その様子を見ていたのは、ステージ上に居たほかのメンバーも同じだった。
後藤さんが、ぎゅうっと両手でマイクを握り締め、顔を伏せる。
必死で飯田さんに状況を尋ねている様子の辻ちゃん。
強ばった表情の飯田さんは、それでも優しく辻ちゃんの頭を撫でていた。
「おっがっわー、おいっ! おっがっわー、おいっ!」
気付けば、会場のあちらこちらから手拍子と共に小川コールが巻き上がっていた。
私たちの小さなやりとりなど目に届かないのだろう。
ただただ無責任にそれは響いた。
広い会場でこのステージだけが、ぽっかりと取り残された気さえしてくる。
埋め尽くす人々の声が、妙な迫力を帯び始め私たちを襲う。
「おっがっわー、おいっ! おっがっわー、おいっ!」
「やめてくださいっ!!」
遮ったのは、辻ちゃんだった。
「お願いだから……、静かにして、下さい! まこっちゃんが、まこっちゃんが……」
声を詰まらせ泣きじゃくりながらも、必死に叫んでいた。
マイクを近づけすぎたのか度々ハウリングする。
キィンと響くその音は、まるで悲鳴のようだった。