娘の時代は終わった・・

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146 ◆PNXYnQrG2o

「な、何ですか、これ?」
「チョコレート。見つけたんだ。美味しいよ?」

にんまり笑って、自分の口にもチョコレートを入れる保田さん。
口を動かして噛んだのを見て、私も真似て噛んでみた。
チョコレートの中から出てきたのはトロリと何か熱い液体。
すこし、ほろ苦い。

「これ、何か変だよ?」
「へへー。ナッツでも入ってると思った?これね、お酒なんだ」
「お酒?え、いいの?食べちゃったよ?」
「こん位なら大丈夫だって。なんかふわーっとして美味しいでしょ?」
「んー、よく分かんないけど、ふわーっとはする」

あれ、お酒だったのか。
どこか暖かくて、いい香りがするチョコレート。
美味しいかどうかまでは分からなかった。
飲み込んでしまった今でも、ふわっと熱さが残る。
保田さんは私の反応に満足したのか、包み紙を丸めながら話を続けた。

「チョコレート、これしか見つかんなかったんだよね」
「え?」
「ほら、甘いモノ食べると落ち着くって言うじゃん」
「それ、聞いたことある」
「でしょ?じゃあ、これ。皆には内緒、ね」

そう言うと、紙に包まれたチョコレートを二粒渡してくれた。
147 ◆PNXYnQrG2o :02/11/14 00:44 ID:U9vsnKci

「一つは、辻にあげること。いい?」

唇に人差し指を当てながら、優しく微笑む保田さん。
やっとその意図が分かったような気がする。
保田さんは知ってたんだ。
私がののに何かしてあげたいって思っていたこと。

「うん、分かったよ。ありがとう、お・ば・ちゃん」

わざとらしい言い方をして、私はいたずらっぽく笑ってみせた。
照れ隠しだと分かっちゃうんだろうな、保田さんには。

「加護!無駄口叩かないの。ほら、出来たら運ぶよ」
「はーい」

返事をして、大事なチョコレートをポケットにしまい込む。

(夜にでも、ののに渡そう。絶対、喜んでくれる)

私は残りのカップを手早くかき混ぜた。
これで全て完成だ。
やがて戻ってきた飯田さんが途中で少し零したというのを聞いて、
私達は二つのトレイを使って、残りのカップを運ぶことにした。