「飯田さん!!大丈夫ですか!?」
天井裏まで上がってきた石川が急いで飯田に駆け寄る。
「ゴホッ・・・うん。何とか・・・」首筋を抑えながら飯田はピエロを見上げた。
「とりあえず、この試験は全員合格。で終わったんだけど、このピエロ高橋に近づくと攻撃してくるの。
これじゃあ下まで運んであげられないよ・・・。」飯田は立ち上がると一歩後ろに下がった。
「そうだ!飯田さん!つんく♂さんなら何とかしてくれるかも!!」
飯田の表情がみるみるうちに明るくなった。
「それだ!!つんく♂さんは下にいるんだよね!?早速頼みに行こう!!」
2人は穴から飛び降りるとつんく♂の元へ小走りで向かった。
「つんく♂さん!」しかし、つんく♂は微動だにせずこっちに背を向けて座っている。
「つんく♂さん?」呼ぶ声が疑問系に変わった。
つんく♂は倒れている吉澤の横にあぐらをかいて座っていた。
そして小さな声でつぶやく。「静かにせいや。今、吉澤の夢・・・というより意識の裏側を覗いてる。」
「意識の裏側・・・?」「そう。何ならお前らも見るか?」
するとつんく♂のスタンド、デッド オン タイムが現れ、2人の頭に1本ずつ長く、鋭い指を差し込んだ。
「ひっ!!」
「心配するな。外傷は無い。俺の見てる映像を指を通してお前らの脳に伝えとるんや。」
「映像・・・?」すると、2人の頭の中に暗闇が浮かんできた。
果てしない暗闇の中に、一箇所だけスポットライトが当たっているかのように明るい場所があった。
そこに吉澤は立っていた。
「あっ。よっすい〜だ!」「石川!静かに!」「すみません・・・」
「ちなみに言い忘れ取ったけどここで何を言っても吉澤には聞こえんぞ。これは吉澤の夢やからな。」
「でも、何で夢なんかを覗き見するんですか?」
「吉澤のスタンドは強い意思を持っていて本体の体を乗っ取ろうとまでした。
このままじゃ危険や。スタンドにとり殺されるかもしれん。
だから、スタンドも現れることの可能な場所・・・つまり夢の世界に入ってスタンドの考えを正してやろう。と思てな。」
すると、吉澤の目の前にもう一つの光が現れた。その中心には吉澤のスタンド<サウンド オブ サイレンス>がいた。
「あんた・・・誰?」おびえた声で吉澤が言う。
「よう。ご主人。あんたのスタンドだよ。」黒マスクから覗く口元が軽くつり上がった。
サウンド オブ サイレンスは一歩ずつ吉澤に近づいていく。
吉澤はそれと同時に後ずさっていった。
「なんだよ。冷たいな〜。仲良くしようぜ。今は、夢の中でしか会えないんだからよ。」
「い・・・今は?」
「今のあんたの力じゃオレを自由に呼び出すことは無理だからな。」
「どういうこと・・・?」
「面倒な奴だな。何も知らねぇのかよ。つまり俺はあんたの分身みたいなもんだ。
だけど、あんたはこの俺を扱えるほど強くないんだよ。力も精神も何もかもが。」
さらに続けて、「つまり、実力のある俺の方があんたの影ってのはおかしいだろ?
ここで相談があるんだ。俺たち・・・入れ替わろうぜ。」
「・・・・え?」
「だ〜か〜ら。立場逆転。あんたが俺の分身・・・影になればいいんだ。俺が主人格になる。
現実世界では見た目はあんただけど、中身はオレになるってこと。」
「そんな・・・それじゃ私は・・・・。」
「あんたは今のオレのようにいつも裏側で精神エネルギーという形で存在しててもらう。
退屈なもんだぜ。あんな狭い所に17年もいたんだからな。これからはオレが遊ばせて貰うぜ!!」
大変!!よっすい〜の体が!!(石川)
恐ろしいスタンドや・・・あそこまで意思があるとは・・・(つんく♂)
つんく♂さん!ならないんですか!?(飯田)
方法はある。スタンドを吉澤の夢の中に入れて奴を倒す。あくまでも夢の中やから実際の体にダメージは無い。
ただ・・・吉澤の夢は吉澤の精神の領域・・・ここではサウンド オブ サイレンスはものすごい力を得て、
他人である俺らの力は極端におちてしまう・・・。(つんく♂)
そんな!!それじゃどうしたら・・・(飯田)
説得する・・・っていうのが一番いい手やった。スタンドを通じた言葉なら奴にも通じる。
だが、今の奴の言葉を聞いてる限り説得に応じるようには思えんな・・・(つんく♂)
「くくく。どうしたご主人?怯えて物も言えないか?」
「嘘だ・・・夢だ・・・悪い夢に決まってるわ・・・。」
「確かに夢だな。だが、この話し合いが終わるまでは目はさめないぜ。さあ・・・人格の入れ替えをするか。
な〜に。ただここであんたを殺すだけだ。殺すといっても夢の世界だから実体が死ぬ分じゃない。
あんたという人格が死んで今までの俺のように裏方にまわるのさ。」
「いや・・・いやあああああッ!!!」踵を返して逃げ出す吉澤。
「くくっ。ここは夢の中。逃げても無駄だぜ。」
涙で顔をグシャグシャにしながら逃げる吉澤。さっきの場所からは大分離れたはずだ。
「気が済んだか・・・?」目の前に<サウンド オブ サイレンス>が立っている。
「な・・・何で!?」後ろを振り返る。すると後ろにも<サウンド オブ サイレンス>がいた。
「オレが移動したんじゃない。あんたの体が瞬時に回転したんだ。
ここは夢の中。精神の世界。オレの独壇場。あんたに逃げ場は無いぜ。ご主人・・・。」