かくして3人は調査結果を持って帰途についた。ところが、事態は
思いがけない展開を見せていた。3人が帰り着くなり血相を変えて裕子が
玄関に飛び出してきた。
「3人とも大変や!斉藤と柴田がゼティマにさらわれてもうた!」
そこには雅恵とめぐみも姿を見せていた。
「ウチらがお弁当買って帰ってきたら、こんなものがあったの」
そう言ってめぐみが地図と共に一枚の紙切れを取り出した。それを
ひったくって読み上げる裕子。そこにはこう書かれていた。
「・・・『お前達の仲間は預かった。命が惜しければ、明日の
正午、秩父の地獄谷へ黄金の鍵を持って来い。 ゼティマ』やて!」
添付されていたのは恐らく地獄谷への道順を示した地図だろう。どんな
罠が待っているか知れない。すると、そこへ圭織と希美も帰ってきた。
圭織はすぐさま昼間の話をしようとする。
「裕ちゃん大変、ゼティマの怪人が!」
「ええトコ帰ってきたな、圭織。斉藤と柴田がさらわれてもうた。敵は
黄金の鍵を狙ってる」
「昨日言ってたヤツでしょ?で、アレってなんだったの?」
知らせを聞いて部屋の奥から姿を現した真里と梨華も加わり、あさ美の
口から鍵の正体と恐るべき超兵器の真相が語られた。
「黄金の鍵と黒龍会・・・火の車があるのは地獄谷かも!」
真里の言葉に、梨華が不安げな表情を浮かべて言う。
「その鍵を渡さなければ二人の命は・・・でも鍵を渡せば恐ろしい兵器が
甦ってしまうんでしょ?どうすれば・・・」
「そんなの簡単じゃない、乗り込むのよ、敵の基地に!」
そう言って姿を現したのは外出から帰ってきたばかりの圭だった。さらに
別室から姿を見せたなつみと里沙も加わって同調する。
「二人を助けて、火の車も壊してしまえばいいっしょ!みんなでやれば
きっと出来るべ!」
「みんなで力を合わせれば、きっと出来るはずです!」
かくして少女達の思いは決まった。目指すは地獄谷、黒龍会道場だ。
一方、こちらは黒龍会道場。魔神の血の儀式が遂に始まろうとしていた。
テラー・マクロとドラゴンキング、そして数名の門弟達が儀式の間へと入り、
上座に安置された石像の前に立つ。
その石像こそ「魔神カイザーグロウの像」と呼ばれるもので、望む者に
不死身の力を与えるという。テラー・マクロは、魔神像を前にして、弟子達に
言った。
「これより、魔神の血の儀式を執り行う。この儀式の後、儂は不死身の力を
手に入れ、魔神の化身となる」
その言葉に応じ、ドラゴンキングが師の前に歩み出ると、恭しく一振りの
剣を差し出した。
「儂でなくあやつが儀式を受けておれば・・・」
死んだ弟子は自らを不滅の魔神「カイザーグロウ」になぞらえ、カラスの
改造人間として出撃することを望んだ。だが、惜しむらくは彼の暗殺拳の技が、
改造手術を受けた肉体によって生かされることが無かったことである。肉体的
資質を無視した手術によって、彼の総身に蓄えられた武術家としての錬磨の
証は失われてしまったのだ。
「今となっては儂が真のカイザーグロウとして化身し、スーパー1を倒す
ことが何よりの供養であろう」
そう言って彼は、ドラゴンキングの差し出した剣におもむろに手をかけると、
柄に手をかけ一気に引き抜いた。そして手にした鞘を放り捨て、魔神像の前に
歩み出た。
「今こそ、魔神の血を受けて力を得ん!」
そう言うや、テラー・マクロは老体から発したとは思えぬ渾身の力で魔神像
に剣を突き立てた。刀身が石を貫き、火花が飛び散ると剣は相手が石像とは
思えぬほど深々と突き刺さった。するとその直後、像はまるで生身の生き物の
様に真っ赤な血を吹き出したではないか。
魔神像に突き立てられた剣の根本から、まさに噴水のように吹き出す真っ赤
な血。それこそが欲する者に力を与えるという「魔神の血」である。滝の如く
降り注ぐその血を、狂気の笑みをたたえながら全身で浴びるテラー・マクロ。
げにおぞましき光景である。
その時どこからか、一羽のカラスが迷い込んできた。カラスはそのまま
テラー・マクロの肩口に止まると、儀式の間に響き渡る位の声で啼いて見せた。
その様子にドラゴンキングが大笑して言う。
「ウハハハハハ!師父、ご覧下さい。これは吉兆ですぞ。カラスだ、魔神の
使いだ!!」
その言葉に邪悪な笑みを浮かべるテラー・マクロ。そして魔神の血はカラス
もろともテラー・マクロの全身を隈無く深紅に染めていく。彼の脳裏によぎる
のは、弟子の仇を討つ機会と力を授かった喜びと、それと同じくして強く
