いんたーみっしょん
【斎藤・柴田過去物語・斎藤編】
柴田が自分の話をしているのと同じ頃【ペガサス】では
「ただいまー!」
買い物に行っていた斎藤が帰ってきた。
「お帰り・・って何でこっちに来るの?今日は夕食そっちの当番でしょ。」
大谷達四人は家事を当番制にしていた。そして今日は斎藤の当番なので
夕食は斎藤の家になるはずであった。
「そうだけど、さっき買い物してたら安倍さん達に会って、
みんなが、ここ見たいって言ったから案内してきたの。」
見ると斎藤の後ろには、安倍、高橋、紺野がいた。
「こんにちは、大谷さん達のお店が見たかったから、斎藤さんについて来たべ。
忙しかった?」
安倍はそう言ったが既に椅子に座っていた。
「大丈夫ですよ、今日は暇だし、ゆっくりして行って下さい。」
大谷はそう言うと四人にお茶を出した。
「他の二人は?」
安倍の質問に大谷は
「ちょっと前に、ののちゃんから電話があって、そちらにおじゃましてると
思います。あっでも、もう帰ってくるかな?」
「・・・?何しに行ったべさ?」
「・・・えーっと・・中澤さんには内緒ですよ。ののちゃんが昨日のテーブル
壊したから直してくれって。あゆみも一緒に行ってます。」
「・・・・・」「・・・・・」「・・・・・」
安倍も高橋も紺野も言葉を失った。そして
「ごめんねー、ののったら、すぐこれだべさ。」
そんな話をしながら五人の話はいつしか自分の身の上話になっていた。
友を失った者、家族を失った者、皆何かしらの傷を負っていた。
しかし、その中で一人そうで無い者がいた。斎藤である。
初代【ペガサス】の右隣は斎藤家、左隣は大谷家、お店は共同経営だったが
本来は村田の家であった。ちなみに現在の大谷家跡地は、月極め駐車場に
なっており、学園時代二人の生活費はここから出ていたのである。
さらに今は大事な収入源の一つだ。
斎藤の両親は、大手興信所に勤務する探偵だった。
母親は、ひとみ誕生を期に探偵をやめが、父親はいつも家にいない生活が
続いていた。斎藤は、いつも父親が家にいるめぐみや雅恵が羨ましかった。
そんな斎藤の様子を見ていた父親は、独立を決心したのである。
【斎藤探偵事務所】斎藤の家には最初そんな看板が掛かっていた。
しかし、仕事の依頼はあまり無く生活はかなり苦しかった。
それでも斎藤は良かった。父親と一緒にいられる時間が増えたのだ。
そんな時あの忌まわしい事件が起こった。両親を失った村田と大谷を
斎藤家では是非とも引き取りたかった。三軒とも家族の様に暮していたからだ。
しかし、今の斎藤家にはそんな余裕はなかった。
「残念だけど、今のおじさんには二人とも養えるほどの余裕がないんだ。
でも、辛かったらいつでも遊びにおいで。」
斎藤の父親が二人に言える精一杯の言葉だった。
事件の後も事務所は相変わらずだった。父親が勤めていた興信所から仕事を
貰って何とかやって行ける状況だったのだ。そんな中、斎藤の父親は
「探偵事務所じゃ、やって行けないから、何でも屋を始めようと思う。」
斎藤の父親、大吉はそう妻と娘に告げた。
「何でも屋?」
斎藤は大吉に聞いた。
「そうだ、何でも屋だ。どんな仕事でも引き受ける仕事だ。今も時々変な依頼が
あるだろう、今までは断ってたが、それも引き受けようと思う。
名前は・・いろんな仕事があるから、職安みたいに・・よし、
【ハローワーク商会】だ。」
【ハローワーク商会】はこの瞬間誕生した。
その後仕事は大変だったが、依頼は頻繁にくる様になり、会社も軌道にのった。
そして数年後、【ペガサス】が復活する二年前のある日、大吉の所へ
奇妙な男達がやって来た。大吉はその男達の依頼を受けた。
それから大吉は、日本中を飛び回る様になり、あまり帰って来なくなった。
会社の方は、斎藤と母親でやれる依頼を引き受ける程度で、大吉の仕事の
依頼主から毎月入金があるのでやって行けた。
