仮面ライダーののX

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598名無し天狗

再び、こちらは弘繁の一行。

目的の山に到達し、弘繁は早速鷹狩を楽しんだ。
その弘繁の傍らに控えていた孝雄は、彼にそっと尋ねる。

「殿、“秘伝の書”はまこと無事にござりましょうか?
 それがし、その事が一番の気掛かりにて・・・。」
「何じゃ孝雄。その方まだその事を気に掛けておったのか?
 意外と小心者よのぅ、その方も。ハハハハハ…。」

弘繁は孝雄の心象を和らげるように笑ってこう答えた。
確かに“秘伝の書”は、弘繁の“策”によって厳重に守られている。
その“策”とは・・・・・・侵入者の来襲に備えて予め迷路状にした屋敷の地下の、
それも行き止まりや行き着く終点ではなく、それらに辿り着くまでの途中の通り道のどこかに
“秘伝の書”を埋めた、と言うものであった。
その入り口は床の間の掛け軸の裏にあり、普段はしっかりと壁板で閉められている。
余程屋敷内を熟知しない限り、この「地下迷路」の存在を知られることはない。
弘繁はそこに賭けたのだ。それ故に孝雄の疑問にも余裕で答えることが出来た。
その上弘繁は、この鷹狩の最中でも不測の事態に備えて偽の“秘伝の書”を懐中に忍ばせていたのである。
まさに万全の態勢であった。
599名無し天狗:03/03/07 00:22 ID:TsbN4f5K
だが、そうであるかと言って誰しもがこの“秘伝の書”を狙わなかったのかと言うと、そうではない。
幕府の支配が絶対であるとは言え、幕府に不満を抱く者や、あくまで倒幕を目論む者は存在しないとは限らなかった。
美浜五木家に代々伝わる“秘伝”の言い伝えは、既に反幕派の知れるところとなっており、彼らは皆その“秘伝”を手に入れ、
日本の天下を我が手中に収めようと常々密偵を放って探索させていたが、誰一人として“秘伝”の肝心要に触れることは叶わなかった。
孝雄の悩みの種は、まさにそのことであった。

幸いにも、この鷹狩に於いて“秘伝の書”を狙う輩は現われなかった。
だが、帰途に付いた弘繁を、異様な風体の男たちが群れを成して襲ってきた!
彼らもまた、“秘伝の書”を狙っており、屋敷に帰着する弘繁らを待ち伏せていたのである。
男たちは皆、頭の先から指先、爪先に至るまでを全て鎖帷子で覆い、その上に迷彩のような柄の
忍び装束を身に着けていた。彼らは縦横無尽に素早く動き回り、瞬く間に弘繁に肉薄し取り囲む。
やがて、男の一人が刀を突き付け彼に詰問した。

「五木治部太輔殿、ご貴殿の家系に代々伝わると言う“秘伝”の在り処をお教え頂こう!」

言わねば首を刎ねる、と言わんばかりに男は刀の刃を弘繁の咽喉元に押し当てて彼に凄む。

「“秘伝”・・・?な、何のことだ?知らぬ・・・・・・。」
「知らぬとは言わせませぬぞ。ご貴殿のご先祖が乱世の頃より試行錯誤を繰り返してきた“秘伝”・・・
 そう、“化身忍者誕生の法”の子細は、我ら血車党も聞き及んでおり申す・・・。」

必死に抵抗する弘繁を嘲笑うかの如く、一人の男がゆっくりと彼の前に現われた。
顔半分が頭蓋骨剥き出しの人相・・・血車党の陣頭指揮を執る骸丸である。
骸丸は、その不気味な顔を弘繁に突き付け更に脅しをかける。

「・・・素直に在り処を話せばよし、さもなくば・・・・・・
 この屋敷の者どものみならず、美浜の民が一人も残らず皆殺しになりますぞ!!」
「・・・・・・!!!」

骸丸のこの一言に、弘繁の精神は恐怖に凍りついた。
600600:03/03/07 17:09 ID:xpnFF7CO
600
601名無し天狗:03/03/08 03:44 ID:bJ2QPJFt
>599から

「殿ぉ!!」

叫ぶ孝雄の声も空しい。既に孝雄を始め鷹狩に同行した者は家臣や小姓、腰元に至るまで
悉く血車党によって捕らわれの身となっていた。
弘繁の進退は、ここに窮まった。決断を迫られる弘繁。だが、泰平の世は乱させじ
と言う思いから、彼は決して“秘伝=化身忍者誕生の法”の所在を明かすことはなかった。

やがて業を煮やした骸丸は、配下の下忍たちに、邸内を隈なく探るよう命じた。

「無駄なことを…いくら探したとて、初手から無い物など見つけ出せよう筈などないわ!」

窮地に陥ってなお、弘繁はあくまで強硬な態度で骸丸を睨みつけて、そう言い放った。

一方、骸丸の命を受けた血車党の下忍たちは、一斉に邸内の探索に掛かっていた。
部屋と言う部屋は忽ちに荒らされ、血車党を阻止せんと立ちはだかった五木家家臣たちは
片っ端から斬り捨てられ、瞬く間に五木邸は阿鼻叫喚の地獄と化した。
と、そこへ一大事を聞き付けて、五木家の側用人・高山源五右衛門厳実
(たかやま・げんごえもん・よしざね)が、大勢の家臣たちを率いて馳せ参じて来た。
厳実は槍を振るって奮戦し、家臣たちも死に物狂いで応戦する。
一進一退の攻防が二刻(一刻=約二時間)に亘って繰り広げられていた・・・

その時!!