石川ファンの方ごめんなさい

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210すー ◆u3wemm2zXw :03/02/15 19:35 ID:a2rOlFTH

「っぁぁっっ!」
「くっ!」
 新垣が放つ無数の触手を切り払いながら、市井はじりじりと後退した。
 その時、ゴロゴロという雷の遠鳴りと共に、空を暗雲が覆っていった。
「!? なんだ?」
 横目で真里達の方を見ると、そこには祈る様に天に手をかざし呪文の詠唱を
続ける真里の姿があった。
(復活しやがったか! ったく、またせやがって)
 思わず笑みがこぼれる。
 それを見た新垣も真里達の方へ視線を向ける。
「! しまった! 詠唱魔法かっ!?」
 市井に腕を落とされ、怒りに我を忘れて真里にとどめを刺す事を後回しに
してしまったがゆえに起こった致命的ミスだ。
(くそっ! 私は馬鹿か! 向こうには覚醒天使がいるんだ。矢口さんが復活
するのは解っていたはずなのにっ!)
 新垣は鉤爪を振るい市井を牽制すると、身を翻し真里に向かって飛んだ。
「おおあああぁあっっ!!」
 周囲に出現した無数の魔力のかたまりが、レーザーのような光りの帯となって
次々に真里目掛けて放たれる。
 だがそれも真里の後ろで念じたなつみの作り出した障壁にことごとくぶつかり、
はじけて霧散してしまう。
「真里の邪魔はさせないべっ!」
「っ! このアマアアァァッッ!!」
 真里に向かい飛行する新垣が、怒声を上げた。
 その時、それをかき消すかのように、轟音と共に暗雲から雷が真里に降り注いだ。
211すー ◆u3wemm2zXw :03/02/15 19:36 ID:a2rOlFTH

「っ!」
 その勢いに弾かれ地面に転がった新垣を睨み、真里は詠唱を続けた。
「雷を司る魔神デオヴォリークよ……汝に与えられし風光、我が力と混じりて
地礫を疾けよ……」
 詠唱により魔界から召喚した雷が、真里の身体を包み薄紫色に輝く。
「……終わりだ、新垣」
 バチバチと放電する右手を新垣に向け、真里が力を解放する。
「降魔雷光陣っっ!!」

 キンッ!

 一瞬、空気の割れたような音が響くと、新垣の周囲を覆うように雷の帯が煌き、

 ズガガアアアッッッ!!

「っがああああぁぁぁああっっっ!!」
 凄まじい轟音と紫の光と共に、新垣の身体を幾千もの雷が走り抜けた。

 やがて新垣の絶叫が小さくなるにつれ、光もその輝きを失ってゆく。
「……あ……っ……」
 炭化した新垣の身体がボロボロと崩れ、風にその欠片が削られる。
 ぐらり。
 力なく新垣の身体が傾き、ズズゥンと音をたてて地に倒れた。
212すー ◆u3wemm2zXw :03/02/15 19:37 ID:a2rOlFTH
ちょっと短いけどとりあえずうp。
続きは明日上げます。

>>207-208
まとめありがとうございます。
だんだん更新感覚が開いて行く様が一目瞭然ですね(笑

>>209
六期は書くの難しそうですね。
キャラが足りなくなったりネタに困ったら出すかもしれませんが。
今出したらどうでもいい役所になりそうです。
某○矢のスチールセイントみたいな…(古っ
213すー ◆u3wemm2zXw :03/02/15 19:39 ID:a2rOlFTH
×更新感覚 ○更新間隔
214名無し募集中。。。:03/02/15 21:31 ID:YdxKs+7l
☆★☆ 【魔神召喚】セーブポイント VOL.2 ★☆★
                   (VOL.1 >>207

