些事では殴らぬよう。
・ 吉澤さんの画像データ更新。
私を構成するすべての回路、部品の皆さん、今日も一日お疲れさま。
おやすみなさい。
何つーか、なんでこんなとこに書いてしまう気になったのか、
己の気が知れません。
とりあえず、批判とかは書いて下さるとありがたいです。
気が向いたら、続きも書いてみます。
では。
52 :
:02/12/25 09:26 ID:qw+/d2vC
すげー面白いです
続き読みたーい
54 :
書いた人:02/12/26 03:17 ID:ahG778+o
タイトル入れ忘れました。
『キカイノココロ』
ま、今思いつきで付けただけですけど。
55 :
書いた人:02/12/26 03:21 ID:ahG778+o
>>53 あげたのね・・・
>>54 『明石家サンタ』を見ながら、適当に書いてしまったので、
続きとかまったく考えておりませぬ。まあ、追々。
とりあえず、そう言って頂くと嬉しい。
56 :
書いた人:02/12/26 05:39 ID:GxwPvBOn
57 :
A:02/12/30 13:56 ID:0c+vFjpo
58 :
あ 蜜柑:02/12/30 14:09 ID:N2WI2ggd
また革命さんですか
59 :
二岡智宏:02/12/30 17:30 ID:DL13ayIR
「来年の私の目標は、モーニング娘。と舞台で共演すること
そして、娘。のメンバーと熱愛発覚なんてどうかな?
なっちあたりとか……
加護ちゃんはまずいけどなあ(笑)」
60 :
松本白鸚:02/12/31 08:49 ID:hF9+dqBD
娘と共演したいな。
61 :
名無し:02/12/31 10:09 ID:QiZlNBA+
「キカイノココロ」テレビドラマ化きぼんぬ。気がはやすぎるか。
小説の続ききぼーん。
それと・・・
>>1、オマエが人生辞めれ。
途中まで面白かったが、最後でヨシ子ネタ書いたのがむかつく、氏ね。
64 :
書いた人:02/12/31 16:12 ID:hx4SqSFu
>>61 早いですな。
>>62 ちと書き込みがしにくい状況におりますので、正月明け頃に。
>>63 いや、痩せていってる方向への修正だったんだが。
最初の一文には、ありがとうとお答えします。
今後は表現に気を遣います故、氏ぬのはご勘弁を。
65 :
書いた人:03/01/02 16:44 ID:lHwIaMhS
一応保守で。
66 :
書いた人:03/01/05 20:16 ID:3geKyzGv
第2章 『デジタル』
67 :
書いた人:03/01/05 20:17 ID:3geKyzGv
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver12.33電源が入りました。
私を構成するすべての回路、部品の皆さんの状態は完璧です。
それでは皆さん、今日も一日、頑張っていきましょう!!
68 :
書いた人:03/01/05 20:18 ID:3geKyzGv
「うーん・・・もう少し、腹から声出せばいいんやけどなぁ・・・
全体的に音が低いわ。ちゃんと練習せえよ」
マイクを前に固まる私。いわゆるフリーズ。
つんくさんは半分笑いながら、ペンで譜面をぺしぺし叩く。
でも目は笑っていない。
こういう場合、多分怒っていると考えていいのでしょう。
私はその言葉を聞きながら、ただ俯くしかなかった。
69 :
書いた人:03/01/05 20:20 ID:3geKyzGv
『完璧です』
私がよく言う台詞。
いつの間にやら、私のキャッチフレーズみたいになっていた。
つんくさんは、
『ダメなやつがそう繰り返している所が、かえって面白い』
とか言っていた。
保田さんに至っては、
『なんか健気でいいじゃない。萌えるぞ?』
と笑っていた。
70 :
書いた人:03/01/05 20:21 ID:3geKyzGv
でも・・・実際の私は、完璧からは程遠い。
っていうか、私のメモリーの『完璧』という言葉とは、正反対の位置にありそうな気がする。
調整によって、ようやくダンスの方はなんとかなった。
でも今度は歌がダメダメなのだ。
やっぱり・・・調整かな?
ううん、むしろ調整して欲しい。
機会にだって向上心はあるのだ。
71 :
書いた人:03/01/05 20:22 ID:3geKyzGv
72 :
書いた人:03/01/05 20:23 ID:3geKyzGv
「しないよ」
私のお願いは、たった一言で片付けられた。
その夜も保田さんの部屋。
煎れたてのコーヒーの湯気が、保田さんの姿をかすませる。
「え・・・でも、つんくさんにはかなりキツく言われたんですけど・・・」
一応反論。
現状では満足な働きが出来ない以上、
スペックアップを望むのは機械として当然の結論だ。
「・・・・・・・だから・・・しないよ」
繰り返されてしまった。
73 :
書いた人:03/01/05 20:25 ID:3geKyzGv
ちなみに現在の会話の中で、私はメモリーと格闘していた。
『しないよ・・・@石川さんが―――(機械として、これ以上申し上げるのは恥です)
Aするの否定形』
文脈から考えて、当然採用するのはAの方だ。
だが何故あちらの方が第一候補なんだろうか?
優先順位がかなり高いレベルになっていることから見ても、
このフレーズにはかなり重要な意味があるに違いない。
でも・・・人間だったらするでしょ、普通。
メモリ−にしばしばでてくる、このような箇所を見ると、
保田さんの脳みそが少し心配になってきてしまう。
あ、ちなみに私はしませんよ。機械ですもん。
74 :
書いた人:03/01/05 20:26 ID:3geKyzGv
「どーして歌も完璧にしてくれないんですか・・・」
必死に抗議する。
でも保田さん(メガネケメ子改変・・・実施確認)は首を横に振るばかり。
「だーめ」
コーヒーを飲みながら、意地悪な目付きで言う。
けち・・・
「だってこのままじゃ、明日つんくさんに怒られるの目に見えてます・・・
今のスペックじゃ、私はあの歌をちゃんと歌えないんですから」
こっちも必死だ。
機械だって、怒られたり注意されると、自分の不甲斐なさってものを感じる。
そんな思いをするのは御免だ。
75 :
書いた人:03/01/05 20:28 ID:3geKyzGv
『自分の存在の意味』
これを見失うと、機会は脆い。
人間だったら惰性で生きていくケースが多いけれど、
生憎機械はこの点シビアだと思う。
電源を自分で切る事に、なんの躊躇いも無いんだから。
今の私の存在意義・・・多分、歌や踊りをちゃんとやっていくこと、だと思う。
それを果たせないままでは、情けない。
76 :
書いた人:03/01/05 20:30 ID:3geKyzGv
ずずっと、コーヒをひとすすりして、保田さんはこちらに目をやる。
「あのさ、紺野・・・お前はデジタル時計みたいに正確にしてる必要は無いんだよ?」
「いや・・・私、存在自体がデジタルなんですけど・・・」
時々保田さんの言うことは、辞書どおりに解釈できない。
もう慣れてしまいました。
「なんだろ・・・・・・今のお前に期待されてるのは、
寸分も間違わずに歌を歌うことじゃない。
娘。の中に、そこまで正確に歌を歌えるやつなんて・・・・・・
このダーヤスさん以外にはいないよ」
そこまで言って高笑い。
非常にナルシストの傾向が強い。
「いや、それはいいとして。
世の中の人間には、完璧に歌を歌える人なんていないんだ。
それにね、そこまで完璧な歌って、
人間の耳にはかえって下手に聴こえてくる」
77 :
書いた人:03/01/05 20:32 ID:3geKyzGv
・・・どういうこと?
正確であることが、求められない。
私には理解しがたいことだ。
納得できない。
「でも・・・・・・音楽、っていうのは、人間の作ったルールに基づいたものです!
だったら、それに則っていないようなものは、ルール違反じゃないですか?」
78 :
書いた人:03/01/05 20:34 ID:3geKyzGv
それを聞いた保田さんの顔と言ったら・・・
目が大きく見開かれた、と思ったら、次に頬が膨らんだ。
そして始まる大爆笑。
・・・・・・まったく、失礼な。
「こ、紺野さぁ・・・・・・ルールを全て守っていける人間なんて、この世にいないんだよ。
だから、お前もそんなに杓子定規に行く必要はないんだ。
見てみな、世の中、ルールから外れちゃってる人の方が、何倍も輝いてる」
保田さんは人間と言うルールから完全にOBですよね、
とは言わないのが、私の成長の印。
でもこの言葉には、呆気に取られた。
正しいことは正しく、誤りは誤り。
これが私の考え方の根底にある。
でも、それを少し外れたとしても、構わない・・・?
理解に時間がかかりそうだ。
79 :
書いた人:03/01/05 20:36 ID:3geKyzGv
私の困惑具合をさすがに心配したのか、
保田さんは椅子に座りなおすと、背筋をピンと伸ばして私と向き合った。
「紺野・・・ファジーって知ってるか?」
「はい・・・メモリーにも載ってます。
保田さんがご存知の意味と、ほとんど同じだと思いますが・・・」
プログラミングをしたのが保田さんだもん。
大体保田さんと私とでは、知識に差は無いと思っている。
「お前はさ、機械はファジーであってはいけない、ってどこかで思ってるだろ?」
「勿論です。家電製品についてるファジー機能だって、結局はプログラムの結果です。
プログラムに忠実に従うから、ああいうばらつきを生み出せるんですから」
80 :
書いた人:03/01/05 20:37 ID:3geKyzGv
「でもな、人間は適当くらいがいい、って思うんだ。
つんくさんだって、お前に全てがパーフェクトになって欲しい、とは望んでいないぞ。
娘。の面子なんて、不完全の集まりだぜ」
保田さんは私の頭を撫でながら続ける。
「なんで不完全な方がいいって思うか、お前は分かる・・・わけないな。
なんつーのかな、その方がさ・・・・・・愛しいんだよ。
足りないところがある人間って、守ってあげたくなるっていうのかな・・・
くそっ、なんか言ってて照れてきたぞ」
真っ赤な顔をして、保田さんはコーヒーを飲みなおした。
つまり・・・機械を使う側が、私の完全性を望んではいないのだろうか。
少しだけわだかまりは残るけど、気が楽になったのも事実。
色々と人間の生活を観察しながら、結論を出していくしかなさそうだ。
81 :
書いた人:03/01/05 20:39 ID:3geKyzGv
「スペックの方は、また時期が来たらこのダーヤスさんが変えてあげる。
でもな、今はまだ、それくらいでいいと思うぜ」
そう言って方をぽんぽん、と叩く。
やっぱりこの人は、私の産みの親なんだな・・・
感傷に浸ったのも束の間。
「そうそう、娘。で完璧な人って言えば、このダーヤスさんを置いて他にはいないなぁ。
だってほら、私みたいな人がいないと、みんなの足りないところ、カバーできないだろ?」
あんたに足りないのは、謙遜と自分を知ることです・・・
呟きつつ、メモリー解析をされたらヤバイ、という事に気付いた。
一刻も早く、この感想を削除しないと。
最優先課題ですね。
82 :
書いた人:03/01/05 20:40 ID:3geKyzGv
でも・・・
いい加減でいいのなら、何故私は娘。に入っているのでしょうか。
それだと、私を娘。に入れた本来の目的が果たせないのでは?
かすかな疑問を感じて、私は充電器に腰掛けた。
83 :
書いた人:03/01/05 20:42 ID:3geKyzGv
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver12.33電源を切ります。
必要改良事項の確認・・・
・ 思考システムにおけるファジーの導入は懸案事項に。
・ 保田さんに対して感じた悪態を削除。
・ 辞書メモリー『しないよ』の優先順序変更。
・ あわせて『石川さんはホントにしないのか?』の調査を、
優先課題の一つに付加。
私を構成するすべての回路、部品の皆さん、今日も一日お疲れさま。
おやすみなさい。
84 :
書いた人:03/01/05 20:44 ID:3geKyzGv
>>75も機械の字が間違ってますな。
我ながら情けないです。
それなりに物語としても進行はさせます故、
ご批判などお聞かせくだされ。
イイヨーイイヨー、おもろい。
86 :
書いた人:03/01/07 04:09 ID:KgYb7IPI
>>85 ありがとう、です。
しかし・・・藤本が入るとは。
事実は小説よりも奇なり、ですな。
校正間違いがもう一つ。
>>81 ×方→肩 でした。
もっとちゃんと校正しないといけませんな。
87 :
:03/01/09 11:11 ID:hySuhtAT
88 :
z:03/01/09 11:12 ID:PXTyFnEp
89 :
山崎渉:03/01/10 16:42 ID:WMf2v4nq
(^^)
90 :
書いた人:03/01/13 15:27 ID:JFJidgAi
第3章 『シンパシー』
91 :
書いた人:03/01/13 15:28 ID:JFJidgAi
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver12.34電源が入りました。
私を構成するすべての回路、部品の皆さんの状態は完璧です。
それでは皆さん、今日も一日、頑張っていきましょう!!
92 :
書いた人:03/01/13 15:30 ID:JFJidgAi
なるほど、人間というのは適当なものです。
でも・・・だからこそ、人間というのは、複雑で、ナイーブなのかもしれません。
保田さんが言ったことは、まさにその通りだった。
翌日のレコーディング。
はっきり言って、拍子抜けです。
昨日と寸分違わずに、一つ一つの音の長さ、ピッチ、全てそのままで歌ったのに。
つんくさんときたら、ニコニコ顔で言った。
「おぅ、紺野。だいぶ上手くなったな。そんな風にやってったらええんや」
この人がプロデューサーで、本当にいいのでしょうか?
昨日あそこまでひたすら怒られたことが、馬鹿馬鹿しくなってきた。
耳鼻科行った方が良いんじゃない?とか思ったけれど、
その言葉はメモリーの底の底に、押し止めて、
「はい、ありがとうございました!」
と、とりあえず言ってみた。
93 :
書いた人:03/01/13 15:31 ID:JFJidgAi
うーん、適当さかぁ・・・
考えながら、ドアを押し開ける。
真っ先に控え室に戻った私の目に飛び込んできたのは、
「ほらぁ〜、梨華ちゃ〜ん」
「いやぁ〜ん、よっすぃ〜」
石川さんと吉澤さんの熱い抱擁。
おいおいおい・・・
この光景が普通になってしまっている、この控え室が不気味だ。
そんな可愛い声出してはしゃいでるのに・・・
まさか自分が―――をするかしないか、
が私のトップトピックスになっているとは思ってもいないだろう。
94 :
書いた人:03/01/13 15:33 ID:JFJidgAi
機械としては可能性の低い推論は切り捨てていくのが通常の措置だ。
そうしないと、可能性の樹形図が際限なく広がっていって、負荷が大きくなる。
生物学的に考えれば、「しない」ことなんて考えられない。
でも・・・一応頭脳は優秀な保田さんが入れたデータだし。
いや、あの人の壊れかかった頭脳を信用できるのかな?
ねえ・・・保田さん・・・
と、部屋の奥の方で本を読んでいた保田さんが、顔をあげた。
入り口近くで固まっている私をみて、満足げな顔。
『ほら、私の言ったとおり。適当だったろ』
とでも言いたさげ。
『でも・・・なんだか納得しにくいんですけど・・・』
こっちもアイコンタクトで返してみた。
95 :
書いた人:03/01/13 15:35 ID:JFJidgAi
返事は・・・ウィンクだった。
メ・・・メモリーが破壊されてしまいます・・・一刻も早く、視覚情報を遮断しないと。
いや、分かってるんですよ。
『紺野、ゆっくりやっていけばいいさ』
って言ってくれてる、っていうのは。
視覚野がやられているのは私だけでは無いらしく、
「おいおい、圭ちゃん、みんなのいる前でそれやめろよ」
うわぁ・・・矢口さん・・・ストレートすぎ。
しかもボソッと言うから、怖い。
「何だよ矢口、照れてるのかぁ?」
「んなわけねーだろ!」
いつもそんなことばかり言われてるのに、
なんで保田さんはこの表情をしつづけるのでしょう。
人間って不思議です・・・まぁ、保田さんに限ってのことですけど。
96 :
書いた人:03/01/13 15:36 ID:JFJidgAi
ふぅ、と息をついてパイプ椅子に腰をおろした。
正面に座っている麻琴ちゃんは、さも心配そう。
「あさ美ちゃん・・・大丈夫?」
「え?何が?」
「なんか、納得できないような顔してるから・・・
レコーディングで何かあったのかなぁ、って」
どうやらさっき保田さんに見せた表情を見られていたらしい。
「ううん、大丈夫。上手くいったよ」
両腕で力こぶを作る仕草も付け加えてみる。
ちなみに保田さんによれば、
『その動作は萌え萌え』
だから、私にインプットしておいたらしい。
その割に、保田さん自身はこんな仕草をしない。
昔、そのことを尋ねたら、
『だってダーヤスさんがそんな仕草やったら、世界中の男を魅了しちまうからね。
他のメンバーがひがむだろ』
と答えられた。
ぎゃふん、って感じはこんなんだろう、多分。
97 :
書いた人:03/01/13 15:38 ID:JFJidgAi
「そうかぁ、ならいいんだけど・・・」
ホッとした表情を見せて、麻琴ちゃんは息をついた。
順番で言えば次は麻琴ちゃんだから、
つんくさんのご機嫌が悪くなってないか心配したのかな?
と思っていたから、次の麻琴ちゃんの言葉は意外だった。
「やっぱりあさ美ちゃん、頑張ってるもんね・・・
よかったぁ〜、私ホント、心配してたんだよ?」
ごめんなさい。
私は心の中で、そう呟いた。
邪推だったのだ。
機械には、こんな『心配』なんて考え方はありえない。
自分の目指す目的に支障となるか、そして機体にとって害悪となるか。
判断基準はすべてそこにあるから。
心配してもらえる、というのは心底ありがたいけれど、
私には、それをすることは出来ない。
麻琴ちゃんがレコーディングに向かう後姿を見ながら、私はまだ考えていた。
98 :
書いた人:03/01/13 15:40 ID:JFJidgAi
「そうか・・・・・・確かにお前には、そんな思考回路は存在しないからな」
夜、私は保田さんを前に今日のことを報告していた。
「まぁ、人間だって、心から相手のことを思いやってる奴なんていないよ。
好きな相手に優しいのだって、自分にいい結果が返ってくるからかも知れないし」
「随分、殺伐としてますね・・・」
人間はそう考えることができるのに、なんでそうしないんだろう?
まぁ、そんな行動をしない第一候補が、目の前にいるんですけど。
「何だ?紺野」
あぶない、あぶない。ばれるところでした。
「それで・・・お願いがあるんですが・・・」
お夜食をつついている保田さんに、おそるおそる切り出してみる。
「何だ?まさか、そういう思考回路をつけろ、とか言うんじゃないだろうな?」
鋭い・・・しかしこの表情、どうみても拒絶的。
99 :
書いた人:03/01/13 15:41 ID:JFJidgAi
「はい・・・」
「断る」
私の返事が終わらないうちに、保田さんは拒否。
けち。
「なんでダメなんですか?」
無駄とは思っていても、反論。
「お前にとって、負担が大きすぎる」
思いの外、理由はまっとうなものだった。
「機械っていうのはさ、人間と同じである必要なんか無い。
人間にはできないようなことをやるために、必須でない要素は邪魔だ」
言ってることはよく分かる。
だが、私はその言葉に潜む矛盾にとっくに気付いていた。
保田さんだって、恐らく気付いている。
それに知らん振りしているだけ・・・・・・なんだか嫌な気分になってきて・・・
「じゃあ、私の目的ってなんなんですか?
私はみんなよりも歌ったり、踊ったり出来ません。
私を娘。にいれておく意味、って何なんですか?
もしかしたら、私が入ることで、娘。に入りたかった子が夢を諦めたら?
そこまでして、私が娘。にいる意味って何なんですか?」
言い終わって、息をつく。
そして気付いた。
私、なんてことしてしまったんだろう・・・
100 :
書いた人:03/01/13 15:43 ID:JFJidgAi
保田さんは箸を片手に、ぽかーんと私を見ている。
当然だ。自分の造った機械が、突然こんなにまくし立てたんだから。
フリーズ・・・・・・かな?
それよりも早く、謝らなくっちゃ・・・
と思ったら、私よりも先に、保田さんが口を開いた。
「そうか・・・・・・お前もそこまで考えられるようになってたのか・・・
ダーヤスさんは、もしかしたら素晴らしい発明をしていたのかもしれないな・・・」
へ?
意外な反応に、思わず間抜けな返事が口をついて出ていた。
てっきり激怒されると思ってたのに。
101 :
書いた人:03/01/13 15:45 ID:JFJidgAi
「紺野、お前を造った理由は・・・・・・実は、少し入り組んでてさ。
だから私の中で整理がつくまで、もう少し、待ってくれないか?
今のお前なら、もう少しで話せると思う。
時が来れば必ず話す。だから・・・」
止めて下さい、そんな表情。
保田さんは沈痛な、今にも泣き出しそうな顔をしている。
フォローしなくっちゃ・・・
「あの・・・分かりました・・・だから、そんなお顔は似合いませんよ・・・
って、別に不細工って意味じゃないですけどね。
私の知ってる保田さんは、自信過剰で、躁鬱病で言えば年がら年中躁で、
天上天下唯我独尊、って感じで、『人がゴミのようだ』とかが座右の銘っぽくて、
私が神よ!!って、今にも言い出しそうで・・・」
言ってる途中で気付いた。
しまった・・・ちっともフォローになって無いじゃん。
こんな時保田さんはいつもだったら、アイアンクローをきめてきたりするんですが。
「うん、ありがとな・・・」
私の頭を撫でてきた。
意外な反応・・・でも、私はその感触が気持ちよくて、
「はい」
ずっと保田さんの手に私自身を委ねていた。
102 :
書いた人:03/01/13 15:49 ID:JFJidgAi
「でも・・・いいのか?」
「はい、よろしくお願いします」
パソコンのディスプレイから振り返った保田さんに、私は頷いて見せた。
「今の紺野は、自分にとって、状況が利益か害悪か、が全ての基準だ。
その過程で、相手方の表情を見とって、表情から相手の感情状態を判断するのは、今もしてる。
だがその感情状態を、お前の感情に反映させたら?
恐らく、反映のさせ方が大きければ、相手に対するシンパシーが生まれるだろう」
「はい・・・・・・理解しました」
「はっきり言って、きついと思うぞ。相手の気持ちがダイレクトに伝わるなんて」
「いえ、私はそう考えてみたいんです・・・」
返事をしながら、今日私を必死に心配してくれていた、
麻琴ちゃんの表情がリプレイされた。
うん、私は麻琴ちゃんの気持ちを知りたい。
そして、彼女にも同じように、接してあげたい・・・
「だがな・・・人間の場合もそうなんだが、
自分が経験してないことにはシンパシーを得にくいんだ。
歌って踊れるダーヤスさんには、歌えないし踊れないお前の気持ちはよく分からん」
それでこそいつもの保田さんです・・・と思いつつ、私は大きく頷く。
「それじゃ・・・やりますか・・・今夜は徹夜だな、こりゃ」
呟きつつ、保田さんは私の電源に手をやった。
103 :
書いた人:03/01/13 15:51 ID:JFJidgAi
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver12.34電源を切ります。
必要改良事項の確認・・・
・ 導入される新回路のために、全てのシステムは対応準備。
・ つんくさんのために、いい耳鼻科を調査。
・ 『私の製造目的』については、保留。いずれ明かされるので、
それまでは余計に口に出さないよう、思考メモリーに付加。
私を構成するすべての回路、部品の皆さん、今日も一日お疲れさま。
おやすみなさい。
104 :
書いた人:03/01/13 15:53 ID:JFJidgAi
例によって例の如く、晒してしまいました。
ご感想ご批判等、よろしく。
保田が製作者で紺野がロボットっていう設定がいいね。
ところどころにある小ネタも好き。
106 :
書いた人:03/01/19 15:18 ID:+CSQOW0w
第4章 『好き』
107 :
書いた人:03/01/19 15:20 ID:+CSQOW0w
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver13.00電源が入りました。
私を構成するすべての回路、部品の皆さんの状態は完璧です。
新しい回路の方、これからよろしくお願いしますね。
それでは皆さん、今日も一日、頑張っていきましょう!!
