暗いトンネルを進むとドアに突き当たった。
ソニンが前に立つとドアが自動的に開き、明るく清潔な通路があった。
通路の両側にはいくつも部屋がある。
その一つに入ってみると、引っ越した後らしく古い机が一つだけ残っていた。
元は事務室か何かだったようだ。
その机の上に書類が何枚か散らばっていた。
ソニンの目はその書類の一つに釘付けになった。
書類の宛て名が「zetima本部」になっている。
胸の刺青と同じ文字・・・
書類を読んでみるが、定期報告らしく大したことは書いていない。ここが「江戸川研究所」
と呼ばれていたことが分かったぐらいだ。
他の部屋も見てみるが手がかりになるようなものは何もなかった。
さらに進んでいくと、一番奥に大きく頑丈そうな金属のドアがあった。
オートロックの機械がついているが、今は動いていないようだ。
押してみるとあっさりと開いた。
中にさっきの男と他に何人かいた。大きな筒状のものを運び出そうとしていた。
ソニンがその筒をよく見るとガラスの水槽であった。
その中には・・・解剖された改造人間の標本が入っていた・・・
「きゃああああ!」
ソニンは思わず悲鳴を上げた。
男たちが一斉にこちらを向いた。
「しまった!」
逃げ出そうとすると警報が鳴り始めた。
あちこちから足音が聞こえてくる。
数人なら自分の怪力で何とかならないかとも思ったが、巨大な蟻や戦闘員、
おまけに改造人間まで現れたところで素直に逃げることにした。
「一体ここは何なの?」
あちこち逃げ回っているうちに道に迷い、帰り道を見失ってしまった。
ソニンはあちこちの扉を力任せに破りながら逃げ回った。
やっと外に出られそうなトンネルを見つけるとそこへ逃げ込んだ。
走り続けると向こうに外の明かりが見える。
スピードを上げて一気に駆け抜けようとする。
すると目の前に人影が現れた。
ユウキだった。
ソニンは驚いてスピードを緩めた。
ユウキはあっけに取られてこちらを見ている。
さっきの連中の仲間ではないようだ。ソニンは無視してユウキの横をすり抜けた。
ソニンはトンネルを抜け、外へ出た。
これで一安心・・・・
・・・さっきの子は大丈夫だろうか?
自分には関係無い・・・でも・・・
ソニンはもう一度トンネルに入り、来た道を戻って行った。
「うわああ!」
案の定、ユウキが怪人たちに追いかけられていた。
ソニンはユウキと怪人の間に入り、戦闘員を2人ばかり投げ飛ばした。
ユウキは驚いた顔でそれを見ている。
「何やってるの?逃げるわよ!」
ソニンはユウキの手を持って逃げ出した。
「いだだだだだ!!」
ユウキはソニンのスピードに付いていけず引きずられている。
「あー!もう!」
ソニンはユウキを持ち上げ、抱えて走り出した。
やっとトンネルを抜けたが、今度は戦闘員がいた。
「一体どこから?」
後ろからは怪人が迫ってきている。
「ええい!」
ソニンはユウキを抱えたままジャンプした。
戦闘員を飛び越え、一気に山を下って行った。
しかし山道は足元が悪く、思ったようにスピードが上がらない。
慌てたソニンはバランスを崩し、谷底へ転落した
ユウキと二人揃って落ちていく。ソニンはとっさにロープのようなものを掴んだ。
高圧電線だった。
高圧電流が二人の体を流れ、そのまま二人とも気を失った。
ソニンは気を失う直前、目の前に赤い怪人と白い怪人が現れたのを見た。
気を失った二人は同じ夢を見た。
ユウキが赤い怪人・カゲスターに、ソニンが白い怪人・ベルスターに変身し、
戦闘員や怪人を倒していく夢だった・・・
二人が目を覚ますと怪人と戦闘員がすべて倒されていた。
夢で見たのと全く同じ倒され方であった。
「・・・夢じゃなかったの?」
「俺達がやったのか?・・・」
「ところであなたは誰?ここで何をやっていたの?」
「俺は・・・」
・・・こうして二人の旅は始まった。
・・・・フェリーがようやく青森の港に着いた。
ソニンは船から下りるなり準備運動を始めた。
「やっぱり走る気だ・・・」
ユウキはうなだれた
「どうしたのユウキ。あ、そうか夕飯まだだったね」
そう言うとソニンはキャンプ用のコンロを取り出し、お湯を沸かし始めた。
お湯が沸くと真空パックのご飯とレトルトカレーを取り出した。
「やっぱりカレー・・・」
ユウキはへたり込んだ
・・・二人の旅はまだまだ続く