いんたーみっしょん
「復活!赤心少林拳!」
【ペガサス】から少し離れた公園。飯田とあゆみは少林拳の練習をしていた。
「それじゃあ、初めからやってみて。」
飯田はあゆみに蹴りを指導していた。
「はい・・・・やあー!」
あゆみは飛び上がると空中で蹴りを放つ。
「そう、そのタイミング、次は二段蹴りね。」
飯田がそう言うとあゆみはまたジャンプした。
「ハイ!トウ!」
あゆみは空中で二回蹴りを繰り出した。
「はい、OK。いい感じだよ。まだ空中で余裕ある?」
飯田はあゆみに聞く。
「ちょっときついかな、二回が限界かも。」
あゆみがそう言うと
「そうか、それじゃあ連続蹴りはまだ無理だね。」
飯田が言うと
「連続蹴り?」
あゆみは聞いた。
「そう、連続蹴り。見せようか?周りに誰もいないよね。」
飯田は、自分達の周りに人がいない事を確認すると、飛び上がった。
「天空連続蹴り!」
飯田はそう言うと空中で素早く連続で蹴りを繰り出した。
「凄い!でもそれは無理ですよ。」
そう言うあゆみに飯田は笑って見せた。
「まあ、とにかくガンバろう。すぐに出来る様になるって、それじゃあ次・・」
飯田がそう言いかけると
「見事だ圭織、だがまだまだ修行が足りないな。」
二人に近づく男がいた。その姿は正に僧侶、どうやら飯田の知り合いの様だ。
「・・・・弁慶さん!」
飯田はその弁慶と言う男に向かって走り出した。
「久しぶりだな・・・圭織よ、修行は怠っていない様だな。」
弁慶はそう飯田に言った。弁慶は飯田の兄弟子当たる人物である。
飯田の師匠、玄海老師の死後、「調べる事がある」と言ってそのまましばらく
行方知れずになっていたのだが、今日久々に飯田の前に現れたのだ。
「弁慶さん、何処行ってたの?心配したんですよ。」
飯田が聞くと弁慶は笑いながら答えた。
「何、大した事ではない、それよりそちらは?」
弁慶はあゆみを見て言った。
「あっ、この子は柴田あゆみちゃん。今ね、一緒に赤心少林拳の修行してるの。
老師が亡くなって、弁慶さんいなくなっちゃうし、そしたら偶然にこの子が
少林拳の教書を持ってたから一緒に復活させようって。」
飯田はそう言うと、あゆみが持っていた本を弁慶に見せた。
「そうか、すまなかったな。でもこの本、柴田さんでしたな。この本何処で?」
弁慶にそう聞かれたあゆみは、事の詳細を話した。
「ほう、上原さんの所におられましたか。やはりこの本は、あの方に託して
正解だった様だな。」
弁慶はそう言うとあゆみに本を返した。するとあゆみが言った。
「弁慶さん、良かったら家でお茶でもどうですか?色々お話も聞きたいし。」
あゆみがそう言うと
「うん、そうしよう。弁慶さん行こうよ。」
飯田も言った。
「そうか、ではお言葉に甘えますか。」
弁慶がそう言うと三人は公園を後にした。
斉藤家に到着すると弁慶の表情が変わった。
「どうしたの?」
飯田が聞くと
「柴田さんの家ってここですか?」
弁慶が聞いた。
「そうですよ。家主は斉藤さんですけど私も住んでます。」
あゆみがそう言った時、瞳が後ろから声をかけて来た。
「お帰り、早かったね。ん?こちらは・・・・あーーーっ!」
弁慶の顔を見た瞳は、声を張り上げた。
「どうしたの?」
今度はあゆみが瞳に聞いた。
「この人、おとうさんの仕事の依頼主!」
瞳は忘れもしなかった。弁慶は瞳の父親に仕事を依頼した人物の一人なのだ。
「お坊さんだったの?あの時はスーツなんか着てたから、やくざかと思ったけど
へー、それで今日はどんな御用ですか?」
瞳は弁慶に質問した。
「いや、その今日は、偶然こちらにお邪魔する事になっただけでして。」
弁慶がそう言うとあゆみが瞳に事情を説明した。
とりあえず四人は家の中に入り、お茶を飲みながらの話になった。
「なるほど、弁慶さんは飯田さんの兄弟子なんですね。でも、それはおいといて
単刀直入に聞きます。私の父が調べてる組織ってなんですか?」
瞳の質問に弁慶は答えに詰まった。
「それはお話出来ません。相手は危険な組織です。もちろん大吉さんには
承知の上でお手伝いして貰っています。仮にお話すれば今度はみなさんが
危険な目に会うかもしれないので申し訳ないですが勘弁して下さい。」
弁慶がそう言うと
「弁慶さん、その組織ってひょっとして【ゼティマ】?」
飯田の言葉に弁慶の表情が一変した。
「圭織、お前それ何処で?なぜ知っている?」
弁慶の慌てぶりから見ると大吉の調べている組織はゼティマに間違い無かった。
