仮面ライダーののX

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28ナナシマン
 翌日。レッドクインこと荒井紗紀が、デスパー軍団との接触場所に選んだ
のは市民球場だった。紗紀は里沙一人をスタンド席に残すと、事前に設定して
おいた総統を狙できるポイントまで移動し、機会を待つことにした。

 そして、20分ほど過ぎた頃だろうか。入り口のあたりから姿を
現したのはデスパー軍団の兵士達を伴った一体のデスパーロボだった。
 新たに頭に二つのハンマーを配し、すっかり元通りになった左腕の
ハンマーを誇示するように現れたのはあのハンマーデスパーだった。彼は
強化改造を受け、ハンマーデスパーUとして生まれ変わったのだ。

 「閣下、間違いありません。あの時の小娘です」

 そんな声を耳にしてか、ここでようやくウデスパー参謀を伴いガイゼル
総統が姿を現した。生まれて初めて目にする、デスパー軍団の長の姿。
今まで肖像画ぐらいでしか見たことのなかった、憎き五郎の仇がすぐ目の
前にいる。

 「ん?レッドクインの姿が見えんが・・・娘、ヤツはどうしている?」

 ウデスパー参謀の質問に、里沙は目を大きく見開いて言った。

 「お前達は私に用があるんでしょ?沙紀さんは関係ない!!」

 臆することなくそう言い放つ里沙に、逆に面食らったのはウデスパーの
方だった。
29ナナシマン:02/10/29 16:16 ID:tdDiqjgw
 「うぬ・・・たいした小娘よ」

 デスパー軍団ナンバー2の自分と相対してもなお、怯える様子のない少女。
すると、傍らに控えていたハンマーデスパーUがそんなウデスパーを
押しのけて前に出た。

 「レッドクインだと?あんなヤツはどうでも良い。俺はこのガキを殺す
だけだ!」

 いきり立つハンマーデスパーUは今にも里沙に殴りかからんばかりだ。
殺気をみなぎらせた敵を目の前にして里沙も覚悟を決めた、その時だった。

 「ダーン!!」

 どこからともなく聞こえてきた銃声。そして次の瞬間、真っ赤な血と共に
スタンドの床に落ちたのは・・・誰あろう、ガイゼル総統の耳だった。

 「何やつ!!」

 「総統、ご無事ですか?!」

 狼狽する二人のデスパーロボ。撃たれて欠け落ちた耳のあたりを押さえ
ながら、痛みに顔を歪ませるガイゼル総統。

30ナナシマン:02/10/29 16:18 ID:tdDiqjgw
 やがて、スタンド席でうろたえるデスパー軍団に向かって駆けてくる者
がいた。それは紗紀だった。今を逃せばチャンスはない、その思いが彼女
の暗殺者としての心理を狂わせた。あろう事か、彼女は更なる追撃のため
にターゲットの前に姿を現したのだ。

 「レッドクイン!裏切ったか!!」

 ウデスパー参謀はそう言うや、兵士達に一斉射撃を命じた。

 「構わぬ、撃ち殺せ!」

 誰もいない球場に轟く銃声。その直後、紗紀の身体は糸の切れた操り人形
のごとく崩れ落ちた。

 「紗紀さん!!」

 硝煙の煙るスタンドを駆ける里沙。血まみれの紗紀の元にたどり着くと、
必死の思いで名前を叫ぶ。その声に紗紀はかろうじて答える。

 「罰が当たったんだね・・・復讐のために里沙ちゃんを利用しようとした
罰が・・・ごめんね」

 「沙紀さん、しっかりして!紗紀さん!!」

 「アミ・・伊吹・・・里沙ちゃん・・・ごめんね」

 紗紀の薄れゆく意識をつなぎ止めるように、里沙は紗紀の手を握りしめて
いたが、もう紗紀は里沙の言葉に応えることはなかった。