なっていくスーパー1への憎しみの念であった。彼の胸の奥に、どす黒い憎しみ
の炎が燃えさかる。
するとテラー・マクロの憎しみに呼応するかの如く、魔神の血は不気味な
赤黒い光を放ち、まるで意志があるかのように全身にまとわりつく。異変を
察知したカラスは素早くテラー・マクロの身体を離れた。魔神の血は腕に、
脚に、そして彼の身体のほぼすべてを覆い尽くすと、紫色の炎とともに亡霊の
如き老人の身体は黒い翼を持つ巨大なカラス、魔神の化身へと変貌していた。
門弟達のどよめきとともに、カラスの怪人はゆっくり黒い翼を誇示して雄叫び
を挙げた。この瞬間テラー・マクロは彼の言う「真のカイザーグロウ」として
の力を得たのだ。
「儂はついに力を得たのだ。お前の仲間は此処にいるぞ。追ってこい
スーパー1。儂に殺されるためにな!!」
そして時を同じくして、帰還した地獄谷五人衆とゼティマ復讐兵団が合流
した。戦いの時は明日、正午。正義と悪の決戦の時はもうすぐだ。
その翌日、舞台は秩父山中は地獄谷。
遂に少女達は、敵の本拠地にたどり着いた。途中敵の攻撃があるかと
思われたが、意外にもすんなりとこの地にやって来ることができた。
しかし、これほど事が上手く運ぶはずはない。少女達は皆そう思っていた。
「ここまで来て何もないなんておかしいべさ。絶対何かあるって」
なつみに言われるまでもなく、少女達は決して警戒を怠ってはいない。
辺りを見回せば、大小の岩と立ち枯れた木々がこの世のものとは思えない
荒涼とした風景を作り出し、そして谷間に吹きすさぶ風は砂塵をまく。
そして所々に転々と見える黄色い結晶は恐らく硫黄か何かであろう。まさに
そこは人の通わぬ地獄谷である。
「もうすぐ12時ですよ。場所は間違ってないんですよね?」
愛の言葉に頷くひとみと梨華。視線を交わして注意を促しているのは
めぐみと雅恵の二人だ。約束の時間を前に少女達に緊張が走る。とその時、
谷を渡る風がぴたっと止んだ。
「あ、風が・・・」
と、里沙が言いかけたその時。
「シューッ!!」
まるで少女達を取り囲むように周囲から白煙が上がる。一度吹き上がった
白煙はやがて谷一帯を覆うように広がっていく。彼女たちの姿は煙に包まれて
しまったが、その中では異変が起きていた。
「みんな気を付けて!これは毒ガスよ!!」
梨華の声が谷間に響く。しかし、少女達は煙によって分断され、互いの存在
が全く判らない状態だ。地獄谷に発生する有毒なガスが少女達を襲ったのだ。
「うっ・・・けほっけほっ!」
誰のものともつかない咳、苦しげな呼吸音。なおもガスは激しく吹き上がり、
遂に煙の向こうからは声一つしなくなってしまった。
そして数分後。激しく噴出していたガスが止み、再び谷に風が吹く。
「バカめ・・・引っかかりおったわ!」
どこからともなくそんな声が聞こえてくると、岩陰に何者かが蠢く。
地獄谷五人衆とドラゴンキングだ。道中に罠を張る必要など、最初から
無かった。彼らはこの有毒ガスが発生するおおよその時間帯を把握した
上で少女達をおびきよせ、抹殺しようと企んだのだ。
谷間の地形を勘案すれば、一度ガスが発生すると一気に充満する。
その中にあってはたとえ改造人間であろうとただではすまない。それが
地獄谷の地獄たる所以である。
「さて・・・様子を見てみるとしようか」
五人衆は岩陰から身を乗り出し、谷の様子を窺う。だが、次の瞬間
彼らが見たのは信じられない光景だった。
「ヤツらがいないぞ!どういう事だ!!」
斜面を駆け下りて辺りを見回すが、少女達の姿が見あたらない。狐に
つままれたとは当にこのこと、ガスが晴れると同時に少女達はかき消えて
しまったと言うのか。と、その時だ。
「はっはっはっはっは!」
どこからともなく聞こえる笑い声。それも一人ではない、大人数である。
周囲を見回し、更に上空を見上げたその先、石と土に覆われた斜面に声の
主はいた。
「黒龍会!お前達の悪巧みはとうにお見通しだ!!」
仮面ライダーのの、あい、V3、ライダーマン、X、アマゾン、ストロンガー。
スカイライダー、スーパー1、キカイダー、ビジンダー、イナズマン。そして
姉妹拳バイクロッサー。居並ぶ戦士達は眼下の敵を前に一斉に見得を切る如く
身構える。その様は壮観としか言い様のないほどだ。そして斜面をジャンプで
飛び降りると、怪人達と対峙する。
「毒ガスのこともちゃーんと知ってたんれすよ!」
「いかにもお前らの考えそうなことや!」
五人衆の企みは少女達には既に看破されていたのだ。しかし、敵にはまだ