さらにそれから一年後のある日、斎藤は隣の空き地に数人の人が立っているのを
見つけた。それは帰って来た村田と大谷、それに二人が連れてきた建設業者だ。
「・・・めぐみ・・・雅恵・・・お帰り!」
二人を見つけた斎藤はそう言ったが感動で声にならなかった。
二人もまた同じであった。半年後【ペガサス】工事は始まった。
丁度その頃、久々に大吉が帰って来た。
「そうか、二人とも立派になったな。おじさんもうれしいぞ。」
大吉は村田と大谷にそう言うと今度は斎藤に
「なあ、ひとみ、二人とも戻ってきたんなら会社は一人でも大丈夫だよな?」
突然の大吉の言葉に斎藤は聞いた。
「どう言うこと?お母さんは?」
「実はな、今度はお母さんにもこっちの仕事を手伝ってもらおうと思ってるんだ
それにな、海外に行く事になるかもしれないんだ。」
そんな大吉に斎藤は初めて聞いた。
「お父さんの仕事って何やってるの?」
「詳しくは言えんが、ある組織について調べていてな、ただ俺だけじゃ
手におえなくなって来てるんだ。お母さんだって昔は優秀な探偵だ
他の奴に頼むより安心だしな。なーに大丈夫!危険はないよ。」
そして、両親は旅立って行き、【ペガサス】は完成した。
いんたーみっしょん【過去物語・斎藤編】終わり
いんたーみっしょん
【過去物語・その後】
【ペガサス】が開店して数日後、二人の所へ柴田がやって来た。
「開店おめでとう、来るの遅くなってごめんね。」
そう言うと柴田は二人に、今の自分の事を話し始めた。
「そうか・・こまったなー、どうする?まさえ。」
「だったら、ひとみに頼めば。おじさん達いなくなって
人が足りないって言ってたし、なんとかなるでしょう。」
人手不足の【ハローワーク商会】にとって柴田はありがたい人材だった。
斎藤と柴田は過去に面識があった。斎藤が学園に二人を訪ねた時に
何度も会っているからだ。
「いやー、助かるよ。あゆみがここで働いてくれるなんて。
ついでに引っ越しておいでよ。空き部屋いっぱいあるし。」
斎藤の申し出を柴田は快く受けた。
そして今現在【ペガサス】では
「うーん、解らないなー。それじゃあ斎藤さんは無理して戦う事ないべさ。」
安倍にそう言われて斎藤は答える。
「別に理由なんて必要ないですよ。めぐみもまさえもあゆみもみんな
私の姉妹です。身内を助けるのは当然でしょう?それにやっぱり私は父の
娘なんですよ。父も同じような事やってる様だし、ひょっとしたら
父が調べてる組織ってゼティマかもしれない・・」
斎藤の言葉を聞いて紺野が言った。
「安部さん、私には斎藤さんの言ってる事わかる様な気がします。」
それを聞いて
「うーん、解った様な解らない様な・・なっち微妙だよー。」
その言葉に笑いが起きた。
同じ頃、中澤家でも保田が柴田に同じような質問をしていた。
「でも、それって・・いいの?柴田さんは直接は戦う理由がないんだよ。
私、できれば誰も巻き込みたくない。」
保田はそう言ったが柴田は
「保田さん、私は誰の為でもない、自分の為に戦うんです。さっきも話したけど
私の父は警察官でした。父だって時には人の為に命をかけた事もあったと
思います。でも結局は父が自分で選んだ道です。だから私もそうします。」
柴田がそう言うと後ろから声が聞こえた。
「いやー、ええ話聞かせてもらったわ。柴田、それでええんや。頑張りや。」
そこには中澤他、が立っていた。
「そうやで、みんなで助けあえばいいんや、ところであんたら
なんでここにいるん?」
中澤の視線は村田の道具箱に向いていた。
その後辻の悪事が全てばれてしまった。
「村田さんがちゃんと道具をしまっていれば、ばれなかったのれす。」
辻は村田に八つ当たりしている。
「こら辻!人のせいにするんじゃないの、いつも言ってるでしょう。」
矢口が辻を叱った。
「辻は今晩ご飯抜きやな。」
中澤にそう言われ辻が言った。
「おやびん、それだけはカンベンをー!」
いんたーみっしょん【斎藤・柴田過去編】完結!