 三章「反乱軍」
  >>137-139 (Save@2003.01.09)
  >>143-144 (Save@2003.01.10)
  >>147-148 (Save@2003.01.12)
  >>152-154 (Save@2003.01.14)
  >>160-163 (Save@2003.01.17)
 四章「覚醒」
  >>170-172 (Save@2003.01.21)
  >>175-177 (Save@2003.01.24)
  >>184-187 (Save@2003.01.31)
  >>197-201 (Save@2003.02.08)
  >>210-211 (Save@2003.02.15)

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
215すー ◆u3wemm2zXw :03/02/16 16:50 ID:T7Yc4wGO

「……やった……」
 その光景にゴクリと喉を鳴らす市井。
 やがて沈黙していた兵達の間にざわめきが立ち、それは徐々に広がっていく。
 保田が腕を振り上げ、高らかに宣言する。
「諸君! 魔族を率いし敵将は討ち滅ぼした! 我々の勝利だっ!」
「ぉおおお――――――っ!!」
 市街中に歓声があがった。
「よし! 軽傷の兵達は魔物達の残党を追撃しろっ! 一匹たりとも逃すな!」
 保田の声に兵達は雄叫びと共に剣を天に掲げ、散り散りに撤退を始めていた魔物達に
向かっていった。

「……っ……」
「!」
 兵達が去ると同時に、伏した新垣の体がピクリと動く。
 緊張に剣を構える市井を、真里が手で制した。
「……私は……」
 ブルブルと震えながらゆっくりと体を起こす新垣。
 その炭化した体は、すでに原型をとどめていない。
「……私は……負けない……矢口さんを……超えて……みせ……」
「……新垣……あんた……」
216すー ◆u3wemm2zXw :03/02/16 16:51 ID:T7Yc4wGO
 這いずり近寄ろうとする新垣を、真里は複雑な面持ちで見つめた。
 かつては自分の指揮していた魔術師団の一部隊長。
 父の期待に応え、自分を超える為、たったそれだけの為に人間である事を捨て、
魔人との融合などという邪法に身を委ねた少女。
 最早塵となって死を迎えようとしている彼女に、真里はどんな思いを抱けば
いいのか解らなかった。
「でも……」
 ふっと新垣の表情が安らいだ気がした。
「はは……やっぱり矢口さんは……すごいです……。結局……超えられなかった……
いや、超えるとか超えないとか、そんな事に……こだわった時点で……すでに……」
「新垣……あんたは、オイラを超えたよ。……一対一の闘いだったら……オイラの
負けだった……」
 泣いているような、笑っているような複雑な表情の真里を見て、新垣は一瞬驚いた後、
笑みを浮かべた。
「ありがとう……ございま……」

 ドンッ!!

 その言葉を遮り、突如飛来した黒い魔力の槍が新垣を貫いた。
「……ぁ……」
 そのまま新垣は崩れ去り、風に溶けて消えた。
「なっ!!」
 真里達は驚き槍の飛んできた方向を振り仰いだ。
217すー ◆u3wemm2zXw :03/02/16 16:52 ID:T7Yc4wGO

「はーい、お疲れー」
 パチパチと馬鹿にしたような拍手と共に、空中に開いた黒い穴から、二人の少女が
姿を現した。
「っなんだおまえらっ!」
 怒鳴る市井に二人はニヤリと笑い、ふわりと地上に降り立った。
「お初にお目にかかります、吉澤ひとみと……」
「チャーミー石川こと、石川梨華で〜っす」
 わざとらしく恭しい礼をし、真里を見る。
「……この気配……魔人……?」
「そ。新垣みたいな中途半端な融合体じゃなく、純正の、ね」
 吉澤はクスッと笑うと、髪をかきあげ言った。
「いやー、それにしても流石は元帝国宮廷魔術師だけの事はありますね。まさか
人間の身であそこまで強力な魔術を使えるとは思いませんでしたよ。ちょっと計算が
狂っちゃったかなー?」
「そうだよね。しかも……」
 石川はちらりとなつみを睨みつけ、
「忌々しい天使の力を持つやつまでいるみたいだし?」
 石川の殺意の篭った視線になつみはブルッと震え、真里の体に隠れるように袖を
ぎゅっと握る。
218すー ◆u3wemm2zXw :03/02/16 16:53 ID:T7Yc4wGO