切り札が残っている。人質となっている瞳とあゆみだ。
「お前達、おとなしく鍵を渡せ!」
そう言って二人を連れてきたのは、ゼティマ復讐兵団として甦ったゴキブリ男。
彼以外にも怪人達はこの谷に集結している。
「復讐の時、来たれり!我らゼティマ復讐兵団!」
その声に呼応するように、一斉に姿を現すゼティマ復讐兵団の面々。いずれも
かつてライダー達の手によって倒された悪の手先達だ。
「人質交換といこうじゃないか。まずお前達の持ってきた鍵をこちらによこせ。
それからあの女共を解放してやる」
そう言って、五人衆の一人サタンホークが手を突き出す。
「さぁ、鍵を渡して貰おうか!」
敵の言葉に顔を見合わせる戦士達。そして、ライダーののが敵の前に歩み出て
鍵を手渡す。ののの小さな手から鍵をひったくると、サタンホークはそれを
ドラゴンキングに手渡し、谷中に響かんばかりの声で言った。
「確かに鍵はいただいた!ゴキブリ男、その女共を殺してしまえ!!」
なんと敵は卑劣にも約束を破り、瞳とあゆみを殺せと命じたではないか。
「卑怯れすよ!!」
「バカめが、約束とは破るためにあるものよ!!」
悪辣な怪人軍団に対して、怒りにまかせ挑みかかろうとするのの。しかし
それを阻むのは五人衆の弟分達だ。と、その時。
「ダーン!!」
谷にとどろく銃声。次の瞬間、ゴキブリ男は力無く崩れ落ち斜面を滑り
落ちていく。そして善悪対峙する谷間へと落ちたところで、爆発四散した。
「誰だ!!」
どよめきの声を挙げる怪人達。やがて彼らは、砂塵の彼方から現れる
一人の黒い戦士の姿を捉えた。
「貴様は・・・なぜだ!!」
全身黒のボディ、四肢に走る黄色い稲妻模様。そして、生みの親の
脳を頭部に頂く反逆の戦士。ハカイダー・マキの姿がそこにあった。
「お前達のやり方が気にくわない・・・それだけだ」
そう言ってハカイダーはキカイダー・ひとみの方を見る。
「お前を倒すことが出来るのは、この私だけだ」
そう一言だけ言い残すと、再びハカイダーは姿を消した。やがて怪人の
手を逃れた瞳とあゆみが、谷間のライダー達の元へ駆けてくる。
「大丈夫?怪我はない?」
そばへと駆け寄り、再会を喜ぶバイクロッサーと二人の少女。もう
敵に切り札はない。鍵は奪われたが、まだ火の車は動いてはいない。
臨戦態勢の戦士達は怪人軍団に対して身構える。
「おのれぇ・・・次から次へと小賢しいやつらよ。構わぬ、かかれ!」
サタンホークの号令の元、一斉にライダーに襲いかかる怪人軍団。砂塵を
巻き上げて斜面を駆け下りていく。遂に怪人達との戦いの火ぶたは切って
落とされた。
「ライダー!生きて帰れると思うなよ」
ライダーののとあいの前に立ちはだかったのは、蜘蛛男とナメクジ男、
そして蝙蝠男だ。
「ゲゲゲ・・・恨み晴らさでおくべきか・・・」
にじり寄る怪人に対し、身構えるダブルライダー。
「お前らもういっぺん地獄に送り返したるからな!」
ライダーあいが勢いよく二人の怪人相手に飛び込んでキックを放つ。
右に左に綺麗に相手の顔を捉えると、蜘蛛男とナメクジ男はもんどり打って
倒れ込んでしまった。
一方ライダーののは一瞬怯んだ蝙蝠男と腕四つに組み合うと、空中
高く大ジャンプで飛び上がる。そのまま怪人を頭から真っ逆さまにたたき
落とせば必殺の「きりもみシュート」だ。
「ライダーきりもみシュート!!」
回転したまま落下するののと蝙蝠男。そしてののが空中に華麗に身を翻す
のとは反対に、地面に叩き付けられた蝙蝠男は爆風と共に消えた。
そしてダブルライダーは残る蜘蛛男とナメクジ男を互いに鉢合わせに
すると、ジャンプ一番飛び上がり、空中から必殺の一撃を見舞う。
「ライダーダブルチョーップ!!」
ジャンプによって勢いを増した必殺のチョップが怪人を捉えると、蜘蛛男と
ナメクジ男もまた爆発四散した。
一方V3とライダーマン、Xライダーとにらみ合うのはハサミジャガー
とシーラカンスキッド、オニヒトデ、ネプチューンの4怪人だ。怪人達は
ライダーを取り囲むと、その包囲網を狭めて襲ってくる。
「この間は不覚をとったが、今度はそうはいかんぞ!」
「何度やっても同じだよ!おいらに勝てると思うな!」
自慢のハサミで斬りつけてくるハサミジャガーの攻撃を素早くかわすと、
V3は怪人の腹にパンチを食らわして敵を悶絶させる。そこへ仲間の
危機を救わんとネプチューンが溶解泡を吐きかけるが、その動きを察知
したV3はすんでの所で身をかわし、泡はハサミジャガーと、さらに