108 :
書いた人:03/01/19 15:20 ID:+CSQOW0w
世界が、変わった。
まるで今までの自分は、白黒映画の中にいたみたい。
それが今では、フルカラーになって・・・
『シンパシー』を得た私にとって、この世界は驚きの連続だった。
109 :
書いた人:03/01/19 15:23 ID:+CSQOW0w
「紺野ちゃん。英語の宿題、教えてくれますか?」
何が楽しいのか分からないけど、辻さんが笑顔を浮かべながら聞いてくる。
今までの私だったら、
『現在の状況は害なし』とか、
『辻さんったら、ホントは困惑する状況下なのに・・・』などと思っていたのだろう。
でも、私は
「いいですよ!!」
と、返事をした。
別に自分にとって害がないから、OKしたのではない。
辻さんの笑顔が、ホントに楽しそうで。
彼女にとって、宿題が楽しいわけではないけれど。
ただ私や他のメンバー達と、一緒にいられて、話せることをこの人は喜んでいるんだ。
そう考えると、私まで嬉しくなってくる。
だからこそ、私は辻さんの申し出をOKしたのだ。
110 :
書いた人:03/01/19 15:24 ID:+CSQOW0w
辻さんが英語の問題集を、私の目の前にバサッと広げる。
ふぅ・・・空欄だらけじゃないですか。
保田さんがプログラミングしただけのことはあって、私の頭脳はそれなりの水準を持っている。
まあ、明らかに『要らない知識』の方が多かったりもしますが。
例えば・・・
ドラゴンボールの詳細なストーリー・・・
アニメ好きのキャラクターには必須ですね。
ピラフ様の手下の忍犬の名前は、漫画とアニメでは違うんですよ。
シュウとソバですけど・・・ここまで来ると、細かすぎません・・・?
111 :
書いた人:03/01/19 15:25 ID:+CSQOW0w
漢字検定二級並みの国語力・・・
秀才キャラのはずですから、こういうところの知識は必要かもしれません。
確かに、『五月蝿い』とかを読めるのは良いんですけど、
『汗牛充棟』なんて四字熟語使いませんよ、実生活で。
(意味は、お部屋の中に本がいっぱい有る、って意味ですよ)
マリモの出来かた・・・
確かに北海道出身、って設定ですけど、これって必要なんですかね?
あ、ちなみに売り物のマリモは、手で握って丸くしてるらしいですよ。
天然物は、湖の中で浮いたり沈んだりしながら、大きくなります。
・・・まあ、挙げれば切りが無いんですけど。
とりあえず、中学三年生の英語だったら、対応可能です。
112 :
書いた人:03/01/19 15:27 ID:+CSQOW0w
さて、第一問は・・・?
これなら答えられそうですね・・・
「・・・いいですか?stopの後に動詞を置く場合は、
toをつけるか、ingをつけなくちゃいけないんです・・・」
分かりやすいように、ペンで問題の括弧を示しながら、教えます。
「へー」
気の無い返事・・・分かってるんですか?
あら?傍らに置いたお菓子に手を伸ばしてますね・・・?
そっちに夢中じゃ・・・ないでしょうね?
「それで、『〜のために止まった』と『〜をしながら止まった』で、使い分けるんです」
「うー・・・(もぐもぐ)」
「えっと・・・辻さん、聞いてます?」
「(もぐもぐ)・・・うん」
「それじゃあ、stopの後につけるには、動詞はどう変えれば良いんですか?」
「・・・・・・」
「ホントに聞いてました?・・・・・・って、あわわ・・・涙ぐまないでくださいよ。
こっちまで悲しくなりますから。
じゃあ、もう一回最初から言いますね・・・」
宿題は1時間半ほど掛かってようやく終わりました。
ほとんど私がやったんですけど・・・
113 :
書いた人:03/01/19 15:29 ID:+CSQOW0w
やっと宿題が終わって、ほっと一息。
ふぅ・・・息をついて、私は洋式便座に腰をおろす。
前にも申し上げたように、私は『しない』のですけれど、
一応カムフラージュのために、一日に何回かはトイレに出向くことにしている。
「・・・紺野」
隣の個室から聞こえてきたのは、我がマスター、保田さんの声だった。
「はい・・・・・・誰も・・・いませんよね?」
「おう、大丈夫だ。私がこのトイレに入ってきたときには誰もいなかったからな」
私が機械である、というのは極秘事項。
「シンパシー・・・使えそうか?」
保田さんは恐らく私の様子が気になって、二人きりになるチャンスを伺っていたのだろう。
昨日つけたばかりの回路の調子が気になる・・・
私以上に完璧主義のこの人なら、そんな気がする。
114 :
書いた人:03/01/19 15:30 ID:+CSQOW0w
「はい、保田さんがお造りになっただけのことはあります・・・
システムは完璧といって申し分ないかと・・・」
お世辞でもなんでもない、これは本音。
「いや、そうじゃない。そんなことは、私が造った以上当然だ。
聞きたいのは、お前にとって負担となっていないか?ってことだ」
保田さんの声が、トイレのタイルにかすかに反響して聞こえる。
顔を見ないでの会話、というのは難しい。
「さっきお前、辻に宿題教えてただろ?あれだって、結構大変じゃなかったか?」
「はい・・・確かに、辻さんが私の言ったことをどうとらえるか。
これにかなり注意しながら・・・でした」
保田さんが、大きく頷いているように思えた。
「うん・・・最初のうちは大変かもしれない・・・もしなんなら、その回路、外してもいいんだぜ?」
「いえ、このままでいいです」
私はきっぱりと断った。
トイレの中で、ファンの音だけが静かに鳴っていた。
115 :
書いた人:03/01/19 15:32 ID:+CSQOW0w
・・・何故、と保田さんは聞いてこない。
そのことが何だか怖かった。
「あの・・・・・・確かに今の私にとっては、結構負担になっているかもしれません。
でもさっき辻さんがすごく笑ってらっしゃるのを見て、私、本当に楽しかったんです。
昨日まではこんな気持ち、感じたことありません。
ですから・・・」
上手く現在の感情状態を整理できなくて、私は言葉に詰まった。
だが保田さんは思いの外、優しい声で言ってくれた。
「そうか・・・なら、成功だな。
だがな、いつだったか・・・ファジーでいろ、って言っただろ?
今こそ適当にやっていいんだぜ。
接している全ての人間の感情を考えて、
みんなにとって良くなるような行動なんて、しなくていい。
そもそも全方面に有益となる行動なんて、この世に無いんだからさ」
「・・・はい・・・何だか、この間よりも、分かった気がします」
今なら少しだけど、適当であることっていうことの重要さが分かる。
保田さんが壁の向こうで、満足げにしているのが分かって嬉しかった。
116 :
書いた人:03/01/19 15:33 ID:+CSQOW0w
と、誰かがトイレに入ってきた。
「♪お買い物、行こう、原宿に」
・・・石川さんか。
能天気な歌声が、トイレの中で反響する。
こ、これは・・・石川さんがするかしないか確かめる、絶好のチャンス!!
私は右の拳を、ぐっと握り締めた。
そう思いきや、隣の保田さんの個室から水を流す音が聞こえて、
「紺野・・・出るぞ」
小さな声で告げられた。
一緒に出てきた保田さんと私に、石川さんは満面の笑顔。
「あら、保田さんに紺野・・・もしかして、連れトイレですか?」
「へへへ、そうです」
我ながらおかしな愛想笑いを残して、私と保田さんはトイレを出た。
後ろでは、
「いいなぁ〜」
と言う、石川さんの声・・・・・・いいのか?
117 :
書いた人:03/01/19 15:34 ID:+CSQOW0w
「うーん、もう少しだったのに・・・」
「何がだ?」
楽屋までの帰りの廊下、保田さんと並んで歩く。
「いえ、折角石川さんがするかしないか、確かめられると思ったんですけど・・・」
「お前・・・何考えてるんだ?」
ぷっ・・・と吹き出しながら、保田さんは目を三日月のようにして笑う。
「し・・・失礼な。石川さんは『しない』なんて情報があるから、
興味がでちゃったんです・・・そもそも、保田さんのせいなのに・・・」
一応廊下だから、注意して小声で喋る。
保田さんも理解できたみたい。
「あ・・・アァ・・・そうか・・・すまんな。そんなことも入れた気がするなぁ」
まるで他人事みたいに切り返す。
ぶぅ。
ちょっとむくれた。
118 :
書いた人:03/01/19 15:36 ID:+CSQOW0w
「すまん・・・それじゃ、ホントのこと教えてやる・・・」
むくれた私へのお詫びなのだろう。随分あっさり教えてくれる。
「するよ」
「やっぱり〜」
まあ、当然といえば当然の結果だなぁ、と思っていたら。
「だがな、出てくるのは・・・・・・」
「出てくるのは?」
自然に二人の声が潜まる。
私は保田さんの瞳を見つめた。
「・・・メルヘン」
「はぁ?」
「よし!!楽屋戻って、さっさと収録の準備するぞ!」
「や、保田さん?」
意味が分かりません。
絶対この人・・・・・・私をからかってる。
私は小走りに廊下をかける保田さんの背中を、必死になって追った。
119 :
書いた人:03/01/19 15:36 ID:+CSQOW0w
保田さんが入った楽屋に、私も飛び込む。
と、視界に飛び込んできたのは、麻琴ちゃんの沈痛な表情だった。
楽屋の喧騒の中にいて、彼女の周りの空気だけ重い。
「ま・・・まこっちゃ〜ん・・・」
一応手を振りながら、努めて明るく振舞ってみる。
「あ・・・・・・あさ美ちゃん」
いや、私の顔を見るなり泣きそうになられても・・・
「どうしたの?」
・・・って、聞かなければいけないでしょう、こういう場合。
120 :
書いた人:03/01/19 15:38 ID:+CSQOW0w
「私・・・娘。でやっていけるのかなぁ?」
麻琴ちゃんの悩みの中心はそこだった。
どうやら昨日のレコーディングで、つんくさんにこっぴどく怒られたらしい。
まったく、私にはあんな適当だったくせに。
コルチ器に支障があるとしか思えない。
「でもさぁ・・・麻琴ちゃん、私なんかよりも、絶対上手く歌えてると思うよ」
「うん・・・」
あまりフォローになっていないらしかった。
そりゃあ、比較対象が私だもんなぁ・・・誉められているようには思えないだろう。
麻琴ちゃんは何で悲しい?
そう、自分の居場所が見つけられないから。
だったら、私はなんて励ませばいいのかな・・・・・・?
うん、これだ・・・
121 :
書いた人:03/01/19 15:39 ID:+CSQOW0w
私は麻琴ちゃんに向き直ると、じっと見つめた。
「麻琴ちゃん・・・あのね、つんくさんにそれだけ言われた、ってことは、
それだけまこっちゃんが期待されてる、ってことだと思うの」
「・・・期待・・・?」
「そう。だから、そんなに落ち込む必要は無いって・・・」
多少、麻琴ちゃんの顔色が良くなってきた。
「でも、私、その期待に全然答えられてないよ・・・」
うーむ、ネガティブシンキング。
こういうときは・・・いつも保田さんに言われてる、あれですね。
「確かに、今は・・・ね。でも、誰だって最初っから、飛び抜けて何もかも出来るわけじゃないよ。
つんくさんやメンバーだって、それはわかってると思うよ。
だから、麻琴ちゃんは麻琴ちゃんらしく、少しずつ、やっていったらいいんじゃない?」
「少しずつ・・・?」
「うん、だから麻琴ちゃんなりに、頑張っていけばいいんだよ!」
彼女の顔が、明るくなったような気がした。
まあ、ほとんど私が日頃保田さんに言われてることの受け売りだけど。
それでも、麻琴ちゃんに役に立てたなら、嬉しい。
ふと後ろを見ると、満足そうにこちらを見る、保田さんの姿があった。
122 :
書いた人:03/01/19 15:41 ID:+CSQOW0w
「そうか・・・なら、概ね成功、と見ていいな・・・」
夜、保田さんを前に、今日の報告をしていた。
何だか今日は、色々なことがありすぎて、ちょっとテンションが高いのが自分でも分かる。
「はい、いつもだったら考えないでいたようなことも感じられて・・・
私、辻さんや、まこっちゃんや、保田さんも・・・みんな、好きなんだな、って思いました」
相手の気持ちが分かるってことが、こんなにも嬉しいこととは思わなかった。
「うん・・・そうか・・・だがな、みんなが紺野に好意的に接しているから、まだいいんだ。
これが怒られているような時だと、その回路は結構辛いぞ」
「そうですね・・・・・・でも、頑張っていけそうです!」
私を見て、保田さんは何だか嬉しそうな、ちょっと寂しそうな、複雑な感じだった。
ごそごそと、一枚のディスクを取り出す。
123 :
書いた人:03/01/19 15:42 ID:+CSQOW0w
「紺野・・・・・・お前を作った目的・・・今なら、明かしても大丈夫だろう。
私の日記だけど、一応目的とかは詳しく書いてあるから。
電源落としてるときにでも、読み込んでおけ」
保田さんはそれだけ言うと、私を充電器に導いた。
耳元で囁く。
「・・・大丈夫、多分今のお前だったら、これを知っても・・・」
「え?」
と聞き返す間もなく、私の胸に、電源が落ちる感覚が走った。
124 :
書いた人:03/01/19 15:43 ID:+CSQOW0w
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver13.00電源を切ります。
必要改良事項の確認・・・
・ 電源停止後、ディスク読み取り作業が開始。スタンバイ。
・・・おや、これだけとは珍しいですね。
私を構成するすべての回路、部品の皆さん、今日も一日お疲れさま。
おやすみなさい。
125 :
書いた人:03/01/19 15:46 ID:+CSQOW0w
>>105 感謝です。
ご批判、ご感想等、よろしくお願いします。
新メンが決まっても、リアルタイムでは分からない・・・地方は鬱。
126 :
:03/01/23 20:34 ID:u+LiCs70
がんばっておくんなさい。
128 :
書いた人:03/01/26 17:28 ID:cQTsUOB/
>>127 ありがとうございます。あなたに幸のあらんことを・・・
一体どれくらいの人が見ていらっしゃるのか、
甚だ疑問ですが、とりあえず完結まではきっちり書くつもりです。
読んでますよ〜。
紺野誕生の秘密、すごく気になります。
お気に入りに追加しますた
130 :
書いた人:03/01/28 02:54 ID:LisNJB5x
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver13.00
・・・・・・外部CPUと接続確認。
読み取りに入ります。
131 :
書いた人:03/01/28 02:55 ID:LisNJB5x
第5章 「目的」
132 :
書いた人:03/01/28 02:56 ID:LisNJB5x
・・・本来ならば電源停止時は、意識段階は下げておくものですが・・・
今回ばかりは、読み込みに付き合せてもらいましょう。
ファイルサイズは・・・小さいですね。
これなら、瞬時に読み込めそうです。
でも・・・
あの保田さんの口ぶり。
じっくりと、読み砕いた方が良さそうです。
133 :
書いた人:03/01/28 02:57 ID:LisNJB5x
『全く、我ながら溢れんばかりの才能に、脱帽だ。
3年の歳月と11体の機体の上に、遂にこれが出来上がった。
私を『ジーク=ダーヤス』の掛け声の大合唱が包む。
そんなに大声じゃ、みんな、私の鼓膜が破けちゃう。
いや、実際には聞こえないし、破けないけどさ』
これは・・・私の起動日の日記ですね。
しかしサイケな文体・・・まあ、予測はしてましたが。
この辺は読み飛ばしておきましょう。
134 :
書いた人:03/01/28 02:58 ID:LisNJB5x
『思えば、こいつを造り上げるのに、どれほどの犠牲を払っただろう。
表ではマックの店員、裏では機械の製造という二重生活。
やっとかなった夢も、うたばんでは後部座席に追いやられ、
初期メンバーの5人(特に鼻ピアス)との度重なる衝突・・・』
そうかぁ昔は保田さん、うたばんでも目立たなかった、って言ってたなぁ。
でもそれって、私のせい?
135 :
書いた人:03/01/28 02:59 ID:LisNJB5x
『しかしこれで、私の知的好奇心は大いに満たされた。
老後も安心、ってやつだ』
136 :
書いた人:03/01/28 03:00 ID:LisNJB5x
ちょ、ちょっと待ってください!
するとなんですか?
私は保田さんの老後の安心のために造られてたんですか?
もしくはあのマッドサイエンティストの、欲求解消のため?
まあ私はプロトタイプみたいなものですから、
私を公表すれば、巨額のお金が保田さんに転がり込むとは思います。
普通はそうしますしね。
当たり前と言えば、当たり前。
でもちょっと寂しいのも事実。
まあ・・・この先の日記も・・・読んでおきますか、一応。
とりあえず、ロボット三原則の適用を、保田さんに限ってまた水準低下、と。
137 :
書いた人:03/01/28 03:01 ID:LisNJB5x
これは・・・起動から半年後の日記ですね・・・
『後藤が入ってからというもの、娘。は更に忙しい。
プッチモニが、ダーヤスさん人気が炸裂して、大ブレイク。
1月の新曲も売れ行きは好調だ。
だが、新メンバーがまた入るらしい。
後藤に続いて、さらなる新星が入ってくるのだろうか?
あやっぺがいない今、ちゃんと新人に脅しをつけるようなメンバーはいない。
まあどんな新人であろうとも、
このダーヤスさん人気には頭を垂れる外無いのだが』
138 :
書いた人:03/01/28 03:02 ID:LisNJB5x
えっと、これは・・・鉄格子付きの病院に入院してる患者の手記ですかね?
ファイル名『ダーヤスさんの日記(丸秘)』・・・違いますよね。
まあ、脳内独裁者みたいなものですね、これは。
外界の認知能力が欠如してますよ・・・
そして、これは・・・その時期の私の様子ですか。
139 :
書いた人:03/01/28 03:03 ID:LisNJB5x
『ys-kei 12は、今のところ順調だ。
とりあえず今日は、美味いコーヒーの煎れ方をマスターした。
細かい作業についても、さほど支障はない。
学習能力は非常に良好。どうやらこの私に似たようだ。
しかし外見が、まだ骨組みというのは気の毒だ。
個人的には金髪のグラマーなお姉さんにでもしたいところだが、
機体の安定性からぽっちゃりさんになってしまう可能性が高い。
まあ・・・いいか・・・』
140 :
書いた人:03/01/28 03:05 ID:LisNJB5x
あぶな・・・もう少しで偽中澤さんになっちゃうところだったんですか・・・
まあ個人的には外見は、この程度で充分だと思っていますから。
機械はあまり、見た目にはこだわりませんからね。
私の行動メモリーは、どうやら最初の10ヶ月程度で、集中的に作られている。
そうかぁ・・・だから、最初の1年間の記憶って、ほとんど行動記憶なんだぁ。
次に注目できそうなのは・・・・・・これかな?
起動から10ヵ月後。
この頃までに、大体動作テストは終了しているみたいですね。
141 :
書いた人:03/01/28 03:06 ID:LisNJB5x
『新メンバー4人が入り、娘。は11人になった。
裕ちゃんもなかなか大変そうだ。
しかし・・・何だか歌やダンスよりも、キャラで選んでいるような気がする。
まあ、私の思い過ごしだろう。
かねてから考えていたのだが・・・機体の名前について、今日決めてみた。
紺野あさ美、というのはどうだろう。
何だか平仮名まじりで、演歌歌手みたいな気もするが、
姓名判断ではなかなかの結果だったし。
これから遂に、思考体系を組み立てていかなければならない。
教育する過程で、やはり機体コードが呼び名では、愛情が湧かない。
少しは愛情をもって接しないと、まともに育ってくれないような気がする。
そしてひいては、『尊敬する人・・・保田さん』と言わせてやる』
142 :
書いた人:03/01/28 03:07 ID:LisNJB5x
製品化に向けて、着々と準備が進んでいるのが手にとるように分かる。
でも・・・・・・この寂しい感じはなんでしょう?
私が現状に対して、名残惜しいものを感じているから?
今の自分の状態を、手放し難いものとして認知しているから?
いえ、そんなこと、機械に・・・ありえません。
機械は機械だから。
与えられた使命を果たすまでの話。
じゃあ、この寂しさの根拠は・・・
っと、次は起動から1年6ヶ月。
143 :
書いた人:03/01/28 03:09 ID:LisNJB5x
『紺野は今日も失敗しながら、色々なことを学んでいる。
最初のうちは寝るヒマも無いほど苦労したが、
どうやら一つの思考体系の組み立てが成功したらしい』
覚えてます・・・この時期から、ようやく保田さんと満足にお話できたんです。
メモリーのかなり深い所で、今もこの時期の記憶は、眩しく輝いている。
144 :
書いた人:03/01/28 03:10 ID:LisNJB5x
『子供ができた人、というのはこんな感じなのだろうか?
疲れて、いらいらすることも多いけれど、
その倍は楽しいことや、新たな発見がある。
こんどあやっぺにでも、さりげなく聞いてみるとするか・・・』
なんか保田さんらしくないなぁ・・・・・・
保田さんなら、
『流石は私の発明。日々改良が楽しくてたまらないわ!!』
って感じなのに・・・
145 :
書いた人:03/01/28 03:11 ID:LisNJB5x
何か日記の中の保田さんはおかしい。
普通の人なら、これが平常なんでしょうけど・・・
さっき感じた寂しさの原因は、
保田さんが感じていらっしゃった、愛しさが伝わったからですね・・・
どんどん育っていく私に、いずれ離れる時が来ることを感じたのでしょう。
次は、お仕事の面ですか?
146 :
書いた人:03/01/28 03:12 ID:LisNJB5x
『しかし・・・事務所は何を考えているのだろうか?
ミニモニ新曲発売・・・・・・っていうのはいいんだけど。
どうもラブマ以降、路線の変化が急激だ。
娘。はどの世代向けなんだ?
コンサートに子供が増えてきたのも、よく感じる所。
どうも、嫌な予感がする』
おや?それが普通だと思ってたんですけど。
ファン層の変化・・・ってやつですかね?
そして・・・次が・・・・・・・そういうことですか・・・
147 :
書いた人:03/01/28 03:17 ID:LisNJB5x
『私は腹を決めた。
紺野を・・・・・・モーニング娘。に入れて見せる。
5期の増員は、中学生しか採用しないらしい。
まだオーディションの募集を始めたばかりだ。
高校生や、それ以上の人からも応募がきているというのに・・・
私が感じていた『子供路線』が、どうも現実味を帯びているようだ。
全て夢を見る人が、その夢をかなえる場所こそ、娘。ではなかったか。
それを・・・何故限定するのだろう。
紺野をなるべく、大人受けするような感じにして入れれば、
路線にも、変化がおきるのではないか・・・』
148 :
書いた人:03/01/28 03:19 ID:LisNJB5x
これが・・・私の当初の目的だったんですか。
なるほど、そう考えれば・・・分かる気もします。
年齢層を、上向きにすることを目指していたんですね。
残念ですが・・・失敗ですよ。
私がどうであろうと、曲調や売り出し方が、全く違いますもん。
まあ、保田さんのことですから。
長期的展望での影響を考えてのことでしょう。
私ひとりで劇的な変化が起こせるなんて、あの人が思うわけありませんからね。
そして・・・ああ、これですか。忘れもしませんよ。
149 :
書いた人:03/01/28 03:20 ID:LisNJB5x
『いろいろと根回しをした結果、紺野を娘。に加入させることに成功した。
だが人目に晒さなければならないから、
ずっと機械であることがばれないように気を遣ってきたが・・・
その一環として、今日紺野に大怪我をさせてみた。
綿密な計画の下、勿論紺野の反応が真実味を帯びるように、
紺野自身にも知らせずに。
当初の目的は果たせたのだが・・・どうやら、失敗だった。
紺野の落ち込み方がひどい。
『頑張る姿』を年代の高い世代に見せるべく、
歌や踊りをかなり低いレベルに設定していたのだが。
それとあいまって、自分に対する劣等感がついてしまったようだ。
段々とスペックを上げてやることで、劣等感は排除できるとは思うが・・・
困ったな・・・いつ、謝ろう。』
150 :
書いた人:03/01/28 03:21 ID:LisNJB5x
保田さん・・・ホントはずっと、気にしてらしたんですね・・・
私に言われて、初めて気づいたようなフリして・・・
大丈夫です、紺野は・・・劣等感なんて、もう感じませんから。
昨日麻琴ちゃんにも言いました。
『自分らしくしていればいい』って。
私も、私自身がこのままであることを望みます。
151 :
書いた人:03/01/28 03:23 ID:LisNJB5x
最後にこれは・・・昨日の日記?
