穴から顔を出すと、薄暗い天井裏の一角に横たわっている高橋愛が見えた。
「あそこか・・・。」
つんく♂は天使に体を押し上げてもらうと、穴から中へと入り込んだ。
すーー。すーー。
かすかに寝息のような音が聞こえる。
それを聞くかぎり何か特別な外傷などはなさそうだ。ただ、気絶してるだけらしい。
「デッドオンタイム・・・高橋を捕縛しろ!!」
死神の右手の指がぐーん。と伸び、高橋の体を捕らえようとする。
しかし!5本の指は高橋を掴む前に、弾き飛ばされた。
「何ッ!?」再び掴もうとするが、また謎の力に弾かれてしまう。
指が高橋の体に触れる直前に弾かれると言う事は・・・なるほど。
確かに自動操縦型やな。
高橋に近づく者はオートで弾いてしまう。
そして、尚も近づこうとすればスタンド自身が発現し、襲ってくる・・・と。
「確かにこれじゃあいつ自身をこっちに持ってくるのは無理やな。
だが・・・万策が尽きた訳じゃない!!」
死神は伸ばした指を引き戻すと、天に掲げた右腕から黒い光を放った。
これは前、石川のボイス オブ エンジェルと闘った時に使用した技である。
あの時はこの光が放たれた直後、石川のムチは鉛のように重くなり動かせなくなった。
はたして今回は・・・。
ズンッ!!
突然、高橋の体が床に深くめり込んだ。
下から石川の声がする。
「つんく♂さん!!どうしたんですか!?急に天井の一部分がもりあがってきた・・・」
「悪い!石川!その下で待機しててくれ。高橋が落ちてくるはずやから。」
ズズズズッ。高橋の体はさらに下へ下へ沈んでいき、メキメキッ。と資材の壊れる音がした。
「わあッ!!天井にヒビが・・・!!」
「大丈夫よ。よっすい〜。心配しないで・・・」
バキバキッ・・・ドカッ!!ついに天井を突き破り高橋が落下してきた。
「ボイス オブ エンジェル!」
天使は軽く浮上すると両手でしっかりと高橋の体をキャッチした。
「よしっ・・・と。つんく♂さん!やりました!!」
「おう。ご苦労さん。それじゃ一旦高橋を床に置いて離れてくれ。」
石川に指示すると、つんく♂はたった今空いた大穴に視線を移した。
デッドオンタイム第二の能力・・・重力の増加。
高橋の背中にあたる床の部分にだけ、この能力を使った・・・。
高橋自身に触れられないならその床を沈ませてしまえばいい・・・。
(ちなみに第一の能力は<夢への浸入>。仮面がとれて覚醒するのは能力ではないです。)
「さて・・・3人そろった所でもっかい地下までいこか。」
つんく♂は大穴から飛び降りて着地すると、まだ気絶したままの安倍を起こした。
高橋はさっき落ちた時の衝撃で目を覚ましていた。
一応さっきのピエロは出てきていない。
だが、油断は出来ない。事情を知らない高橋と安倍はつんく♂と石川を敵とみなしているはず。
とにかく、急いで地下まで連れて行き、今までのことやスタンドのことなど全てを話す必要があった。