萩原の日常は変化の無い毎日だった。萩原は、体育会系にしては潔癖性で、掃除、洗濯、
後片づけなどは定期的に行い、部屋はいつもこざっぱりとしている。仕事以外にこれと
いった趣味もない萩原に残された膨大な時間は、全て希美との時間に費やされた。
萩原は高性能の望遠カメラやペン型盗撮カメラを持っている。そして、学校生活の中で
日常的に希美の姿を盗撮している、その写真の枚数たるやすでに数千枚に及んだ。その
データは全て萩原のPCに保存されており、良く撮れた写真を選別して印刷し、アルバム
に整理するのが、夏休みの水泳教室も終わって時間的に猶予が出来た萩原の日課となって
いた。写りの悪いものには補正をかけ、気に入った写真のサイズを引き延ばし、焼き増し
したものは袋に詰めて小分けにする。そして、いつでも好きな場所で好きな写真を取り
出せるようにアルバムにまとめ、簡単な説明を書き加える。
アルバム整理は大抵日中に行う。萩原にとってそれは非常に楽しい時間であった。教室で
アクビをしている希美、授業中におしゃべりをしている希美、テスト中難しい問題に顔を
しかめる希美、給食をつまみ食いしている希美、自宅のベランダでぼーっとしている希美、
愛犬マロンと散歩している希美…。カメラを意識していない希美の普段の姿がそこにある。
これこそが盗撮の醍醐味。どんな凄腕の写真家だとて、盗撮写真ほど生々しく希美を感じ
させる写真は撮れないだろう。
アルバムを見ていた萩原の手が、ある写真の上で止まる。
…それは、音楽室の盗撮写真だった。
『ののは歌手になるんだもん!』
そう言うだけあって、希美は音楽の授業が大好きだった。大きな口を開けて楽しそうに
歌を歌う希美の写真が何枚も盗撮されている。萩原は、正面から顔のアップが綺麗に
写った写真を選び、PCのデータを呼び出すと2Lサイズに引き延ばして印刷しなおした。
「…可愛いよ、希美……」
萩原は印刷した写真をまじまじと見つめ、そう呟くと希美の唇を舐めた。そして、写真を
ベッドに置き、その上に体を丸めて四つん這いなると、下ろしたズボンのチャックから
ダラリと垂れ下がるペニスの亀頭を希美の大きく開けた口の真ん中にあてがった。
「……ハァハァ…ァあウ…」
萩原は両手でペニスをしごきながら、希美の口にペニスを押しあて、腰を動かしながら
何度も喰い込ませた。スプリングの効いたベッドの上で希美の写真に幾重もの皺が刻ま
れる。亀頭から漏れるカウパー液が希美の顔を汚していた。
「…ァが…ぁぐア…ハァハァ……」
興奮した萩原のペニスが十分に堅くなると、体を起こして写真を両手に持ちなおし、
希美の口にいきり立つ亀頭を押しつけて力まかせに捻り込む。
「……ふ…うぐゥっ…んムッ……ハァハァ……の…希美ィッ…」
ビッ
ついに希美の口から上下に亀裂が走り、無惨に裂けた割れ目からは深々とペニスが突き
刺さった。
「……ハッ…ハァ…ハァあッ…」
興奮した萩原は肩を揺らして激しく呼吸をし、希美の写真をペニスが貫いたまま、新たな
ファイルを取り出した。そこから萩原が探し出したものは給食を食べる希美の写真だった。
食べ物を食べる希美の姿はどの写真も満面の笑顔で写っている。カレーライスやハンバーグを
美味しそうに食べる希美、フランクフルトにかぶりつく希美、バナナを頬張る希美が…。
「…ハッ…アぁ…希美ィ…ぃイい…ハァハァ…」
萩原は希美が自分のペニスを咥え口いっぱいに頬張る姿を妄想した。希美の形の整った
柔らかな唇、小さな可愛い舌、なま暖かく湿った口内…。