『私はなんという間違いをしていたのだろう。
間違いに気づいた時には、既にそれを修復するのは不可能であることもある。
紺野に言われて初めて気付いた。
『私が入ることによって、誰か他の子が、娘。に入る夢を諦めたら?』
そんなこと、忘れていた。
夢を実現できる場・・・それがモーニング娘。だ。
でも私はどうやら、慢心していた。
それは中学生だって同じこと。
加入当初の、自分たちの歌い方があって、自分たちに合った歌があって・・・
私は今歌っているような、賑やかで、年下の子達にうけるような歌よりは、
昔歌っていたような曲の方が、好きではある。
でもそれを、メンバーの構成に問うのは間違いだった。
問題はそんなところにはない。
どこか、って上手く示すことはできないが、
少なくとも娘。に入ることを夢見た女の子に、負わせるものではない』
152 :
書いた人:03/01/28 03:25 ID:LisNJB5x
保田さん・・・分かってくださいましたか。
でも・・・それじゃ、私って・・・?
一体何のために、存在しているの?
もう路線を元に戻す必要なんてないと言うのに。
そうマスターが感じていると言うのに。
・・・・・・・・・続きがありますね・・・
153 :
書いた人:03/01/28 03:26 ID:LisNJB5x
『しかし・・・紺野はどうなるのだろう?
存在意義を失っても、紺野は起動しておけるのだろうか。
唯一の可能性は、紺野自身が娘。にいることに喜びを感じてくれることだ。
そうであれば、紺野が起動状態を保っておくことに耐えられるだろう。
シンパシー・・・・・・あれが、どの程度の威力を発揮してくれるか・・・』
154 :
書いた人:03/01/28 03:26 ID:LisNJB5x
・・・・・紺野あさ美 kei-ys13.00
読み込みを全て完了しました。
ありがとう・・・ご苦労様。
読み込み装置にねぎらいをかけて、私は読み込みを停止する。
155 :
書いた人:03/01/28 03:27 ID:LisNJB5x
なんだろう・・・この切なさは。
自分が要らない、といわれた感触。
あれ・・・開き忘れたファイルかな?
一つだけ、残っている。
開きますか・・・一応。
156 :
書いた人:03/01/28 03:28 ID:LisNJB5x
『紺野・・・多分私は、お前がこれを読んだとしても、
お前が帰ってくれると確信している。
だからこそ、私もこれを読ませたんだから。
・・・と言いたいところだが、はっきり言って・・・ごめん。
私はメカニックとして、失格だ。
本来の用法から逸れた方向に使って、
そして機械の存在価値を見失わせたからな。
157 :
書いた人:03/01/28 03:28 ID:LisNJB5x
でもな・・・お前が今日、娘。のことが好きだって言ってただろう?
あれを聞いて、どうにかできるんじゃないか?って、思ったんだ。
お前が娘。を好きだ、って感じたのは、
お前のことをみんなが好いているからにほかならない。
紺野は、娘。に必要なんだよ・・・・・・
いや、私自身にとって・・・必要なんだ。
私のエゴだと思ってくれてもいい。
私を蔑んでくれてもいい。
だけど、紺野を必要としている人がいる、ってこと・・・忘れないで。
158 :
書いた人:03/01/28 03:29 ID:LisNJB5x
いくらでも考えていいから。
だから、もし、動けるんだったら・・・・・・電源を入れて。
内部で電源を入れられるように、設定しておくから。
私のほうから無理やりつけたりはしない。
決断できたら・・・帰ってきて欲しい。』
159 :
書いた人:03/01/28 03:30 ID:LisNJB5x
ファイルを閉じる。
メモリーに潜む寂寥感。
でも、さっきのような絶望とは違う。
一筋の光が見えている。
でもまだ考えに整理が必要みたい。
・・・・・・考えなくっちゃ。
私は私の存在を、許せるか。
あくまでも機械として・・・私はこの世界に、存在していられるのか。
160 :
書いた人:03/01/28 03:33 ID:LisNJB5x
とりあえず今回はここまでです。
少々今までと毛色が違いますが、どうしてもこの形式にしたかったので。
>>129 ありがとうございます。励みになります。
そんな理由かい!!って突っ込みは無しで。
今日の出来事で自棄になりビール飲みながら読みました
が、心が洗われました・゜・(ノД`)・゜・
次回以降も期待してみてます
162 :
山崎渉:03/01/28 14:02 ID:3mTZ7UF2
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
たまらなく良いよ。続きたのしみにしてます。
164 :
書いた人:03/01/29 22:57 ID:qmFZIVS/
第6章 「光は闇でこそ輝く」
165 :
書いた人:03/01/29 22:59 ID:qmFZIVS/
私は・・・この世界に存在している必要性があるのだろうか?
何故保田さんは、この事実を隠しておいてくれなかったのだろうか?
電源が初めて入ったあの日から、私はあらゆることに興味を示し、
あらゆることを知りたいと願った。
でも・・・・・・今夜初めて、
知りたくないことがこの世界にはあるのだと、分かった。
本音を言えばこのまま永久に、主電源を切っておいて欲しい。
製作者にさえ否定された、私の存在価値。
このまま闇の中に沈んでいれば、
保田さんも私の電源を入れることはないだろう。
166 :
書いた人:03/01/29 23:00 ID:qmFZIVS/
機械は人の役に立ってこそ、機械だから。
保田さんは気付いたのだ。
現状に対して、不満はいくつもあるのだけれど。
少なくともその不満は他人の夢を妨害してまで、
解消するものではないのだ、と。
・・・・・・気付いてしまった以上、その手段であった私は・・・
存在が自己目的化してしまっては、只のガラクタだ。
167 :
書いた人:03/01/29 23:01 ID:qmFZIVS/
確かに・・・私は、娘。のみんなが好きだし、娘。が好きだ。
でも機械の欲求だけで、それだけの理由で、動くことは許されない。
保田さんが許しても、私自身が許せない。
私は機械だ。
人間でありたい、と思ったことも無い。
168 :
書いた人:03/01/29 23:03 ID:qmFZIVS/
いつか保田さんが話してくれた。
欧米人の作るロボットの話には、ロボットが人間になりたいと願う設定が多い。
ピノキオ、とかいう寓話がそうだった。
欧米人には機械と人間は対立するもの、という前提があるらしい。
だからこそ、機械は人間になって初めて世界と融和するのだ。
169 :
書いた人:03/01/29 23:04 ID:qmFZIVS/
私からすれば、そんなの自己否定。
いくら保田さんや他の方々が私を愛してくれていても、
人間としてこの世界で起動するなんてこと・・・耐えられない。
私は・・・どうすればいい?
頼れるのは、この3年間のメモリーくらい。
私が機械として存在できる、可能性を探さなければ・・・
起動の日から積み上げてきた、膨大なメモリーに目を向ける。
170 :
書いた人:03/01/29 23:05 ID:qmFZIVS/
メモリーNo.102333701・・・・・・開きます。
起動から10ヶ月と9日後の記憶ですね。
171 :
書いた人:03/01/29 23:06 ID:qmFZIVS/
「いいか・・・お前の名前は、紺野あさ美、だ」
切々と語りかけるのは・・・保田さんですね。
「コンノ・・・アサミ・・・」
うわぁ・・・私、ひどいなぁ。
聴覚記憶からは、私のおぼつかない復唱が聞こえる。
機械丸出しだ。
172 :
書いた人:03/01/29 23:07 ID:qmFZIVS/
「そう!よくできたぞ!紺野、あさ美。もう一度言ってみて!」
保田さんが大げさに喜んでいる。
この頃の私にはシンパシーが無いから、そんなに喜んでも伝わらないのに。
「コンノ、アサミ」
「そう、上手いぞ!もう一回!紺野あさ美!」
「紺野・・・あさ美」
「それだ!いいぞ!もう一度!」
「紺野、あさ美」
「よーし!!よくできたなぁ!
会話はどんどん覚えていけばいいから。
今はひたすら、色んなことを聞いていくんだぞ!」
弾けるような笑顔で、保田さんは私を抱きしめていた。
最初は、こんなに苦労してたんですね。
173 :
書いた人:03/01/29 23:08 ID:qmFZIVS/
メモリーNo.262398301・・・・・・開きます。
これは・・・あの日。忘れもしません。
起動から1年7ヶ月と2日。
174 :
書いた人:03/01/29 23:10 ID:qmFZIVS/
保田さんがお仕事の最中、私はずっと退屈で。
テレビを見ながら、ひたすら会話の仕方を考えていたっけ。
「ただいま〜」
「あっ・・・お帰りなさい」
玄関へ向かって、私は駆け出した。
「おう、紺野・・・どうだ?ちゃんと勉強してたか?」
「はい・・・ちゃんとしてますよ・・・あれ?どうかしました?」
保田さんの表情が、どこか違うのに気付いた。
なんだろう、嬉しそう。
突然、保田さんは私の頭を二度三度と撫でつけた。
「紺野・・・だいぶ自然な会話が出来るようになったな・・・
言葉の選び方だけじゃない・・・表情に至っても・・・
もう大丈夫。あとは自分で気付いたら、応用していけ」
その言葉が嬉しくって・・・
「はい!!」
大きく返事をしたんだった。
あの頃の私は、大変なことの連続だったけど、毎日が楽しかった。
175 :
書いた人:03/01/29 23:11 ID:qmFZIVS/
娘。に入ってからは、もっと大変だった。
最初はひたすら、『義務感』で動いていた。
でも・・・シンパシーが入って、私は変わったと思う。
麻琴ちゃんの顔が思い出された。
『娘。でやっていけるかな?』
麻琴ちゃんは私に相談してくれた。
保田さんの言葉。
『紺野は、娘。に必要なんだよ・・・・・・
いや、私自身にとって・・・必要なんだ』
176 :
書いた人:03/01/29 23:12 ID:qmFZIVS/
そうか・・・みんな、自分の居場所を探しているんだ。
麻琴ちゃんはそれが分からなかったから、私に相談してきた。
保田さんはそれが分からなくなって、私を娘。に入れた。
でもモーニング娘。の誰にとっても変わらないこと。
モーニング娘。こそ、自分の居場所なんだ。
私も・・・その居場所の一部なんだ。
既にモーニング娘。の一員だったんだ。
もう保田さんにとっては、無くてはならない存在になってたんだ。
何かが見えた気がした。
177 :
書いた人:03/01/29 23:12 ID:qmFZIVS/
起きてみよう。
存在が自己目的化するわけじゃない。
麻琴ちゃんが悩みを打ち明けてくれたら、私は全力で相談に乗ろう。
辻さんが宿題を聞いて来たら、私はこのメモリーを使い切っても答えよう。
そして・・・
保田さんが、いえ、誰か1人でも、私を必要としてくれる限り。
私は頑張ってみよう。
相手の望みに答えられる限り。
ハードが動いていたら・・・今、私は大きく頷いていることだろう。
178 :
書いた人:03/01/29 23:13 ID:qmFZIVS/
・・・・・紺野あさ美 kei-ys13.00 電源を入れます。
全ての回路、全ての部品の皆さん・・・
これからは、私はもっと柔軟に、色々なことに対応できなくてはいけません。
皆さんには付き合ってもらいます・・・賛成して、くださいますよね?
どうか、よろしくお願いします。
179 :
書いた人:03/01/29 23:14 ID:qmFZIVS/
ゆっくりと目を開く。
カーテンの外からは、強い光がこぼれていた。
目の前の椅子には、電源を切ったときと同じように、保田さんが座っていた。
私の起動に気付いたのか、顔をあげる。
「・・・・・・紺野・・・」
「ただいま帰りました。保田さん」
かすれた声の保田さんに、深々と頭を下げる。
保田さんの目の下には、大きなクマが見えていた。
恐らく・・・ほとんど寝ていらっしゃらなかったんでしょう。
180 :
書いた人:03/01/29 23:15 ID:qmFZIVS/
保田さんは椅子から立ち上がると、何か言うような素振りを見せた。
でも・・・・・・何も言わなかった。
その代わり、急に回れ右をすると、
「さ〜て、ダーヤスさんはシャワーでも浴びてくるとするかな・・・
紺野・・・仕事には遅れないように、ちゃんと準備しておけよ・・・」
大きく腕を頭の上にやって、伸びをした。
まったく・・・いつまで経っても、不器用なんですね。
181 :
書いた人:03/01/29 23:16 ID:qmFZIVS/
でも私には一つだけ、言っておきたいことがある。
「保田さん」
呼び止めた私の声に、保田さんは振り向きもせず立ち止まった。
これは・・・話を聞いてくれる、ってことですね。
「あの・・・上手く言えないんですけど・・・」
「上手く言え」
「あの・・・現状に納得いかないなら、
自分で楽しくしていけばいいと思います。
それだけの力が、保田さんにはあると思います。
その・・・・・・生意気言って、ごめんなさい!」
自分がとんでもないことを言っているのに気付いて、慌てて頭を下げた。
182 :
書いた人:03/01/29 23:17 ID:qmFZIVS/
・・・怒っちゃったかな?
相変わらず保田さんは、私に背を向けたまま。
でも、
「そっか・・・そうだな」
小さな声で、それだけ聞こえてきた。
モーニング娘。は、夢を実現できる場所。
それぞれの夢は違うのかもしれないけれど、出来ることは、自分で努力すること。
あの事務所のことだから、どうかは分かりませんが・・・
保田さんが歌いたい歌は、いつか自分でつかみ取れるはず。
・・・・・・それだけ、伝えたかったのだ。
なんか言葉足らずになっちゃったけど。
183 :
書いた人:03/01/29 23:18 ID:qmFZIVS/
保田さんは歩き出して、ドアを開けた。
でも部屋を出かけて、立ち止まる。
「あぁ・・・私も、お前に言い忘れたことがあった」
ちょっとだけ、声が震えていた。
「・・・・・・おかえり」
それだけ言うと、すぐに保田さんは出て行ってしまった。
私は数条の光が差し込む部屋に、まだ独りで立っていた。
「ただいま」
その言葉を、口の中で何度も呟きながら。
184 :
書いた人:03/01/29 23:21 ID:qmFZIVS/
今回はここまでです。
いつもの雰囲気と全く違ってしまいました。
次回からは、戻ります。
>>161 ありがとうございます。
いろいろと考えること、ありますよね。
私も酒に走りましたが。
>>162 お断りさせていただきます。
>>163 限りない感謝をいたします。
ご期待に添えているのか、正直自信がありませんが。
hozen
良い良い。更新待っておりますよ。
おわり?
188 :
書いた人:03/02/05 00:56 ID:nMqGD7tz
少し練っております。
明日の深夜くらいまでには、続きを書けると思います。
>>185 ありがとうございます。服着てくださいね。
>>186 もう少しです。テスト中なのでござる。
>>187 終わりませぬよ。
もう少しだけ、お付き合いください。
189 :
書いた人:03/02/05 04:46 ID:n0+UZR6a
第7章 「美意識」
190 :
書いた人:03/02/05 04:46 ID:n0+UZR6a
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver13.00電源が入りました。
私を構成するすべての回路、部品の皆さんの状態は完璧です。
それでは皆さん、今日も一日、頑張っていきましょう!!
191 :
書いた人:03/02/05 04:48 ID:n0+UZR6a
「うーん・・・困ったなぁ」
「何がだ」
夜の保田さんのマンション。
思わず私の口をついた言葉に、
保田さんはネットをしているパソコンのディスプレイから目を離した。
声に出しちゃってたのかぁ・・・
まあ、実際に悩んでいたのだから仕方が無い。
とは言え、保田さんに相談してもいいものだろうか・・・
保田さんはさも心配そうな目付きだけど、口元が少し笑っていた。
まぁ・・・半分くらいは、私が困っているのを面白がっているのもあるんでしょうね。
192 :
書いた人:03/02/05 04:49 ID:n0+UZR6a
「ほれ、早く言ってみろ。
ダーヤスさんなら、子供の疑問に電話口で答えてくれる先生よりも、
適格なアドバイスをしてやるぞ」
ニコニコと、目元だけを異様にほころばせながら、保田さんは詰め寄る。
確かに的確な答えが期待できそうですけど・・・
その代わり、近所のおばちゃん並に人の悩みを面白がりますよね。
勿論こんなこと、保田さんには言わない。
まあ、それでも私の製作者ですから・・・よし、相談してみよう。
193 :
書いた人:03/02/05 04:58 ID:n0+UZR6a
「今日ですね・・・まこっちゃんとお話してたんです」
「ふ〜ん・・・いつもの風景だな」
「はぁ・・・・・・で、今度のオフに2人でお買い物に行こう、って麻琴ちゃんが言うんです」
「何だ・・・珍しくもなんとも無い。小川とだったら、何度か行ったことあるじゃないか」
さもつまらなそうに、溜息まじりに洩らすダーヤスさん。
人の悩みを聞く態度には思えない。
自分に興味が無いと、これだもんなぁ・・・
194 :
書いた人:03/02/05 04:59 ID:n0+UZR6a
「いえ・・・それが、『あさ美ちゃんのお洋服を買いに行こう』って言うんです」
「ほぉ・・・まあこれから夏本番だしな。新しい服でも買いに行ってこいよ」
ちなみにこの話には裏がある。
そもそも『どの服がいい』みたいな感覚が、私には乏しい。
自分の外見を自由に作り変えられるような機体なんだから、
どの服が自分に似合うか、なんて興味があるわけが無い。
だから服選びは、保田さんに任せていたのだ。
195 :
書いた人:03/02/05 05:03 ID:n0+UZR6a
今日麻琴ちゃんに、
『あさ美ちゃんの服って・・・なんか、こう、若さに欠けるよね・・・つーか、ダサい』
と言われてしまったのだ。
最近元気になってくれたのはいいんだけど、麻琴ちゃんも元気が有り余っているらしい。
あとはラッシュだった。
『もっと歳相応のお洒落をしなくっちゃ』
『いいお店、この間愛ちゃんと見つけたんだ』
『今度のオフ、二人で買いに行こうよ。
ね、あさ美ちゃんが気に入るの、絶対見つかるよ』
そもそも美的感覚なんてどうでもいい、って思ってましたから。
その言葉の前に、私はサンドバック並に、晒され続けてしまったのだ。
気が付いたら、買い物に行くことが決定していた。
・・・・・・私ったら、なすがまま・・・
196 :
書いた人:03/02/05 05:05 ID:n0+UZR6a
でも・・・まさか、
『保田さんが選んでくれた服は、若い子には不評でした』
なんて言えない。
絶対に。
言った日には、私の身はいいんだけど、麻琴ちゃんに危険が及んでしまう。
そんなのピラニアの水槽にお肉を放り込むくらい、
恐ろしい結果になってしまいそうだ。
197 :
書いた人:03/02/05 05:10 ID:n0+UZR6a
そのことは隠しつつ、私は核心に触れる。
「はい・・・そうですけど・・・
今までのお買い物は、大体私が麻琴ちゃんのお買い物に付き合ってたから・・・
麻琴ちゃんが『これ似合うかな?』って聞いてきた
ときは、
『うん、いいと思うよ』とか、お話をあわせれば何とかなったんです」
「まあ・・・そうだな」
「でも、今回は私の物を買いに行くんです。
だからある程度は、自分で率先して選ばなければいけないと思うんですけど・・・」
保田さんはようやく意味が分かったらしく、人差し指を立てた。
198 :
書いた人:03/02/05 05:11 ID:n0+UZR6a
「なるほど・・・お前には美的感覚があまり無いから、
自分が買い物できるか不安なのか」
「はい・・・だから、事前にどんな服が私に似合うか、お聞きしておこうと思って・・・」
何とか危険な部分はオブラートに包むことで、伝わったようだ。
でも、保田さんのくれた答えは、
『・・・何とかなるだろ』
だった。
199 :
書いた人:03/02/05 05:14 ID:n0+UZR6a
「・・・・・・何とかなる・・・わけないじゃないですか!」
「そうか?どう考えても、何とかなるぞ」
保田さんはそれだけ言うと、早々に席を立ってしまった。
『あ〜あ、もっとドキドキする話だと思ったんだがなぁ』
とか言う台詞つきで。
無礼です。
200 :
書いた人:03/02/05 05:15 ID:n0+UZR6a
台所でコーヒーを煎れ直す保田さんに向かって、私はなお呼び掛ける。
「でも・・・どうすれば?」
「あのなぁ・・・小川や高橋が気にいった店なんだろ?
だったら、お前らの年代の女の子が好きそうな服が揃ってるさ。
だからどれを取っても、変には見られん」
めんどくさそうな返答の割には・・・随分適格な意見ですね。
でも私のメモリーは、もしもの場合を考えて、延々と不測の事態を弾き出す。
201 :
書いた人:03/02/05 05:26 ID:uYDL5u29
「で・・・でも、もしそのお店がお休みだったら?」
「あんな街中の店、めったなことじゃ休みにしないよ。
定休日くらい、小川も知ってるだろ」
「じゃあ・・・もし、潰れてたら?」
「小川が手頃な店に連れて行ってくれるよ。
どうせそこも、若い子が好きそうな物が揃ってるさ」
「じゃあ・・・」
「いい加減にしろ!!」
どうやら逆鱗に触れたみたいです。
まあ可能性の樹形図を広げすぎたのは、確かにいけないことですね。
久々に怒られて、少し反省。
202 :
書いた人:03/02/05 05:27 ID:uYDL5u29
あんまりしょんぼりしていたのが気に掛かったのか、
保田さんが煎れたてのコーヒーを持ったまま、私に優しく呼びかけてくれた。
「あのさぁ・・・紺野。
あんまり可能性の無いことは、考えなくていいんだぜ」
「はい・・・分かってます。でも・・・」
「もしものことがあれば、ちゃんと対応できるように、私はお前を造ってあるよ。
服が似合うかなんて、見る人によって違うさ。
だから気にせず、普通にして入れば大丈夫さ」
203 :
書いた人:03/02/05 05:29 ID:uYDL5u29
「・・・・・・・・・・・あさ美ちゃん・・・大丈夫?」
「え?はい?うん」
麻琴ちゃんが心配そうに、私の顔を覗き込む。
メモリーのロードに専念しすぎたようだ。
あんな風に言われてお買い物に来たけれど・・・大丈夫かなぁ?
まあ・・・保田さんが言ってくれたんだから・・・何とかなるかな?
204 :
書いた人:03/02/05 05:30 ID:uYDL5u29
賑やかな町を、麻琴ちゃんと肩を並べて歩く。
別に大げさな変装をしているわけでもないけど、
誰も私たちには気付かないようだ。
街に出てくる時は、最近は小学生だって化粧をしていますからね。
私達が特段目立つ、ということはないでしょう。
・・・・・・って、アイドルとしてそれでいいのでしょうか?
