おっと、あかんあかん。つい夢中になってもた。ののを追わなあかん。
ここで見逃してもたら意味あらへんからな。確かあっちへ走ってったな。
いたいた。ガッコの外へ逃げる気やな。逃がさへんで。
【うちは身を隠しながら、ののを追った。二人きりになれる場所まで…】
【ところが想像もできへんことが起こった】
なっつぁん!嘘やろ、なんでなっつぁんがここに?でも記憶はなくなっとるはず。
ののと何話てるん?こっからじゃ聞こえへん。のの…泣いとるのか?
アハハ…そや、なっつぁんはお前のことなんか知らへんのや。他人同士なんや。
行くか、うちも行くか。二人の前に顔を出すか…。
【心を決めて足を踏み出そうとしたとき、あいつが現れた…】
松浦亜弥…と誰?なっつぁんの知り合い?ののが逃げてく。どうする。
うちはどうする。決まってる。追うんや、ののを追うんや。
【その後のあいつの行動は、少し理解に苦しむ所があった。】
鏡?お団子ヘア?お菓子屋?駅?電車?原宿?
原宿の駅前でじっと座ったまま、動かへん。気でも狂ったか?
それとも誰かを待ってるん?まさか、なっつぁんを…?んなアホな。
さっき分かったやろ、なっつぁんはお前のことなんて少しも覚えてへんのや。
そない所でどれだけ待ってても無駄なんや。いくつになってもボケた奴やなお前は…。
【日が暮れても、ののはそこを動こうとせんかった。結局うちはそのまま帰った】
【翌日、殺人騒ぎが起こる。そしてののが指名手配された】
「なかなかやりますね」
【松浦からは何とも取れないコメントをもらった。うちはまだあいつの世話になってた】
【うちはまた原宿へ向かった。ののは同じ場所に座っていた】
【次の日も、その次の日もののはじっと待ち続けていた】
なぁ鈍いお前でももう気付いとるやろ。なっつぁんは覚えてへんのや。
お前があの島でどんな約束をしたかは知らんけどな。
今のなっつぁんは、お前が約束した人とは別人なんやで。
どれだけ待ってもな、なっつぁんは来いへんよ。
たとえ偶然来たとしても、ののには気付かない。約束も知らない。
お前はもう殺人犯なんやで、さぁはやくこっちに来いや。
ののが諦めてこの街を出ようとしたら、うちがすぐ声を掛けたる。
一緒に黒の世界で生きていこう。またコンビ組もうや、のの。
【雨の日も、ののはその場を動かなかった】
【腕で自らの体を包み込み、じっとうずくまったまま、待ち続けた】
【一週間が過ぎた。それでもののはまだあそこにいる】
【二週間が過ぎた。ののはまだいる】
【虚ろな眼で駅の出口を見つめ続けている】
のの…なにがお前をそうまでさせるんや……