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226すー ◆u3wemm2zXw

―― 五章 帝国潜入 ――

「……報告は以上です」
「……うむ。ごくろう」
 兵士から自軍の現状を聞いて保田は苦い顔をした。
 西の都王城、謁見の間。
 新垣率いる魔軍の侵攻から四半刻。
 すでに日は暮れ、室内には王女保田、反乱軍隊長市井、そして真里の他、
数名の兵士がいるのみである。
「……作戦の変更をしなければならないな……」
 被害は西の都正規軍千の内半数が戦死、重軽傷者多数。
 戦える者はごく僅かである。
 予定では魔に魂を売った帝国宰相を撃つという大義名分の元、全軍を率いて
帝国に攻め入るはずだった。
 だが、先手を打たれ新垣等の襲撃をうけたことで、自軍の立て直しを余儀なく
されてしまった。
「だけど、あたしらには時間がない。帝国が万一にも魔神の召喚を実現させて
しまったら……」
 市井の言葉に室内は重い空気に包まれた。
227すー ◆u3wemm2zXw :03/02/27 01:00 ID:qnxBQ2kE

「……オイラが行くよ」
 沈黙を打ち破る様に真里が呟いた。
「元々一人でカオリを倒しに行くつもりだったし……。帝国が魔物達の巣窟に
なってるとはいえ、カオリの元まで辿り着ければ……」
「……倒せるのか?」
「……儀式の最中なら、スキはある。きっと……」
「違う。宰相の事じゃない」
 真里の言葉をさえぎり、保田は立ち上がった。
「あの吉澤と石川という二人の魔人の事だ。あいつらはおそらく儀式中の宰相を
守る為、そばにいるはずだ」
「……」
 保田に言われ、真里は口を結び俯いた。
 確かにそうだ。
 あの二人もカオリが召喚した魔族である以上、カオリを倒されれば魔界に
帰る他ない。
 当然全力でカオリを守るだろう。
228すー ◆u3wemm2zXw :03/02/27 01:01 ID:qnxBQ2kE
「あたしも行くよ」
「! 紗耶香!?」
「あいつら、本気になればあの新垣って奴より強いんだろ? 普通にやったんじゃ
まず勝てないけど、あたしがあいつらを抑えてる間に矢口が宰相を倒せばこっちの
勝ちだ」
「そりゃそうだけど……」
「それに」
 市井は剣の鞘を握り締めた。
「あいつ……吉澤とかいうやつ、あたしが斬りかかった時笑いやがったんだ。
馬鹿にしたように、な。負けっぱなしってのはどうも性に合わないから」
 保田はしばし考えた後、苦笑して頷いた。
「わかった。それじゃ矢口と紗耶香。それに無傷の反乱軍兵士を何人か連れて、
帝国にいってちょうだい。私もなるべく軍の再編を急ぐけど、おそらく帝国に
攻め入る頃には儀式は終わっちゃうだろうしね。少数で潜入し、なんとか
儀式だけは止める事」
「おっけー!」
 市井と真里は頷き合い、親指を立てた。
229すー ◆u3wemm2zXw :03/02/27 01:02 ID:P7g03uDS

「それじゃ、さっそく出発しようぜ。あたしが目をかけてる奴が何人かいる。
そいつらをつれていこう」
「うん。それじゃ、オイラ達を合わせて六、七人位かな。あんまり数がいても
しょうがないし……」
 真里が言うと同時に、扉がバタンと開いた。
「もちろん、なっちも数に入ってんだべな?」
「うちらも行きたいなー。な、のの?」
「へい」
「なっち!?」
「加護! 辻!」
 真里と市井が驚いて振り向くと、開け放たれた扉の外になつみ、辻、加護の
三人の姿があった。
230名無し募集中。。。:03/02/27 05:33 ID:cYq658wo

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 五章「帝国潜入」
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