113 :
ピープル:
〜紺のの〜
「ふぅ……ん……ん…」
2人の少女の影が壁に映る。
その唇と唇は重なり合い、舌は互いに相手を求めて動いていた。
「ん……ふぁ……あぁ!」
唇を重ねたまま、2〜3歩移動し、辻が紺野をベッドへ押し倒す。
紺野の上に辻が被さるような形で舌だけが忙しなく動いていた。
ここは紺野のマンション。
新作のお菓子が出来て、誰かに食べて欲しくなった紺野。
そこで、この大役−−かどうかは微妙だが−−に辻を選んだのである。
しかし、紺野が辻を誘った理由はそれだけではなかった。
紺野の心の奥底に芽生えた辻への想い。
モーニング娘。という狭い枠の中で唯一憧れを抱いた人、それが辻希美だったのである。
114 :
ピープル:02/11/05 01:52 ID:YcusVwkt
今日のオフの3日前、収録の合間に、ドキドキしながらも後ろから辻に声をかけた。
「あ、あの…辻さん…」
赤面する紺野に、振り向いて不思議そうな顔の辻。
「ん?」
と無邪気に答えてはみたものの、なかなか切り出さず、遠くを見ているかのような紺野に続ける。
「どうしたの紺ちゃん?」
紺野は辻の問いかけに自分を取り戻し、自分がしていたことを恥ずかしく思い、さらに赤面した。
タダでさえ赤かった頬がこれ以上ないというほどに赤くなる。
「紺ちゃん?どしたの?なんか変だよ。風邪でもひいたの?」
「……。んん…。あ、そうじゃなくて…」
ようやく紺野は口を開いた。
「この前ね、お母さんに美味しいお菓子の作り方教わったの。そんでね…」
“美味しい”と“お菓子”という大好きな言葉がでてきた辻は、
先ほどまでとはうって変わって、目を輝かせて紺野を見つめている。
「誰かに食べてほしくって…。今度のオフ、暇だったら来て欲しいなぁ…ってね…」
言いたいことを言った紺野はふぅと胸をなで下ろした。
次の瞬間、紺野は両肩をものすごい勢いで抑えられた。
「紺ちゃん!行く行く!!ぜぇったい行くよ〜!!!」
そう、両肩を掴んでいたのは紛れもない、辻希美であった。
「あ…うん。来てね。作って待ってるから…」
そう、この時は純粋に好きな人に食べてもらいたい。
ただそれだけを思っていた。
まさかキスをするなんて…。
まさか一つになろうとするなんて…。