サウンドノベル5「赤と青」第六話〜

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745辻っ子のお豆さん

真希さん。
私、真希さんより年上になっちゃった。
背も伸びて、少しだけ痩せたよ。
お菓子を我慢する様にしたんだよ、えらいでしょ。
ねえ、どうかなぁ。
私あなたと並んでも釣り合うくらいきれいになったかなぁ?
ねえ、真希さん。
746辻っ子のお豆さん:02/11/25 23:14 ID:aW+OQHdr
 身元も知れない私に、突然今日から貸してくれるアパートなんて少なかった。それでも
紹介されたのは、築20年は建っていそうな木造の古いアパート。6畳一間に小さなトイレ、
それだけの部屋。寝れれば良いと思っていた私はすぐに返事をした。もっと酷い環境で寝
暮らしの経験もいっぱいある私にとって、たいした問題でもない。

「あいぼん。のの、一人暮らし始めたよ」

 バックから写真立てを一つ取り出し、それを机の上に置いた。私とあいぼんの小さい頃
の写真。主のいない実家をこっそりと訪れ、くすんできた唯一の遺留品。今となってはこ
の写真だけが、私が辻希美であったという事実を残すもの。

「アーアーアー、石川梨華です」

 新しい名前の発声練習、憎むべきその名を…私は語った。石黒さんがその筋の情報屋を
回り、ようやくアテを見つけてくれた。石川梨華だった女の行方。村田という家の養女に
なったという噂。今はこの街で女子校教師をしているという噂。全部噂に過ぎず一つとし
て確証はない。だから私はこの名を語った。本物の石川梨華ならば、必ず反応を見せるは
ずだから…。
747辻っ子のお豆さん:02/11/25 23:15 ID:aW+OQHdr
 転入の手続きに校長先生との面談を行なった。名前を偽り、年齢も偽り、経歴もでたら
め、家族の欄には一応石黒さん達の捺印をもらっておいた。正直な所、この学校に入れる
かどうかは五分五分に考えていた。無理なら無理で別の手でいけば良い。ところがこの校
長先生は少し変わった教育者で、あっさりOKサインが出た。

「イチローになれる可能性もっとる」

 よく意味は分からなかったが、とにかくこれで私は夕凪女子校の生徒となることができ
た。3年C組中澤先生のクラスに入る。なるべく他人との交流を避ける様にした。あまり
目立つことはしたくなかったから。だけど一人だけ友達ができた。生活費を稼ぐ為のバイ
トを探していた時、偶然クラスメイトの柴田さんと遭った。彼女だけは何となく他の子と
違う空気を持っていたので、私も名前を覚えていた。彼女は病気で一年入院していたらし
く、また偶然にも私と同い年だったのだ。私は両親が冒険家であまり学校行かなかったか
ら一年進級できなかったんだと、半分嘘をついた。柴田さんはあまり裕福でない家に負担
をかけたくないと、入院費を自分で稼ぐんだと言っていた。
(なんだ不愛想だと思ってたのに、話してみたらすごいいい子だ)
その日の内に、私達は友達になった。
748辻っ子のお豆さん:02/11/25 23:16 ID:aW+OQHdr
「ねえ梨華。最近ね、村田先生にあなたのこと質問されるの」

 ある日の放課後、立ち寄ったマックであゆみがそう言ってきた。いよいよ尻尾を掴んだ
と思った。何度かすれ違った村田めぐみは、遠い記憶にある石川梨華に極似していた。だ
が名前が村田で顔が似ているだけの別人かもしれない。この計画に間違いは許されない、
私は慎重に慎重を規していた。だけどもう、もう間違いない。村田めぐみは石川梨華の名
に間違いなく動揺している。あいつが石川梨華だ!あいつが殺人鬼だ!

 翌日、私は行動に出た。村田めぐみが一人きりになるのをずっと待った。放課後になり
人もまばらになるまで待った。そしてようやくその時は来た。村田めぐみが理科準備室で
一人後片付けをしていたのだ。私は静かに声を掛けた。村田めぐみ…いや石川梨華は喉か
ら心臓が飛び出る程驚いた顔をしていた。たっぷり皮肉を込めて私はこう言った。

「こんばんは辻希美です。石川梨華先生」

石川梨華は明らかに脅えていた。震えていた。信じられないといった顔をしていた。
749辻っ子のお豆さん:02/11/25 23:16 ID:aW+OQHdr
「う、嘘でしょ。あなたは死んだはずじゃ…」
「ああ、あんたに殺された。でも生き返ったんだ。みんなの仇を討つ為に」
「みんなの仇?何よ、みんなを殺したのはあんたのくせに!」
「ハァ?何言ってるの?訳わかんないよ」
「あんたがごっちんもよっすぃーも、他の子達も殺したんでしょ!」

どうにも話が食い違う。逆ギレ?罪の転換?それとも…?

「よっすぃーはあさ美が誤って刺した。あさ美はそれを悔いて自害したんだ!」
「えっ…嘘?」
「それ以外の三人、麻琴と里沙と…真希さんはお前が殺したんだろ!」
「ち…違う!待って!待って、ののちゃん!」

1. 待たない。石川梨華を殺す。
2. 待つ。何か様子がおかしい。