そんなジーザスタウンだが、無法地帯と言うわけでは無い。法は存在する。
法を守る者も存在する。そして、人々の罪は3段階に分けられている。
もっとも軽い段階の犯罪は、それこそ数多くある。一般的な犯罪全てがそうであると
言ってもよい。その罪を犯したものは、セントラルタワーに捕らえられ、約10日で
釈放される。その10日の間に再び犯罪を犯さぬように教育される。
次に重い犯罪は、ジーザスタウンから脱出を試みる事。洗脳はある日突然に解ける場
合がある。洗脳が解けなくても、ジーザスタウンの外に好奇心を抱く者や、生活に困っ
て逃げ出す者等がこの罪を犯す。捕らえられた者は、教育された後にジーザスタウンの
治安維持部隊に送られ、元老院の忠実なしもべとして働く事になる。
一番重い罪は元老院に反抗する事である。この町では比較的簡単に銃が手に入る。そ
の手に入れた銃で、元老院の輸送部隊が襲われる事がある。治安維持部隊が殺されたり
もする。この罪を犯した場合の処罰は決まってはいない。大体は収容施設に入れられる。
いまだかつてここから出てきた人間はいない。
例外が出るときもある。それは、この町を治安維持部隊を統括している、1人の人造
人間が決める事なのだが…。
ジーザスタウン設立より幾つかの季節が流れていった。そして、今日もまた1つの名
も無い家族がジーザスタウンより逃げ出した。ジーザスタウンから半径3キロは監視の
為に、何も無い荒野になっている。しかしその家族は偶然にも、荒野の先にある小高い
山の中腹に廃墟になった病院を見つける事が出来た。家族は、その病院目指して走り出
した。
先日、治安部隊の隊員がゲリラによって数名死亡した。その補充の為にその家族を逃
したのだ。家族を捕らえる為に、3名の隊員が出動した。武器は携帯したいるのだが、
あくまで脅しである。逃げる家族に威嚇の為に数発発砲したが、不幸にもその銃弾は子供
の手をひく父親の肩に命中してしまった。隊員が、しまったと思った時には遅かった。
逃げ出したとはいえ、住民を傷つけてしまったのだ。そのことを本部に報告しなければな
らない。報告をしている間に家族は山に消えていった。報告を終えた隊員は急いで家族を
追った。中腹に建つ廃墟目指し輸送車を走らせた。