「実はね・・・」
飯田は弁慶にこれまでの事を話して聞かせた。
「馬鹿な!・・・それじゃあ、圭織の様な子が他にもいるって事なのか?」
弁慶は飯田の夢は知っていたので飯田が改造人間である事は承知していた。
しかし、飯田の他に改造人間がいようなどとは夢にも思っていなかった。
「うん、全部本当なの、それにここのお隣にも仲間がいる。」
飯田の話を聞き弁慶は全てを話して聞かせた。
「そうか、それならば私も全てを話そう。玄海老師の死、あれは病気ではない
表向きは病死になっているが実はゼティマの怪人との戦いの傷が元で
亡くなられたのだ。私はその事実を知った時、敵討ちを決意した。
そしてゼティマについて調査を始めたのだ。その為に何人かの探偵にも
頼んだが引き受けてくれたのは、大吉さんだけだった。友人の死と何か
関係があるかもしれないと言ってな。その友人とは恐らく先ほど圭織が言った
ここのお隣の子達の両親の事だろう。大吉さんは何も話さなかったがな。
それで調査を進めるうちに、どうやら敵は日本を主な活動拠点にしている。
そう思い私は帰って来た。そして圭織に別れの挨拶をしようと探している内に
ここにやって来たのだ。」
そう弁慶が言うと
「弁慶さん、そんなのずるいよ。私だってそれなら協力したのに!」
飯田がそう言うと
「まあ、そう怒るな。今の圭織なら喜んで協力して貰うが、私にはそんな事
解らないではないか、今はまだ宇宙の勉強をしていると思っていたからな。」
弁慶は調査の途中で圭織がいた研究所が襲われた事を知っていたが、
圭織がまだ生きていると確信していたのだ。
「とにかく、これからは協力だよ!」
飯田は弁慶に言った。
「当然だ、それに赤心少林拳の事もあるしな」
弁慶の言葉に飯田は頷いた。
「ちょっとまった!で?父は?」
瞳が聞いた。
「すまんが、まだしばらくは戻って来ないだろう。あちらも色々忙しいらしい。
それに調査途中で知り合ったFBIだったかの人がいてな、その人が確か
稲葉とか言ったかな、その稲葉さんにも何か頼まれていたみたいだ。」
弁慶が言う。すると
「稲葉さんと一緒なら大丈夫かな、まあいいでしょう。」
瞳は言った。
「なんだ、あの人も知ってるのか?」
弁慶が聞くと
「うん、私達が集まったのってある意味あの人がきっかけだよね。」
飯田は言った。
「そうか、今まであちこち飛び回らずに、最初から圭織の所に来れば良かったな
そうすればこんな苦労もしないで済んだな。」
弁慶はそう言って笑った。
次の日から弁慶、飯田、あゆみの三人の修行が始った。
さすがに、この修行は人目につくと何かと面倒なので人里離れた場所で
とある山中で行われたいた。
「次、四段旋風蹴り!」
弁慶の指導に飯田が応える。
「よし、次は稲妻閃光蹴りだ!」
飯田と弁慶の人間離れした動きにあゆみはただ呆然と見守るしかなかった。
「よろしい、次はあゆみだが、さすがに空中殺法はまだきついだろう。
だったらこれだ。」
弁慶はそう言うと近くにあった木に両手で空手チョップを見舞った。
一撃を受けた木はそこから砕けた。
「見たか?これが【赤心拳諸手打ち】だ。本来は敵の頚動脈を狙う一撃必殺の
技だが、こうした破壊力も十分にある。」
弁慶はそう言うとあゆみに指導を始めた。あゆみはその型から始め次第に
型が出来てきた。
「そうだ、それでいい。後は拳のスピードと力加減、すぐには無理だが
徐々に自分の物にすんるだ、いいな。」
弁慶はあゆみの指導を終えると飯田に言った。
「圭織、いよいよ新しい技を教える。赤心拳「梅花」の型だ。よく見ていろ。」
弁慶はそう言うと飛び上がり空中で、梅の花の型を取るとそのまま近くの岩に
向かって蹴りを放った。
「梅花二段蹴り!」
その蹴りは大きな岩を粉々に砕いた。
「凄い!怖いくらいの威力だ!」
飯田がそう言うと
「この技は呼吸とタイミング、それに精神集中、全てが必要になる。
すぐには習得出来んだろうが、頑張れよ。」
それから飯田とあゆみの特訓は毎日続いた。
飯田は「梅花」あゆみは「諸手打ち」、二人は時間を惜しんで修行に励む。
どれ位時間が経ったであろう。二人の技はついに完成した。
「二人ともよくやった。それでこそ赤心少林拳の門弟。まだ三人だが
十分だ。赤心少林拳もこれで復活だな。」
弁慶の言葉が二人の心にしみる。
そう、ついに赤心少林拳は復活したのだ。
いんたーみっしょん
「復活!赤心少林拳!」おわり
つづけ!