ライダーマンのパンチでよろめいたオニヒトデにかかってしまった。
「しまった!!」
慌てふためくネプチューン。しかし、時既に遅し。
「うっ・・・うわぁぁぁぁ!!」
みるみるうちにドロドロと溶けていくハサミジャガーとオニヒトデ。
労せずして敵を葬った3人ライダーに、怒り心頭の2大怪人が襲う。
「許さんぞ、ライダー!」
矛を構えて襲いかかるネプチューン。それをライドルスティックで
受け止めるXライダー。互いに切り結ぶ両者互角の戦いに、横合いから
不意の一撃が襲う。シーラカンスキッドだ。
「うわっ!!」
「バカめが、油断したな!」
側頭部に一撃を受け、横っ飛びに吹っ飛ぶXライダー。追い打ちを
かけようとシーラカンスキッドは素早く駆け寄るが、そこへV3が
駆けつけて素早く背後を取ると、無理矢理自分の方を向かせてパンチの
連打。しかし、シーラカンスキッドも負けてはいない。大きな手を
生かしたパンチを繰り出していく。しかし、数発それを受けたところで
V3はその攻撃をかいくぐって空中高くジャンプした。
「V3ッ!ビッグスカイパーンチ!!」
「何ぃっ!!」
高空から襲いかかるV3の鉄拳パンチが怪人の頭を叩き潰す。そして
そのままばったりと倒れ込むと、怪人は大爆発して消滅した。
一方ネプチューンも、ライダーマンとXライダーに追いつめられていた。
「ロープアーム!!」
右腕から放たれた鋼鉄製のロープががっちりと怪人の身体を捉え、自由を
奪う。そこに放たれるXライダー必殺の一撃。空中高くジャンプし、ライドル
を脳天めがけて振り下ろす。
「ライドル!脳天割り!!」
ライドルスティックがネプチューンの頭部をまるでスイカのように真っ二つ
にすると、怪人はそのまま崩れ落ちて大爆発した。
ストロンガーとスーパー1に襲いかかるのはガンガルとカメバズーカ。両者
一進一退の攻防の途中に、切り込んできたのは地獄谷五人衆の一人ゾゾンガー
だった。そして怪人達を追ってイナズマンが駆けつけ、3対3の戦いとなった。
「もぉっ!!何でこう次から次へと来るかなぁ〜」
悪態をつくストロンガー。しかし、怪人達は待ってはくれない。数の上では
互角となった怪人軍団。ゾゾンガーが戦闘を切って戦いを挑む。そこへ受けて
立つのはスーパー1。
「俺の象拳、とくと味わうが良い!」
ゾゾンガーの拳がまるで象の鼻のように振り下ろされる。象拳とは象の動き
を模した形意拳の一つなのだ。重量級の一撃はまともに食らえば無事では
すまない。スーパー1は怪人の攻撃を素早くかわして凌いでいたが、肩口を
捉えた一撃に思わず膝をつく。
「うっ!」
「圭織っ!」
肩を押さえるスーパー1。そこへストロンガーが割って入り、ゾゾンガーに
激しいパンチを見舞う。そして怪人の隙をついて担ぎ上げると、そのまま
飛行機投げで投げ飛ばした。
投げ飛ばされたゾゾンガーはバズーカ砲を取り出すと、間合いを取ってから
3人に対して構えた。そしてガンガルもまた腹に仕込んだ大砲を向ける。
遠巻きに戦いの様子を窺っていたカメバズーカも、自慢のバズーカ砲を向けて
砲撃体勢にはいる。
「これでも食らえ!」
三大怪人のバズーカ砲撃。直撃すればさしものライダーも命はない。と、
その時二人のライダーをかばうようにしてイナズマンが立ちはだかり、
ゼーバーを空に掲げて叫ぶ。
「ゼーバー!逆転チェェェースト!!」
するとどうだろう。3人の方へと向かっていたバズーカ砲弾が、まるで
フィルムを巻き戻すかのようにそのまま砲撃したゾゾンガーとガンガル、
カメバズーカの方へと戻っていくではないか。
「なっ・・・バカな!!」
「まっ、待て!ウワァァッ!!」
逃げまどう怪人たち。そしてその直後、怪人達は炎に包まれて大爆発した。
「圭織は道場に行くよ。火の車を止めなきゃ」
そう言ってスーパー1は一人黒龍会道場へと駆けて行く。その姿を見つけた
ライダーあい、V3、そしてビジンダーが後を追う。そんなライダー達の
行く手を阻むべく、地獄谷五人衆ヘビンダーが怪人達を引き連れ現れた。
「圭織、ここはおいら達が食い止めるから、早く!」
ヘビンダーの蛇拳を捌き、V3はカウンター気味のキックをたたき込んで
スーパー1に叫ぶ。キックをくらってよろめいた怪人に、今度はビジンダー
のビジンダーアローが突き刺さると、腕をやられたヘビンダーは自慢の拳を
封じられてしまった。
「後で私たちも行きますから、早く!!」
本来戦闘は不得手だが、ビジンダーも果敢に奮闘している。直接対決こそ