「……ま、いっか」
 吉澤は軽くため息をつき、
「ホントは新垣と共にこの国の人間を皆殺しにする為に来たんだけど、気が変わった」
 バサッと吉澤がマントを振ると、再び黒い穴が出現する。
「あんた達、どうせ帝国に来る気でしょ? 私達帝国で待ってる事にするわ。たった今
一戦したばっかで疲れてる奴殺っても面白くないし」
 黒い穴から漏れる闇が、吉澤と石川を包み、同化していく。
「じゃあね。帝国でまた会いましょう」
「グッチャー♪」
「っ! まて!」
 ハッと正体を取り戻した市井がとっさに飛びかかり、剣を振るう。
 だが一瞬早く闇は消え失せ、市井の剣はむなしく空を斬った。
219すー ◆u3wemm2zXw :03/02/16 16:54 ID:T7Yc4wGO

「……真里……」
 二人が消えるまでじっと黙り込んで睨み付けていた真里を、なつみが呼ぶ。
「……純正の魔人……。矢口、勝てるのか?」
 保田も厳しい表情で真里の肩に手を置く。
「……わからない……。今のオイラじゃ……勝てないかもしれない……」
 真里の顔を冷たい汗が流れる。
 対峙した時から感じていたプレッシャー。
 殺気を抑えてなお圧倒的な威圧感。
(新垣とは比べ物にならない邪気。……あれが真の魔人……)
 初めて出会った真の異界の住人に、真里はかつて味わった事のない恐怖を感じていた。
(オイラに……倒せるのか……?)
 心の中で再び自問する。

 押し黙り立ち尽くす真里の体を、冷たい風が吹き抜けていった――。

 ―― 四章 覚醒 ―― 完
220すー ◆u3wemm2zXw :03/02/16 16:59 ID:T7Yc4wGO

次回【五章 帝国潜入】

…やっと四章終わりました。
予定外の展開と更新間隔の開きに予想以上に長く感じてしまったり。
保全して下さった方々、改めてありがとうございました。
これからもまったり更新になると思いますが、ご容赦下さい。
221名無し募集中。。。:03/02/16 17:55 ID:GVMYuh2W

いしよし、怖いけどかっけー
222名無し募集中。。。:03/02/17 13:20 ID:zrFNxPPo

☆★☆ 【魔神召喚】セーブポイント VOL.2 ★☆★
                   (VOL.1 >>207

 三章「反乱軍」
  >>137-139 (Save@2003.01.09)
  >>143-144 (Save@2003.01.10)
  >>147-148 (Save@2003.01.12)
  >>152-154 (Save@2003.01.14)
  >>160-163 (Save@2003.01.17)
 四章「覚醒」
  >>170-172 (Save@2003.01.21)
  >>175-177 (Save@2003.01.24)
  >>184-187 (Save@2003.01.31)
  >>197-201 (Save@2003.02.08)
  >>210-211 (Save@2003.02.15)
  >>215-219 (Save@2003.02.16)

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
223名無し:03/02/22 22:50 ID:pWXvvLCV
保全
224名無し:03/02/24 14:59 ID:kgRd+QDK
225 :03/02/26 00:36 ID:aACKV733
てす
226すー ◆u3wemm2zXw :03/02/27 00:59 ID:qnxBQ2kE