205 :
書いた人:03/02/05 05:42 ID:pQn/8du3
他愛も無い話をする中で、麻琴ちゃんが他人事のように呟いた。
「あ〜あ、そう言えば学校でもうすぐ、期末テストだ」
「そうだね〜」
呑気に返事をしておく。
お勉強の方は・・・おろそかと言う外ない。
こればかりは仕方が無いと思う。
私は保田さんのプログラムのお陰で、取り敢えずは人並みの成績はキープできる。
でもアイドルをやってその上お勉強と言うのは、土台無理。
テストが異世界のお話になるのも、当然と言えば当然だ。
206 :
書いた人:03/02/05 05:43 ID:pQn/8du3
「なんだっけ?今度の国語・・・古典出るんだよね?」
「うん・・・『枕草子』じゃなかった?」
「そんな題名だったっけ・・・あさ美ちゃん、よく覚えてるね〜」
感心した風に麻琴ちゃんが私を見る。
よ〜し、ここでもう少し紺野あさ美は頼りになる、ってところを見せましょう。
「ふふふ・・・私、ちょっとだったら覚えてるよ!」
「ホント!?やって見せてよ!」
「うん・・・・・・」
確か・・・最初の方だったら、枕草子はメモリーに入ってると思うんですけど・・・
207 :
書いた人:03/02/05 05:43 ID:pQn/8du3
あった。『枕草子』
ファイルの作成日時が古いですね。
保田さんが直々にプログラミングしてくれたものでしょう。
どれどれ・・・
『禿げはあいぼん。ようよう薄くなり逝く生え際。
少し明かりて、不安に立ちたる髪の細くたなびきたる。
かつらよ。ガキのころはさらさらなり・・・・・・』
208 :
書いた人:03/02/05 05:44 ID:pQn/8du3
・・・・・・絶対違う。
何ですか?このファイル。
平安人が何の因果で、加護さんの髪のことを心配してるんでしょうか?
・・・・・・えーと・・・保田さん?
と思ったら、ちゃんと『枕草子2』というファイルがあるじゃないですか。
これなら・・・
209 :
書いた人:03/02/05 05:46 ID:BLV9EKC8
『禿げていると言えば、あいぼんである(小倉智昭でも可)。
段々薄くなっていく生え際が、少し光はじめて、不安げに髪が細々とたなびいている。
カツラがあればなぁ。子供のころはさらさらの髪だったのに・・・』
現代語訳じゃないですか!
消してやる・・・こんなデータ、電源切ったら5秒で消してやるんだから。
またどうでもいいデータを・・・保田さん!?
210 :
書いた人:03/02/05 05:47 ID:BLV9EKC8
「・・・・・・・・・」
「どうしたの?あさ美ちゃん?」
さっきまで感嘆の眼差しを向けていた麻琴ちゃんが、
心配そうにこちらを見ている。
メモリー内での錯綜に、思わず熱中してしまったようだ。
えーと・・・
「はは、ごめん・・・やっぱり、忘れちゃってるみたい」
舌を出して謝っておく。
「何だぁ〜、やっぱり覚えてないよね〜」
麻琴ちゃんも、なんだか安心したみたい。
折角頼りになるところをアピールするチャンスだと思ったんですが・・・残念です。
211 :
書いた人:03/02/05 05:48 ID:BLV9EKC8
「・・・ここだよ!」
麻琴ちゃんが指差したお店は、
若さが溢れまくっているような派手なお店だった。
よかった・・・営業してる。
安心していた私に、麻琴ちゃんは不審の眼差しを向けていた。
しかし・・・杞憂ってやつですね。
お買い物はなんてことも無く、ことが進んだ。
麻琴ちゃんは私の服のセンスにそもそも不安を覚えていたらしく、
私が選ぶよりも早く、どんどん試着室に服をもって来てくれた。
選ぶ必要なんて、ほとんど無いようなものだった。
結局ピンクのロングスカートを始め、何点かな・・・
恐ろしい量の買い物をすることになった。
私達ったら日本の経済再生に、貢献してますねぇ。
212 :
書いた人:03/02/05 05:49 ID:BLV9EKC8
そのあと更に、麻琴ちゃんと私はお揃いのリングを買った。
「別にいつも付けてなくてもいいんだよ。
おしゃれしようかな、って時につければ」
とは、麻琴ちゃんの言葉。
私のメモリーによれば、ペアリングというのはカップルがするものみたいですが・・・
まあ、いいでしょう。
そんなに飾り気があるようなリングではないけれど。
なんだかこんな所で麻琴ちゃんと結びつきがあるというのが、なんとなく嬉しい。
「じゃあ、また明日ね〜」
麻琴ちゃんと私は、駅前で手を振って分かれた。
213 :
書いた人:03/02/05 05:51 ID:nrtl5Yzs
「ほら・・・私の言ったとおり、なんともなかっただろ?」
「はい。ご迷惑をおかけしました」
充電器の前で、私は保田さんの頭を下げた。
「しかし・・・すごいなぁ・・・ダーヤスさんは、流石に着れないな」
ピンクのスカートを手に、保田さんが呟く。
ハロモニでランドセルを背負っているような保田さんも、
流石に素ではこういうのはダメらしい。
214 :
書いた人:03/02/05 05:52 ID:nrtl5Yzs
「ところで・・・保田さん?」
恐らく、私の瞳は『キュピーン』と光っていることでしょう。
それが伝わったのか、保田さんが一歩引いたように見えた。
「・・・・・・枕草子・・・暗誦していただけますか?」
「え・・・また、何故?」
「・・・私と保田さんの知識レベルはほぼ同じですよね?
だったら、保田さんも枕草子が完璧だと思うんですけど・・・」
保田さんは悪戯がばれた子供のように、肩をすくめた。
「・・・もしかして・・・読んだ?」
「はい・・・読ませていただきました・・・さて、ご説明願いましょうか?」
215 :
書いた人:03/02/05 05:53 ID:nrtl5Yzs
その晩、私は恐らく起動してはじめて、保田さんにお説教をした。
勿論お説教するのよりも、自分が保田さんに物事をこんな風に言える、
という事態を楽しんでいた方が大きい。
それは保田さんも同じみたいでした。
私は人差し指にしたリングを見ながら、
今日一日を思い出して、お説教を遅くまで続けた。
216 :
書いた人:03/02/05 05:54 ID:nrtl5Yzs
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver13.00電源を切ります。
必要改良事項の確認・・・
・ 麻琴ちゃんの言葉『あさ美ちゃんの服はダサい』を削除。
・ メモリーにおける枕草子を、ファイル1・2ともに削除。
私を構成するすべての回路、部品の皆さん、今日も一日お疲れさま。
おやすみなさい。
217 :
書いた人:03/02/05 05:59 ID:xPYaq6Hs
今回の内容で、一部メンバーのヲタさんの心象を害するかもしれません。
謝ります。ごめんなさい。
あいぼんさんも、ごめんなさい。
連続投稿規制があまりに酷く、IDが変わりまくってますが、お気になさらず。
少なくとも、保田の卒業までには終わるでしょう。
前回から一気に針が振り切れて、恐らく戸惑われた方もおられるかもしれませんが、
ご批判などあれば、よろしくお願いします。
たまにはこんなのも書いてみたかったのです。
枕草子ワロタ
219 :
:03/02/09 05:09 ID:kaakKp3J
hozenn
220 :
:03/02/09 19:13 ID:sT3W1bZ4
221 :
書いた人:03/02/11 02:16 ID:d6yxr2oK
第8章 「永続性」
222 :
書いた人:03/02/11 02:17 ID:d6yxr2oK
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver13.00電源が入りました。
私を構成するすべての回路、部品の皆さんの状態は完璧です。
それでは皆さん、今日も一日、頑張っていきましょう!!
223 :
書いた人:03/02/11 02:18 ID:d6yxr2oK
私は二度、生まれ変わっている。
一度はシンパシーの回路が導入された時。
こうも劇的に思考パターンが変化するとは思ってもいなかった。
娘。にいられることが、こんなに楽しいと思い始めたのは、恐らくあの時から。
二度目は私が起動していることの意味を理解した時。
確かに一度は自分の意義を否定する事になったけれど、
でも私は必要とされている、ということを分かることができた。
そして、私は娘。にいたい、みんなと一緒にいたいと思い始めている。
224 :
書いた人:03/02/11 02:20 ID:NofnpdHQ
この2つの変化があるまでは、私はただ漫然と、それでも何か焦燥感に狩られていた。
あんな日々が永遠に続くのではないか、と恐れてもいた。
しかし恐ろしい日々は遂に終わりを告げ、私は今ここにいる。
でも、この現実を手に入れた今、思う。
もしかしたら・・・・・・・・・この楽しい時もまた、永遠ではないのではないか、と。
225 :
書いた人:03/02/11 02:21 ID:NofnpdHQ
―――――明日会見がある。モーニング娘。全員が、それに出席する。
7月の終わり、突然それだけが伝えられた。
「あさ美ちゃんさ・・・・・・なんなんだろうね?」
会見の話を聞いた麻琴ちゃんが、訝しげに眉を寄せた。
そう言われても、首をかしげるほかない。
他の誰もが不思議なのだろう、あちこちで集団ができて、
様々な憶測を始めていた。
226 :
書いた人:03/02/11 02:22 ID:NofnpdHQ
「まあ・・・・・・また新しくメンバー入れる、とかいうのの告知とかとちゃうん?」
向こうでは、加護さんと辻さんが予想を始めていた。
「・・・・・・そろそろ4人が入って、1年経つし・・・・・・
今告知すれば・・・10月の頭くらいにはメンバー決まると思うしな」
加護さんの言うことに、いちいち辻さんは頷いている。
なんだか同い年なのに、まるで親の言うことをよく聞く子どもみたい。
227 :
書いた人:03/02/11 02:25 ID:NnVjutuS
「・・・・・・ののはどう思う?」
加護さんに話を振られると、不意に辻さんは目を輝かせた。
「そうれすね・・・・・モーニング娘。の名前をつけたお菓子の発表れすね。
そして並び立つカメラの前で、のの達が美味しそうにお菓子をほおばるんれす。
その絵を、マスコミは欲しがっているんれす」
「そりゃあ・・・無いやろ・・・」
諦め口調で加護さんが返した。
228 :
書いた人:03/02/11 02:27 ID:NnVjutuS
加護さんの反応に辻さんが逆切れしているのを横目に、私は保田さんに目をやった。
比較的落ち着いているらしく、保田さんは何かの本に目を通している。
全く・・・あんなにインテリぶって見えるのに。
私、知ってるんですよ・・・昨日、保田さんがインターネットの掲示板に、
「ダーヤスマンセー」って書き込みしたの。
『マンセー』の意味がよく分かりませんが・・・・・・
メモリーで一番近い言葉は・・・『慢性』ですか?
ヤダなぁ・・・年がら年中保田さん、って。
私の視線に気付いたのか、保田さんは意味ありげな笑いを浮かべた。
・・・・・・何があるのか知ってるのでしょうか?
229 :
書いた人:03/02/11 02:27 ID:NnVjutuS
翌日。
会見場の席で、涙を浮かべる私たちがいた。
後藤さんと保田さんの卒業。
昨日の意味ありげな笑みの理由が、ようやくその時になって分かった。
でも分からない。
何故保田さんは、娘。を辞めてしまうのか。
娘。が夢を叶えられる場所であることは、保田さんも分かっているのに。
私は唇を噛んで、そのもどかしさに耐えつづけた。
無性にフラッシュが眩しかった。
・・・ロボット三原則を破ってでも、理由を聞いてやるんだから・・・
230 :
書いた人:03/02/11 02:29 ID:yoL2vfE5
でも会見のあとが大変だった。
年少組はおろか、飯田さんや矢口さんといった、年上の先輩たちも、
展開にまるで追いついていなかったから。
こんな時こそ、私はみんなのためにならなくっちゃ。
自分の中で渦巻く疑問を抑えて、私はみんなとひたすら話をした。
矢口さんの頭を撫でている、保田さんを横目に見ながら。
231 :
書いた人:03/02/11 02:30 ID:yoL2vfE5
「・・・・・・なんで後藤さんと保田さん、辞めちゃうのかなぁ?」
麻琴ちゃんがポツリと洩らした言葉も、ファミレスのテーブルの上を通り過ぎた。
加護さんはずっと下を向いているし、
辻さんは頬杖をついて、外を眺めている。
みんなその答えが分からないからこそ、こんなにも悩んでいるのだろう。
232 :
書いた人:03/02/11 02:31 ID:yoL2vfE5
なんて言えばいいんだろう・・・
こんな時、自分の無力さを痛感する。
加護さんと辻さんは、既に中澤さんの卒業を経験している。
麻琴ちゃんだって、学校の友人との別れというものを経験したことがあるはずだ。
経験不足。
その一語に尽きるんだろう。
この間聞かれた麻琴ちゃんの悩みは、私が保田さんに聞いていたことだったから。
答えるのは比較的楽だった。
でも今度は・・・・・流石に分からない。
こんな時に頼るのは、少々不安ですが・・・・・・
私は自分のメモリーと向き合う。
またおかしな詩とかが載っていたら、今度こそロボット三原則に反してやりましょう。
233 :
書いた人:03/02/11 02:33 ID:RZ6CXjZ2
『別れ』の項を開く。
・・・・・・通り一遍の説明だけが載っている。
これじゃあ・・・ダメです。
でも、保田さんだってそんなに長く生きているわけではない。
別れを嘆く友人達に、なんて声をかけてあげればいいか、
的確な答えは持っていないはずだもの。
・・・・・・と思ったら、一つ内部フォルダがみつかった。
作成日時は・・・昨日ですか。
中身を見た私は、驚愕した。
234 :
書いた人:03/02/11 02:34 ID:RZ6CXjZ2
『紺野へ
お前がこれを開いてくれるかは分からないけれど、
電源を切ってあるうちに、勝手にこんなフォルダを追加したことは許して。
これを開いたんだから、恐らくお前は混乱しているんだと思う。
5期の面子や、辻や加護。
あの子たちに、なんて言葉をかけようか困っているのかな?
それともお前自身、何故私がお前に一言も洩らさずに脱退したか、
訝しがっているのかな?』
・・・・・・保田さん、二つともビンゴですよ。
続きを急いで読む。
235 :
書いた人:03/02/11 02:34 ID:RZ6CXjZ2
『まず他の子たちだけど・・・こればかりはどうしようもない。
いくらその場で優しい言葉をかけてみても、
また私と後藤のことを考えれば考えるほど、悲しくなるんだと思うから。
だから今は、そっとしておいて。
お前が『自分は役立たずだ』なんて思う必要は、何も無いから。
あいつらが、自分自身で現実を見つめて、
自分自身で娘。の中での居場所を再確認できてこそ、意味があるんだ』
『役立たず』という言葉が胸に突き刺さる。
いくら保田さんが気にするな、と言っても・・・
私の意義はみんなのためになること、って思っているから。
236 :
書いた人:03/02/11 02:37 ID:YL2D9HcH
『そして、何でお前に洩らさなかったか・・・だったっけ?
お前に余計な心配かけたくなかった。
むかしお前に説教垂れられただろ?
『ダーヤスさんが頑張れば、いつか夢は叶えられる』ってさ。
自分の造った機械に言われて、初めて気付いたことだったよ。
でもさ・・・もう一つ、自分の夢を叶えるために、他人の夢を踏み潰したくはない。
少なくとも今、娘。にいる奴らの夢は、な。
私が歌いたいような歌は、今の娘。には必要とされていないから。
おい、くれぐれも言っておくが、私が必要とされていないんじゃないからな。
5期のお前以外の奴らは、娘。がこの路線に入ってから、メンバーになっただろ?
あいつらにとって歌いたいものは、今の娘にあるんだから。
私が好き勝手に、自分の歌いたい歌を突っ走るわけには行かない』
・・・・・保田さん。
分かってくださったのは嬉しいです。
でも・・・胸につかえるものがある。
237 :
書いた人:03/02/11 02:38 ID:YL2D9HcH
『しばらくは一緒なんだからさ、泣くな。
確かに脱退すれば、紺野といつも一緒ってわけには行かないから、不安もある。
でもさ・・・これから色々な手段を考えるよ。
だから心配するな。笑え。
笑って、ダーヤスさんの門出を祝ってくれ』
読み終えて私はファイルを閉じた。
頬に涙が伝う。
笑えませんよ・・・・・・いくらハードのコントロールを切り離したって。
238 :
書いた人:03/02/11 02:38 ID:YL2D9HcH
私が泣いたのをきっかけに、一気に堰を切ったかのようにみんなが泣き出した。
いつか・・・この日を笑うことができるんでしょうか。
ガチャピンみたいに腫れた目を深くかぶった帽子で隠して、私たちは帰途についた。
239 :
書いた人:03/02/11 02:40 ID:A4dcu0Ol
どうしようかなぁ・・・
保田さんのマンションの前で、私は途方にくれていた。
どんな表情でいればいいんだろう?
なんて声をかければいいんだろう?
逡巡していたが、意を決して私はドアノブに手を掛けた。
240 :
書いた人:03/02/11 02:41 ID:A4dcu0Ol
「ただいま〜」
そう言っても、保田さんは出てこない。
私はそろそろと、保田さんの部屋のドアを開ける。
パソコンに向かって、せわしなく指を動かしている保田さんがいた。
「あの・・・・・・ただいま帰りました・・・」
おそるおそる告げる。
と、くるっと突然振り返って保田さんは怒鳴った。
「遅い!一体どこで道草食ってたんだ?
折角私が外から紺野と連絡をとる方法を考えてたのに・・・
実験がなかなか出来なかったじゃないか!」
241 :
書いた人:03/02/11 02:41 ID:A4dcu0Ol
怒鳴られて、私のほうも少し切れた。
何のために、私がこんなに遅くなったと思ってるんでしょう。
「誰かさんが、私にも言わないで勝手に脱退とかしちゃうからですよ!!
いつも一緒にいたんだから、相談くらいしてくれてもいいじゃないですか!
何が『余計な心配』ですか?
私だって、そんなにやわな造りしてません!
そんなの保田さんが一番分かってることでしょう!?」
言い終わった途端に、後悔。
私・・・一体何回、この失敗をするんだろう・・・
保田さんがしゅんとしてしまった。
242 :
書いた人:03/02/11 02:43 ID:xlOMLDue
いけない。
今一番ナイーブなのは、私でも残されるみんなでもない。
脱退する本人なんだ。
いくらファイルの中では吹っ切れているように見えても、
生の人間はそんなに強くない。
243 :
書いた人:03/02/11 02:43 ID:xlOMLDue
「すまなかった・・・」
「いえ・・・・・・私も、遅くなってごめんなさい・・・」
二人同時に口にした。
でもそのタイミングがおかしくって・・・
その後ひたすら2人で笑った。
そうでしたね・・・私達って、これでいいんですよね。
244 :
書いた人:03/02/11 02:44 ID:xlOMLDue
その後、私と保田さんは夜が明けるころまで話をした。
起動したときのことも、保田さんの口から初めて聞いた。
私と初めてしたやり取り、私が初めて怒った日。
「紺野さ・・・突然切れる性格、変わらないよな」
「あぁぁぁ・・・それは・・・」
「まあ、いいや。それより・・・他のやつら、どうだった?」
「しゅんとしてますよ。特に加護さんと辻さんは・・・」
「そりゃそうだろうなぁ・・・まあ、いつか・・・自分が脱退するころに分かるよ」
「そんなもんですかね?」
「・・・私も、明日香がやめたときには分からなかった」
「ハァ・・・でもやっぱり私、お役には立てませんよ」
「気にするな。いつかきっと、みんながお前に感謝するさ」
「そうですかぁ?」
「うん・・・大体、そんなに喜怒哀楽がはっきりした機械、お前くらいだしな」
「それは言わないでください・・・」
245 :
書いた人:03/02/11 02:46 ID:f3wwYlUZ
保田さんがソファーでうとうとし出したのを見て、私は毛布を掛けた。
そして、自分の充電器の上に腰掛ける。
・・・・・・今、こんな話が出来てよかった。
一つ忘れていたのだ。
今の状態だけじゃない、私自身だってまた、永遠に存在するものではないってことを。
その日は、意外とすぐにやってきたから。
246 :
書いた人:03/02/11 02:48 ID:f3wwYlUZ
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver13.00電源を切ります。
必要改良事項の確認・・・
・ 『別れ』項目内のフォルダを、保護指定。
・ 保田さんとの今日の会話内容を、保護。
私を構成するすべての回路、部品の皆さん、今日も一日お疲れさま。
おやすみなさい。
247 :
書いた人:03/02/11 02:50 ID:f3wwYlUZ
どれほどの方が見ておられるか定かでないこの駄文も、
もう少しで終結です。
例の如く、ご感想ご批判などよろしくお願いします。
>>218 半角でのご返事に、常々憧れておりました。
ありがとうございます。
>>219 どうもです。
>>220 それは・・・踏んでいいんですかね?
とりあえず、読んでますよとご報告。
=-=-=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT =-=-=-=-=
*** ***
***
>>36-50 . .第1章「キカイノココロ」 (2002.12.25) ver12.32 ***
***
>>66-83 . .第2章「デジタル」 (2003.01.05) ver12.33 ***
***
>>90-103 .第3章「シンパシー」 (2003.01.13) ver12.34 ***
***
>>106-124 第4章「好き」 (2003.01.19) ver13.00 ***
***
>>130-159 第5章「目的」 (2003.01.28) ver13.00 ***
***
>>164-183 第6章「光は闇でこそ輝く」 (2003.01.29) ver13.00 ***
***
>>189-216 第7章「美意識」 (2003.02.05) ver13.00 ***
***
>>221-246 第8章「永続性」 (2003.02.11) ver13.00 ***
*** ***
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=NOW HIBERNATION MODE=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
250 :
書いた人:03/02/13 16:51 ID:w/d8jK/t
第9章「いつか来るべき瞬間」
251 :
書いた人:03/02/13 16:52 ID:w/d8jK/t
紺野あさ美・・・・・・kei-ys ver13.00電源が入りました。
私を構成するすべての回路、部品の皆さんの状態は完璧です。
それでは皆さん、今日も一日、頑張っていきましょう!!
252 :
書いた人:03/02/13 16:53 ID:w/d8jK/t
「そっか〜、じゃあまだまだ、保田さんとは一緒にやっていけるんだ!」
楽屋で私の話を聞いた麻琴ちゃんは、両の手の平を合わせて喜んでいた。
「うん・・・だから、しばらくの間は歌も一緒に歌うし、番組も一緒だよ」
昨日保田さんから聞いたことを、できる限りソフトに話してゆく。
今私にできることは、事実をみんなに受け止めてもらうこと。
それしかできそうにないから・・・
昨日指定した保護ファイルから、大切なことを走査しながら話していこう。
253 :
書いた人:03/02/13 16:54 ID:w/d8jK/t
昨晩。
まるで診察を受ける子どもと医者のように、保田さんと私は向き合っていた。
「・・・とりあえず遠隔間での連絡は、必須事項だよな」
保田さんはよれよれに使い込んだメモ帳に、殴り書きをしていく。
「その辺はまあ・・・どうにでもなるとは思うんだけど。
問題は私が目を離している間、だな」
「・・・と、仰いますと?」
保田さんの顔を思わず覗き込んだ。
「うん。私も娘。を辞めて遊び暮らすわけじゃないからね。
どうしても仕事とかしてる時は、紺野から目を離さざるをえないし」
「はぁ・・・」
うーん・・・私ったら、いまだに保田さんにおんぶにだっこなんだなぁ。
254 :
書いた人:03/02/13 16:58 ID:tpkCk8ae
保田さんはなにやらしばらく考えていたが、決意したように大きく頷いた。
「よし!!じゃあ紺野自身で大体の事態への対応ができるように、改良しよう!」
・・・え?