ないが、仲間達をうまくサポートする。2発、3発と打ち込まれる矢を食らい
クモ獣人とワニ獣人はすっかり戦闘不能状態に陥った。その姿を見届けると
ビジンダーとライダーあい、V3はスーパー1を追って道場の山門をくぐる。
「こいつらはまとめて面倒みるっしょ!」
そこへストロンガーも駆けつけ、パンチとキックで怪人達を蹴散らすと
ビジンダーアローでグロッキー気味のクモ獣人を抱えて空中高くジャンプ、
そのまま怪人をクルッとひっくり返す。
「反転ブリーカー!」
そのまま地上に叩き付けられたクモ獣人は大爆発して消滅した。しかし、
敵を葬ったストロンガーに、ようやく正気づいたワニ獣人が襲いかかる。
敵の姿を目指してドタドタと走ってくる獣人と、ストロンガーの間にはまだ
距離がある。そこでストロンガーは跪くと、地面に向けて拳を叩き付ける。
「エレクトロファイヤー!!」
ほとばしる電気エネルギーが炎に変わり、一直線に怪人めがけて
襲いかかる。真っ赤な炎の轍が獣人に達した瞬間、ワニ獣人はなすすべ
無く大爆発した。
「ストロンガー!まだ俺が残っているぞ!!」
蛇拳を封じられたとはいえ、まだヘビンダーは倒れたわけではない。
ゆっくりと互いに円を描くように、間合いを計りつつにらみ合う両者。
「シャーっ!」
残る腕で抜き手を繰り出すヘビンダー。間一髪でかわしたストロンガー
だったが、かすめた肩に痛みが走る。
「うっ・・・ちょっとかすっただけなのに?」
「フハハハハ・・・これがゼティマ拳法の神髄『毒手』よ。今度は
外さぬ!」
有毒生物の毒やすりつぶした有毒生物をまぶした砂に己の拳を打ち込む
過酷な修練の果てに会得する中国拳法の禁技「毒手」。まさにゼティマ拳法
の真骨頂とも言うべき攻撃である。続けざまに毒手を繰り出すヘビンダー
だったが、不意に後方から聞こえてくるバイクの音に振り向く。
「誰だっ」
「こっちも忘れて貰っちゃ困るって!」
爆音を響かせて走ってくるのは、マサエのマサエクロン。目標を確認
するとアクセル全開、そのまままっすぐ怪人めがけてつっこんでいく。
身をかわそうにも、既に手遅れだった。
「グッ、ウワァァァ!!」
断末魔の叫びを残し、ヘビンダーはマサエクロンにはねられて爆死。
自らの窮地を救ったマサエと、がっちり握手するストロンガー。
一方、復讐兵団最後の怪人カナリコブラと、残る五人衆サタンホーク、
クレイジータイガー、ストロングベアと戦うのはアマゾン、スカイライダー、
キカイダー、そしてライダーのの。特に地獄谷五人衆は難敵だ。怪人と
ライダー、両者拮抗のまま山門をくぐり中庭へと戦いの舞台を移す。
「グワァァォウ!」
雄叫びを挙げてクレイジータイガーの虎拳がうなる。虎の顎を模したように
両腕を突き出すと、ライダーののの頭部をかみ砕かんばかりの一撃が襲う。
すんでの所でこの一撃をかわしたが、その場にあった石灯籠は木っ端微塵だ。
「ちょこまかと・・・今度は逃がさんぞ」
今度は虎の爪を模した強力な拳打が繰り出される。ライダーののはこの攻撃
をどうにかしのぐと、クレイジータイガーの腕を取って投げ飛ばす。怪人の
身体は石灯籠にぶつかり、またも石灯籠はガラガラと音を立てて崩れる。
「ゼティマの怪人、観念しろ!」
身構えるライダーののに対して、クレイジータイガーは奥の手を出した。
ゆっくりと立ち上がると、隠し持っていた手槍を構えて襲いかかる。右に左に
繰り出される手槍をかわすと、ライダーののは裏拳一撃、怪人を怯ませる。
やがて体勢を立て直したクレイジータイガー、再び手槍を構えるとライダーのの
めがけて投げつけた。
「とうっ!!」
かけ声と共に手槍をキャッチしたライダーのの、すかさずこれを投げ返すと、
手槍はクレイジータイガーののど元に深々と突き刺さった。
「弟よ!!」
この光景を見たサタンホークが悲痛な叫び声を挙げる。だが、ライダー
ののはお構いなしに必殺の一撃を放つ。空中高くジャンプすると、地上の
敵にとどめの一撃だ。
「ライダーッキーック!」
ライダーキックが怪人に刺さった槍を押し込むように炸裂すると、
地獄谷五人衆クレイジータイガーも爆風と共に消えた。
残る五人衆はサタンホークとストロングベアだけとなった。サタンホーク
と死闘を演じていたのはアマゾンライダーだ。
「おのれぇ・・・弟たちをよくも!」
叫びと共に空中高くジャンプするサタンホーク。そのまま宙を飛び、空中
からアマゾンに襲いかかる。
「キエェェェェイ!」
鷹の爪の如き拳打が地上のアマゾンに繰り出される。空中からの攻撃に