―― 五章 帝国潜入 ――

「……報告は以上です」
「……うむ。ごくろう」
 兵士から自軍の現状を聞いて保田は苦い顔をした。
 西の都王城、謁見の間。
 新垣率いる魔軍の侵攻から四半刻。
 すでに日は暮れ、室内には王女保田、反乱軍隊長市井、そして真里の他、
数名の兵士がいるのみである。
「……作戦の変更をしなければならないな……」
 被害は西の都正規軍千の内半数が戦死、重軽傷者多数。
 戦える者はごく僅かである。
 予定では魔に魂を売った帝国宰相を撃つという大義名分の元、全軍を率いて
帝国に攻め入るはずだった。
 だが、先手を打たれ新垣等の襲撃をうけたことで、自軍の立て直しを余儀なく
されてしまった。
「だけど、あたしらには時間がない。帝国が万一にも魔神の召喚を実現させて
しまったら……」
 市井の言葉に室内は重い空気に包まれた。
227すー ◆u3wemm2zXw :03/02/27 01:00 ID:qnxBQ2kE

「……オイラが行くよ」
 沈黙を打ち破る様に真里が呟いた。
「元々一人でカオリを倒しに行くつもりだったし……。帝国が魔物達の巣窟に
なってるとはいえ、カオリの元まで辿り着ければ……」
「……倒せるのか?」
「……儀式の最中なら、スキはある。きっと……」
「違う。宰相の事じゃない」
 真里の言葉をさえぎり、保田は立ち上がった。
「あの吉澤と石川という二人の魔人の事だ。あいつらはおそらく儀式中の宰相を
守る為、そばにいるはずだ」
「……」
 保田に言われ、真里は口を結び俯いた。
 確かにそうだ。
 あの二人もカオリが召喚した魔族である以上、カオリを倒されれば魔界に
帰る他ない。
 当然全力でカオリを守るだろう。
228すー ◆u3wemm2zXw :03/02/27 01:01 ID:qnxBQ2kE
「あたしも行くよ」
「! 紗耶香!?」
「あいつら、本気になればあの新垣って奴より強いんだろ? 普通にやったんじゃ
まず勝てないけど、あたしがあいつらを抑えてる間に矢口が宰相を倒せばこっちの
勝ちだ」
「そりゃそうだけど……」
「それに」
 市井は剣の鞘を握り締めた。
「あいつ……吉澤とかいうやつ、あたしが斬りかかった時笑いやがったんだ。
馬鹿にしたように、な。負けっぱなしってのはどうも性に合わないから」
 保田はしばし考えた後、苦笑して頷いた。
「わかった。それじゃ矢口と紗耶香。それに無傷の反乱軍兵士を何人か連れて、
帝国にいってちょうだい。私もなるべく軍の再編を急ぐけど、おそらく帝国に
攻め入る頃には儀式は終わっちゃうだろうしね。少数で潜入し、なんとか
儀式だけは止める事」
「おっけー!」
 市井と真里は頷き合い、親指を立てた。
229すー ◆u3wemm2zXw :03/02/27 01:02 ID:P7g03uDS

「それじゃ、さっそく出発しようぜ。あたしが目をかけてる奴が何人かいる。
そいつらをつれていこう」
「うん。それじゃ、オイラ達を合わせて六、七人位かな。あんまり数がいても
しょうがないし……」
 真里が言うと同時に、扉がバタンと開いた。
「もちろん、なっちも数に入ってんだべな?」
「うちらも行きたいなー。な、のの?」
「へい」
「なっち!?」
「加護! 辻!」
 真里と市井が驚いて振り向くと、開け放たれた扉の外になつみ、辻、加護の
三人の姿があった。
230名無し募集中。。。:03/02/27 05:33 ID:cYq658wo

☆★☆ 【魔神召喚】セーブポイント VOL.3 ★☆★
            (VOL.1[一、二章] >>207
            (VOL.2[三、四章] >>222

 五章「帝国潜入」
  >>226-229 (Save@2003.02.27)

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
231名無し募集中。。。:03/02/27 22:35 ID:TO9ouVs2
交信キターーーーーーーーーーーーかチョーさん
232七人の名無し:03/02/28 01:06 ID:ByIlOiHs
ヒサブリ更新お疲れさまです。いやーだんだんおもしろくなってきましたね。これからもがんがってください。
233 :03/03/04 23:27 ID:czqmwfyd
234すー ◆u3wemm2zXw :03/03/05 23:15 ID:FVUwkYma

