仮面ライダーののX

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393名無しX
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「ただいま〜」

疲れ果てた声で安倍が中澤家に帰ってきた。
その表情には落胆の色がありありと見て取れる。

「お帰り。なっち、あんたどこ行っとったん?いろいろ大変やったんやで。」

夕食の支度をしていた中澤から若干非難めいた声が飛ぶ。
それは仕方の無いことで、安倍はパトロールをすっぽかして何日も音信不通だったのだ。

「心配してたんですよ。」
浮かない表情の安倍にサラダの盛り付けをしていた高橋が不安げに声をかける。

「パトロールすっぽかしてごめんね。ちょっと私用で忙しかったんだ。
・・・・・・疲れてるから少し眠るよ」
安倍はわずかそれだけの会話で奥の寝室へと消えてしまった。
394名無しX:03/01/23 19:04 ID:V9A8JzRd
「なんや、あの子?ほとんど説明も無しかいな。」
不満を露にするする中澤。

「安倍さん・・・心配事があるなら話して欲しいのに・・・・」
高橋は寂しい気持ちで一杯になった。

「ま、しゃーないな。あの子にはあの子の理由があるんやろ。
辻がお腹を減らして待ってるやろからご飯にしよう。」

確かにリビングからティンティンと茶碗の鳴る音がする。

『ご飯まだれすか〜』
395名無しX:03/01/23 19:05 ID:V9A8JzRd
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和やかな雰囲気の漂う中澤家のダイニング。
辻はもう食べれないのれすという言葉を残しソファーでうとうととしている。

加護も満腹になったようでご満悦の表情だが食欲に負けて忘れていた
疑問を矢口に切り出した。

「矢口さん、ところでどうして私達が蜘蛛ナポレオンと戦ってる場所がわかったんですか?」

「あれはね、多分辻のサイクロンからだと思うけど、緊急用無線に連絡が入ったの。
仮面ライダー達が危ないから助けに来てあげてってね。」
矢口もいまいち腑に落ちない口調で答えた。どうやら矢口の中でも引っかかっているようだ。

「ひょっとしてボーリング場のお姉さんですか?」
高橋が勢いよく口を挟む。高橋にとってあのボーリング場の少女はまさに救世主だった。
彼女が居なければ大切な仲間をまた失うことになっていたのは明白だ。
396名無しX:03/01/23 19:06 ID:V9A8JzRd
「うん、それがどうも違うらしいんだよ。ね、裕ちゃん。」

「・・・・そやねん。若い女の声だったけど、最初に連絡のあった子の声とは明らかに違うねん。けど・・・・」
緊急無線を受けた中澤の説明はどことなく曖昧な口調だ。

「けど?」
矢口が歯切れの悪い中澤に鋭い突っ込みを入れる。

「あの声・・・・知ってるような気がする・・・・」

中澤の中には曖昧ながらもその人物に心当たりがあるのかもしれない。
無線の女は辻加護のピンチを告げた後こう言ったのだ。

『あたしが助けあげてもいいんだけど、ちょっと今緊急にしなきゃいけない事があるんでね・・
やっと掴んだ手がかりなんだ・・・それじゃ頼んだよ、アディオス』
397名無しX:03/01/23 19:07 ID:V9A8JzRd
「はぁ・・・今回の事件は解からない事が多いねぇ・・そのボーリング場のお姉さんってのも
何者か解からないし。高橋、なんか覚えてないの?その人の特長とか・・」

「特徴って言われても・・・・」
高橋は矢口の問いに考え込んだ。ショートカット、ジャンプ力、はもう既に
皆に話したとおりだ。他にと言えば・・・・・。


「強いて言えば・・・・・・・銀杏・・・・・やろか」


「はぁ?」
矢口を含めその場にいた全員から罵声が飛ぶ。

「なんだそれ?訳わかんないよ。」
「愛ちゃんって実は天然?」
「はぁ・・・家の若いのはこんなんばっかりやなぁ」



過酷な運命のもとに集う少女達。
その絡み合う運命の糸が少しずつほどけて来ていることなど
その時少女達は知る由も無かった。



                  第31話 『大・変・身』     完