<勝てる分が無い。>この言葉が石川の頭の中に響いた。
「オレは聞いてるんだぜ。あんたはどうする?」
「このまま何もせずに死ぬか・・・戦って死ぬか・・・どっちを選ぶ?」
サウンドオブサイレンスは振り返りもせず話し続ける。
それは余裕の現れなのだろうか。だが、その余裕もすぐに無くなる事になる。
突然、周囲の闇が震えはじめたのだ。
床は全く振動を起こしていない。つまり、空間だけが震えていることになる。
「石川・・・お前は戦わんでいい。この夢の世界から出してやるよ。」
静かに・・・そして深く響く謎の声。
「誰だッ!!出て来い!!」サウンド オブ サイレンスはワイヤーを取り出し戦闘態勢をとった。
「その前に・・・貴様の足元を見てみな。」どことなく挑発的な口調だった。
「足元だと!?」苛立ちながらサウンド オブ サイレンスは視線を地面におとす。
そこには細かい白い破片が散らばっていた。さっき、砕いたデッドオンタイムの顔だ。
まさか・・・この声はあの死神なのか!?いや、ありえない。この通り顔面を粉々にしてやったんだ。生きてる分が無い。
だが、次の瞬間、重大なことに気づいた。
「死体が無い・・・・。」そう。さっき殴り飛ばした時、死神は地面に倒れた。
つまり、今もここに死神の死体がなくてはおかしいんだ!!
だが、死体が無いッ!!ここにあるはずの奴の死体がない!!つまり奴はいつの間にかここから動いたという分だ。
つまり・・・この声の主は・・・。
「気づいたようだな。今、姿を見せてやるよ。だが、その前に・・・・」
パチンッ!指をならしたような音が小さく聞こえ、天使の体がその場から消え去った。
「用は済んだ。さあ・・・やろうか?」
突如、振動する闇の中に淡いブルーの光が現れた。そのブルーのオーラの中心に黒マントの男が立っている。
肩まで伸ばした銀色の長い髪、秀麗な顔立ちの中に輝く全てを突き刺すような冷たい瞳。
口元は微かに笑みの形をつくっている。
首からさげた懐中時計。その手には大鎌が強く握られている。
鉄の茨が絡みついた柄、鋭いカーブを描いた真紅の刃。その根元には髑髏の装飾がなされていた。
「お・・・お前・・・さっきの死神か!?馬鹿な!!顔面を砕いたのに・・・!!」
「馬鹿が。あれは髑髏の仮面だ。普段はあれで抑えているんだよ。」
「お・・・おさえる?」
「本体の寺田でさえも恐れる力・・・。お前はそれを解放してしまった。」
圧倒されるサウンド オブ サイレンス。トーンをおとした声で死神が続けた。
「俺は・・・残酷だぞ・・・。」
その直後、死神の右腕がサウンド オブ サイレンスの胸に深く突き刺さった。
右腕はその屈強な胸の筋肉を軽く突き破り、背中まで貫通していた。 「うっ。」
短いうめき声が漏れた。
死神は静かに腕を引き抜く。傷口からスプレー状に血が噴き出し、死神の顔を汚した。
だが、そんな事は気にもかけずに、今度は左腕で脇腹を突き刺す。
「がああッ!!!」サウンドオブサイレンスの口から大量の血がこぼれた。
「ガフッ・・・や・・・めろ・・・・やめてくれ・・・・」
体を痙攣させながらサウンド オブ サイレンスが命乞いをした。
「・・・。」
それを承知してか左腕が脇腹から抜き出された。鮮血に染まった両腕。それを見ても死神は表情すら崩さない。
そして静かに言い放つ。「もう馬鹿な考えは止めて、吉澤にスタンドとしてつかえるか?」
「グッ・・・冗談じゃねぇ・・・・。」
ドスッ。死神の右の人差し指がサウンド オブ サイレンスの喉に深く埋まった。
「別にお前をここで殺してやっても構わないんだぜ。いくらお前の世界でも・・・お前に有利な世界でも死だけはどうしようもないよな?」
「これが最後だ。吉澤に仕えるか・・・この指をより深く進めて欲しいか・・・選べ。」
クソッ・・・何だこいつの強さは・・・。この世界では他のスタンドは弱体化するはず・・・なのにこんな・・・!!!
うくっ・・・意識が薄れてきた・・・まずい・・・そろそろマジで死ぬ・・・。こうなったらこいつの言う事を聞くしかねぇ・・・。
「ゴホッ・・・。づ・・・仕え・・・ます!だから指を・・・!!」
「本当だな?」「ハイッ・・・ゴホッ!!」
ようやく、指が喉から抜き出された。
「さあ、吉澤の元へ行け。もしも、またこんな馬鹿なことをしたら・・・・殺すぞ。」
冗談じゃねぇ・・・そんな恐ろしい事が出来るかよ!!
こうして吉澤は夢から解放され、スタンドを完璧に入手した。
安倍なつみ・高橋愛・吉澤ひとみ スタンド発現。
飯田圭織・石川梨華 軽傷。
仮面が取れた後の死神の戦闘能力についてはまた後で・・・