翻弄され、反撃できずにいるアマゾン。
「空中からの攻撃とは・・・卑怯な!」
しかし、アマゾンもただやられていたわけではない。再び空中から襲って
くる瞬間を狙って、体勢を整える。そして、怪人が攻撃を加えようと降下して
襲ってきた、その時だ。
「ケェェェェーッ!!」
チャンス到来。アマゾンのひれが蠢く。そのまま空中の敵にタイミングを
合わせてジャンプすると、必殺の大切断をお見舞いした。
「ギャアアアアア!!」
片翼を切り落とされ、失速するサタンホーク。噴出した血がまるで飛行機雲
のように直線を描く。
「今よ、紺野っ!!」
「はいっ!」
墜落していく怪人にとどめの一撃を刺すべく、スカイライダーが走る。
そして、十分な助走をつけたところでジャンプすると、空中で身を翻し
必殺のキックを放つ。
「大反転スカイキィーック!!」
もはや反撃の力も残っていないサタンホークはそのまま秩父の谷底へと墜落、
爆発炎上した。
そしてその傍らでは、キカイダーの必殺技、電磁エンドがストロングベアに
炸裂していた。この大技をまともに食らった怪人は、身を翻すやばったりと
倒れて大爆発。この爆発に残るカナリコブラも巻き込まれて消滅し、ついに
戦士達はゼティマの軍団に勝利したのだ。
一方、道場内に侵入した4人は、襲い来る黒龍会の門弟達を叩きのめし
ながら、道場の最深部へとたどり着いた。そこは地下の洞窟だった。ふと
見上げると、天井は意外と高い。逆に言えばそれだけこの洞窟が深い
ところにあると言うことかも知れない。4人は周囲を警戒しながら更に
進むと、突然何者かの声がした。
「龍神洞にようこそ、仮面ライダー。目指す火の車はこの先にある」
そう言うや、目の前から黒衣の老人が姿を現した。テラー・マクロだ。
復讐に燃えるその目は一人のライダーに向けられていた。
「仮面ライダースーパー1・・・待っていたぞ」
その言葉に手刀を切って身構えるスーパー1。両者相対してにらみ合う。
最初に仕掛けるのは、どちらか。
「スーパー1、儂はこの時を待っていた。我が弟子の仇、取らせて貰う」
「弟子の仇・・・何のことだか判らないんだけど?!」
するとテラー・マクロは右に左に手刀を切り、まるで拳法の演舞のような
動きを見せると、広げた手のひらを上下にあわせ、呼吸と共に突き出す。
「この姿に、見覚えがないとは言わせぬぞ」
みるみるうちにテラー・マクロの全身は赤黒い光に覆われ、その姿は魔神
の化身、カイザーグロウに変化した。
「お前は!!」
漆黒の翼を広げたカラスの怪人。それはかつて倒したはずの怨敵の姿。
親友を殺した憎き仇の姿だ。
「ようやく思い出したか。お前はこの姿を見知っておるはずだ。お前が
倒した者こそが、儂の弟子よ!」
「アイツはりんねをっ・・・圭織の友達を殺したんだもん!」
「知らぬわ!いかなる理由があろうとも、儂はお前を許しはせん!!」
全身に怨念をみなぎらせ、魔神の化身はスーパー1に向かって一直線に
駆け出す。スーパー1もまた、忌まわしい敵との決着のために駆けだした。
一方、龍神洞の奥。ドラゴンキングは空飛ぶ火の車を目の前にしていた。
金色に輝く龍神、伝説の通りの偉容をたたえてそれは鎮座していた。
「素晴らしい・・・これさえ動き出せば、ライダーなど恐れるに足らぬ」
すかさず彼は操縦席に乗り込むと、手にした鍵を差し込んだ。その瞬間、
火の車に不思議な生気が宿り、金色の光を放ち始めた。
「いいぞ・・・この火の車の力があれば、ゼティマにとって変わること
だってできる」
興奮を抑えきれないドラゴンキング。そして彼は始動のレバーを引く。
すると激しい地鳴りと共に、少しずつ火の車は浮上し始めた。
そしてその地鳴りは壮絶な戦いを繰り広げているスーパー1とカイザーグロウ
の戦いの舞台にも伝わってきた。
「うわっ!!」
天井からぱらぱらと小石や砂が降ってくる。地面は激しく揺れ、立っている
のが困難な状態だ。戦いを見守るライダーあい、V3、ビジンダーはたまらず
物陰に隠れるが、怨念の戦いを繰り広げている両者はそれどころではない。
「チェンジ!パワーハンド!!」
銀色のグローブが、赤いメカニカルな腕に変わる。ファイブハンドの一つ、
パワーハンドだ。スーパー1はこの腕にチェンジすることで、通常よりも
さらに強力な怪力を得ることが出来、打撃による攻撃力も増すのだ。その状態
で、渾身の一撃を放つスーパー1。しかし、その突きを食らってもなお、怪人
は平然としている。さらに続けざまに連打を放つが、全く効いている様子は