萩原はデジャヴを感じた。
そうだ、あれは…。
…あれは、蒸し暑い夏の部活日だった。
冷房の無い体育館は殺人的な温度になっており、みんな体育着がぐしょぐしょになるほど
汗をかいていた。そんな様子を見ていた萩原先生は、練習試合の最中に体育館を抜けて、
学校近くの駄菓子屋でアイスキャンディーを買ってきた。試合後にへばっている生徒達に
アイスキャンディーを配ると、みんな手を叩いて喜び、美味しそうに食べた。もちろん、
その中には辻もいた。
…萩原の視神経は希美に集中していた。希美を凝視するわけにはいかないので、希美を
視野に入れながら視線を逸らすように努力はしたが、それでも自然と目は希美を追って
しまう。
希美はオレンジ味のアイスキャンデーの先端を口に含み、舌を這わせ、アイスキャンデーを
くるくる回しながら舐めている。下唇から覗く希美の舌先と、水分で潤った希美の唇に、
萩原は淫靡な妄想を重ね合わせる。希美はアイスキャンデーの周りを溶かしながら少し
ずつ食べているので、食べる速度は少し遅い。
「あっ!のの〜、たれるよぉッ!」
友達に言われて、慌ててアイスキャンデーの根本に吸い付くと、舌でアイスキャンデーを
しゃくり上げるように舐めた。萩原の股間が熱くなる。
アイスキャンデーの先が丸くなって食べやすい細さになると、希美は口を窄めてアイス
キャンデーを何度も出し入れしながら舐めている。萩原は勃起するのを抑制出来なかった。
そして、生徒に気付かれないように前屈みに座りこむ他なかった。
萩原は記憶を手繰り寄せながら、更にもう1つのファイルを取り出した。
そこには、萩原がコーチをしているバレー部の盗撮写真がまとめられている。その中には
あの時のアイスキャンデーを舐める希美の写真もあった。萩原はそれを眺めながら、
あの日の体育館で見た希美の舌や唇の動きを頭の中で微細に渡って再現し、希美が自分の
ペニスを咥え、しゃぶり、舌で丁寧に舐め回す姿を妄想した。
「…うアッ…ぁハァあッ……希美ぃイ…ッ…」
希美…希美ぃ…希美いィイ…。
希美の唇が欲しい。希美の唇に触れたい、舐めたい、感じたい。
「…ゥぐア…はッ…ハァハァ…」
萩原は枕元に置いてある細長い袋をひっつかむと、中からリコーダーを取りだした。
袋には「つじのぞみ」と油性マジックで書かれていた。
萩原は希美のリコーダーを深く咥え込み、じゅぶじゅぶと音を立ててしゃぶる。
「…ぁハッ…ハァハァ…希美ィい…ぅウッ……」
そして、同じリコーダーを咥えた希美の柔らかな唇と舌を連想しながら、リコーダーの
唄口(頭部)のブロック(裏側)を自分の躯にあてがい、躯中を這わせた。興奮し熱気を
帯びた躯に無機質なプラスチックの冷たい感触が気持ちよい。
萩原はリコーダーのブロックの曲面をペニスの側面に沿うようにあてがうと、海綿体に
沿ってゆっくり擦りつけ始めた。萩原はリコーダーを回転させるように動かして、
リコーダーの口をペニス全体に満遍なく這わせた。
「…ハァハァ…希美ィ…ハァハァ…希美イぃ…ィヒいィッ…」
希美が咥えたリコーダーが俺のペニスを愛撫している…。希美の唾液をたっぷりと染み
込んだリコーダーが俺のペニスを這い回る…。萩原は甘美な間接フェラの妄想に陶酔した。
そして、萩原は亀頭にリコーダーの口をしっかりとあてがうと、リコーダーを咥えるのと
同様に、希美が自分のペニスの亀頭にキスし、柔らかな唇で挟み、舌を這わせる姿を妄想
した。萩原が歪んだ笑顔を浮かべる。夏休みが終わり学校が始まれば、また希美はこの
リコーダーを咥えるのだ…!
