仮面ライダーののX

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586名無し天狗

   第33話か34話「むかし むかし・・・」

いつの世も、“善”と“悪”は存在し、常に反目し合っている。
心悪しき者が心善き者を蹂躙し、邪な権力で支配せんとするが、
その悪を天は決して許さぬのもまた、世の常である……。

今を遡ること、約400年前。
関ヶ原合戦、大坂の陣を経て、徳川家による幕藩体制が
ようやく磐石のものとなった、俗に言う「江戸時代」。
初代将軍家康、二代将軍秀忠と受け継がれた江戸幕府将軍家の天下は、
三大将軍家光をもって揺るぎ無き鉄壁のものとなった。

この物語は、その家光治世の頃の出来事である・・・・・・。


ここは、越前美浜藩の江戸上屋敷。
美浜藩では、戦乱の頃より「とある技術」の探究が行われ続けていた。
当初こそ、この「技術」を一刻も早く完成させて、その力をもって
天下を掌握せしめんと画策していたが、完成した時には乱世の時代は終わりを告げ、
泰平の世となった今、再び日本を修羅の血に染めてはならじと、時の城主が封印したのである。
その美浜藩の現城主の間を、ひとりの男が訪ねてきた。
彼は口ひげを蓄えており、穏やかな面立ちをしていた。

「殿…。」

彼は美浜藩の江戸留守居家老である。その彼の声に、
先ほどまで縁側に立ち、晴天を見上げていた城主が振り向いた。
その面立ちたるや、やや面長。目は開いているのか閉じているのかわからぬほど細く、
一本の線を思わせた。そして彼もまた、家老のとは違った温厚さと気品を感じさせ、
一国一城の主に相応しい人相を持っていた。事実、この城主の治める美浜藩では、
領民から「名君」と慕われていた。
587名無し天狗:03/03/01 01:11 ID:kApot9fU
「…タカカツか。」
「はっ。」

“タカカツ”と呼ばれたこの家老、名を堀内伝兵衛孝雄(ほりうち・でんべえ・たかかつ)と言う。

「殿が参勤交代で当屋敷にお越しになられてから、はや半年になりますな。」
「…半年か…。
 このところ、江戸にも美浜にも変事がなく、まさに天下泰平じゃ。
 この平穏な日々が永遠(とこしえ)に続いて欲しいものじゃのう。」
「然様で…。」

ようやく訪れた平和を噛み締め、城主・五木治部太輔弘繁(いつき・じぶだゆう・ひろしげ)は呟いた。

「ときに孝雄、余がそちに預け置いた、先祖伝来の“秘伝の書”は無事であろうな?」
「無論のこと、この通り…。」

孝雄はそう言うと、床の間の物入れから一巻の巻物を恭しく取り出し、弘繁の前に差し出した。
弘繁はそれを受け取ると、中身を隅々まで確かめるように一通り目を通してゆく。

「うむ、大事無いようじゃな。
 よいか孝雄、この一巻、誰の目にも触れさせてはならぬ。もし邪な者の手にでも渡ろうものなら、
 その時こそ天下は大きく覆り、日本は再び無益な血に染まるであろう・・・
 それだけは断じて避けねばならぬ、よいな!」
「はっ!」