単純に驚いた。
いつもだったら
『紺野は回路の不調を感じたら、伝書鳩で連絡』とか、
『むしろもう一体娘。に、紺野を世話するための機械を潜り込ませる』とか、
意味不明な思い付きをするのに・・・
255 :
書いた人:03/02/13 16:59 ID:tpkCk8ae
「何だ?不服か?」
私の反応が芳しいものではないと感じたらしく、
保田さんは心配そうに私のほうを向く。
「い・・・いえ、そんなことありません!むしろ嬉しいです」
これは本音。
その返事を聞いて、保田さんはもう一度大きく頷いた。
「それじゃあ・・・かなり大規模な改造になるなぁ・・・
ソフトの能力も大幅に変えなくちゃいけないし、ハードもな・・・
まあ一朝一夕には行かないから・・・この半年で何とかするさ」
満足げにメモにペンを走らせていく保田さんを、私は何か寂しい感じで見ていた。
そうか・・・私もそろそろ、保田さんから独り立ちしていかないといけないんだなぁ・・・
256 :
書いた人:03/02/13 17:03 ID:Iyq7GZJk
「そうだよねぇ。保田さんや後藤さんには、またいつでも会えるんだもんね!」
私が言葉を重ねていると、ようやく麻琴ちゃんにはポジティブな言葉が出てき始めた。
スキャンしていたのはほとんど私に関してのことですけど、
やっぱり私自身が納得していないと、こういうのも難しいですからね。
『大切なのは、現実を自分の言葉で受け止めること。
それが出来さえすれば、後は大丈夫』
保田さんの言葉をメモリーの中で反芻する。
私は・・・・・・何とか自分の言葉でこの事態を受け止めることができそうだ。
『笑って送り出す』
まだそんなことをするには、ちょっと辛いけれど。
257 :
書いた人:03/02/13 17:03 ID:Iyq7GZJk
でも保田さんは言ってた。
「いつか・・・・・・モーニング娘。よりも、遥か上空を行く歌手になって見せる」
「保田さんにその信念がおありなら・・・大丈夫ですよ」
「そうだな・・・その時は、アルバムのゲストアーティストに、紺野あさ美を迎えてやるさ」
そう言って、私の頭を撫でる手のひら。
・・・・・・保田さん・・・私ホントに、楽しみにしますよ。
258 :
書いた人:03/02/13 17:04 ID:Iyq7GZJk
「そうだぞ〜、あと9ヶ月は、私もお前らの世話しなくちゃいけないんだからな」
いつの間にか麻琴ちゃんの背後に立っていた保田さんが、軽く彼女の頭を小突く。
「あ・・・・・・おはようございます!」
「おはようございます」
後輩2人の綺麗なお辞儀に満足げに頷くと、保田さんは軽く右手を上げた。
259 :
書いた人:03/02/13 17:05 ID:Iyq7GZJk
今日はこの3人での撮影だったんだっけ。
「まあ・・・のびのびとやればいいからさ」
保田さんはそれだけ言うと、何事かを思い出したのか、目を大きく見広げて向き直った。
「あ・・・今日、確か会長来てるぜ」
口元にうっすらと浮かんだ笑みが、保田さんのあの方に対して持つ感情を表していて怖い。
麻琴ちゃんは、その言葉だけで緊張しちゃったみたい。
260 :
書いた人:03/02/13 17:07 ID:Iyq7GZJk
「あぁ・・・いらしてるんですか〜」
なんだか麻琴ちゃんが一回り小さくなってしまったみたい。
保田さんはそれを見て、悪戯っぽく笑った。
「大丈夫・・・なんか忙しいらしくて、最初の立ち位置確認くらいまでしか見ないみたい。
一応脱退する私に顔見せ、ってことらしいからな。
ちゃんと挨拶だけしとけ」
「ハァ・・・・・・」
麻琴ちゃんは、返事とも溜息ともつかない音声を洩らした。
ダメだ・・・まこっちゃん、これで本番大丈夫かなぁ?
261 :
書いた人:03/02/13 17:07 ID:Iyq7GZJk
スタジオには、まだスタッフの数はまばらだった。
私はこのスタジオの匂い・・・・・・冷たくて、無機質な匂いが・・・なんとなく好きだったりする。
既に会長が、腕を組んでこちらを見ていた。
一応こういうところもちゃんと見ている、って言うポーズが必要なんでしょうねぇ。
私とまこっちゃんは、一通り動きの確認をスタッフの人と打ち合わせる。
保田さんは早々に確認を終えて、そでの方で会長と話をしていた。
・・・・・・一応、こういうところの礼儀はあるんですね。
262 :
書いた人:03/02/13 17:09 ID:Iyq7GZJk
「あぁ・・・ホントですか?それじゃ・・・すぐ行きますから」
私に動きを指示していたスタッフさんが、なにやらイヤホンの声に応答している。
彼は少し焦った様子で、私たちに呼び掛けた。
「あの〜・・・すみません。ちょっと手違い出ちゃったんで、打ち合わせしてきますんで・・・
皆さん、ここに待機していて頂けませんか?」
「は〜い」
保田さんが大きく手を振って、爽やかに返事をしていた。
・・・きっとあれですね、保田さんは阿修羅マンみたいに、いくつも顔があるんです。
私に対しての顔は、きっと冷血の時の仮面ですよ、絶対。
あぁぁ・・・また余計な知識が。
263 :
書いた人:03/02/13 17:11 ID:Iyq7GZJk
私たち3人と会長しかいないスタジオで、私は最初に示された立ち位置に突っ立っていた。
あちらでは同じように、麻琴ちゃんがぼーっとしている。
まあ・・・多分会長の方を見ないように、努力してるんでしょう。
・・・・・・・・・あれ?
私は麻琴ちゃんを見た風景に、少し違和感を覚えた。
光の揺れが・・・・・・おかしくありませんかね?
264 :
書いた人:03/02/13 17:11 ID:Iyq7GZJk
でも私以外、誰も気付いている風ではない。
私が人間よりも敏感だから・・・少しの異常に気付いているのか?
それとも私のハードに、何か問題があるからなのか?
頬に手を置いて考える。
向こうでは麻琴ちゃんが、私の真似をして同じ格好をしている。
・・・・・・緊張も解けたみたいですね。
265 :
書いた人:03/02/13 17:13 ID:Iyq7GZJk
いえ・・・でも、これは恐らく本当に光がおかしいですね・・・
ますます激しくなるその異常に、私は主因を探し始めた。
サスペンションライト・・・?
麻琴とちゃんを照らしている照明が、不自然に揺れている。
他の人は・・・気付いていない。
保田さんも、会長と話していて気付いていないみたいだ。
瞬間、ライトを固定していた器具が弾ける音がして、ライトが落ち始めた。
その音に麻琴ちゃんがぼんやりと上を見上げる。
266 :
書いた人:03/02/13 17:15 ID:RCJo/7/T
・・・・・・危ない・・・・・・
―ロボット第一原則を確認−
人間を傷つけない限り、人間に対して生じた危難は速やかに除去。
私は麻琴ちゃんに向けて全力で走り始めた。
お願い・・・間に合って・・・
267 :
書いた人:03/02/13 17:17 ID:RCJo/7/T
パァーン・・・・・・・・!!
激しい音が聴覚回路を駆け巡る。
何かに突き当たったような感覚がある。
麻琴ちゃんを突き飛ばしたのか、それとも私は床に突っ伏して転んでいるのか。
私はいつの間にか閉じていた目を、ゆっくりと開けた。
268 :
書いた人:03/02/13 17:18 ID:RCJo/7/T
・・・状況を確認。
私の前では、麻琴ちゃんがしりもちをついて、目を見開いていた。
良かった・・・無事だ。
私は立ち上がって、麻琴ちゃんに手を差し伸べようとした。
もう大丈夫だよ・・・・・・
でも・・・・・・
立ち上がろうとしてすぐ、何かに押さえつけられるようにまた腹ばいになる。
・・・あれ?
立ち上がれない。
269 :
書いた人:03/02/13 17:21 ID:RCJo/7/T
と、麻琴ちゃんが震える声で呟いた。
「・・・・・・あさ美ちゃん・・・脚・・・」
脚?
振り向くと、私の下半身が、ライトの下で潰れていた。
そうか・・・・・・自分の状態を確認するの忘れてた・・・
やっぱり・・・ダメダメだな・・・私。
私の脚を覆っている上皮組織がめくれて、中の部品が見えていた。
はみ出たコードから、かすかに火花が散っている。
自分の点検を忘れたのはなんだか悲しいけれど、
麻琴ちゃんは助かったんだ。
不意に『嬉しい』という感情が湧いてくる自分が不思議。
270 :
書いた人:03/02/13 17:22 ID:RCJo/7/T
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・紺野あさ美 kei-ys13.00
―緊急処理モード起動します−
状態確認。
・・・両脚使用不能・・・・・・
・・・・・・メイン電源全壊・・・
予備電源への切りかえ探索・・・破損確認、不可能と判定。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・kei-ysの起動確保、不可能。
至急、電源をシャットアウト。
271 :
書いた人:03/02/13 17:23 ID:RCJo/7/T
「紺野ッ!!!!」
保田さんが叫び声をあげて、駆け寄ってきた。
「保田・・・・・・さん・・・」
私、やっとみんなの役に立てましたよ。
自分の状態を確かめられないのは、やっぱりダメダメですけどね・・・
私が起動している意味、これで証明できましたか?
保田さんの方に私は振り向こうとしますが・・・・・・
272 :
書いた人:03/02/13 17:24 ID:RCJo/7/T
紺野あさ美・・・ys-kei 13.00電源緊急停止します。
・ 現在の状況をメモリーに確保
273 :
書いた人:03/02/13 17:29 ID:RCJo/7/T
今回はここまでで。
連続投稿規制は終わったようですね。
>>248 ありがとうございます。
皆さんやっぱり、何気にこのスレをクリックして偶然見られるのでしょうかね。
>>249 おぉ!!目次ですね・・・しかもお洒落ですな。
じつは「hibernation」の意味が分からず、辞書を引いてしまった馬鹿者です私は。
=-=-=-=-=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT =-=-=-=-=-=-=
*** ***
***
>>36-50 . .第1章「キカイノココロ」 (2002.12.25) ver12.32 ***
***
>>66-83 . .第2章「デジタル」 (2003.01.05) ver12.33 ***
***
>>90-103 .第3章「シンパシー」 (2003.01.13) ver12.34 ***
***
>>106-124 第4章「好き」 (2003.01.19) ver13.00 ***
***
>>130-159 第5章「目的」 (2003.01.28) ver13.00 ***
***
>>164-183 第6章「光は闇でこそ輝く」 (2003.01.29) ver13.00 ***
***
>>189-216 第7章「美意識」 (2003.02.05) ver13.00 ***
***
>>221-246 第8章「永続性」 (2003.02.11) ver13.00 ***
***
>>250-272 第9章「いつか来るべき瞬間」 (2003.02.13) ver13.00 ***
*** ***
=-=-=-=-=-=-=-=-=-= EMERGENCY!!OUT OF ORDER!!! =-=-=-=-=-=-=-=-=-=
275 :
書いた人:03/02/13 17:35 ID:RCJo/7/T
イイ!!
h
海底到着保全
ワクワク
280 :
:03/02/15 23:19 ID:AStoA0oF
281 :
\:03/02/15 23:25 ID:ACyfBVSb
,
282 :
:03/02/15 23:49 ID:HC2tDY/N
283 :
書いた人:03/02/16 03:21 ID:PHF1Kjt3
第10章 「最終課題」
284 :
書いた人:03/02/16 03:23 ID:PHF1Kjt3
・・・・・・・・・紺野あさ美 kei-ys14.00 外部電源への接続確認
−破損箇所の再確認−
・・・・・・メイン電源及び予備電源・・・修復済み
・・・両脚、未修復・・・
・・・・・・・・・両脚を除く全回路、起動可能
285 :
書いた人:03/02/16 03:24 ID:PHF1Kjt3
メモリーの保持だけに使われていたエネルギーが、
思考回路にまで流れ込み、私は意識を取り戻した。
まだ休眠状態にあることに、変わりないけれど。
286 :
書いた人:03/02/16 03:24 ID:PHF1Kjt3
まさか・・・・・・
私は闇の中で考える。
最後に保存されたメモリーを見る限り、最もあってはならない事態が生じている。
あの瞬間、二度と電源が入れられることはないと思っていたのに。
私は麻琴ちゃんを助け、そしてサスペンションライトの下敷きになった。
動力の主要部分が破損したから、電源を切ったのだ。
でも、壊れたことは問題では無い。
287 :
書いた人:03/02/16 03:33 ID:/h02MwjD
私が機械であることが、ばれた。
スタッフはいなかったから、麻琴ちゃんと会長、2人に見られている。
いくら何でも私の上皮の下にある骨組みを見れば、
事実を受け止めなければならないだろう。
・・・・・・それがどんなにおぞましいものであったとしても。
288 :
書いた人:03/02/16 03:33 ID:/h02MwjD
私が機械であったことが明らかになっても、モーニング娘。にいられるか。
答えは恐らく、NOだ。
いや可能性の樹形図をいくら広げてみても、Yesにはたどり着けない。
世界が・・・保田さんと私を放っておくはずはない。
いつか保田さんは言っていた。
『私の技術は、二足歩行ロボットの遥か上の成層圏を行っている』
だからこそ保田さんは考えられうる手段を使って、カムフラージュを行った。
289 :
書いた人:03/02/16 03:35 ID:/h02MwjD
それに・・・みんなが・・・
機械である私を受け入れてくれるはずはない。
保田さんは確かに私に対して、かなり人に近い扱いをしてくれていた。
勿論製作者として一線を引くことはあったけれど。
でもそれは、私が機械であるということを、最初から知っていたから。
290 :
書いた人:03/02/16 03:36 ID:/h02MwjD
今まで機械であることを隠し通していたのに、突然そのことを明かす。
しかも自発的にではなく、不慮の事故で明かさざるを得なくなった。
それでもみんなは表面的には、私を『紺野あさ美』として受け入れてくれるだろう。
だが私が機械であること、そしてそのことを隠していたことが、
大きく影を落とすことは明白だ。
291 :
書いた人:03/02/16 03:37 ID:zLe0V4ly
そして私自身、そんな娘。の中では目的を果たせないだろう。
『必要とされている限り、全力をもってみんなの役に立つ』
そんな感情を裏に持たれたままでは、無理だというものだ。
・・・・・・ん?
誰かが私の外部スイッチに触る。
いえ・・・・・・保田さんが、私を起動しようとしているのだ。
292 :
書いた人:03/02/16 03:38 ID:zLe0V4ly
・・・・・・・・・紺野あさ美kei-ys14.00 外部起動スイッチON
あらゆる回路に命令が下る、暖かい感触。
保田さん、あなたも分かっているはずです。
私はこの世界では、もう起動できないことを。
そうか・・・・・・本来の目的を果たすためじゃない。
・・・・・・事後収拾のために、私が必要なんですね?
それならばお分かりですね、保田さん。
これが最後の起動になることも。
293 :
書いた人:03/02/16 03:39 ID:zLe0V4ly
・・・・・・そうです・・・
私は機械。
ならば例え事後収拾でも、あなたが必要としている限り、
私は全力でお役に立ちましょう。
私を構成する全ての部品、全ての回路の皆さん。
最後のお役目・・・付き合っていただけますよね?
・・・・・・ありがとうございます。
私はあなたたちと一緒に仕事ができることを、誇りに思っていますよ。
294 :
書いた人:03/02/16 03:40 ID:zLe0V4ly
ゆっくりと目を開く。
いつもの調整室。
カーテンのすき間から、赤い光が差し込んでいる。
それが夕焼けなのか、それとも朝焼けなのか・・・・・・どうでもいいことだ。
「紺野・・・・・・おはよう」
295 :
書いた人:03/02/16 03:41 ID:7NvREpvc
枯れた声で呟く私の製作者。
眼鏡が光っていて、その表情を読みとるのは難しい。
でも・・・・・・憔悴しきっていることは、一目瞭然。
「おはようございます・・・・・・・・・私、どれくらい・・・」
「あれから、七日経った」
保田さんはこめかみに手をやりながら、答えてくれた。
多少その声に安堵の調子が混ざっているのは、私の応答が通常のものだったからでしょう。
296 :
書いた人:03/02/16 03:42 ID:7NvREpvc
「・・・・・・紺野、すまなかったな」
頭を下げる保田さんに、当惑する。
私が機械であることをご存知なら、分かるはずでしょう?
あくまでもロボット三原則を守っただけだってことを。
自分の目的が少しでも果たせて、嬉しいことを。
そして・・・そんな気持ちを理解してくれるはずの、唯一の人に分かってもらえない寂しさも。
297 :
書いた人:03/02/16 03:43 ID:7NvREpvc
いつもは・・・ここで私もキレて、微妙な空気になってしまう。
今日は保田さんの気持ちを理解してみよう。
彼女は何に『すまない』と思っているのか。
・・・・・・私に痛い思いをさせたから?
まさか、私が機械である以上、痛覚なんてものは人間並に不快には感じません。
・・・・・・最後の起動が辛い思いをするから?
機械は動き始めた瞬間から、止まる時が来ることを分かっています。
しかもそのことについて、人間みたいなセンチメンタルな心を持ちません。
みんな保田さんの頭脳なら、分かっているはずのこと。
298 :
書いた人:03/02/16 03:44 ID:7NvREpvc
「はぁ・・・・・・」
思考回路の努力にも関わらず回答が出なかったので、気が抜けた返事になってしまった。
保田さんも恐らく私の口から、それに対する的確な答えが出るとは思っていなかったのだろう、
すぐに次の話に移った。
多分『すまない』という言葉には、保田さんが自分自身に向けた悔悟の念があったのだろうか。
口調はいつもの通りだった。
299 :
書いた人:03/02/16 03:46 ID:tiPDHCwo
「お前が機械であることは・・・・・・小川と、会長にばれた」
「やはりそうでしたか・・・配線と骨組みが見えてしまいましたから」
「お前は怪我で、娘。を離れたことにしてある・・・・・・小川と会長には口止めをしてある」
「・・・それは、信用できますか?」
私の問い掛けに、保田さんの唇の端が釣り上がったように見えた。
さっきから充電器に腰掛けたままで、ずっと保田さんを見上げているから、
微妙な表情の変化が読みとりにくかった。
でも、この顔はあからさま。
300 :
書いた人:03/02/16 03:46 ID:tiPDHCwo
「ああ・・・大丈夫だ。安心しろ、小川は絶対秘密を守るって約束してくれた。
それに会長は・・・・・・まだこのことを明るみに出すことが、自分に有益か不利益か、
判断がつきかねているみたいだしな」
最後の言葉は吐き捨てるように。
日頃から保田さんが彼に対して抱いていた感情が、容易に分かる。
301 :
書いた人:03/02/16 03:47 ID:tiPDHCwo
「いずれにせよ・・・・・・お前をこのまま起動しておくことは不可能だ」
「はい。分かってます」
私の返事を聞いて安心したのか、保田さんは大きく息を吐いた。
機械である私が取り乱すはずなんてないのに。
それだけ保田さんも、私と人間との境界を見失っていたのでしょうか。
「うん・・・・・・あの二人が秘密を守るとして・・・同じことがいつ起きるか分からない。
今回はたまたま私が一緒にいたから良かったけれど、
いくらお前の能力を上げても、その危険からは永遠に解放されないから。
・・・・・・・・・・・・すまない」
もう一度、保田さんは頭を下げる。
302 :
書いた人:03/02/16 03:48 ID:tiPDHCwo
何に対して謝っているかは、まだ分からないけれど、
それでも『謝りたい感情状態にあること』は、辛うじて分かる。
「いいんですよ、保田さん。
これまでも十分、いろいろ出来たと思いますし・・・それに最後に、
まこっちゃんを助けることができましたから。」
「そうか・・・もっと早く、お前の反応能力を上げておければよかったが。
これも結果論だな」
そう言って苦笑い。
だいぶ割り切ることができてきたみたい。
303 :
書いた人:03/02/16 03:50 ID:VTEXVDij
「それで・・・今回起動なされたのは・・・どうしてですか?」
核心に、触れたようだった。
保田さんの眉が、ぴくんと跳ね上がる。
「うん・・・・・・世間には怪我で芸能活動を続行できないから、ってことで何とかする。
問題は二つあってな・・・・・・一つは会長だ。
あのオヤジ、引退の話をするなら紺野を同席させろ、って聞かなかった。
恐らく・・・・・・何か駆け引きを持ってくるつもりだろうな」
保田さんはそう言いつつも、目元が笑っていた。
勝てない駆け引きはしないつもりなのでしょう。
まぁ・・・・・そういうところの智恵は悪代官より賢いから、多分大丈夫でしょう。
会長の命が心配です・・・・・・合掌。
304 :
書いた人:03/02/16 03:50 ID:VTEXVDij
「・・・・・・それで、もう一つは?」
保田さんは私の前にかがみこむと、視線を同じ高さに合わせた。
一瞬下を向くと、言いよどみつつ話してくれた。
「ああ・・・実はな、小川のことだ。
外見上は気丈に振舞っているけれど、やっぱり親友が機械だったっていうのが、
かなりショックだと思う・・・それに、そのことを秘密にさせているからな。
心に掛かっている負荷は、かなりのものだろう」
「・・・でしょうね」
「だから・・・お前の電源を落としてしまう前に、最後にもう一度、
小川と話をしてやってくれ・・・大切なのは現状認識だ。
今のあいつには、現状を認識するだけのファクターが足りん」
305 :
書いた人:03/02/16 03:51 ID:VTEXVDij
まこっちゃんの顔を思い出す。
私に相談を持ちかけてきた、沈痛な顔。
一緒にお買い物をしていた時の、嬉しそうな顔。
ステージにいたときの、生き生きとした顔・・・・・・
多分・・・ダンスよりも歌よりも、そして今まで課されたどんな課題よりも、
私にとっては辛く、そして難しい課題だろう。
306 :
書いた人:03/02/16 03:52 ID:VTEXVDij
でもやってみよう。
私は機械なんだから。
与えられた責務は、必死になってこなせばいい。
その言葉を噛みしめながら、私は保田さんの目を見た。
「・・・分かりました。それが最後のお仕事なら・・・全力でやります」
その言葉に、保田さんは満足そうに頷いた。
「うん・・・よろしく頼むぞ」
「はい!」
立ち上がりかけた私を、慌てて保田さんが抑える。
「おいおい・・・・・・まだ脚は修理してないんだから。
今回は・・・これに乗ってもらうぞ」
そう言って車椅子に私を抱き上げてくれた。
307 :
書いた人:03/02/16 03:54 ID:rPykyvo9
「紺野・・・・・・それじゃ、行こうか」
「はい!」
私はこの時、保田さんは完全に製作者の顔に戻っていると思っていた。
でも気付かなかったのだ。
憂いを帯びた眉に。
涙を浮かべた目尻に。
308 :
書いた人:03/02/16 03:58 ID:rPykyvo9
10章が長くなりそうだったので、分けました。
今回はここまでです。
お読み頂いている方、ありがとうございます。
>>276 279
ありがとうございます。
一言って、味があって好きです。
>>278 ようやく海底到達ですな。圧縮も何とか免れた模様です。
>>277 279-282
保全してくださいまして、ありがとうございます。
=-=-=-=-=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT =-=-=-=-=-=-=
*** ***
***
>>36-50 . .第1章「キカイノココロ」 (2002.12.25) ver12.32 ***
***
>>66-83 . .第2章「デジタル」 (2003.01.05) ver12.33 ***
***
>>90-103 .第3章「シンパシー」 (2003.01.13) ver12.34 ***
***
>>106-124 第4章「好き」 (2003.01.19) ver13.00 ***
***
>>130-159 第5章「目的」 (2003.01.28) ver13.00 ***
***
>>164-183 第6章「光は闇でこそ輝く」 (2003.01.29) ver13.00 ***
***
>>189-216 第7章「美意識」 (2003.02.05) ver13.00 ***
***
>>221-246 第8章「永続性」 (2003.02.11) ver13.00 ***
***
>>250-272 第9章「いつか来るべき瞬間」 (2003.02.13) ver13.00 ***
***
>>283-307 第10章「最終課題」 (2003.02.16) ver14.00 ***
*** ***
=-=-=-=-=-=-=-= ###Now Running/Condition:GOOD### =-=-=-=-=-=-=-=-=-=
test
test
test
test
315 :
書いた人:03/02/18 00:19 ID:qUl0sHYD
・・・こっそりと。
申し訳ありませんが、
今週・来週は多忙になってしまい更新できそうにありません。
このスレをみていらっしゃる方、ごめんなさい。
マターリとお待ちいただけますでしょうか?
再来週には、ちゃんと始められると思います。
(^.^> 了解しまつた
すごく好きです><次の更新を楽しみにしてます^^
でも終わってしまうのはさびしいなぁ
318 :
:03/02/20 04:57 ID:0ou9eIPY
.
羊ではどのぐらいのペースで保全すればいいのかな?
320 :
:03/02/21 00:55 ID:BRjrnpf2
スレ数が600になると圧縮されるのでその前後。
(漏れの間隔からいうと600になる12〜24時間くらい前にあればOKっぽい)
322 :
名無し募集中。。。:03/02/21 16:46 ID:r6H7b4i8
マジオモロイ!!
