いんたーみっしょん
「蘇れ、赤心少林拳!」
地獄谷の死闘から数日後、あゆみは考え込んでいた。
「どうしたの?」
その様子を心配して雅恵が声をかけて来た。
「この前の戦い・・・私、何も出来なかった。しかも人質・・・
みんなの足を引っ張ってる・・・もっと強くなりたい!」
あゆみの言葉に雅恵は言った。
「そんなの、仕方ないよ。私だってののちゃん達に比べたら力は無いし
あゆみだって、生身で戦えば私より強いじゃない。」
雅恵とめぐみは訓練の為、あゆみに合気道を習っていた。
「そうだけど、雅恵ねえちゃんはバイクロッサーの力があるじゃない。
怪人と戦える。私は戦闘員がやっとだよ。」
雅恵には、あゆみの気持ちが痛いほどわかる。自分の力不足が悔しい。
あゆみはいつも「強くなりたい」と言っている。
あゆみのそんな気持ちが一番わかるのは家族である自分達なのだ。
しばらくするとあゆみは、思い立った様に出かけて行った。
あゆみの向かった先は中澤家。あゆみはそこでとんでも無い事を言い出した。
「中澤さん、私も改造して下さい。私も強くなりたいんです。」
あゆみのこの言葉には、中澤家の全員が本気で怒った。
「柴田!お前、自分の言ってる事が解ってるんか?それはみんなに対する
侮辱やで、そんな事、二度と口にしたら許さへんからな!」
中澤の本気の怒りの前にあゆみは黙りこんだ。
「なあ、柴田、お前の気持ちは、なんとなく解る。自分の力不足が嫌なんやろ?
でもな、それはうちも同じや、みんなに迷惑かける事もある。そやけど
改造だけはアカン!誰も柴田がそうなる事を望む者なんかおらへんで。」
中澤の言う事はもっともだった。しかし、今のあゆみには他に道が無いと
思われた。その為ここにやって来たのだ。
「でも・・・」
あゆみが、そう言いかけると
「この話はこれで終わりや。家に帰って頭冷やせ!」
中澤にそう言われ、あゆみは中澤家を後にした。
しかし、あゆみは家には帰らず、ある場所に向かっていた。
あゆみは自分の最も尊敬する人物に会いに行ったのだ。
「園長先生、私もっと力を付けたいんです。何か知りませんか?」
そう、あゆみの訪れた先は「学園」園長の上原に何か無いか聞いていたのだ。
「力を付けたいか・・・難しい質問じゃのう。合気道だけじゃ、駄目なのか?
そうなると、柔道、空手・・・他の武道じゃイカンのか?」
「はい、そう言う物じゃ無くって、もっと実戦的な物、何か知りませんか?」
「そうじゃのう・・おっ、待てよ、これなんかどうじゃ?」
上原はそう言ってあゆみに一冊の古い本を渡した。そこには
「赤心少林拳」と書かれていた。
「園長先生、これは・・・」
「うん、これはな、わしがまだ若い頃にある人物から貰った物じゃ。
この本には、その拳法の基本が書かれている。」
「その人物って誰ですか?どこに行けば会えますか?」
あゆみは聞いた。
「残念じゃが、その人はもうこの世にいない。既に故人じゃ、だからその拳法も
伝承者はおらんと聞いておるが、その本で勉強してみたらどうじゃ?
何か掴めるかもしれんぞ」
あゆみは本を受け取ると家に帰った。
あゆみは家に帰ると一心不乱に本を読んでいた。
「・・・・、・ゅみ、あゆみ!」
瞳に呼ばれ、あゆみは我に帰った。
「お茶が入ったよ。なにをそんなに一生懸命読んでるの?」
あゆみは、今日一日の事を瞳に話した。
「そんなの気にする事無いよ、捕まったらまた、みんなが助けてくれるって。」
瞳は、この前の事をあまり気にしていない様だ。
「いいもん、私一人で、かんばるから。」
あゆみはそう言うと、また読書を再開した。
それから数日後、あゆみは近所の公園で、型の練習をしていた。そこに
「おーい、柴ちゃん!」
辻と飯田がやって来た。
「こんにちは、何してるの?太極拳?」
飯田の質問にあゆみは本を見せた。その本を見た飯田の表情が変わった。
「柴田、これ何処で手に入れたの?」
「園長先生に貰いました。」
「園長って学園の?」
「そうです。飯田さん、何か気になる事でもあるんですか?」
あゆみの言葉に飯田は大きく頷いた。
「私ね、この本ずっと探してたんだ。実はこの「赤心少林拳」を習ってたの。
でもね、その師匠が、亡くなって中途半端だったんだよね。
それでね、師匠が亡くなる時に、上原袈裟俊って人が本を持ってるから
後はそれで学びなさい、って、でもその人が見つからなくて・・」
飯田がそう言うと
「それって、園長先生ですよ。」
柴田は言った。すると
「本当に?じゃあやっぱり、この本なんだ。良かったー、これで続きがわかる
柴田、ありがとう。でもどうして、この本柴田が持ってるの?」
飯田の質問に、柴田は事情を話した。飯田は、柴田が中澤家に言った時
出かけていて、いなかったのだ。
「そっか、そりゃ裕ちゃんも怒るよ。私だってその場にいたら、きっと
怒ってたと思うよ。みんな好きで改造してる訳じゃないし。」
飯田がそう言うと
「その通りれす。あの時の中澤さんは、すげー怖かったのれす。」
辻は、あの時の中澤を思い出し震えていた。
「でもさ、やっぱり強くなりたいよね。私もそうだし、みんなそう思ってる。
だったらさ、赤心少林拳、二人で復活させようよ。
本当は、りんねとやる筈だったけど、りんねはもういない。
だからさ、こんどは柴田と一緒に、ねっ、がんばろう!」
飯田の言葉にあゆみは大きく頷いた。
「赤心少林拳」の復活はもうすぐだ!
いんたーみっしょん
「蘇れ、赤心少林拳!」 終わり!