小説「加護の葬式」

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256 ◆56u/CKDZRM
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真っ暗な部屋、赤く光る点に囲まれ、
横に寝そべったまま動かぬのは加護亜依。
ONは緑、OFFは赤。
テレビもビデオデッキもステレオもエアコンも、赤を示す。
あたしもだ、と思う。あたしも月に一度、赤くなる。
今がそうなのかもしれないし、そうじゃないのもしれない。
ただ、自分の体が停止したままの原因をそれに求めたいだけなのかもしれない。

メンスって嫌。

地方都市の夜景の如く光の点在する空間に、
ぼんやりとした白い肢体を包まれながら、
女子である自分がつくづく嫌になってはみるものの、
あたしの性には逆らえない、さぁ、とばかりにまた自慰を再開した。
257 ◆56u/CKDZRM :02/12/16 06:44 ID:qBICf3Za
携帯を股ぐらの窪みに入れるなり、一瞬全身が硬直するが、
たちまち快感が押し寄せ、流れを緩めていた体中の血液、
ふたたび勢いを取り戻し、加護の肌を火照らせる。
準じて、携帯を握るその手の動きも激しさ増し、
瞼を固く閉じ、頭の底で際限なく巻き続ける蚊取線香のような渦に身をまかせ、
ひたすら自慰に没頭した。
自慰で得た刺激、さすがの加護もこれほどまでの快感は初めて、
よほど普段の快感より刺激が強かったのだろうか。
それもそのはず、着床ならぬ着信をしていたのだった。

バイブレーション、ON。

緑色に光る携帯の液晶には「つんく♂」。
先ほどのまでの恍惚、風のように瞬時にして消え失せ、
慌てて我にかえり愛液でベトつく携帯を耳にあて一呼吸おき、
「もしもし」と応答するが、取り繕うとしたためか、
その声多少上ずってしまい、咄嗟に半音高い自分の声を感じた加護は、
またそれがやけに恥ずかしく思え、混乱を抑えきれない。
つんくが言葉を返すまでの微妙な間、
同時に愛液がしたたり落ちる、その一瞬が途方もなく長く感じられる。
愛液という名なれど、他人を愛して流れた液ではなく、
自分を愛した証しであるところの液体が、心臓の鼓動に合わせ、もう一雫落ちた。
そして、つんくが言った。

「はよ来いや」

●続く●