ハマりすぎたのでage。
323 :
b:03/02/21 16:46 ID:5bj5uE+V
http://www.media-0.com/user/gotosex/ モロ見えワッショイ!!
\\ モロ見えワッショイ!! //
+ + \\ モロ見えワッショイ!!/+
+
. + /■\ /■\ /■\ +
( ´∀`∩(´∀`∩)( ´ー`)
+ (( (つ ノ(つ 丿(つ つ )) +
ヽ ( ノ ( ノ ) ) )
(_)し' し(_) (_)_)
>>321情報ありがとうございます。
結局ageられてしまいましたが、海底sage保全で2週間はなんだか怖かったのでOKということにしときますか?それとも静かなる保全職人が結構いたりするのでしょうか?
スレ汚しすいません。
325 :
324:03/02/21 23:03 ID:R1+e62xd
いま全部読んだ。こらすげえわ。
有体に言えば、アトム物語ですよね。
自分探しの物語。娘。の魅力って、所詮は作られたアイドルである彼女たちが如何に自分らしさをみせるか、そんなところにもあると思うんです。
それを、ロボット=紺野あさ美 を狂言回し(ここで狂言師はヤスですがw)に語るという。
他にもいくつかの仕掛けがあると思うんですけど、一番すごいなーと思うのは、この小説全体が
>>1に対するアンチテーゼになってるんですね。
しかもスレタイまでもがぴったりのテーマとして採用されてる。。。。
すげえすげえ。くだらない解説&感想しかも長文すまそ。
保全
保全
328 :
書いた人:03/02/26 21:33 ID:zpDDFaiq
第11章 「共同作業」
329 :
書いた人:03/02/26 21:34 ID:zpDDFaiq
「・・・・・・・・・まさか、娘。全体を他の会社に完全移籍、とか?」
会社のエレベーター。
会長室へ上がるさなか、車椅子の後ろに立つ保田さんを仰ぎ見た。
私の発想にあまりに呆れたのか、
「馬鹿にするな・・・」
「でも・・・・・・保田さんなら、それくらいの条件を引き合いに出しかねませんけど」
『うたばん』で私に怪我をさせた張本人も保田さんだ。
この人なら何をしでかしてもおかしくはない、
というのが、私の思考回路の根底にあるらしい。
330 :
書いた人:03/02/26 21:38 ID:zpDDFaiq
・・・・・・出発前
「多分・・・あのオヤジ、お前を引退させるな、って言うだろうな」
ファンデーションを塗りたくる背中に、私は問い掛けた。
「・・・・・・でも・・・私は機械ですよ?」
私の言葉に振り返ると、にやっと笑う姿が無気味。
「お前が機械であるのと同じで、あのオヤジも商人だからな。
一つ、分からない所があるんだが・・・まあ、それはどうでもいいことだし」
それだけ言うと、また自分の顔面の精製に専念してしまった。
何故会長がそんなことを要求してくるのか、私にはわからない。
それと同じく保田さんがどうそれに対抗しようとしているのか、私には分からなかった。
331 :
書いた人:03/02/26 21:39 ID:zpDDFaiq
静かに上がってゆくエレベーターの中で、保田さんはそっぽを向いて口笛を吹いている。
まったく・・・人の気も知らないんだから。
もういいや・・・そう思い始めたとき、
「私はさ・・・あいつらを犠牲にしてまで、自分と自分の機械を守ろうとは思えないんだよ」
針が落ちるように小さな声でも、私の聴覚部品はそれを逃さなかった。
保田さんも、自分の声が私に届いていることは分かっているのだろう、
こっちを向いて微笑むと、言葉を繋げた。
332 :
書いた人:03/02/26 21:41 ID:zpDDFaiq
「よく分からんことばかりやってるけど、あそこまで娘。を育てたのは、間違いなくあの会社だ。
それに・・・・・・多分、あんな大所帯を囲っておけるの、あそこくらいだろうな。
まだ娘。に留まってる、圭織やなっちや、矢口に4期や5期の奴らも、
あそこにいれば自分の歌いたい歌が歌える、
少なくともそのチャンスがある、って思ってるからいるんだろ」
「まあ、それをご自分で意識しておられるかは分かりませんが・・・・・・そうでしょうね」
「だったらあいつらから、その可能性を奪うわけにはいかんだろ。
このダーヤスさんのためなら、喜んで人柱にはなってくれるだろうけどさ・・・」
そう言って、再び箱の隅を保田さんは見つめた。
涼しい顔をしてるけど、頬が僅かに赤いのは、照れているのかもしれない。
思わず私は、吹き出した。
333 :
書いた人:03/02/26 21:43 ID:zpDDFaiq
「・・・・・・保田さん・・・」
「なんだ?」
ぶっきらぼうに、まだそっぽを向いている。
「・・・・・・大人になりましたねぇ」
こればかりは実感。
今までは自分以外はゴミ、みたいな人だったのに。
こんなにも、他人を思いやることができたんですか・・・
人間、いくつになっても成長するんですねぇ・・・・・・
返事の代わりに、ゲンコツが飛んできた。
334 :
書いた人:03/02/26 21:43 ID:zpDDFaiq
階数表示が目指すフロアに近付く。
回路中を流れる電流の量が、心の無し多くなっているような気がする。
・・・・・・興奮してる?
別に保田さんが失敗するとは思ってないから、心配していない。
会長に会ったのは数えるくらいだけど、麻琴ちゃんほど緊張しない。
そうか、私、初めて保田さんと一緒に、何かをできるんだ。
そう思うと、なんだか嬉しくなってきた。
先に思考回路の奥の方でそれに気付いて、だから興奮してたんですね。
335 :
書いた人:03/02/26 21:44 ID:zpDDFaiq
「何笑ってんだ?紺野」
「え?なんでもないですよ」
からかい半分で聞いてきた保田さんに、笑顔を向けながら答えた。
電子音とともに、目の前のドアが開く。
車椅子を押す保田さんからも、何か楽しげな雰囲気が伝わってきた。
こんな状況が楽しいなんて・・・・・・
製作者と機械、よく似るんでしょうね。
336 :
書いた人:03/02/26 21:46 ID:zpDDFaiq
「・・・・・・と言うわけで、紺野をこのまま引退させてください。
機械であることを隠していたのは、申し訳ありませんでした」
会長室
礼儀正しく頭を下げる保田さんに驚いた。
『紺野の引退に承諾しないと、あんたの命を貰う』
とか、言うと思ってたんだけどなぁ。
頭を上げない保田さん越しに、舐めまわすように私を見る男の姿があった。
337 :
書いた人:03/02/26 21:46 ID:zpDDFaiq
「いやいや・・・・・・それはもういい。
だが、引退をさせるのは待って欲しい」
作り物の笑顔の下から出てきた言葉は、恐ろしいほど予想通り。
揉み手をしながら、顔を上げた保田さんに近付いてくる。
「・・・・・・紺野をこのまま娘。としてやらせるつもりですか?」
「ああ、そのとおり」
「何故ですか?紺野が機械であることを、隠し通す自信が?」
保田さんの言葉に、会長は足を止めた。
338 :
書いた人:03/02/26 21:47 ID:zpDDFaiq
さっきから会長の笑顔が崩れもしない。
保田さんも真意を探っているらしく、冷静な視線を送っていた。
会長のつり上がった唇の端から、私にとっては意外な言葉が漏れた。
「・・・・・・何故隠すのだ?
これほどまでに精巧なロボットがいる。
こんな売り出し要素、他のどのタレントも持ってない」
339 :
書いた人:03/02/26 21:48 ID:zpDDFaiq
―――――― 誰も、何も言わなかった。
私を機械であると公表して、娘。に置く?
確かに意外性はあるだろう。
そして、保田さんも一流の科学者として認められるだろう。
そうすれば、本来の(私の一番最初の)起動目的が果たせるわけだ。
最高の提案に、聞こえなくも無い。
340 :
書いた人:03/02/26 21:49 ID:zpDDFaiq
でも・・・・・・
保田さんだって当然気付いているはず。
それはもはや、モーニング娘。ではない。
みんなが平等の立場で競い合って、
喧嘩したり、励ましあったりしながら、自分の歌いたい歌を歌う場所。
そこに『ロボット』の私が入る・・・
歌でもなんでもない・・・
ただ強烈な個性だけが必要な空間。
例えそれが人造のものであっても、強烈な個性が。
考えただけで滑稽で、そして恐ろしい光景だった。
341 :
書いた人:03/02/26 21:50 ID:zpDDFaiq
「ふ・・・」
保田さんの口から、何かが漏れた。
「・・・・・・クックックッ・・・・・・ダメだ、我慢できない」
それだけ言うと、保田さんは文字どおり腹を抱えて笑い始めた。
爆笑に、思わず私もシンパシーが働いて、頬が緩む。
「何が・・・・・・おかしい?」
狼狽する一人のオヤジを残して、私たちは笑いつづけた。
何に対して?
そんな馬鹿馬鹿しい提案、聞いたことが無かったから。
342 :
書いた人:03/02/26 21:51 ID:zpDDFaiq
「ヒヒヒ・・・・・・会長、ごめんなさい、その提案お断りします」
目尻に浮かんだ涙を拭きながら、保田さんはやっとのことで口にした。
「何故!?」
「何故?ハーハッハッ・・・・・・ダメだ、面白すぎる。
そんなの、モーニング娘。じゃないからですよ。
そんなこともお分かりにならないんですか?」
もっと高尚な駆け引きを期待していたのか、保田さんの目にはあからさまな侮蔑が見える。
その視線に耐えられず、そして何が起こっているのかも分からず、
会長は私たちの笑い声を前に、肩を震わせていた。
343 :
書いた人:03/02/26 21:52 ID:zpDDFaiq
「・・・・・・引退会見、こちらでセッティングしておきました。
ああ、大丈夫。会長が知らない所でも、こういうことは動くんですよ。
会社って、怖いですね。つんくさんだって来られるんですから」
腕時計を一瞥して、保田さんが再び背筋を伸ばした。
「それではそろそろですので、私たちは失礼します。
あぁ・・・・・こいつが機械だってこと、ばらそうなんて思わないほうがいいですよ。
会長の世間からの引退が早まってしまいますからね」
それだけ言うと、保田さんは私の車椅子を押した。
今にも泣き出しそうな会長を残して、再びエレベーターに乗る。
344 :
書いた人:03/02/26 21:53 ID:zpDDFaiq
静かに動き出したエレベーターで、保田さんはまだ笑いをかみ殺していた。
「いいんですか?」
「まぁ・・・・・あの人がばらそうとしても、なんともならないようにしてあるよ」
「ホントに?」
「なんだ〜?このダーヤスさんが信じられないのか?」
「いえ、そんなことは無いですけど・・・・・・」
と、ニヤニヤしていた顔をあげ、保田さんは呟いた。
「・・・・・・あのまま、諦めてくれればいいんだけど・・・
そうは出来ないんだろうな・・・あそこまで行くと・・・・・・」
345 :
書いた人:03/02/26 21:54 ID:zpDDFaiq
え?
聞き返す間もなく、保田さんは続ける。
「大丈夫、何があってもいいように、ちゃんと手は打ってあるから」
そしてウィンク。
私は視覚情報の伝達を止めながら、
会長がここで諦めてくれるよう、祈るのだった。
まぁ・・・私の祈りなんて、無駄に終わるのがほとんどなんですが。
そんな私の祈りも露知らず、
「さぁ〜て、徳光さんに貰った目薬でも仕込んでおくか!」
引退会見に備えて、なぜかテンションが高い製作者がいた。
346 :
書いた人:03/02/26 22:04 ID:JxYjmLHX
用事が取りあえずすんだので、早めですが更新しました。
あとがきだけIDが違うのは、突然回線が切れてしまいまして・・・
あと・・・3、4回でしょうか。
書けば書くほど長くなるのは、私の構成力の無さでしょう。
ご感想など、よろしくお願いします。
>>310-314 318 320 326 327
保全ありがとうです。
>>316 317
励みになります。書くほど長くなるのは困ったちゃんですね。
>>322 あげましたね。そう言っていただけると嬉しいです。
>>325 そこまで私も考えてないです、実は。
実は一瞬たて読みか、とビビリましたが。
楽しく書いておりますので、これからもよろしくお願いします。
347 :
324:03/02/26 22:16 ID:5nVbyIYd
イイ・・・。
=-=-=-=-=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT =-=-=-=-=-=-=
*** ***
***
>>36-50 . .第1章「キカイノココロ」 (2002.12.25) ver12.32 .***
***
>>66-83 . .第2章「デジタル」 (2003.01.05) ver12.33 ***
***
>>90-103 .第3章「シンパシー」 (2003.01.13) ver12.34 ***
***
>>106-124 第4章「好き」 (2003.01.19) ver13.00 ***
***
>>130-159 第5章「目的」 (2003.01.28) ver13.00 ***
***
>>164-183 第6章「光は闇でこそ輝く」 (2003.01.29) ver13.00 ***
***
>>189-216 第7章「美意識」 (2003.02.05) ver13.00 ***
***
>>221-246 第8章「永続性」 (2003.02.11) ver13.00 ***
***
>>250-272 第9章「いつか来るべき瞬間」 (2003.02.13) ver13.00 ***
***
>>283-308 第10章「最終課題」 (2003.02.16) ver14.00 ***
***
>>328-345 第11章「共同作業」 (2003.02.26) ver14.00 ***
*** ***
=-=-=-=-=-=-=-= ###Now Running/Condition:GOOD### =-=-=-=-=-=-=-=-=-=
保全
350 :
322:03/02/27 19:31 ID:zSpwS1pQ
今回も良いですね〜。
この前はすみませんでした。
更新楽しみにしてます。
351 :
書いた人:03/03/01 13:55 ID:y8pV9w5G
第12章 「ホントノココロ」
352 :
書いた人:03/03/01 13:56 ID:y8pV9w5G
「紺野ッ・・・・・・大丈夫?」
控え室に入った私を真っ先に見つけて、安倍さんが声をあげた。
たちまち12人に囲まれて、もみくちゃになる。
みんな泣きそうな顔をしている。
そうか・・・・・・あの時も保田さんとまこっちゃんだけ。
みんなは情報だけ聞かされて、私と顔を合わせてなかったんだ。
353 :
書いた人:03/03/01 13:57 ID:y8pV9w5G
「紺野ちゃん・・・・・・やめちゃうんれすか?」
「辻!いきなり泣くんじゃねえよ・・・・・・みんな沈むだろ?」
「あ・・・私、自分でしっかり考えて、決めましたから・・・」
私はこれ以上、娘。にはいられない・・・覚悟はできてますから。
辻さん、矢口さん・・・・・・ごめんなさい。
354 :
書いた人:03/03/01 13:59 ID:ZAbprPNJ
「脚の方は・・・・・・ギブスで固めてるんだ・・・まだ痛むの?」
「あぁ・・・麻酔を打ってますから、特に痛みは・・・」
「身の回りとかは大丈夫?」
「ええ、実家から両親が来てくれてますから、大丈夫です」
「もしなんかあったら、すぐに言いや。うちも飛んでくから」
安倍さんも、石川さんも、加護さんも、ごめんなさい。
私は・・・こんなに心配されているのに、まだウソをつき続けているんです。
355 :
書いた人:03/03/01 14:00 ID:ZAbprPNJ
「ごめんね紺野・・・圭織がしっかりしてなかったから・・・」
「いえ・・・ホントに、私もちょっと頑張りすぎちゃったんで・・・お気になさらないで下さい」
「そうですよ飯田さん・・・悪いのは変なセットでやるテレビ局なんだから」
「よっすぃ〜と一緒に、あのセット作ったスタッフにクロスボンバーやっておいたから、ね」
飯田さん、吉澤さん、後藤さん・・・・・・ごめんなさい。
私は機械として、最後にお役に立てたんだから、幸せなんですよ。
でも、それで・・・・・・皆さんはどんな気持ちになるんでしょう・・・考えてもいませんでした。
356 :
書いた人:03/03/01 14:00 ID:ZAbprPNJ
「あさ美ちゃん・・・もうお別れなんて、早すぎるよ・・・」
「何で・・・・・・」
里沙ちゃんも、愛ちゃんも・・・ごめんね。
あなた達と同期のダメダメ少女は、機械だったんだよ。
そして・・・
私は輪の外の方で、ぼんやりとした目をしている麻琴ちゃんに目を向けた。
さっきから私と目を合わせてはくれない。
やっぱり許してもらえないのかな・・・
私は心の中で、「ごめん」を繰り返しつづけた。
357 :
書いた人:03/03/01 14:01 ID:ZAbprPNJ
「そろそろ・・・始まるみたいだから」
ドアの外の空気を察して、保田さんが囁いた。
「ほら、圭織・・・・・・あんたがしっかりしないと・・・ね」
促されて、ようやく飯田さんが濡れた視線を上げる。
「みんな、紺野とお仕事できるのはこれが最後だから・・・・・・
紺野に最後のお別れの言葉、しっかり会見で言うようにね。
紺野も・・・思ったとおりのことを、ね」
「「はい」」
返事の声も、いつもより遥かに元気が無かった。
358 :
書いた人:03/03/01 14:03 ID:NLKWPthS
私は嘘をつき続けてきた。
いや、今もつき続けている。
今まではそれでいいと思っていた。
自分が果たすべき目的を達成するには、それが最善だったから。
当然の姿だと思っていた。
・・・・・・でも、それは正しかったのだろうか?
私はこれ以上嘘を重ねることはできそうにないから引退する。
みんなに対する謝罪の想いが、私のメモリーを占め始めていた。
359 :
書いた人:03/03/01 14:04 ID:NLKWPthS
「・・・・・・紺野?」
車椅子を押していた安田さんは、私の心の変遷に気付いたのだろう、軽く声を掛けた。
「大丈夫か?」
「・・・・・・はい。ただちょっと、考え事をしていただけです」
「そうか・・・ならいいが。思ったとおりのことを言えばいいからな。
別に私に気兼ねすることはないぞ」
360 :
書いた人:03/03/01 14:05 ID:NLKWPthS
大丈夫です。
私は自分が機械であることを、あそこで明かすような浅はかな真似はしませんから。
私は考えていた。
都合のよいことかもしれないけれど、
どうすればみんなにこの気持ちを伝えられるんだろう?
機械であることを隠した上で、嘘をつきつづけて申し訳ない気持ちを。
矛盾しているけれど、そのまま伝わることは多分無理だけど。
私は考えていた。
361 :
書いた人:03/03/01 14:06 ID:NLKWPthS
車椅子の私をフレームに納めると、一斉にフラッシュが焚かれた。
みんな眩しそうに目を細める。
唯一、つんくさんだけはやつれた目を私に向けていた。
一瞬私と目が合うと、申し訳なさそうな、そんな表情をする。
そして大きく頷き、おもむろにマイクを取り上げた。
「本日は・・・紺野あさ美のモーニング娘。卒業会見におこしいただき、ありがとうございます。
皆さん既に、お聞き及びのことと思いますが・・・・・・・・・」
つんくさんの声は、今まで聴いたどんな声よりも寂しそうだった。
362 :
書いた人:03/03/01 14:07 ID:NLKWPthS
私はひたすらまこっちゃんを見ていた。
既にみんなが泣きじゃくっている中、まこっちゃんは会見場の隅の方を見遣っている。
会見が終われば、私はまこっちゃんに話さなければならない。
何て言おう?
「・・・・・・・・・それでは、各メンバーから紺野に一言づつ」
徳光さん謹製の目薬を使っている保田さんを除いては、
みんな泣きじゃくってしまって、言葉になっていなかった。
追い討ちを掛けるように、フラッシュが焚かれる。
363 :
書いた人:03/03/01 14:08 ID:NLKWPthS
「それでは次、小川麻琴」
まこっちゃんの番になり、私はまこっちゃんの方をじっと見る。
今までずっと私から目を逸らしつづけていた。
が、まこっちゃんは私の方に顔をあげた。
いや、キッと睨みつけた。
目を真っ赤にして、口をへの字に曲げて。
今まで見た、彼女のどんな表情よりも怖かった。
364 :
書いた人:03/03/01 14:09 ID:NLKWPthS
「・・・・・・・・・・・あさ美ちゃんの・・・嘘つき」
ほとんど聞き取れないような声で。
隣にいた愛ちゃんが、慌てているのが分かる。
でも愛ちゃんが思っているのとは、違う意味なんだよ、多分。
「あさ美ちゃんの嘘つき」
さっきよりも大きな声ではっきりと、まこっちゃんは繰り返した。
365 :
書いた人:03/03/01 14:10 ID:NLKWPthS
私は彼女の眼を見ながら、その言葉に頷くしかなかった。
私は機械であることを隠していた。
まこっちゃんだけじゃない、モーニング娘。のみんなに嘘をつきつづけていたんだから。
ごめんね。
だがまこっちゃんの口から出た次の言葉は、私の予想とは違うものだった。
「これからもずっと、一緒に歌っていられると思ってたのに。
お買い物したり、おしゃべりしたり、できると思ってたのに。
モーニング娘。に入った時、一緒にずっと頑張って行こうね、って言ったじゃない」
それだけ言うと、麻琴ちゃんはマイクを押し付けるように、里沙ちゃんに渡した。
保田さんはその言葉を、目を伏せて聞いていて。
愛ちゃんの肩で泣き始めてしまったまこっちゃんを、私は見つづけていた。
366 :
書いた人:03/03/01 14:11 ID:NLKWPthS
そうだよね・・・
まこっちゃんにとって大切なのは、私が機械であることじゃないんだ。
私という存在が、目の前から消えることなんだ。
今までメモリーの中で渦巻いていた迷いが、突然解決したような気がした。
今なら、まこっちゃんに言える。
本当の気持ちを。
機械であることを黙っていたことが申し訳ない、それは変わらないけれど。
それよりも大切なこと。
私はまこっちゃんも他のメンバーも、いや、モーニング娘。が好きだったんだ。
みんなが私のことを思ってくれる心が、シンパシーで伝わるから。
そんな言い訳めいたことはもう言わないでいよう。
私は私自身の心で、モーニング娘。が好きなんだ。
367 :
書いた人:03/03/01 14:12 ID:4eFQVdsJ
「それじゃ最後に、紺野自身からご挨拶を・・・」
私の前にスタンドマイクが立てられた。
一瞬全てが止まったかのような静寂を経て、私は呼吸する。
メモリーの中で思った通りのこと・・・・・・保田さん、言わせて頂きますよ。
「あの・・・どうも、今日はありがとうございます。
私、紺野あさ美は、本日をもちまして引退させていただきます。
ご覧のようにこの状態では、今までみたいに歌って踊ることはできませんから。
まあ今までだって踊れてなかったですけどね」
会場が凍りついた。
368 :
書いた人:03/03/01 14:13 ID:4eFQVdsJ
流石にこんな場面で、洒落言ってる場合じゃなかったかな?