 朝日も届かない薄闇の中、聞こえてくるのは魔獣の唸り声のみである。
 かつては繁栄し賑わった帝国城下の街並みも、今はそこを行き交う人の姿は無い。
 人々を食らい、それが果てた後には同族同士ですら食らい合う魔物達。
 その黒い影が跋扈する帝国は、最早魔界のそれと大差無い魔都と化していた。
(今この国に存在する「人間」は三人)
 紺野は神殿の門の前で一人空を仰いだ。
帝国宰相、飯田。
 未だ地下牢に封じられし中澤。
 そして、僧兵団長である自分のみである。
(いや、今や宰相を人と呼ぶことは間違いかもしれない)
 帝国の力を盤石とする為に魔神の召喚などという暴挙に出た彼女の姿が、
脳裏に浮かぶ。
(今となっては宰相が何を望んだのか、解らない)
 カオリは已然儀式の最中である。
 魔神を呼ぶための生贄を門とし、現世に召喚された魔物達は、彼女が守るべき
国その物を廃墟と化してしまった。
(もしや、始めから宰相はそのつもりで……?)
 馬鹿な、と紺野は頭を振り邪推を打ち消そうとする。
 だが視界にある魔都を見るたび、その懸念は心の中で渦巻き、肥大化する。
(そんな事をして何になる? 自らの国を、ましてや住む世界を壊す? 馬鹿馬鹿しい)
 ガッと門柱に拳を叩きつける。
235すー ◆u3wemm2zXw :03/03/05 23:16 ID:FVUwkYma

 その音に近くを徘徊していた魔獣がピクリと反応し、のそのそと紺野に近づいてくる。
(わからない……宰相の真意が……。私は……どうする……?)
 魔獣を気にも留めず思案する紺野に、背後から鋭い牙を並べた魔獣の巨大な口が迫る。
 ガッ!
「ッギャッ!?」
 後ろを向いたまま、紺野の手が魔獣の口から大きく飛び出した牙の一本を握り、
その攻撃を止める。
「……私に近寄るな」
 ゆっくりと振り向きながら睨みつける紺野の右手が霞んだ。
 グシャッ!
 鈍い音を立て、魔獣の頭部が肉片を撒き散らし、四散する。
 紺野が数歩歩いた時、背後で魔獣の倒れる音が響いた。
 おそらくは自身が死んだであろう事すら認識できないまま頭部を失い屍となった
魔獣に、数匹の魔獣が群がりその肉をついばみ始めた。
 その様子を振りかえる事も無く、紺野は王城へ向かった。
236すー ◆u3wemm2zXw :03/03/05 23:17 ID:FVUwkYma

「ちょっと、可哀相だったかなぁ?」
 帝国まであと少しというところまで来たあたりで、なつみは西の都の方角を見て呟いた。
「何いってんだよ。あたしらは死ぬかもしれない戦いに行くんだぜ。子供なんて足手まとい
以外のなんにもなりゃしねぇ」
 市井はなつみの同情的な表情に呆れたといった顔をした。
 真里と三人の反乱軍兵士も同意というようにうんうんと首を縦に振った。
一行はあの後すぐに荷物をまとめると、西の都を旅立った。
 なつみは自分の力で自分の身は守れるという事で同行することになったが、加護と辻は
当然の如く置いて行く事になった。
 二人は最後の最後まで駄々をこねたが、保田の一喝で大人しく避難所へ帰っていった。
「そもそもあたしはあんたがついてくる事も反対だったんだけどね。いくら伝説の天使の
力が使えるからって、体術もろくに使えないってのに。魔物の巣窟よ? 不意打ちされたら
即死なのよ」
 市井に言われ頬をふくらませるなつみとの間に、真里は苦笑して割って入る。
「大丈夫だって。その点はオイラが充分注意するからさ」
「ま、いいけどさ。足手まといにはなんないでよ」
 市井はふいと前を向くと、そのまま歩き出した。
「むー。やな奴。そういう事言ってるといざって時助けてやんないから」
 前を行く市井になつみがべーっと舌を出す。
「まぁまぁ、なっちも機嫌直せよ。オイラはちゃんと頼りにしてるからさ」
 なつみを宥めつつ、真里は「でも」と心の中で呟く。
(確かに紗耶香の言う通り、この戦い一瞬の油断が命取りになる)
 真里は気を引き締め、正面を向いた。
 遠くに微かに見える帝国王城の影が、かつて自分が暮らしていた場所とは思えない
異質の空間のように感じる。
 無意識に握り締めた真里の手に、汗が滲んでいた。
237名無し募集中。。。:03/03/06 21:58 ID:sDsbgakF