ない。
「どうした?もう終わりか。ならば、こちらから行くぞ!」
「ふんっ!はぁっ!!」
カイザーグロウの連続突きがスーパー1の胸元を捉える。激しい攻撃に
体勢を崩し、よろめくスーパー1。そこに怪人の強烈な回し蹴りが炸裂する。
「圭織っ!!」
くるくると駒のように回転しながら、洞窟の壁に叩き付けられるスーパー1。
V3の叫びもむなしく、ぐったりとなったまま立ち上がることが出来ない。
「飯田さん!!」
「立つんや!」
ビジンダー、そしてライダーあいの言葉にも応えることはない。万事休すか。
「フハハハハハ!無駄だ、立ち上がることなど適うものか!!」
カイザーグロウは立ち上がれないスーパー1の元へ歩み寄ると、とどめの一撃
を繰り出そうとしていた。
その時圭織は暗闇の中に佇んでいた。辺りを見渡しても、何処までも続く闇。
何処が上で何処が下なのか、そんな感覚をも失わせるほどの暗黒の中、彼女
はたった一人でそこにいた。
しばらく歩くと、向こうの方に光が差すのが見えた。光の差す方が出口に
違いない、圭織はそう考えて光の方へと歩き出す。とその時、不意に誰かの
声がする。
「圭織、そっちじゃないよ」
自分のことを知っている者の声なのか。圭織は再び耳を澄ませてみた。
「そっちはあなたの行くべき道じゃないよ。まだあなたはこっちに来ちゃ
いけない人」
懐かしいその声に、思わず圭織の瞳が潤む。
「嘘・・・りんねなの・・・」
今は無き友の名を呼ぶ圭織。と次の瞬間、漆黒の闇に小さく黄色い光が
ともる。そしてその光は更にその数を増し、瞬く間に彼女を包む無数の輝き
となって目の前に広がった。
「その光があなたを導いてくれるよ。苦しいかも知れないけど、希望は
捨てちゃダメだよ」
無数の光の中に佇む圭織の目の前に、懐かしい友の姿が浮かぶ。そして
彼女は圭織を導くかのように闇の奥へと消えていく。そして無数の光も
また、まるでその道行きを照らすように闇の奥へと続いていく。
「判った・・・圭織負けない。絶対に負けないんだから!」
圭織は走った。光の導くままに。黄色い小さな灯火は、まるで彼女の
行く先を照らし、後をついて来るようにいつまでも輝き続けている。
そして、彼女は戻ってきた。
「ええーいっ!!」
意識を取り戻したスーパー1は、素早く跳ね起きると怪人に起きあがり
ざまにキックを繰り出す。その一撃がカイザーグロウを捉えたとき、敵の
身体に異変が起きた。
「ぐおおおっ!!」
肩口に放った一撃に苦しみもだえるカイザーグロウ。そこは先刻の魔神
の血の儀式において、カラスがとまったあの肩口であった。不死身の力を
与える魔神の血だったが、カラスのとまった部分だけが血に染まって
いなかったのだ。この瞬間、4人は反撃の糸口を掴んだ。
「梨華ちゃん!ビジンダーアローや!!」
「OK!」
あいの言葉に素早く応え、ビジンダーアローを放つ。それは怪人の肩口に
見事に命中した。
「ぐぅっ!!」
肩を押さえて苦痛に顔を歪ませるカイザーグロウ。不死身の力は一体どこ
へ消え失せたのか、と言うほどの激痛が走る。
「バカな・・・儂は不死身・・・魔神の化身のはずだ!!」
「もうこれ以上、誰の血も涙も流させない!それが、ウチらの誓いや!!」
ライダーあいが叫んだその瞬間、洞窟の中が不意に明るくなった。それは圭織を
導いたあの光。無数の黄色い灯火が、洞窟中に広がっていく。その光の中を華麗
にジャンプすると、電光石火の稲妻キックを放つ。
「ライダー、稲妻キィーック!」
「ぬおっ!!」
さすがに不滅の魔神を名乗るだけはある。この一撃を受けてもなお、耐えて
立っているではないか。だが、反撃する隙は与えない。
「不滅の悪なんていないんだよ!悪は滅びる、おいら達の力でね!!」
そう叫ぶと、大きくジャンプするV3。光の中で力の限り全身を回転させて
キックを放つ。
「V3!フル回転、キィィィック!」
その一撃はカイザーグロウの肩口に炸裂し、怪人は大きくよろめく。だが
まだ敵を倒すには至らない。
「りんねと、そしてみんなのために・・・これで決めるっ!」
友への思いと友情を乗せて、漂う灯火を纏うように空中を舞うスーパー1。
月面宙返りの後、鋭いキックが怪人に突き刺さる。
「スーパーライダーっ!月面キーック!!」
怪人の肩口を吹き飛ばすほどの強力な一撃に、遂に魔神の化身が倒れた。
肩口から噴水のように吹き出すどす黒い血。やがてのたうち回る怪人の姿は、
元の亡霊のような老人の姿に戻っていく。