「…ぅグッ…希美ィ…希美ィいッ…ハァあ…アはッ…ぁうアあァあ…アぐうあァッ」
萩原は腰を震わせ、希美のリコーダーに向けて大量に射精した。
自慰行為を終えた萩原は、ペニスに貫かれたままになっていた希美の写真を引き抜いた。
口元から四方八方に引き裂かれ、顔中に皺が寄り、精液でベトベトに汚れたその写真は、
まるで壊れた人形の写真のようだった。萩原は使い終わったその写真をくずかごに放り
込む。ベッド脇のくずかごはそれと似たような引き裂かれた希美の写真で一杯だった。
萩原はズボンからペニスをはみ出したままの半裸状態で洗面所に行き、リコーダーを水で
洗いうと元の袋に戻した。
萩原は希美の所持品をよく盗んでいた。傘や上履き、体操着、リコーダーなどはスキの
ある時に持ち帰り、十分に使用した後元通りに返すため、当人も気付き難く問題になる
心配は少なかった。夏休みに入ると、上履きや体操着など一切合切を希美が家に持ち
帰ってしまったため、萩原は唯一残されたリコーダーを自宅に持ち帰っていたのだ。
しかし、萩原が盗んだ物はそれだけではない。希美が給食で使ったスプーンや箸、
ストローなど、また、尿検査のスポイドから少量を盗んだ希美の尿などは、大切な
オナニーの道具として萩原の部屋に保管されていた。
全身に熱気を纏った萩原は、冷蔵庫からポカリスウェットのペットボトルを取り出し、
半分ほど飲み干した。一息ついてペットボトルをしまうと、冷蔵庫の奥からシャーレを
取り出し、中に保存してある希美の尿の臭いを嗅ぐ。
軽いアンモニア臭は、萩原の脳を活性化させ、疲労を回復させた。萩原の萎えたペニスが
再び鎌首をもたげ始めていた。萩原はシャーレを元通りに冷蔵庫に戻すと、パソコンの
前に座る。このパソコンに萩原が撮った全ての画像データが保存されている。
萩原は赴任してきた当時の画像の入ったフォルダを開いた。スクリーンに縮小画像が
一覧表示され、小さな希美の笑顔で一杯になった。
PCの中で笑う希美の笑顔を見ながら萩原は過去に思いを馳せた。
初めて出会った頃の、警戒心のないヒナのようにあどけない希美、目が合うと恥ずかし
そうに俯いた希美、人見知りですぐ友達の影に隠れてしまう希美…。そんな頑なだった
希美が、今では人なつっこい笑顔で萩原に甘えてくる。くるくるとよく動くつぶらな瞳、
イタズラで無邪気な笑顔、褒めると恥ずかしそうに照れ笑いする、可愛い希美…。
萩原にとって希美は花だった。自分の手で慈しみ、育み、段々と蕾が開いていくように、
希美の心が溶けていく。反応の素直な希美の心は解りやすい。希美が自分に好意を持って
いるのは明らかだった。その純粋な気持ちはあまりにも儚く美しかった。
…そう、壊すのは簡単だ。奪おうと思えばいつでも奪える。しかし、一度失ったらもう
二度と還らないからこそ、自分の歪んだ欲求をひた隠しにしてきた。
だが、それももう限界だ。
萩原にとって、花を育てる喜びはその花を手折るためのものである。自分が丹精込めて
作り上げたものを壊す喜び。その至福の瞬間を心に思い描きながら育てるのだ。
幼い希美とのままごとのような恋愛ごっこも、今でしか味わえないからこそ楽しいのだ。
萩原はPCの電源を切ると、ベッドに横たわった。萩原の眉間に皺が寄る。
…正直、画像を愛でるのはもう飽きた。今、俺が欲しいのは、生身の希美だ…ッ!!
希美が欲しいんだ。それも、ただ希美を犯すだけでは足りない。希美の心も体も全てを
支配し、希美の自由を奪い、過去も未来も全てを自分の物にしたい…ッ!!
…オードブルはもう喰い尽くした。あとはメインディッシュの肉だけだ。
強烈な欲情に駆られて、萩原の口から獣のようなうめき声が漏れた。
(…だが、俺は焦って獲物を逃すような馬鹿な真似はしない。)
30年近く生きてきて、ようやく見つけた俺の天使。待つのには慣れている。
そう、皿に盛りつけられた料理が目の前に運ばれてくるのを、じっと待てばいい。
そして、飾り付けられた肉料理にナイフを入れる瞬間を思い描きながら、妄想を夢見て
自分を慰める。
「…うぅッ…ハッ…ァアッ……ハァハァ…希美ィいイぃいィ…」
萩原の身体が怪しく動きはじめる。何度も希美の名前を呼びながら萩原は自慰行為に
溺れていくのだった。