☆★☆ 【魔神召喚】セーブポイント VOL.3 ★☆★
            (VOL.1[一、二章] >>207
            (VOL.2[三、四章] >>222

 五章「帝国潜入」
  >>226-229 (Save@2003.02.27)
  >>234-236 (Save@2003.03.05)
  
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
238名無し募集中。。。:03/03/06 22:21 ID:pKfiUf9R
交信キテタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
いよいよ帝国潜入ですか。
物語が動き出しそうなヨカーソ!
239七人の名無し:03/03/07 00:21 ID:GzQmlWOG
更新お疲れさま。紺野がすごい!カコイイ!!
240名無し募集中。。。 :03/03/09 03:09 ID:UbyKOWZi
〃 '''''ヽ
( ‘ο`)<保
( ノノ  )
'''''''''
241丈太郎:03/03/11 17:38 ID:CWLjEjOk
保全
242Dreamer ◆qZFKl2dobU :03/03/12 20:04 ID:cqrRyfJ0
モー娘。のネタか。
243名無し募集中。。。:03/03/12 21:33 ID:A5MK9oTM
>>242
244名無し募集中。。。:03/03/12 21:40 ID:7JOuDcXC
?????
245 :03/03/12 21:45 ID:eVrsfvDL
?
246 :03/03/12 22:11 ID:OUGSwki+
??????????
247ちゃみりか:03/03/13 18:11 ID:GBewxGCM
あまりにも面白くて全部通して読んでしまった。
りかっちサイコー!
すー ◆u3wemm2zXw さんがんがってくらさい。
248すー ◆u3wemm2zXw :03/03/13 22:29 ID:6aOst+TO

 鈍く光る魔法陣の中心で、カオリは詠唱を続けていた。
 数日間に渡る儀式による疲労で、その頬はこけ、精気が無い。
 ただ禍禍しく光る赤い双眸が、どす黒い妖気と狂気を放っている。
「……来たね……」
 カオリの後方、扉に寄りかかって儀式を眺めていた吉澤が、不意にボソリと呟いた。
 真里達が、である。
 もちろん石川も真里達が先程帝国の城下に到着した事に気づいていたが、わざと
ビックリしたような表情をした。
「あれ? 予想よりちょこっと早かったね。儀式まだ終わってないのに……。
どうしよう? よっすぃー」
 眉を歪め、大げさに困ったというようなポーズで吉澤の顔を見上げる石川。
 もっとも、本当に困っているのではないだろう。
 むしろ石川の顔は、新しい玩具を与えられた子供のようである。
「……わかってるくせに」
 吉澤も石川を見て、ニヤリと笑う。
「もちろん、盛大にお持て成ししてあげなきゃ」
249すー ◆u3wemm2zXw :03/03/13 22:30 ID:6aOst+TO