「儂が・・・儂が死んでも火の車がある。何人たりともあれを止めることは
適わぬ。黒龍会に・・・ゼティマに栄えあれ!!」
断末魔の叫びと共に、テラー・マクロの身体は紫色の炎に包まれて消えた。
そして、戦いの終わりを見届けたかのように、黄色い灯火は一つ、また一つと
消えていく。
その灯火の消えゆく様を惜しむように眺める4人。すると、そのうちの一つ
がすうっ、とスーパー1の手の中に舞い降りてきた。
「ありがとう。また助けられたね・・・」
一人つぶやくスーパー1〜圭織。その声に灯火は一瞬強く輝くと、再び
舞い上がり、洞窟の闇の奥へと吸い込まれていった。
しかし、いつまでも4人に感傷に浸ることを許すほど事態は甘くはない。
先ほどの地鳴りの原因が火の車であると直感した4人は、急いで洞窟の外へと
駆けていく。
道場の外に出た4人を待っていたのは、上空から激しく炎を吹き付ける
黄金の龍だった。これこそ、古代中国の超兵器「空飛ぶ火の車」だ。
「たとえ我が師が敗れ去ろうとも!この空飛ぶ火の車さえあれば黒龍会
は不滅よ!!」
ドラゴンキングの叫びが谷間に響く。黄金の龍を囲む輪の周囲は激しく
火を噴き、その力で火の車は回転飛行する。黄金の龍の口からは灼熱の炎が
吐き出され、地上の戦士達はこれをよけるので精一杯だ。
「くっ・・・空中からなんて卑怯れすよ!!」
「何とでも言うが良い!どうせお前達には、焼け死ぬ以外に道はないん
だからな!!」
怪人ドラゴンキングは、火の車の舵を取りつつ喜色をたたえて言い放つ。
上空からの一方的すぎる攻撃に、戦士達になすすべはないかと思われた
その時。
「アイツは私たちに任せて!!」
「あんまり活躍できなかったんだから、最後のおいしいところは
持ってくからね!!」
振り返ったその先には、マサエとメグミ、バイクロッサーの姿があった。
マサエクロンでスピンターンを決めると、マサエはスピードを上げて
ジャンプし宙に舞う。
一方のメグミは大地に立ち、マサエクロンを待ち受ける。そして姉妹の
心が一つになる瞬間が訪れる。空中からマサエクロンがメグミの肩に
着地すると、そのままがっしりとマサエクロンを肩に担いだメグミが、
スコープを覗き狙いを定める。標的はもちろん、空中の火の車だ。
「ブレイザーカノン、発射!!」
地上から放たれた光の矢、ほとばしる強力なエネルギー波が火の車を貫く。
「まさか、火の車が・・・ウワァァァァァァ!!」
伝説の超兵器、空飛ぶ火の車も少女達の正義の心には勝てなかった。激しく
炎を吹き上げながら失速していく火の車。やがてそれは黒龍会道場に墜落し、
道場もろとも大爆発した。
黒煙をあげて燃え続ける地獄谷の黒龍会道場。道場の方から、時折大小の
爆発が起こる。その様子を見つめながら、戦士達は勝利をかみしめていた。
連戦に次ぐ連戦。次々と現れる怪人軍団を倒し、またスーパー1、V3、
ライダーあい、ビジンダーは魔神の化身カイザーグロウとの壮絶な戦いを
制した。そして今、古代の超兵器は悪の野望と共に炎の彼方に消えた。
だが、その時戦士達は背後に何者かの気配を感じて振り返る。そこには、
これまでの敵とは違う異様な気配を漂わせた五人の幹部達が居並んでいた。
「このたびの戦い、見事であった。今回は我らの負けを認めるとしよう
だが、次はこうはいかんぞ」
銀色の鎧と、頭部から不気味に延びるパイプ。白い顔に走る赤い隈取りと
あいまって邪悪な存在感を放つこの男こそが、かの悪魔元帥である。
「我々とうぬらとの戦いは始まったばかり」
傍らに立つ黒髪の女。魔女参謀はそう言って妖艶な笑みを浮かべる。
「いずれまた相まみえようぞ。楽しみにしておれ!」
人骨を象った鎧に髑髏の兜を被り、炎を象った杖を持つ男、鬼火司令は
手にした杖を突きつけてライダー達を一睨みする。
「世界は必ず私たちのものになるのよ」
およそ悪の手先とは思えないようなピンク色の衣装を纏い、蝶のアイマスク
をした女性幹部〜妖怪王女は笑う。
「今日の所は達者でのぉ」
生気のない顔にぼさぼさの頭。幽霊博士が戦士達に別れを告げると、幹部達は
何処かへと姿を消した。
戦いはまだ終わったわけではない。ゼティマはおろかダーク、デスター、
デスパー軍団など悪の軍団は未だ健在だ。悪の魔の手から世界を守るため、
力の限り戦い抜こう。戦いを終えて変身を解いた少女達は、さらなる戦いに
向けて決意を新たにするのだった。
冬休み劇場 「仮面ライダーのの 破れゼティマ拳法・地獄谷の決闘!」 終