−学校−
「加護ちゃぁん、今度はなぁにこれ??」
愛ちゃんに話しかけられる。
「これ?…ディオールのペンダント。」
「ふーん、今度は誰に買ってもらったの。」
「…おばあちゃん。もうすぐ誕生日だから。」
「私も欲しいなぁ、麻琴!これディオールだってよ!」
「アッ…。」
ここ最近毎日のように増えていくアクセサリに愛ちゃんは不信がってるらしく増えるたびに聞いてくるようになった。それでその後には麻琴ちゃんと秘密会議。私もいつか吉澤さんみたいに噂されてしまうんだろうかと不安になった。
後藤さんは、こんな事もわかってて私達に忠告したんだろうか?
<件名:ののさぁん
本文 何か金遣いが荒いからかな、クラスの子に噂されてるみたいダヨ。ののはないの?>
メール送信。
愛ちゃんは麻琴ちゃんのそば。私の周りには誰もいない。めんどくさくなくて逆にせいせいしてるよ。メールにも集中出来るし!
ぶぶぶ。
<件名:あいぼんっ(・△・)
本文:なにげに梨華ちゃんいがいの友達はあんまいないからキラクかもだよ、梨華ちゃんとはいがいと気があうんだよ☆>
…寂しい。
たまには思うけど。
「あいぼん!次はラルクいきま〜す!」
「頑張って〜!」
サトシさんとのカラオケももう10回ぐらいになって慣れてきた。まだ慣れないのはカウンターの時くらい。
「あいぼぉん」
歌の途中にサトシさんが隣にくる。
おじさんのニオイがする。
「なんですか?ジュース?」
「もう1万プラスするから胸さわらせてよ…」
「えっ…。」
「………冗談冗談!さ、次はポルノだ〜」
予想外の展開にドギマギした。
それから私は3分おきに携帯の時計を確認して早く終わるのを祈った。
「じゃあここで!」
「さよなら」
手のひらは汗でベットリしていた。
私は矢口さんの家に向かうために電車を乗り継いでいた。
いきなりあんなこと言われるなんて…。
やっぱりこんなことやめよう。私まだ変わってないけど、でもやっぱりあれは気持ち悪い。ののにも悪いけど…。
いろいろ考えてると矢口さんの家の前に着いた。
そこには久しぶりに見た梨華ちゃんの姿。
でもそれは初めて見る泣き顔だった。
「梨華ちゃん…?」
「加護ぉ…。」
顔をあげた梨華ちゃんの頬は涙に濡れていた。
「どうしたの?外寒いのに…こんなとこで…」
矢口さんのアパートは家と家とか向かいあっている道に建っているから風がよく通って寒い。
そういう自分も少し震えた。
「私、彼氏、ひっく。いるのよ。あ、こないだ会ったよね、ヒック…。あいつね、今日ね…ふっ…うぇぇ…。」
梨華ちゃんはそうゆって泣き出すと地面に崩れ落ちた。
「ちょっ…梨華ちゃん待って!落ち着いて話して!ね?」
私達は近くのファミレスに入った。
梨華ちゃんはまだしゃくりあげていたけど落ち着きは取り戻したみたいでまた話を続けた。
「あいつ、今日私が矢口さんちに行ったらいたの。なんでかしんないけど…けどね…私が矢口さんちに入るよね、こう…。」
梨華ちゃんはドアを開ける仕種をしてみる。
「うんうん。」
「二人ね…何か…なんていうの…?覚せい剤みたいなのしてたんだぁ…。」
「かっ…。」
「何か粉みたいの火であぶって煙すいこんでた…あれってそうだよね…。」
「そんなこと…」
驚いて言葉にならない。私は口をぽかんとあけたまま梨華ちゃんを見つめていた。
♪〜♪
「アッ。私だ…もしもし?…わかった…すぐ行くから…じゃあね」
「…誰だったの?」
「…彼氏。矢口さんちの前にいるから来てって。」
「…そぉ…。大丈夫?」
「加護、良かったらついてきてくれない?」
「うん、一緒に行く!」
「じゃあ…ここでいいよ。」
梨華ちゃんはゴクリと唾をのみこんだ。
「私、話終わるまで待ってるよ。」
「加護…ありがと、うん行って来る。」
梨華ちゃんは前をピッと向いて歩き出した。
矢口さんちのアパートの角で私は様子をみることにした。
梨華ちゃんの彼が矢口さんちの玄関からでてくる。
梨華ちゃんも気付いて一瞬からだをこわばらせた。
「あっ…!」
次の瞬間彼はわけのわからない事を叫び梨華ちゃんの胸ぐらを掴んで地面に押し倒した。
「梨華ちゃん!!」
「チッ…わかったな?ちゃんと持ってこいよ!」
彼は私に気付きまた矢口さんの部屋に戻っていった。
「ひっぐ…ふぅっ…」
「梨華ちゃん…」
梨華ちゃんは地面にうずくまって動かない。涙がとまらないみたいで肩を震わせて息をはいていた。
「あいつっ…にね、私のっ…ね、稼ぎはんぶん…くらいわたしてたっ…の。んぐっ…。」
私は背中をさすって頷く。
「こんどのねッ…デートのっ…ね、かせぎはっ…全部も…てこいって…」
そこまで言うとおっきく息をはいた。そして私の肩をグッと掴み、
「加護っ…次に会うまでに10万なの!協力して!お願い!私あんな奴だけど好きなの…お願い、お願いっ…」
「梨華ちゃん…」