「とりあえず、城内を徘徊している魔物達は相手にしないで、儀式を行っている
部屋まで突っ込む。おそらくそこにはあの吉澤と石川の二人がいるだろう。あたし
達があいつらを引きつけてる間に矢口が宰相を倒す。オッケー?」
 真里達は城壁の外側、木が生い茂り周りから視角になっている所にしゃがみ込み、
作戦の最終確認をしていた。
 帝国に潜入していた反乱軍のスパイから、儀式を行っている場所は調べが
ついている。
 その詳細を記した地図を広げ説明する市井に、一同は真剣な顔で頷いている。
「ねぇ、なっちは?」
「邪魔にならないように後ろにいろ」
市井に即答されムッとするなつみの肩に真里が手を置き、
「なっちはあいつらが魔法を使ってきたら、防御障壁を張って。あとは怪我を
した人に片っ端から癒しの力。よろしくね」
「うー。わかった」
 まだ多少不服そうな表情で頷くなつみ。
 細かい進路を確認し終えた一同が、腰を上げる。
「よし! それじゃいくよ!」
 市井の号令に全員が城内に突入しようとしたその時、
「キャ――!!」
「えっ!?」
 突然、城下町の方で悲鳴があがった。
「ちょっと……今の声」
「……なんか聞き覚えが……」
「加護!?」
 真里達は顔を見合わせ、慌てて声の上がった方向へ駆け出した。
250すー ◆u3wemm2zXw :03/03/13 22:31 ID:6aOst+TO

「ののっ! ののーっ!!」
 加護は泣き叫びながら、崩れ落ち意識を失った辻を抱き抱える。
 血の気が失せ真っ青な顔をした辻の右肩から、止めど無く血が流れ落ち、地面に
赤い水たまりを作っている。
 低く唸りながら二人をゆっくりと包囲する魔獣達に、加護は辻を抱いたまま
いやいやをするように首を振った。
「「加護っ! 辻っ!」」
 そこへ走りこんできた市井が、剣を抜くと同時に一頭の魔獣の首を刎ね飛ばす。
「加護、あんたなんでここに……」
「ぁ……うぁぅ……」
 駆けつけた市井に加護が口を開こうとするが、恐怖と驚きの為声にならず、ただ
涙を流しながらあえいでいる。
「! ののちゃん! ひどい怪我……」
 なつみが加護の胸に抱かれた辻を見て驚きの表情を浮かべる。
 突如現れた敵に一瞬後ずさりしたものの、魔獣達は再び彼女らを包囲しつつ
じりじりと近づいてくる。
「なっち! こいつらはオイラ達に任せて、早く辻の手当てを!」
 真里の叫びになつみはハッと我を取り戻し、慌てて辻の肩に手を添え祈り始めた。
 と同時に魔獣達が咆哮を上げ真里達に襲いかかった。
251すー ◆u3wemm2zXw :03/03/13 22:35 ID:6aOst+TO

応援&保全サンクスです。
まずい、全然話が進まない…(〜;^◇^)
252丈太郎:03/03/14 06:32 ID:DEVssgVw
更新お疲れ様です。
う〜ん、富野由悠季氏にも通じる、
プレーン・テイスト。読みやすく
て好きです(^^)
がんがってください。
253名無し募集中。。。:03/03/14 07:35 ID:R3JzEI1I

☆★☆ 【魔神召喚】セーブポイント VOL.3 ★☆★
            (VOL.1[一、二章] >>207
            (VOL.2[三、四章] >>222

 五章「帝国潜入」
  >>226-229 (Save@2003.02.27)
  >>234-236 (Save@2003.03.05)
  >>248-250 (Save@2003.03.13)

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254すー ◆u3wemm2zXw :03/03/14 22:28 ID:eJ3dNR9r

 ソファーに埋もれるように深く腰掛けた高橋は、窓の外、遥か遠くに霞む
帝国王城の影をぼんやりと眺めていた。
 帝国北の国境に設けられた関所の一室で、無気力に日々を過ごしている。
 かつて帝国の騎士団を従え、王の為に、国の為にその身を奉げ奮闘した日々が、
まるで遠い夢の中の出来事のように思える。
「団長、何か暖かい物でもお入れいたしましょうか?」
 精気の抜け落ちた亡骸のような高橋に、側近が心配そうに声をかけるが、
高橋は黙って焦点の合わない瞳で外を見ていた。