私を構成するヤスダイズムが、恐らくこうさせるのでしょう。
私は構わずに続ける。
「私はダメダメでした。
歌も満足にできませんでしたし、ダンスも隅の方が定位置でした。
テレビ局内で二度も怪我をしましたし、結果として仲間のみんなに、
こんなにも涙を流させることになってしまいました」
保田さんがわざとらしく、私から目を逸らした。
369 :
書いた人:03/03/01 14:16 ID:tlvRS2RJ
「・・・・・・でも、この1年は私にとって、ホントにかけがえのないものでした。
あっという間に過ぎた時間を振り返って、改めて思います。
私はモーニング娘。が好きでした。
そしてその中にいた12人の仲間のことも、大好きでした」
まこっちゃんが再び泣き出した。
私はメンバーのみんなの顔を見ながら続ける。
370 :
書いた人:03/03/01 14:26 ID:rGyG1uRM
「ですから・・・・・・自分で決めたこととは言っても、引退するのは悲しいです。
それは歌や踊りができなくなることだけなじゃない、
この仲間達とお別れしてしまうことが、悲しいから。
私のせいで、ダンスレッスンやボイトレも、無駄な時間を割いてしまいました。
本当に私はみんなに感謝してます。
そして、私はこれからも、みんなことが大好きです・・・」
それだけ言うと、私は頭を下げた。
再びシャッター音が場内を埋め尽くす。
・・・・・・これで、よかったんですよね?保田さん。
371 :
書いた人:03/03/01 14:26 ID:rGyG1uRM
私のほうを見て頷いた保田さんは、涙を流していた。
多分、本当の涙。
「・・・・・・紺野、俺はお前を卒業させる気はないからな。
せめて休学、くらいに思っとけや」
去り際につんくさんが呟いた。
372 :
書いた人:03/03/01 14:28 ID:rGyG1uRM
私・・・本当に最高の1年間を過ごしていたんだなぁ・・・・・・
会見が終わった後のステージ裏。
私は初めて、自分の卒業を思って、泣いた。
みんなにもみくちゃにされながら。
みんなの嗚咽に囲まれながら。
373 :
書いた人:03/03/01 14:31 ID:rGyG1uRM
あと少しです。
ご感想など、よろしくお願いします。
>>347 わーい、片仮名だぁ。
>>349 保全ありがとうございます。
>>350 いや、別に気にはしておりませぬ。
ただ『あっ、落ちたかな?』と不安にはなりましたが。一瞬ですので。
=-=-=-=-=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT =-=-=-=-=-=-=
*** ***
***
>>36-50 . .第1章「キカイノココロ」 (2002.12.25) ver12.32 .***
***
>>66-83 . .第2章「デジタル」 (2003.01.05) ver12.33 ***
***
>>90-103 .第3章「シンパシー」 (2003.01.13) ver12.34 ***
***
>>106-124 第4章「好き」 (2003.01.19) ver13.00 ***
***
>>130-159 第5章「目的」 (2003.01.28) ver13.00 ***
***
>>164-183 第6章「光は闇でこそ輝く」 (2003.01.29) ver13.00 ***
***
>>189-216 第7章「美意識」 (2003.02.05) ver13.00 ***
***
>>221-246 第8章「永続性」 (2003.02.11) ver13.00 ***
***
>>250-272 第9章「いつか来るべき瞬間」 (2003.02.13) ver13.00 ***
***
>>283-308 第10章「最終課題」 (2003.02.16) ver14.00 ***
***
>>328-345 第11章「共同作業」 (2003.02.26) ver14.00 ***
***
>>351-372 第12章「ホントノココロ」 (2003.03.01) ver14.00 ***
*** ***
=-=-=-=-=-=-=-= ###Now Running/Condition:GOOD### =-=-=-=-=-=-=-=-=-=
いままでROMってたけど良い。サイコーこの作品。感激しました。これからもがんがってください。
やべぇっ泣けてきた。
これはラスト,マジな感動になりそうな予感。
名作ですね。
377 :
324:03/03/02 13:15 ID:/1VQjpcE
なんか展開が予想を超えてて、ドキドキしながら読みました〜。
キタイホゼン。
378 :
書いた人:03/03/02 21:01 ID:WCtsHCUN
第13章 「我は我が咎を知る、我が罪は常に我が前に在り」
379 :
書いた人:03/03/02 21:01 ID:WCtsHCUN
タクシ−で保田さんのマンションに着いた時、
長い夏の日も、既に沈みかけていた。
誰も、何も言葉を発せずに。
助手席で保田さんはぼんやりと外を見ていた。
私の隣では、まこっちゃんはまだ涙を拭いていた。
だがひたすら続く沈黙も、重いものではない。
シンパシーなんか使わなくても、痛いほど二人の気持ちが分かっていたから。
時々目に入る赤い光が眩しくて、私は目を細めた。
380 :
書いた人:03/03/02 21:02 ID:WCtsHCUN
「・・・・・・さて、私がいないほうがはかどる話もあるだろ。
ダーヤスさんは飯でも食ってくるから、小川も・・・・・・なんか買ってきてやろうか?」
努めて明るく話をしているのが分かる。
腫れてしまった目を隠すように、保田さんは色の濃いサングラスをかけていた。
「いえ・・・・・・別に、結構です」
まこっちゃんの目には、かすかな反抗心が見えた。
381 :
書いた人:03/03/02 21:03 ID:WCtsHCUN
『何故、あさ美ちゃんにも同じことを聞いてあげないのか?』
多分そんな感じなのだろう。
でもそう言った矢先、まこっちゃんのお腹から間の抜けた音がする。
それを聞いた保田さんは、気が抜けたように笑った。
「人間どんなに悲しくてむかついている時でも、腹は減るんだよ。
何でもいいな・・・・・・三十分くらいで帰るわ」
「はい」
去り際の保田さんの目が、私にそれまでに話を済ませろ、と言っていた。
382 :
書いた人:03/03/02 21:05 ID:Fzmt37PN
何から話せばいいんだろう・・・・・・
なんとなく気まずい。
と、まこっちゃんが無言で私に向かって歩き出した。
スローモーションみたいに、一歩一歩がゆっくりに見える。
私の前で膝立ちになると、まこっちゃんの腕が私の首に回された。
・・・・・・え?
少しの動揺と、その後に来る安心感。
私は一呼吸置いて、両腕をまこっちゃんの背中に回した。
383 :
書いた人:03/03/02 21:05 ID:Fzmt37PN
「・・・・・・あさ美ちゃん、ありがとう」
囁くような言葉も、私の聴覚器官は逃さなかった。
「ううん・・・・・・私の方も・・・・・・ごめんね」
言いたかった言葉。
会見の席でも、絶対に言えなかった言葉。
今だったら言える。
384 :
書いた人:03/03/02 21:06 ID:Fzmt37PN
「・・・・・・・・・あの時あさ美ちゃんが突き飛ばしてくれなかったら、私・・・」
腕を解いた麻琴ちゃんは、それだけ言うと私の前で泣き崩れた。
満足に動けない自分が恨めしい。
私は車椅子から必死で下りると、まこっちゃんの前にひざまずいた。
外見だけは修復された両脚が、露わになる。
一瞬、まこっちゃんがびっくりしたように見えた。
385 :
書いた人:03/03/02 21:07 ID:Fzmt37PN
「あさ美ちゃん・・・脚は・・・?」
少しの期待がこもった言葉。
外見から見れば、もう普通の人間と何も変わらない。
「これは、外だけ直してもらったの。
・・・・・それより、私もごめんね。今までずっと黙ってた」
私の言葉に、まこっちゃんはがっかりしたように目を伏せた。
人間の肌と同じような外観が、一瞬まこっちゃんに期待を抱かせてしまったらしい。
386 :
書いた人:03/03/02 21:09 ID:2uV+a7+C
「機械だけど・・・・・・私は紺野あさ美だよ。
それだけ、そのことだけは、変わらないからさ」
私の言葉に、まこっちゃんが顔をあげる。
その言葉が何の慰めにもならないことは分かっている。
「・・・・・・私は機械だけど、それでも、まこっちゃんのことが大好きだから。
今までずっと・・・・・・・・・今も、ね」
『これからも』とは、敢えて言わなかった。
これから永久に電源を落とす機械の言う言葉ではないから。
私の言葉に、まこっちゃんは小さく頷いて、また涙目になった。
387 :
書いた人:03/03/02 21:09 ID:2uV+a7+C
もう言葉なんて要らなかったんだ。
私が機械であるとか、そのことを隠しているとかではない。
私はまこっちゃんのことが好きで、まこっちゃんも私のことが好きだから。
それだけで充分だから。
388 :
書いた人:03/03/02 21:10 ID:2uV+a7+C
お互いに少し落ち着いたのか、私たちは少しずつだが言葉を交わし始めた。
「ごめんね・・・・・・もう、一緒にお買い物とかできないけれど」
「ううん・・・・・・大丈夫。でも・・・あさ美ちゃんは・・・?」
「うん、もう決めたんだ。
何の目的もないのに、機械が存在なんかしていちゃいけないから」
その言葉に、僅かだがまこっちゃんの目が見開かれた。
「何で?私はこんなにも、あさ美ちゃんにそばにいて欲しいって思ってるのに。
それでもやっぱり・・・・・・ダメなの?」
まくし立てる麻琴ちゃんに、私は力なく首を縦に振るしかなかった。
389 :
書いた人:03/03/02 21:11 ID:2uV+a7+C
ダメなんだよ。
まこっちゃんの近くにいても、また同じことが起きるかもしれないもの。
娘。にはいられない。
娘。ではなく、まこっちゃんの近くにいる方法?
そんなの・・・・・・無いから。
それを伝えようとした時・・・・・・・・・
「・・・・・・・・それはできない相談だな」
いつの間にか入り口近くに立っていた保田さんが呟いた。
390 :
書いた人:03/03/02 21:13 ID:zWYKezEe
「紺野を・・・もう、紺野あさ美として動かすことは不可能だ。
それ以外の起動目的がない以上、私はこいつを起動してはおけない」
眼鏡をかけなおしながら、保田さんは言葉を紡ぐ。
「小川・・・・・・そんな怖い目で睨むなよ。
いや、私にはその視線にさらされる義務があるかな・・・」
床に座っている私とまこっちゃんの所まで来て、保田さんは腰をおろした。
即座にまこっちゃんが噛み付く。
391 :
書いた人:03/03/02 21:13 ID:zWYKezEe
「・・・・・・このままじゃ・・・あさ美ちゃんが可哀想です!」
「・・・・・・だろうな。
私も、紺野があそこまでモーニング娘。を好きになってくれると思わなかった。
それを考えずに起動停止をきめたのは、私のミスだ」
私は保田さんの異変に気付いていた。
冷静にものを言いながら、かすかに唇の端が震えている。
・・・・・・本心じゃない。
今の保田さんは、製作者の仮面をかぶっているんだ。
392 :
書いた人:03/03/02 21:14 ID:zWYKezEe
その言葉にまこっちゃんがキレた。
「何で、そんな冷静にものを言えるんですか!?
あさ美ちゃんは、もうほとんど人間と同じじゃないですか!
それをそんな言い方・・・・・・・・・・」
最後の方は感極まったのか、唇を真一文字に結んでいるだけだった。
393 :
書いた人:03/03/02 21:15 ID:zWYKezEe
「お前や私がどう思おうと、そして紺野が娘。のことが好きであっても、
こいつが機械であることには変わりがない。
『紺野が可哀想』・・・・・・確かにそうだろうな。
それじゃ存在が自己目的化したこいつは、可哀想じゃないのか?
今までにみたいに、モーニング娘。にべったりはしていられない。
また機械であることがばれれば、取り返しがつかないかもしれない。
ただ外にいて、ぼんやりと24時間を過ごす紺野は・・・・・・」
そこまで言って、保田さんは大きく息をついた。
「・・・・・・ys-keiは、これ以上紺野あさ美として起動してはいけないんだ」
保田さんはまこっちゃんを説得するために、わざと冷静を装っている。
今型番を使ったのも・・・多分、機械であることを認識してもらうため。
394 :
書いた人:03/03/02 21:17 ID:IPwdPAg0
途中からまこっちゃんは、顔を両手で覆っていた。
私はどうすればいいか分からず、ただ2人のやり取りを見つめる。
まこっちゃんがかすれた声で、でも、はっきりと保田さんに呟いた。
「・・・・・・保田さんは、酷いです」
ひたすら悲しい目をして、保田さんはその言葉を受けとめた。
395 :
書いた人:03/03/02 21:18 ID:IPwdPAg0
「私は・・・確かに酷いな。
罪人かもしれない。
勝手な目的で紺野を造って、そして勝手に紺野の電源を切ろうとしている。
全ては私が自分勝手にしてきたことだ・・・・・・」
保田さんの声が、涙に詰まる。
今まで、保田さんも大変だったんですよね。
私に毅然として臨みながら、自分のこともやらなくちゃいけなくて。
それは到底、一人の人間の肩に負わせるには重過ぎるものだったから。
396 :
書いた人:03/03/02 21:19 ID:IPwdPAg0
涙に暮れる二人を交互に見比べる。
私の口からは、メモリーで考えるよりも先に、言葉が出ていた。
「いえ・・・・・・そんなに、お気になさらないで下さい」
保田さんとまこっちゃんが、同時に顔をあげて私を見る。
「そりゃあ確かに、娘。にもっといたかったですし、
保田さんやまこっちゃんとも、もっとずっと一緒にいたかった・・・
でも保田さんが私を造ってくれたからこそ、
私はこんなにも楽しい時間を過ごせたんですから」
397 :
書いた人:03/03/02 21:19 ID:IPwdPAg0
私を見て、保田さんが大きく息を吐いた。
「・・・・・・紺野・・・・・・」
私はそれに大きく頷く。
「だから私は保田さんに酷い、なんて気持ちは持ってません。
こんなにも楽しい思いができたのは、保田さんのお陰ですから。
ありがとうございました・・・・・・これだけです」
頭を下げた私を見て、堰を切ったかのように保田さんが泣き出した。
398 :
書いた人:03/03/02 21:20 ID:IPwdPAg0
「・・・・・まこっちゃん・・・」
麻琴ちゃんのほうに向き直る。
「お願いだから、分かって・・・・・・
私は人間じゃない。
だからこそ、私はまこっちゃんと出会えたんだし、
一緒に歌ったり、踊ったりできたんだから」
まこっちゃんが再び俯いて、涙をこぼし始めた。
薄暗くなった部屋の中で、私たちはいつまでもそうしていた。
399 :
書いた人:03/03/02 21:22 ID:kirJz8Ka
やっとのことで泣き止んだまこっちゃんをなだめて、
玄関から送り出したのは、もう日付が変わっていたのかもしれない。
電源を切る瞬間まで付き合う、と言い張るまこっちゃんに、
『あの場面を見せるのは忍びないから』と、保田さんが断ったのだ。
400 :
書いた人:03/03/02 21:23 ID:kirJz8Ka
「・・・・・・・・・こうして私がここに座るのも、最後ですね」
電源台の上で呟く。
私を見て、保田さんがふっと笑ったように見えた。
「何ですか?」
「いや・・・・・・もう明日から、がらっと一日が変わっていくんだろうなぁ、って」
「でしょうね」
401 :
書いた人:03/03/02 21:24 ID:kirJz8Ka
―――――― 沈黙
「紺野さ・・・・・・自分で電源が入れられるように、セッティングしておこうか?」
そういった保田さんの顔は、うそぶいていた。
そんなこと、やっちゃいけないって分かってるはずなのに。
私は首を振る。
「いいえ・・・・・・闇の中でひたすら考えるのは、もうたくさんです。
もしまた御用があれば、起こしてください。
その時は・・・・・・また必死に、その目的を果たすまでですから」
「あぁ」
・・・・・・保田さんなら、軽率に電源を入れるわけないから。
信じているからこそ、こんなこと言えるんですよ。
402 :
書いた人:03/03/02 21:25 ID:kirJz8Ka
気まずい沈黙。
最後に伝えたいことを、必死で考える。
そうだ、あのことを・・・・・・
「保田さん!」
私の威勢のいい声に驚いたのが、保田さんはびっくりして目を見開いた。
「・・・・・・私、保田さんのこと尊敬してますよ。
いつかの日記にあったんですよね・・・『尊敬する人は保田さん』って言わせるって。
でも、今は私の偽らざる本心です。
尊敬してますよ」
私の言葉に照れくさかったのか、保田さんは顔を真っ赤にして、
「つまんないこと、思い出すんじゃないわよ」
と、笑った。
403 :
書いた人:03/03/02 21:27 ID:OhNKL/7h
いつまでも話しているわけにはいかない。
でも保田さんが電源を切れないのも、なんとなく分かっていた。
踏ん切り、って難しい。
「それじゃ、そろそろ・・・」
仕方がないので自分で切り出す。
「うん・・・・・・」
404 :
書いた人:03/03/02 21:28 ID:OhNKL/7h
「紺野・・・」「保田さん・・・」
二人の声が重なった。
「・・・・・・紺野から言っていいぞ」
「あの・・・・・・今までありがとうございました。
この3年、本当に楽しかったです。
・・・・・・ありがとうございました」
「・・・・・・・・・・・・私もそれを言おうと思っていた」
保田さんがかすかに笑ったように見えた。
私もそれに微笑み返す。
やっぱり私たち、どこか似てましたね。
405 :
書いた人:03/03/02 21:30 ID:OhNKL/7h
そうか。
もう余計な言葉なんて、必要なかったんですね。
保田さんが電源に触れた。
「・・・・・・それじゃ」
「お世話になりました・・・・・・さようなら」
かすかな衝撃が私の回路を走る。
406 :
書いた人:03/03/02 21:31 ID:OhNKL/7h
紺野あさ美・・・・・・・・・kei-ys ver14.00電源を切ります。
改良事項は・・・・・・もう点検する必要ありませんね。
私を構成する全ての部品、全ての回路の皆さん・・・
そして保田さんとまこっちゃん・・・娘。の皆さん・・・
おやすみなさい。
407 :
書いた人:03/03/02 21:34 ID:OhNKL/7h
次で終わりです。
・・・と申しますか、次をもう書いてありますので、
目次殿がきたら、すぐ次を上げ始めます。
>>375 はじめましてですね。感想書いてくださって嬉しいです。
>>376 期待に添えるラストになっている自信がまるで無いです、実際。
>>377 私の中では、かなりありきたりな物語になってますが。
期待を裏切れたなら嬉しいです。
更新乙。
さぁ目次さんカモン!
すいませんいきなりタメ語っぽくて。いやけどマジで良いッス。多少涙しました。がんがってください。
410 :
書いた人:03/03/02 21:53 ID:OhNKL/7h
はてさて・・・どうしたものか。
うP再開→途中に目次→マズ−
というのは困ったチャンなので、目次殿を待っているのですが。
22時まで待ってこられなかったら、始めちゃいましょう。
(根気が足らんな、私)
411 :
書いた人:03/03/02 22:00 ID:OhNKL/7h
終章 「リング」
412 :
書いた人:03/03/02 22:02 ID:OhNKL/7h
「愛ちゃーん!!里沙ちゃーん!!先行っちゃうよ!」
「待って、まこっちゃん・・・あ、ねえ、里沙ちゃん、あのスカート・・・可愛くない?」
背後で愛ちゃんの声が聞こえる。
鬱陶しい梅雨が明けて、初めてのオフ。
今日は六期の子達とお買い物・・・・・・・・・のはず。
約束の時間は迫っているのに、二人は足を止めては、ウインドを覗く。
413 :
書いた人:03/03/02 22:03 ID:OhNKL/7h
先輩になったのに、こういうところはちっとも変わってないんだから。
ホント、保田さん相手だったら一喝されてると思う。
あの一喝・・・・・・もう二度と味わえない、いや、味わいたくない恐怖。
保田さんが卒業してから、もう2ヶ月。
あんなに怒鳴られることは、二度と無いけれど。
でも、何かそれが悲しい。
私はそんなことを思って、ボケーッと道の真ん中に突っ立っていた。
414 :
書いた人:03/03/02 22:04 ID:OhNKL/7h
「あの・・・すみません。小川・・・・・・麻琴さんですよね?」
くいくい、と袖を引っ張られる感触に振り返る。
中学生くらいの女の子が、私の顔を覗き込んでいた。
背が矢口さんくらいに小さくて、可愛い顔立ち。
ピンクのロングスカートが眩しい。
お買い物に、精一杯お洒落をしてきた感じだった。
415 :
書いた人:03/03/02 22:04 ID:OhNKL/7h
しまった・・・裏道だからって油断してた。
通りの向こうでは、その子の友人なんだろうか。
『やめときなよー』
とか言ってる。
ホントなら、ここで否定しなくちゃいけないんだけど・・・
まるでその暇を与えまい、とするかのように、彼女は一気にまくし立てた。
416 :
書いた人:03/03/02 22:06 ID:OhNKL/7h
「あ、あの・・・私、モーニング娘。の、いえ、小川さんの大ファンなんです。
えっと・・・・・・ほら、ケータイにも小川さんのシール貼ってるし、それから・・・
うーんと、えっと・・・」
何だ彼女は一人で勝手に混乱していて。
そんな姿が、なんとなくあさ美ちゃんを思い出させる。
たまには・・・いいかな?
