こいつが・・・高橋のスタンド・・・。何か以外だな。ピエロだなんて。
ピエロは唇の端をつりあげ、笑顔で飯田に近寄ってくる。
敵意があるようには見えない陽気な笑みだった。
「ちょっと待って!ピエロさん!あなた高橋のスタンドでしょ?
私、あなたとは闘うつもりは無いの。大人しく高橋の中に戻ってくれない?」
正直な所、飯田は紫苑との戦闘を終えたばかりで相当疲労していた。
それにこの試験の目的はスタンドを発現させることが条件。
高橋はそれをクリアしている。もう試験は終了してもいいはずなのだ。
ピエロの足が止まった。相変らず笑顔のままである。
「お願い・・・。」
すると、ピエロは親指をたてた拳をグッ、と前に突き出すとそのまま消えていった。
「良かった・・・分かってくれた・・・。」
飯田は胸を撫で下ろすと、この天井裏から出るために床に氷で穴を開けた。
そこはちょうど会議室の上。石川が驚きの表情でこっちを見上げていた。
「飯田さん・・・そんな所にいたんですか・・・。」
「ちょっといろいろあってね。でも2人ともスタンドは発現したよ。
今、気絶しちゃってるから・・・1人ずつそっちに降ろすね。」
「はい。」天使は石川を後ろから抱きかかえると、天井の穴付近まで飛んだ。
飯田は安倍の体を穴を開けた場所まで運ぶと、下でスタンバっていた石川に穴を通して渡す。
石川は安倍を抱えながら下に降りると床に横たわらせた。
次は高橋だ。石川は再び穴付近まで上昇した。
飯田は石川が上がってきたのを確認すると、高橋の体に手を伸ばした。
さっきみたく手が戻されるという事も無いようだ。
その時!いきなり高橋の体からピエロが現れ、飯田の首に両手をかけた。
そして、さっきとは全く違う血走った目を大きく見開いた恐ろしい形相で首を締め上げる。
「ううっ・・・!!」
飯田の足が床から離れ、体が宙に持ち上げられた。
(く・・・苦しい・・!!)何とかもがいて逃れようとしたが、ピエロの異常なまでの握力がそれを許さない。
首を伝う器官は完全に締め付けられ、血管が浮き出る。
何故?何でいきなり首を・・・さっきはあんなに優しそうだったのに・・・。
視界がだんだんぼやけてきた。まずい・・・このままじゃ本当に死ぬ・・・。
飯田の頭がゆっくりと後ろに傾いた。それによって重心が後ろの方に移る。
すると、首を絞める手が少しゆるみ、足が床についた。
こいつ・・・もしかして!飯田は両足で床を蹴り後ろに飛んだ。
飯田はそのまま床にしりもちをつく。
ピエロの手から開放されたのだ。そしてピエロは追撃してくる様子も無く、ただ高橋の側に立っていた。
表情も笑顔に戻っている。
「ゴホッ!ゲホッ!!」激しく咳き込みながら確認した。
このピエロ・・・高橋(本体)に近づいたスタンド使いを襲うんだ・・・。
今、とっさにバックして高橋から離れたから攻撃は中断された。
こういうスタンドは何ていうんだっけ・・・確かエスパーから聞いたな・・・。
そうだ!「自動操縦型スタンド・・・。」
スタンド名<マッド・マリック・ピエロ> 本体「高橋愛」
高橋(本体)に近づく者を攻撃。高橋から離れれば攻撃は中断される。
また、高橋が敵と判断した者、殺意を抱いた者に対しても襲い掛かる。
尚、高橋に触れようとした飯田の手を戻した所からまだ能力はあると思われる。
破壊力C スピードC 射程距離E(これは高橋から離れれば攻撃は中断されるため。ただ、通常の戦闘での射程距離は不明。)
持続力A 精密動作D 成長性A