仮面ライダーののX

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382名無しX
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蜘蛛ナポレオンは心底いらついていた。
それもそのはずで、もう戦闘員にまかせても大丈夫だと高みの見物を
決め込んでいたはずの獲物二人が、五体満足の姿で逆に彼をを見物している。

そして何より彼を苛つかせたのは一度完膚なきまでに叩き潰したはずの
小娘が性懲りも無く自分の前に立ちふさがっている事だ。
これが彼のプライドをいたく傷つけた。

「貴様、あれだけ叩きのめしてもまだ解からないのか。
お前のような小娘が一人で我輩の前に立つなど身の程知らずも甚だしいわ!」

「以前の私とは違うんやよ。」
383名無しX:03/01/20 01:04 ID:3U+2jHdP
そう、今の高橋は確かに以前とは違っていた。
体に力が漲っている。

マーキュリー回路を譲ってくれた矢口。難しい手術を成功させてくれたミカ。
そして自分の仇を討とうと全力で戦ってくれた辻加護。

頼もしい仲間達こそが今の高橋の力そのものだ。

高橋は両手を天に向かって高らかと突き上げ、
その両手を今度は水平にめいっぱい広げた。


「 大 ・ 変 ・ 身 」


掛け声とともにライダー伝統ともいえる右手を斜め上方に
突き出すポーズをとり大きくジャンプし変身した。
384名無しX:03/01/20 01:05 ID:3U+2jHdP
「仮面ライダーX!」

その姿は以前のものとなんら変わらない。
しかし彼女が醸し出すオーラは以前のそれとは比べ物にならない。
存在そのものの力が以前とは段違いなのだ。


「うぬぅ、小癪な小娘が。容赦せぬぞ。」

蜘蛛ナポレオンは、仮面ライダーXに向かって自慢の蜘蛛の巣ジャングルをいきなり放出した。
その蜘蛛の糸は的確に仮面ライダーXの体を捉える。

「どうだ!もう身動きが取れまい。」

全身白い糸に絡まったXライダーはピクリとも動かない。

「あぁ〜愛ちゃん!」
加護が慌てて走り出そうとしたその瞬間

『ビリッ』

仮面ライダーXを拘束していたあの忌まわしい白い糸が一瞬にしてただの糸くずのように
細切れになり吹き飛んだ。
385名無しX:03/01/20 01:06 ID:3U+2jHdP
「なにっ、我が蜘蛛の巣ジャングルを破るだと?」

「こんなもの痛くも痒くもないがし」

Xライダー高橋愛はほんのわずかに両腕を開いただけであの
糸を粉みじんにしたのだ。

「今度はこっちの番やよ、とぅ!」

ジャンプで蜘蛛ナポレオンとの距離をとる高橋。
その間合いこそがこれから始まる新しい力の序曲なのだ。

高橋は両手を大きく左右に開きこう叫んだ。


『 真 空 地 獄 車 』
386名無しX:03/01/20 01:08 ID:3U+2jHdP
「・・・・し、真空?地獄車・・・?」
その一般の日常生活の中ではまず聞くことのない単語とともに
繰り出された高橋の動きに辻加護は呆然とする。
矢口は腕を組みながら微動だにせず高橋を見つめている。
ミカだけが嬉々として拳を突き上げ叫ぶ。

「行けー愛ちゃん!」


その高橋の動きは今までのライダー達の必殺技と呼ばれるものとは
完全に一線を画していた。

一度空けた間合いを大きなジャンプで再び詰め、蜘蛛ナポレオンの目の前に
着地する高橋。
蜘蛛ナポレオンご自慢の帽子をチョップで弾き飛ばしたかと思うや否や
彼の胴体を掴みそのまま前のめりに倒れこむと、なんと彼を巻き込んだまま共に前転したのだ。

2回3回・・・・蜘蛛ナポレオンの頭部を地面に叩きつけながら高橋の前転は続く。
そして彼の体を掴んだままジャンプし再度蜘蛛ナポレオンの頭部を地面に叩きつける。
しかしまだ高橋の動きは止まらない、またもや先程と同じ前転を繰り返すのだ。
387名無しX:03/01/20 01:10 ID:3U+2jHdP
「す、すごい技や・・・」
唖然としつつも高橋の動きから目が離せない加護。


これでもかと言う位蜘蛛ナポレオンの頭部を地面に打ち付けた高橋は
遂に彼をその手から解き放った。遥か上空へと放り投げたのだ。

そして彼を追うように地面を蹴り上げ天高く飛ぶ高橋。

「Xキーック」

やっと地を転げまわる地獄から開放された蜘蛛ナポレオンに対し
空中でキックが炸裂し彼を大爆発へと誘う。
そして戦いは終わった。


「すごいのれす・・・・いろんな意味で・・・・」
「すごいでしょ、真空地獄車とは相手の力を利用した必殺技なの。
大地を高速回転しながら敵の頭を地面にたたきつけ戦闘力を失わせ、
更に空中に放り上げ急降下に移り地上に激突させ最後にXキックで勝負を決するのよ。」
ミカが得意げに辻に解説する。
388名無しX:03/01/20 01:11 ID:3U+2jHdP
「ヤッター!愛ちゃんすごいやん」
Xライダー高橋愛に大ジャンプで飛びつく加護亜依

「加護さん、無事で良かった。私やりました。」

二人は抱き合いながらお互いの無事を心から喜びあった。
そこに全体重を乗せ飛んでくる辻。

「うわっ、のの重いがな。」
「辻も交ぜて欲しいのれす」
「あさみさ〜ん私やりましたよ〜」

高橋の声が廃工場の破れた天井から見える空へとこだまする。
それは仮面ライダーX高橋愛が真の新しい力を手に入れた瞬間だったのかもしれない。
389名無しX:03/01/20 01:13 ID:3U+2jHdP
「本当に良かったんですか?高橋にマーキュリー回路譲っちゃって。」
抱き合ってはしゃぐ三人を見ながらミカが矢口に聞いた。

「うん。これから若いあいつらには頑張ってもらわなくちゃいけないからね。
ほら、高橋もあんなに嬉しそうだ。」

「矢口さん・・・」
それぞれがつらい運命の中を生きるライダー達だが
もうすでに家族と言ってもいいような絆が生まれている事をあらためて実感し、
ミカは感動した。

「それに、おいらにはあの技はちょっと・・・いろんな意味できつい・・」
「え?何か言いました?」
「い、いや何でもない、何でもないよ。お〜い辻加護高橋〜そろそろ帰るよ〜」

「は〜い」

矢口とミカに駆け寄る三人。
ゼティマの怪人達は日々強力になっているが力を合わせれば
負けはしない。そう感じさせる瞬間だった。