>588から
「…そうじゃ、孝雄、久しぶりに鷹狩に出ようぞ。」
「…は?はぁ…。」
「このところ、大雨じゃ大風じゃと天候に恵まれず鬱積しておったのじゃ。
久々に身体を動かさねば、なまってしまうわ。・・・不服か、孝雄?」
「め、滅相もござりませぬ!喜んでお供仕りまする。ただ・・・」
「何じゃ・・・おお、“秘伝”の密書のことか。それならば案ずるには及ばぬ。
耳を貸せ。・・・・・・」
弘繁は、たった今思いついた密書を守る手段を孝雄に耳打ちした。
「…はぁ…。しかしながら殿、その手段で密書を守りきれるでござりましょうか…。」
孝雄はいささかの懸念を抱き、弘繁に疑問を投げかける。
だが、返ってきたのは、
「案ずるな、と申したはずじゃぞ!」
疑念を持ったことを諫めるとともに、絶対の自信に満ち溢れた弘繁の一喝であった。
その威厳のこもった一言で、孝雄の心理は「この策は必ず成る」と言う確信に変わった。
かくして、二人は家臣たちを引き連れて、とある山に向かった。無論、鷹狩のためである。
だが、この時、既に一行の行く手に暗雲が立ち込めていようなどとは、
誰一人予想だにしていなかった。
当の弘繁・孝雄主従さえも・・・・・・。