仮面ライダーののX

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545ナナシマン
Intermisson 「悪の共闘!QとK」


 昼下がりの東京国際空港。そこに降り立った、一人の老人がいた。
その顔は一見すると品の良さと知性を感じさせたが、しかしそれでいて
偏屈な気性をものぞかせる面持ちである。赤いベレー帽を被り、灰色の
コートに身を包んだその出で立ちは老画家のようでもある。事実老人は
絵画をたしなむが、彼は画家ではない。
 やがて老人は空港のロビーでふと立ち止まり、辺りをゆっくりと見回す
とまた緩やかな歩調で歩き始めた。老人にとって、久々の日本である。


 と、彼の傍らを小さな陰が横切る。それは幼い子供だった。周囲の
物珍しさにはしゃぎ回る子供、ほほえましい風景。だが、その時。

 「ハーックショイ!!」

 ロビーに響き渡る大きなクシャミ。その主は老人だった。それから堰を
切ったように彼のクシャミは続き、なかなか収まる気配がない。それは
単なるクシャミではなく、まさに「発作」であった。辺りの人々の視線が
集中する中、老人は何処かへと姿を消した。
546ナナシマン:03/02/21 21:11 ID:G0A5WMyA
 一方、こちらは悪の秘密結社ゼティマの下部組織、デスターのアジト。
今日もドクターQとその秘書シルビア、そしてQの愛娘リタの三人が
悪巧みを巡らしていた。

 「バイクロッサーどもが現れてから、魔神ゴーラの吐いたダイヤが悉く
砂に変わりおる!これではゼティマも我らデスターも儲からん」

 苦虫を噛み潰したような表情で吐き捨てるドクターQ。彼が自らの科学力
を傾注して作り上げたロボットは、みなバイクロッサーの前に敗れ去っていた。
彼らの悪事が破綻してしまうと、せっかくのダイヤも台無しになってしまう。
なぜなら、魔神ゴーラの吐き出すダイヤは子供たちに笑顔が戻るとその魔力を
失い、砂になってしまうからだ。これではゼティマへの上納金も自らの富も
手に入らない。頭を抱えるドクターQ。しかしそんな彼をそっちのけで、
デスター女性陣の口論が今日も始まった。

 「あんたが無能だからお父様も苦労なさるのよ?判ってるの?」

 「うるさいわね!あんたに言われる筋合いはないわ!!」

 シルビアとリタは互いに仲が悪く、ことあるごとに口げんかが絶えない。
愛娘と秘書との板挟みもまた、ドクターQにとっては頭痛の種であった。
ついには掴みかからんばかりの大げんかに、さすがにドクターQの堪忍袋の
緒が切れた。

 「お前たち、いい加減にせんか!!」

 部屋中に響き渡るドクターQの怒声で、ようやく女二人の口げんかは
収まった。
547ナナシマン:03/02/21 21:11 ID:G0A5WMyA
 「組織への上納金と我らの利益、この二つを確保するために儂は助っ人
を招聘した。わざわざスペインまで行ってな」

 「スペイン?」

 ドクターQの言葉に首を傾げるシルビアとリタ。

 「お父様ぁん。旅行ならそう仰ってくれればいいのに」

 そう言ってリタはドクターQに甘えてみせる。次は自分を連れて行って
欲しいと言わんばかりに。

 「儂とて遊びに行ったわけではないぞ。スペインに旅行に行ったと聞き
後を追ったが、放浪癖のある御仁なので苦労したわい。まもなくここに到着
するだろう」
548ナナシマン:03/02/23 09:22 ID:lkMRcBaa
 やがて、3人のいる部屋のドアがゆっくりと開く。と、その向こうから
姿を現したのは、発作的なクシャミですっかり鼻を真っ赤にしてしまった
あの老人だった。

 「紹介しよう。彼こそプロフェッサーK。子供を泣かすことにかけては
まさに天才といえるだろう」

 そう紹介された老人−プロフェッサーKはゆっくりと3人の方へと
歩み寄ると、やがてドクターQと握手を交わした。

 プロフェッサーK。彼は犯罪組織「テンタクル」の首領であった。だが
幼稚園バス乗っ取り作戦の後、やむにやまれぬ事情によりテンタクルは
解散、Kは一人スペインへと傷心旅行に出ていた。しかし、彼の噂を
聞きつけたドクターQに口説かれ日本に帰ってきたのだ。
549ナナシマン:03/02/23 09:22 ID:lkMRcBaa
 「儂にとって子供とはアレルゲンなのだ。こうして儂がドクターQと
出会ったのは天意かも知れん。お互いの利害がここまで一致するとは」

 そう言ってプロフェッサーKは意地悪そうな笑みを浮かべる。彼は重度の
「子供アレルギー」であり、症状を緩和、回復させるためには子供の鳴き声を
必要としていた。それ故に独力での世界征服すら可能にできるほどの科学力を
持ちながら、彼はその英知のすべてを子供をいじめることだけに傾けてきた
のだ。
 一方のドクターQも、魔神ゴーラの像からダイヤを吐き出させるために
は、多くの子供の涙を必要としていた。そして、両者には共通の敵がいる。
そのために手を組むことはこの上ない利益を両者にもたらす。かくして
両者の利害は一致し、この共闘となった。

 「儂は既に組織を畳んだ身。しかし、アトリエに連絡をくれればいつでも
協力しよう。儂の技術があればデスターがゼティマを凌駕することも不可能
ではない」

 「それはちと言葉がすぎよう・・・フフフ。我々が手を組めば、この世は
子供たちの鳴き声であふれ、魔神ゴーラの像はますますダイヤを吐き出す
だろう。楽しみなことだ」

 満面に笑みを浮かべてドクターQは言った。ここに、子供をいじめる
ため「だけ」に悪事をはたらく、二大巨頭の連合が成立した。
550ナナシマン:03/02/23 09:23 ID:lkMRcBaa
 「ドクターQよ、早速だが儂のスペイン土産を受け取ってもらいたい」

 プロフェッサーKの突然の申し出。彼はドクターQに手土産があるのだと
言う。

 「ほう、それはありがたいことだが一体何かね?」

 邪悪な笑みをたたえて言うドクターQ。最高のパートナーを得て今や
上機嫌の彼に手渡された設計図。これこそがKの言う「スペイン土産」で
あった。それはこれまでのロボットとは違う、強力な新戦力の誕生を予感
させた。

 「これは驚いたわい。いつの間にこんなものを」

 「すでにお前さんのロボット理論は完成しておった。だからそれに
少々儂の色を付けてみたまでよ」

 「素晴らしい。これは完成が楽しみだわい」

 悪の二大巨頭が手を結び、その結晶として誕生した新型ロボットの
設計図。この新型ロボットが現実のものとなり、世界征服の尖兵として
姿を現すのは、果たしていつか?!


Intermisson 「悪の共闘!QとK」 終

551ナナシマン:03/02/23 09:23 ID:lkMRcBaa
 以上簡単ではありますがインターミッションを終わります。おかげさまで
一日おいた間に思いがけず筆が進み、一本できあがりました。頃合いを
見計らってまた来たいと思います。