 帝国の現状は高橋も知っている。
 かつての面影は最早無く、魔物が跋扈する廃墟となりはてている事。
 その元凶が宰相飯田である事。
 そして、かつての仲間達。
 紺野は一人帝国に残っている。
 新垣は闇に魂を売り魔人と化した。
 小川……高橋の大切な想い人は、未だ未確認ではあるが恐らく殺されたで
あろう事も、報告が入っている。
255すー ◆u3wemm2zXw :03/03/14 22:29 ID:eJ3dNR9r
「私は……」
 身動きせぬまま、ポツリと口を開く。
「……私のしてきたことは一体何だったのだろう……」
「……団長……」
 側近の騎士は何と言ってよいかわからず、気まずい空気から逃げる様に「お飲み物を
用意いたします」と部屋を出て行った。
「私は……何がしたかった? 何をすべきだった? ……何時からこのような……」
 高橋の左手が無意識に腰に伸びる。
 そこには、かつて自分と共に死地を超えてきた愛剣はない。
 帝国を出る時、小川に渡したままだ。
「私は……」
 高橋の頬を涙がつたう。
 その時、帝国の空を覆うように広がっていた暗雲が、にわかに赤く輝きだした。
「……何だ?」
 高橋は涙を拭うと立ち上がり、窓に駆け寄った。
「団長! 帝国の空に異変がっ!」
 高橋が窓を開くと同時に騎士が飛びこんで来た。
「何があった!?」
「いえ、その……ここの物見塔からでは詳しい事はわかりませんが……」
 騎士と高橋は揃って赤い空を見つめる。
 何が起こっているのかは解らない。が、得体の知れない嫌な気配が胸に広がり、
高橋は不快感に顔をしかめた。
256すー ◆u3wemm2zXw :03/03/14 22:30 ID:eJ3dNR9r

 どしゃっ!
 最後の魔獣が地に伏し動かなくなったところで、市井はふぅと息を吐きキッと
加護を睨みつけた。
「馬鹿っ! 一体何を考えてるんだっ!! ついてくるなと言っただろうが!!」
 市井に怒鳴られ、ビクッと体をすくめ「だって、だって」としゃくりあげる加護。
「あたし達が来なかったらお前等二人とも死んでたんだぞっ! 帝国が今危険な
状況にあるのは何度も話しただろっ!!」
 本気で怒っている市井に、流石に真里も口出しできず、ただ黙って泣きじゃくる
加護を見つめている。

「……ん……」
 その時、辻の眉がピクリと動いた。
「! ののちゃん!? 大丈夫!?」
 肩の傷口に手を当て、癒しの力を使っていたなつみが、辻の体を軽く揺さぶる。
「……ぁ……あたし……?」
「ののっ!」
 まだ状況が呑み込めず、ぼおっとした表情で辺りを見渡す辻を、加護が力いっぱい
抱きしめた。
「ごめん! ごめんな、のの。うちがこんなトコまで連れ出したばっかりに……」
「あいぼん……? あれ? 市井さん達まで……??」
 相変わらず困惑したままきょろきょろと自分に集中する視線を見つめ返す辻。
「ったく……」
多量の出血の為まだ顔こそ青白いものの、目に光りの戻ってきた辻を見て、一同は
とりあえず安堵のため息をついた。
257すー ◆u3wemm2zXw :03/03/14 22:33 ID:eJ3dNR9r
>>252
どうもありがとうございます。
富野由悠季氏ってガンダムの小説書いてる人…?
今度読んでみよう…。
258丈太郎:03/03/14 22:56 ID:KFeUZcI0
更新、お疲れ様です。辻加護が付いてくるのは予想してましたが、
まさか辻が・・・これはやられました(^^)
僕としては、田舎娘丸出しの天使・なっちを、もっと動かしてほ
しいな、なんて思います。
富野由悠季=ガンダムの著者です。最近のブームで、昔の作品も
再出版されてるみたいですよ。
259名無し募集中。。。

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