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334『APART』 ◆SAKUgUdd02
「加護!!!」
『ししょぉ…げふっげふっ。きのぉは、ごめんなさい…。』 
「あ、あのね、これ…」
『あ…。』

私は加護の前に履歴書を広げた。

『あかんの…正体がばれてしもた…』
「え??」
『神様とのお約束やねん…ばれたら元の場所にもどらなあかん…。
まだ若いうちに神様がくれたプレゼントやってん。憧れの…ししょぉのところへ。って』
「…憧れの?」

加護のからだが微かに光を帯び始めた。
私はそれが何を意味しているのか悟った。
335『APART』 ◆SAKUgUdd02 :03/03/19 21:10 ID:u9pX4rHt
「加護…消えちゃう…。」
『うちな、ずっとモーニング娘。が憧れやってん、入りたくってママにも内緒で
オーディション送った!けどな、ちょっとして、うち病気やってわかった。』
「なんの!?」
『心臓のやって。そんなにたくさん説明されなかったけど、うちきっともうすぐ…。』
「…そんな…。」
『本当のうちは大阪の病院のベッドでねてんねん、きっともう何日も。』
「……。」
『そやから…お別れや…。』
「え!待って!イロイロ…私なんか話したいことあったような…。」
『…へ…??』

加護の小さなカラダが光を放った。

「加護!待って!!!!」
『おおきに、ねぇ生まれ変わったら、うちししょぉの子供になれるかな?』
「なっ、なれるよ!!!ねぇ、ごめんね!昨日!!!」
『うちもごめんなさい、今度会ったらきっとたくさん話すんや。』
「当たり前だよ!!!加護…。」

ぱしゃっ!!!
水がはじけるような音がして、

加護が消えた。

光の粒がキラキラ、ベッドの上で光って消えた。

「加護ぉぉ…。」
336『APART』 ◆SAKUgUdd02 :03/03/19 21:11 ID:u9pX4rHt
私は次の日、市井ちゃんと話す決意をした。
逃げていたんだ、私は。
そりゃ市井ちゃんがいなくなるのは辛いけど…。
それでも加護みたいにいきなり離せなくなるのは嫌だ!!
加護はそれを教えてくれたの…??

「圭ちゃん、圭ちゃん、私ね、市井ちゃんと話すよ。」
「…ふぅん。」
「!なぁんだ、ほめてくれると思った!!」
「ばっっかねぇ。それが当たり前でしょ〜。あんたが聞かなかっただけ!」
「…ま、そなんだけどね。」
「あ、さやか来たよ。いっといでよ。」
「…うん、話聞いてくれてありがと。」
「ううん、…なんかあったの?」
「何で??」
「すっきりした顔!」
「…そうかなっ!大事な事を教えてくれた子がいたの!!」

337『APART』 ◆SAKUgUdd02 :03/03/19 21:11 ID:u9pX4rHt
「市井ちゃん。」
「…後藤…。」
「市井ちゃん、お話聞かせて!!」
「…うんっ!」

私たちは自販機が並んでいる前にある椅子に座った。

「なんか飲む??」
「じゃあ…くー。」

私はQOOのオレンジ。市井ちゃんはウーロン茶。
一口飲んで市井ちゃんが ふうっ と息をはいた。

「ごめんね、後藤になんにもいわなかったこと。」
「…私こそ…聞こうとしなかったし…。いつでも話せるって、思ってた。」
「うん。」

市井ちゃんはウーロン茶を口のところに持ってって、止まった。
338『APART』 ◆SAKUgUdd02 :03/03/19 21:12 ID:g36n3Ewf
「私ねぇ、シンガーソングライターになりたいんだ。」
「…うん。」
「自分の言葉でみんなに伝えたいの。」
「それは…娘。じゃ出来なくなっちゃったの?」
「うん。きっと私がメインになれる事はないわけよ。」
「プッチがあるじゃん!?」
「伝えたいもの違いかな。はは。」

市井ちゃんは止めていた缶を口につけてかたむけた。


339『APART』 ◆SAKUgUdd02 :03/03/19 21:13 ID:g36n3Ewf
「けどさ、シンガーソングライターになった時にさ。」
「うん。」
「自分の言葉でみんなに伝えられるの!わかる?」
「そりゃわかるけど…。」
「私は今からそれが楽しみでさぁ…。」

私は市井ちゃんをチラっとみて思った。
何て素敵な顔で笑うんだろう。

「う〜ん、止めても無駄だってわかった。」
「うん、わかってくれたか、ありがとう!」
「頑張ってよね!がんばらないと承知しないから。」
「当たり前でしょ、誰があんたみたいに生意気な子を育ててきたと思ってるの。」
「はは。」
「根性はあるからさ。母さん頑張る。ふふ。」
340『APART』 ◆SAKUgUdd02 :03/03/19 21:14 ID:g36n3Ewf
市井ちゃんが一息ついて言った。

「私がさ、今一番気がかりなのはあんただよ。」
「…私??」
「いい先輩になりなよ。」
「…うん。なる。」
「うん。よし。じゃあみんなのとこ戻るか!」
「待って、頭なでなでして。」
「…甘えん坊さんねぇ〜、おいで。」

市井ちゃんの手が頭をなでてくれる。
それがもうグッときてしまった。

「ひぐ。えぐえぐ。」
「もぉ〜。泣き虫さんなんだから…。」
「最後はっ、笑顔でっ、送りだすもん、えぐえぐ。」