私はまだ錯乱している女の子に、右手を差し出した。
「ありがとう・・・・・・これからも、応援よろしくね」
417 :
書いた人:03/03/02 22:06 ID:OhNKL/7h
その言葉を聞いた彼女といったら・・・
驚きと、喜びと、戸惑いがいっぺんに来た感じ。
なんだか不思議な動作を交えながら、彼女は私の右手を痛いほど握った。
いや、痛かったのは握力だけじゃない。
指輪・・・か。
東京の中学生は、指輪とか普通にするんだよなぁ・・・
そう思いつつ、目を指輪に落とす。
見慣れた細工。
私とお揃い・・・・・・・
いや、私とあさ美ちゃんで二人で買ったペアリングと、お揃いだった。
418 :
書いた人:03/03/02 22:08 ID:OhNKL/7h
動悸が早くなる。
よくある指輪だし、ただの偶然だってことは分かってる。
でもその指輪を見たら、まるでなだれ込むようにあさ美ちゃんの姿が思い出された。
ダンスが下手で、歌も酷くて、
それでも頑張ってて、笑顔が眩しかった。
あさ美ちゃんの脚から出ていたコード。
例え機械であっても、あさ美ちゃんはあさ美ちゃんなのだ。
彼女のことを思い出していると、
涙が、溢れた。
419 :
書いた人:03/03/02 22:09 ID:OhNKL/7h
「あの・・・・・・小川・・・さん?」
目の前には私にいつまでも右手を離してもらえず、動揺した彼女の顔があった。
「あ、はは・・・ごめんね」
照れ隠しに、手の甲で涙を拭う。
ダメだな・・・・・・止めよう、って思えば思うほど、涙は出てくるんだから。
涙で霞む、そして自分の手の甲で遮られている視界の中で、
かすかに彼女が笑っているように見えた。
420 :
書いた人:03/03/02 22:10 ID:OhNKL/7h
いや、笑っている。
嘲笑ではない、親が子供を見ているみたいないな、微笑。
見た目からも、どう考えても年下の子なのに、その笑顔が凄くよく似合う。
その口が開いて息を吸うと、彼女は呟いた。
「元気そうだね・・・・・・安心したよ。
頑張ってるみたいだけど、焦っちゃダメ。
まこっちゃんは、自分のペースで走っていけばいいんだよ」
外見からは似合わない言葉が漏れる。
時が、止まった。
421 :
書いた人:03/03/02 22:11 ID:OhNKL/7h
私はまだ彼女の右手を離せずに。
涙はその量をますます増して。
そしてそんな私を、彼女は慈しむように見ていた。
ずっとずっと、二人で手を握ったまま。
まるで路上のここだけ、別世界みたいに。
5秒くらい・・・いや、30秒、1分もやっていたのかもしれないけれど、
彼女は遠くに目をやると、もう一度私に向き直った。
422 :
書いた人:03/03/02 22:12 ID:OhNKL/7h
「あ・・・愛ちゃんと里沙ちゃん、もう来ちゃうね。
まこっちゃんのことが心配で出てきたけど・・・大丈夫そうだね。
それじゃ、私行くから」
一生捕まえておきたかったはずの感触なのに、
彼女の右手はいともたやすく私の手から逃れた。
何か言いたいはずなのに、喉から声が出てこない。
全て嗚咽に代わっていた。
423 :
書いた人:03/03/02 22:12 ID:OhNKL/7h
「それじゃあ、ホントに、ありがとうございました!!」
場違いに大きな声でそれだけ言うと、彼女は友達のもとへ走り去った。
『大丈夫だったの?』
『うん、とってもいい人だったよ!』
『私も行けばよかったかな〜?』
そんな声が聞こえてきた。
私はその姿を眺めながら、一言も口を聞けなかった。
ただ言葉の代わりに、涙だけが出てきた。
424 :
書いた人:03/03/02 22:13 ID:OhNKL/7h
あさ美ちゃん、あさ美ちゃん、あさ美ちゃん・・・・・・
声に出したい、どうしても。
今なら、呼び止められる。
今なら、彼女の手を握って『また会えたね!!』って言える。
でも、保田さんの言葉が耳の奥で木霊した。
『仮にこいつを動かすとしても、もう紺野ではない全く別人格として、だな』
話しちゃいけない。
だってあの子は、もう『紺野あさ美』ではないから。
私は呆然として、道の真ん中に突っ立っているしかなかった。
涙で、視界がかすんだ。
425 :
書いた人:03/03/02 22:14 ID:OhNKL/7h
「なぁ〜にやってんの?まこっちゃん?」
気がつくと、愛ちゃんと里沙ちゃんが私の顔を不審げに覗き込んでいた。
「え?ええ?なんでもないよ!」
とりあえず返事だけ。
あたりを見回してみたけれど、彼女達の姿はもう、どこにもなくなっていた。
「変なまこっちゃん・・・・・・」
里沙ちゃんと愛ちゃんは顔を見合わせて、首を傾げた。
そして2人で頷きあうと、
「ほらっ、行くよ!!早くしないと後輩たちが怒っちゃう!」
私の腕を引いて、走り始めた。
426 :
書いた人:03/03/02 22:16 ID:OhNKL/7h
私は引かれながら、まだ考えていた。
さっきの出来事が、まるで白昼夢みたいで。
でも彼女の姿を見て、ちょっと安心もしていた。
私とあさ美ちゃんの道は、あの時に別れた。
あさ美ちゃんは、『紺野あさ美』ではなくなって、
そして私はまだ、娘。として走りつづけている。
あさ美ちゃんは今でもきっと私を、いや、娘。を応援してくれているんだ。
427 :
書いた人:03/03/02 22:17 ID:OhNKL/7h
そう考えると、なんだか里沙ちゃんと愛ちゃんに引っ張られているこの身体も、
自然とスピードを出せる気がした。
無理なんかしない、私自身のベストのスピード。
私は2人の腕を振り払う。
驚いたように、二人は私に振り返った。
「よっし!!待ち合わせの場所まで競争!!」
そう宣言すると、私は一気に歩行者天国の道を駆け抜けた。
キカイノココロ おわり。
428 :
書いた人:03/03/02 22:22 ID:OhNKL/7h
―――― あとがき
キカイノココロは終了です。
今まで読んでくださっていた方、本当にありがとうございました。
元が半分冗談で始めたようなものだったので、
実際に工学を学んでいる方には、『な〜に言ってんだか』みたいな場面が多かったと思います。
その辺は見逃してください。
今までレスを下さった方々。
最初に私にレスをしてくれた方――あなたがいなかったら、私は続けませんでした。
隠れた名作スレに紹介してくださった方、
『おすすめ』にしてくれた総合スレの報告人様。
本当にありがとうございました。
長いので次のレスに続きます。
429 :
書いた人:03/03/02 22:26 ID:OhNKL/7h
―――― あとがき続き。
深く考察してくださった方、私あそこまで考えてませんでした。
始まり方がシャレで始めちゃったようなものですので。
ただこのスレ名が気に入った、というのは事実です。
当分の間、小説も書けないと思います。
私が再び書く頃には、このスレも海の底で役割を終えていることでしょう。
このスレはどうぞ、誰か小説でもネタでも書いてあげてください。
それでは取りあえず、私の肩の荷も下りたな、ということで。
乾燥書いて下さい、いや、マジで。
泣いた
431 :
書いた人:03/03/02 22:30 ID:OhNKL/7h
>>429 ×乾燥 → ○感想
最後まで校正甘いですね、私。
=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT (1/3) =-=-=
* *
*
>>36-50 . .第1章「キカイノココロ」 *
* (2002.12.25) ver12.32 *
*
>>66-83 . .第2章「デジタル」 *
* (2003.01.05) ver12.33 *
*
>>90-103 .第3章「シンパシー」 *
* (2003.01.13) ver12.34 *
*
>>106-124 第4章「好き」 *
* (2003.01.19) ver13.00 *
*
>>130-159 第5章「目的」 *
* (2003.01.28) ver13.00 *
* *
=-=-=-=-=-=-=-= ###NOW ??????????????? MODE### =-=-=-=-=-=-=-=
=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT (2/3) =-=-=
* *
*
>>164-183 第6章「光は闇でこそ輝く」 *
* (2003.01.29) ver13.00 *
*
>>189-216 第7章「美意識」 *
* (2003.02.05) ver13.00 *
*
>>221-246 第8章「永続性」 *
* (2003.02.11) ver13.00 *
*
>>250-272 第9章「いつか来るべき瞬間」 *
* (2003.02.13) ver13.00 *
*
>>283-308 第10章「最終課題」 *
* (2003.02.16) ver14.00 *
* *
=-=-=-=-=-=-=-= ###NOW ??????????????? MODE### =-=-=-=-=-=-=-=
=-=-= 紺野あさ美─kei-ys WORKING LOG SHORTCUT (3/3) =-=-=
* *
*
>>328-345 第11章「共同作業」 *
* (2003.02.26) ver14.00 *
*
>>351-372 第12章「ホントノココロ」 *
* (2003.03.01) ver14.00 *
*
>>378-406 第13章「我は我が咎を知る、我が罪は常に我が前に在り」 *
* (2003.03.02) ver14.00 *
* ##################################################### *
*
>>411-427 . 終章「リング」 *
* (2003.03.02) ver14.00 *
*
>>428-429 . あとがき (
>>431 修正) *
* (2003.03.02) ver14.00 *
* *
=-=-=-=-=-=-=-= ###NOW ??????????????? MODE### =-=-=-=-=-=-=-=
>>作者様へ
まずは完結おめでとうございます。
毎回楽しく読ませていただきました。
それで、んーと、目次が遅れたのはですね、
第13章のタイトルが長くて今までの枠内に入らない→全体的に広げる→本文長すぎエラー→
デザイン変更及び分割して作り直し→これでよし、さてアップしよう→えっ、最終回始まってる…
というわけでした。…とにかくすみません、遅れて。しかも
>>434の
>*
>>411-427 . 終章「リング」 *
>* (2003.03.02) ver14.00 *
> ~~~~~~~~
>*
>>428-429 . あとがき (
>>431 修正) *
>* (2003.03.02) ver14.00 *
> ~~~~~~~~
波線部削除しようとして忘れました、すみません。
最後に今までお疲れ様でした。
ステキなお話をありがとう。
437 :
書いた人:03/03/02 22:57 ID:l/xCBJq6
>>435 なるほど。そういうわけでしたか。
実は自分でも『長いんじゃないの?』って思ってましたが、
あの言葉は非常に好きで、しかもぴったりだと思ったのでつけてしまいました。
あなたもお疲れさまでした。
あと返事忘れ。
>>408、430 その一言で、書いてよかったなって、思います。
>>409 例によって気にしておりませぬよ 。
胸キュン。すっごい言葉に表せないくらい感動物です。書いた人さん…かんどーをありがとー。
御脱稿乙彼様ですた。
胸にジーンときますた。
そーいえば、
♪寄り道みたいな始まりがぁ〜
と、つ○くPもアノ名曲で歌ってましたね。
むっちゃ良かったです。
書いた人さん乙彼&ありがとう。
久々にいい作品に巡りあったって感じです
充電(? してまた素晴らしい作品期待してます
良かった。ホント良かった。マジで良かった。
泣けた。あんた天才だよ。
スマソ。アフォなのでこれ以上賛美の言葉が出てこない。
ただこれだけは言える。
こ の 作 品 に 出 会 え て 良 か っ た
最後に,「書いた人」
乙。
443 :
感動☆:03/03/03 22:41 ID:N0x4tdfF
本当陳腐な言葉になってしまうけれど、良かった。です。
感動しますた。紺野だから良かったですほんと。
>>書いた人さん
素晴らしい物語をありがとうございました。
途中、長文しかも変な解説つけちゃって、すいませんでした。
あの時はなんか興奮に任せて思わず書いちゃって、
翌日自分で読み返して顔から火が出るほど恥ずかしかったんですけど、
心優しいお返事いただいて救われました。
あさ美ちゃんに再会できたまこっちゃんの様に、
ふたたびあなたの小説に偶然出会えるときを楽しみにしております。
またしても長文すまそ。
>>42>>43は「ゴシック」→「ゴシップ」でしょうか。
一ヶ所だけならタイプミスかとも思ったのですが。
文章自体は読みやすいです。
446 :
書いた人:03/03/06 12:32 ID:3RiiZ+kh
皆様、ご感想ありがとうございます。
こんなに読んでる人がおられるとは思ってませんでした。
自分で読み返してみると、何だか語彙が少ない上に、
登場人物泣いてばっかじゃん・・・と、愕然としております。
でも『書くことは楽しいかも』と、思えるようになりましたし、
こんなに感想頂けた、というのは何よりの収穫です。
ホントは皆様にちゃんとレスするのが礼儀かと思いますが、
ちょいと時間がありませぬので、申し訳ないです。
>>445 はい、間違いです。ごめんなさい。
ちなみに
>>416も、×『何だ彼女』→○『何だか彼女』です。
今日はじめてこのスレを見つけて一気に読みました。
いやぁ、朝から泣いてしまいました。良い作品をありがとうございました。
(・∀・)ジツニ イイ!!
449 :
書いた人:03/03/09 01:50 ID:OQtDtlgu
レス忘れ・・・
>>436 ありがとうございました。
終わり方だけは辛うじて決めていたので、どうにか形にはなったでしょうか。
>>438 当初はお笑い方向にしようかとも思いましたが、
私にはそれだけの能力が無かったので、挫折しました。
これで感動していただけるのは、あなたにそれを受け止める度量があるからです。
>>439 その歌を・・・知りませぬ。ごめんなさい。
人間きっかけなんて、よく分からないものですね。
こんな所で実証する必要も無いのですけど。
>>440 3ヶ月程度ですが、お付き合いいただきありがとうございました。
その間、ヒマさえあれば、続きをどうしようか考えていました。
1年も2年も続けておられる作者さんには、正直ビクーリです。
今度はもっと計画性を持ちます・・・・・・小学生の通信簿みたいですね。
450 :
書いた人:03/03/09 02:02 ID:OQtDtlgu
>>441 本当にひらめき、というものに欠ける人間ですので、
次を書けるか、といえば不明瞭この上ないのです。
>>442 いやそれだけの賛辞を頂いて、本当に書いてよかったと思います。
私も、あなたがこれを読んでくれてよかった、とお返ししたいです。
>>443 何故紺野か?といえば、私が持っている娘。メンバーの情報の中で、
紺野さんが一番多かったからだと思います。
>>444 いえいえ。赤面する必要なんてないですよ。
私があまり、物事に裏を持たせたことができませぬので。
もっともっと、練った小説もいつか書いてみたいですね。(意欲だけ)
>>447 陳腐なラストになっていないかと、かなり心配でした。
でもそう言っていただけると、本当に安心します。
いや、小心者ですので。
>>448 あなたも(・∀・)イイ!!
ありがとうございました。
久々に娘。小説で泣きましたよ・・・
名作でごじゃいます!
452 :
書いた人:03/03/15 00:44 ID:TV1ALoBI
かなり前に書いたのが、FDから発見されましたのではってしまいます。
・・・・・・時期がぎりぎりっぽいんで。
題名は「ユキノヒ」
453 :
書いた人:03/03/15 00:46 ID:TV1ALoBI
雪は、音を消して。
控え室の窓から見える1メートル四方の東京の街は、既に白い絵の具に浸され始めて。
止めることが怖いかのように絶えない雑踏や、車の騒音も、
今日は白色絵の具に塗りつぶされていた。
いや、確かに雪が消していたんだ。
雪は、音を消して降りつづけて。
454 :
書いた人:03/03/15 00:45 ID:TV1ALoBI
雪は、音を消して。
控え室の窓から見える1メートル四方の東京の街は、既に白い絵の具に浸され始めて。
止めることが怖いかのように絶えない雑踏や、車の騒音も、
今日は白色絵の具に塗りつぶされていた。
いや、確かに雪が消していたんだ。
雪は、音を消して降りつづけて。
455 :
書いた人:03/03/15 00:47 ID:TV1ALoBI
「・・・・・・雪、か・・・」
わざわざ音声にする必要なんて無いのに、思わず呟いてしまうのは、
「雪?」
「マジで?」
「おおぉ〜、かっけ〜!!」
「すごいねぇ〜」
いつも、どんな小さな声にでも反応してくれる仲間たちがいるから。
456 :
書いた人:03/03/15 00:48 ID:TV1ALoBI
窓辺に駆け寄ってきた、11人の仲間達に私は微笑みかける。
「ええ、雪・・・・・・ですね」
この人たちなら、例え私の声を雪が消してしまっても、きっと見つけてくれる。
そう信じて余りある、11人。
・・・・・・いや、みんな私の声に答えてくれた人たち。
そして
私はみんなの声に答えられたのだろうか、答えられているのだろうか?
モーニング娘。に入って1年経つけど・・・・・・どうだろう?
457 :
書いた人:03/03/15 00:50 ID:TV1ALoBI
「あ〜、東京大雪警報だって」
保田さんが携帯の画面を覗きながら呟いた。
「まぁ・・・・・・レコーディング大体終わってるからいいでしょ。
みんな終わったら、さっさと帰んないとダメだよ〜」
飯田さんの声に、そこそこから気の抜けた返事が聞こえる。
私はまだ窓の外を見ていた。
東京でこんな降り方を見るなんて。
まるで義務みたいに降る雪は、既にかなり積もり始めていた。
458 :
書いた人:03/03/15 00:51 ID:TV1ALoBI
・・・・・・雪合戦とか、したいなぁ。
北海道にいたころは散々やったこと。
あの頃は、私は雪が大好きだった。
いや、もちろん今でも好きだ。
でも・・・・・・・・・
いつからだろう?
心の隅で『雪が降ると、大変だなぁ』って、声が聞こえ始めたのは。
楽しかったはずの雪が、どこか面倒なものに感じられたのは。
459 :
書いた人:03/03/15 00:51 ID:TV1ALoBI
「紺野ちゃん・・・・・・北海道はもっと降るの?」
耳元で辻さんの抑えた声が聞こえる。
この控え室に雪が降っているわけではないけれど、
どこか辻さんの声も抑えて聞こえたのは、
多分、ぴんと張り詰めた冬の空気のせい。
「うん・・・・・・降るよ」
振り向いて返事をした私に、辻さんは満足そうに頷いた。
460 :
書いた人:03/03/15 00:53 ID:TV1ALoBI
「雪・・・懐かしい?」
「うん」
「じゃあみんなでさ・・・・・・・・・雪合戦、しようよ」
さっきの言葉は声に出さなかったはずなのに。
辻さんの提案にはっとする。
ニコニコと笑顔を湛えたままで、
でもどこか心配そうに、彼女は私の返事を待っている。
私が雪を見て、ホームシックにかかったとでも思っているのかな。
461 :
書いた人:03/03/15 00:54 ID:TV1ALoBI
私の沈黙を諾ととらえたのか、辻さんは飯田さんのところへ飛んでいった。
なにやら相談している。
まさかOKされるはずは・・・・・・と思っていたら、
意外と飯田さんや安倍さんがやる気まんまんで。
気がついたらモーニング娘。全員で、スタジオの屋上で雪合戦、ということになっていた。
勢い込んでコートを抱える辻さんに、保田さんが呼び掛けた。
「あぁ、でも辻」
「ん?」
「あんただけまだレコーディング終わってないでしょ?
待っててあげるから、雪合戦は終わった後、ね」
辻さんが機嫌を悪くしないように、気を使い使い話しているのが分かる。
でも、当の本人は・・・
462 :
書いた人:03/03/15 00:55 ID:TV1ALoBI
「・・・・・・じゃあ、私はあとから行く!」
大人の返事に、保田さんは目を丸くした。
辻さんの目は、堅い意志とそして暖かいものを秘めて。
それに押されたのか、
「どうする?圭織?」
「まぁ・・・辻がいいなら、いいんじゃない?
細かい所だけだから、30分もかからないでしょ?」
部屋を出る私たちに、辻さんは軽く笑って見せた。
・・・・・・その笑いが、私に向けられているように見えたのは、どうしてだろう?
463 :
書いた人:03/03/15 00:56 ID:TV1ALoBI
屋上の扉を開くと、頬に冷気が触れる。
その感覚が何だか心地よくて、私は目をつぶった。
充分に降り積もった雪の上を、一歩一歩踏みしめる。
足元を見ながら、ギュッギュッという音を身体中で感じた。
久しぶりの感覚。
・・・・・・・と、私の後頭部を、突然衝撃が襲う。
吉澤さんの投げた玉が、私に当たったから。
後から襲ってくる冷たさに構わず、私は足元から雪をすくって投げ返す。
・・・・・・それが合図だった。
464 :
書いた人:03/03/15 00:58 ID:TV1ALoBI
雪合戦に・・・ルールなんてなかったかな?
ただひたすら、雪を握っては投げるだけ。
時に石川さんに集中攻撃をして、
時に吉澤さんの固く握った球が当たって。
キレ気味の飯田さんのフォームは、なぜか異様に型にはまっている。
私も反撃しようと、素手で必死に雪を固めていた。
・・・・・・しまった。
手袋忘れちゃった。
465 :
書いた人:03/03/15 00:58 ID:TV1ALoBI
気づいた時には、もう私の手は真っ赤にかじかんでいた。
軽い痺れと、指先の内側から来る痒さ。
霜焼けかな?
20分近く手袋無しでやっていたのだから、当然といえば当然。
・・・・・・・・・・・・弱ったなぁ。
466 :
書いた人:03/03/15 00:59 ID:TV1ALoBI
「あ!のの!」
加護さんの嬌声で、飛び交っていた雪が一気に止まる。
その視線の先に、雪だるまみたいに着膨れした辻さんが立っていた。
「終わったよ〜。よかったぁ、まだやってて」
そう笑いながら、辻さんは私に黒い物を差し出す。
楽屋に忘れた、私の・・・・・・手袋?
467 :
書いた人:03/03/15 01:00 ID:TV1ALoBI
「あぁ!ありがとう!」
「紺野ちゃん、忘れちゃダメだよ・・・・・・へへ」
厚い布に包まれた私の手は、もうさっきのもどかしい感覚からは解放されて。
飯田さんや安倍さんに誉められて、辻さんは照れくさそうに笑っていた。
468 :
書いた人:03/03/15 01:02 ID:TV1ALoBI
・・・・・・・・・
更に30分もやっただろうか。
雪合戦が終わった頃には、もうみんな息をつかせていて。
猛烈な疲れも、どこか楽しくて。
上気する頬に、思わず手をあてた。
そうか・・・・・・
雪を煩わしい、なんて思っていたのは、私が東京で一生懸命になりすぎてたから。
北海道の時の感覚を忘れてた。
雪が降れば電車が遅れて、道が混んで・・・・・・
そんなことしか考えられなくなってたんだ。
469 :
書いた人:03/03/15 01:03 ID:TV1ALoBI
でも、私はいつでも戻れるだろう。
だってこの50分で、私は雪をこんなにも楽しいものだと思えたんだから。
また昔を忘れても、それを取り戻してくれる仲間がいるんだから。
一列になって、私たちは階段を下った。
470 :
書いた人:03/03/15 01:03 ID:TV1ALoBI
元のように控え室に戻り、みんなはそれぞれに上着を脱ぎ始めた。
私もストーブの近くに行って、凍えた身体を溶かす。
遅れて襲ってきた猛烈な疲れに、少し楽屋が静まり返っていた。
バン!
大きな音を立てて、入り口のドアが開かれる。
辻さんが私たちを見て、少し悲しげな目を向けていた。
「あぁ・・・・・・やっぱり、もう帰ってきちゃったんだ」
471 :
書いた人:03/03/15 01:05 ID:TV1ALoBI
「なぁ〜に言ってるの?一緒にさっきまでやってたでしょ?」
石川さんの言葉に、辻さんは大きくかぶりを振った。
「今、やっとレコーディング終わったんだもん」
「まさかぁ・・・・・・・・・みんな、一緒だったもんね?」
石川さんがすがるような目付きで私たちを見た。
それぞれに頷く私たちに、辻さんの瞳はますます悲しげになる。
頬を膨らませて、涙目になって。
でも・・・・・・
「なんや?辻?やっぱもう終わってたんか。
レコ長引かせてスマンかったな」
472 :
書いた人:03/03/15 01:06 ID:TV1ALoBI
辻さんの後ろから顔を出したつんくさんの言葉に、空気が止まった。
混乱した矢口さんがつんくさんに詰め寄る。
みんなが自分のいた状況をひたすら主張する。
収拾するはずのない喧騒。
辻さんは雪合戦にも、レコーディングにもいた?
一気に騒然とした控え室で、私は膝に置いた手袋を見た。
手袋はまだ濡れたまま。
473 :
書いた人:03/03/15 01:08 ID:TV1ALoBI
外を見ると、まだ雪が降っていた。
室内の喧騒以外は、外からは何も聞こえてこない。
雪は、音を消すから。
今度は私が、みんなの声に答えられるようにならなくっちゃ。
例え雪で言葉が消されても、絶対答えて見せるんだから。
474 :
書いた人:03/03/15 01:09 ID:TV1ALoBI
辻さんは・・・・・雪合戦だけじゃない、手袋まで、私の声に答えてくれた。
今、私の胸に、辻さんの声が痛いほど伝わってくる。
今なら答えられる。
今こそ、答えるときなんだ。
心の中で頷いて、私は辻さんの弁護をしに立ち上がった。
みんなが納得する言葉じゃ、到底ないとは思うけど。
今私に言えるのは、これなんだ。
475 :
書いた人:03/03/15 01:09 ID:TV1ALoBI
もう一度、みんなで雪合戦やりましょうよ、ね。
476 :
書いた人:03/03/15 01:11 ID:TV1ALoBI
「ユキノヒ」 おわり
477 :
書いた人:03/03/15 01:13 ID:TV1ALoBI
以上です。
さてさて、それでは私は撤収。
読んでくれたら、ありがとうございます。
>>451 ありがとうございます。そんな誉れに預かるとは、光栄です。
よんでた。よい。
上のとまた違う感じで良かった。
読んだよ。良い。(゜∀゜)
これもミステリアスな感じで良いね。
怖そうな話だけど
最後の一行がそうならない。絶妙だね。
ってなんで庵は偉そうに批評してんだ。
申し訳。
ののこん良いね。話も良い。
482 :
:03/03/16 01:42 ID:6l9lMD8j
483 :
書いた人:03/03/17 20:57 ID:DHtnp05j
なんだかdat落ちにn日ルールというのが、使われているらしいですね。
ということは、このスレもそろそろ立ってから4ヶ月に差し掛かりますので、
運命の時間は間近なのですね。
皆様どうも、ありがとうございました。
それだけどうしても伝えたかったので、書きます。
ここに小説を書けて、本当に良かった。
カタイ人、ガン( ゚д゚)ガレ!!
>>484の注釈
書いた人さん、感動をありがとうございました。あなたの作品は間違いなく、名作でした。
出来たらもっと書いた人作品が読みたいです。だから、最後に、みたいな言い方なんかしないで
書いた人さん、まだまだ頑張ってください。漏れはこのスレを命に変えても保守します。
の略
(・∀・)イイ!!
漏れも小説書こうかな、とか思い始めた保全
鯖移転に耐えて良く頑張った!感動したっ!
ちなみに
>>439は「シソグルベッド」ですな。
書いた人さんは若者でつか?
489 :
書いた人:03/03/21 01:24 ID:GXElgDkd
>>485 書きたいのですがねぇ。時間が・・・
そう言って頂いて、ホントに嬉しいです。
>>488 なるほど・・・その曲でしたか。
私が高校生の時の曲ですねぇ・・・でも、その時期ジャズに明け暮れており、
ほとんどポップスを聴いていなかったのです。
若くはないですよ。気だけです。
世界の平和と人類の幸福
なんかじゃなくて、この手で触れられる距離にいる人たちを……、
いや、私の腕の中にいるこの人を守っていけたら、いつまでも一緒にいられたら、
そんな風に思っていた。
長生きスレヽ(´ー`)ノ
良い作品でした。ほ
>>491はなんですか?何かの小説のプロローグみたいだけど、プチ感動。
ホゼム