吉澤さんのお誘いを快く受け、私は夜のお散歩へと行くことになりました。石川さんは
残って、まだ意識の戻らないあさ美の看病をするそうです。古びれた小屋を外に出ると、
辺りはもう薄暗くなっていました。
「おお、すっげ」
「うわぁ」
思わず声が零れました。辺り一面の星空、大小様々な星が輝き瞬いているのです。こん
な凄い景色は日本では見たことありません。憂鬱になっていた私の心がスゥーっと晴れて
いく様な気分でした。
「行こうか」
「はい」
私達は手を繋いで、星の海の中を歩き出しました。それはまるで夢の中の様な光景でし
た。あんまりポケーっと口を開けて星空に見とれていたので、終いにはひとみさんに注意
されてしまいました。
「キレイですね〜」
「おお、こういうの好きな人と一緒に歩きたいよな」
「ひとみさん、好きな人いるんですか?」
そう尋ねたとき頭の中に、先程のひとみさんと真希さんが抱き合うシーンが浮かんで、
怖くなりました。嫌な考えが頭に巡り、聞かなきゃ良かったと思いました。そんなことは
ないと思うけど、もし二人の間にその様な感情があったとしたら、私に勝ち目はあるのだ
ろうかと。
「…いるよ」
やや小さな声で、ひとみさんはそう言いました。それは真希さんですか?聞きたかった。
子供の頃から一緒に育ち、お互いの事をなんでも知っている二人。今日偶然出遭ったばか
りの私、どう考えても勝ち目があるとは思えませんでした。だけど負けたくなかった。こ
れだけは誰にも譲りたくなかった。家族も相棒も失った私にとって、残された最後の拠り
所は真希さんだけだから。あの人は、私にとって唯一の希望の光なんだから。
森の中をしばらく進むと、やがて小高い丘に出ました。一本の大木が横たわっており、
そこは空と海を見渡せる天然の展望台となっていました。私とひとみさんは申し合わせる
こともなく、そこに並んで腰を下ろしました。
「ののはいるの?好きな人?」
すると、ひとみさんがさっきの話の続きを切り出してきました。私は少し迷いました。
正直に打ち明けるべきか、黙っているべきか、それとも…
1.「いない」
2.「真希さんです」
3.「あなたが好きです」