サウンドノベル5「赤と青」第六話〜

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8辻っ子のお豆さん


〜第六話 青の章 同じ星〜
9辻っ子のお豆さん:02/09/19 10:40 ID:3MEb4oZZ
 目が覚めると、私は見慣れない教室の一角で腰を下ろしていた。隣にはあいぼんがいた。
麻琴がいた。里沙がいた。あさ美がいた。そして真希さん、ひとみさん、梨華さんもいた。
みんな状況を掴めていないみたいで、少し動揺している。木造の古びた校舎、ここは一体
どこなんだろう。あいぼんに声を掛けようと体を起こしたら、教室の扉が開き銃を構えた
軍人みたいな男達がぞろぞろと中に入って来た。最後に、一人だけで偉そうな格好をした
男が現れ教壇に立った。

「今から、最後の一人になるまで、みなさんに殺し合いをしてもらいます」

 誰かの息を飲む音が聞こえた。こういう映画をどこかで見たことある。こんなこと現実
であっていいはずがない。どうして私達が殺し合いなんかしなきゃいけないんだよ。文句
を言おうと私が立ち上がろうとするより先に、あいぼんが立ち上がって叫んでいた。

「アホかボケナスゥ!殺し合いなんかせえへんわ!」

 駄目だよあいぼん、それは私の台詞だよ。そんなこと言ったらあいぼんが殺され…。そ
こで私はあの映画を思い出した。これと同じ様な状況、そして一番最初に死ぬのは、主人
公の一番の親友…。
10辻っ子のお豆さん:02/09/19 10:41 ID:3MEb4oZZ
「君は加護君か。もう決まったことなんですよ。保護者の方々の許可も下りています。」
「なんやて?」
「おいお前達、あれを持ってこい。」
「はい、ヤマザキ様」

 ヤマザキと名乗る自称教師が軍人達に合図すると、廊下からシーツに包まれたたくさん
の何かが運ばれてきた。嫌な予感がする。ヤマザキは無造作にそのシーツを剥ぎ取った。
悲鳴があがった。それは死体の山。お母さん、お父さん、お姉ちゃん、みんなの家族。
「ほらね」とヤマザキは卑らしい笑みを浮かべた。

「うわああああああああああ!!!」

 切れたあいぼんがヤマザキに向かって走り出す。軍人達の銃が一斉にあいぼんに向けら
れる。無情な銃声が、まだ幼い少女の体を蜂の巣にする。何の抵抗もできず、あっけなく
加護亜依は殺された。冷たい目でヤマザキは言った。

「あと七人」
11辻っ子のお豆さん:02/09/19 10:47 ID:3MEb4oZZ
「うわああああああああああああ!!!!」

 顔を上げると、目の前にビックリ顔の真希さんがいました。膝に砂の感触、波の音も聞
こえます。ここは砂浜?今のは夢だったの?

「どうした?大きな声出して」
「変な夢…みた」
「夢?どんな?」
「言いたくない…」
「ふうん」

真希さんはそれきり何も聞かず、ただ私を優しく抱きしめてくれました。
(夢じゃない…)
(夢じゃないんだね…あいぼん)
みんないなくなったこと、あいぼんが死んだこと、それは夢でも何でもなく、確かな現実。
私は独りになった。涙が込み上げる顔を包み込むぬくもりに預ける。
(あったかい)
それも違う。ひとりじゃない。このぬくもりはひとりじゃないんだよね。
12辻っ子のお豆さん:02/09/19 10:48 ID:3MEb4oZZ
 悲しんでばかりいられない、私は生きるってあいぼんと約束したんだ。私は手で涙を拭
き取り、真希さんのぬくもりから顔を上げ、無理矢理にでも笑顔を作りました。

「ありがと、もう大丈夫」
「そう」

 私が笑顔を作ると、真希さんも笑みを浮かべました。それから私は横に並んで、二人で
海を眺めながら、たくさんたくさんおしゃべりしました。学校のこと、家族のこと、友達
のこと、今までの私のこと、真希さんも自分のことを、いっぱいいっぱいおしゃべりしま
した。私達の声と波の音だけが、静かにその空間に潅がれていました。そんなときふいに、
真希さんが囁いた一言が、私の胸をジンとさせたのです。

「生きて日本に帰れたら、一緒に暮らそうか」

1. また泣いちゃいました「…うん」
2. 「ヤダ」
3. 「七人、みんな一緒の方がいいよ」