サウンドノベル5「赤と青」第六話〜

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595辻っ子のお豆さん
とりあえず話だけでも聞いてみる。何時でも逃げれる体制をとりつつ。

「まこっちゃんも、里沙も、……真希さんも、みんなみんなあさ美が殺したの!?」
「違う!違う!私知らない!何もわからないの!」
「じゃあどうして!どうしてこんなこと?」
「目が覚めたら目の前に麻琴があんなことになってて…私何が何だかわからなくて…」
「あさ美…」
「見たこともない場所に一人きりで、誰も居なくて、私も殺されるんだと思って…」

 あさ美は頭を抱えて泣きじゃくりながら、胸の内を次々と明かしていった。そして私は
だんだんと理解していった。彼女は本当に不安で脅えていたこと。無理もない、ずっと意
識を失った状態で、目を覚ますとそこは知らない場所、隣には親友の死体。正常でいろと
いう方が無理な相談かもしれない。
596辻っ子のお豆さん:02/11/10 17:01 ID:z1MOHA6P
 意識を取り戻したあさ美は、折れた足を引きずってなんとか逃げようと小屋を出たそう
だ。しかし小屋の外はこれまた見覚えのない森の中、どっちへ逃げればよいのかもわから
ない。あてもなく森の中を進む、痛む足をかばいながら無我夢中で。やがて見つけたのは
親友の一人、息をしていない新垣里沙。この時点で紺野あさ美の精神はすでに限界を通り
越していたのだろう。
(殺される…私も殺される)
さらに森の奥へと奥へと進む。そして木々の隙間に背中が見えた。見覚えのない背中。
(こいつが皆を殺したんだ。私も殺す気でいるんだ)
ドクン…ドクン…
 気が付くと足元に転がっていた木の枝を拾っていた。足が動いていた。自分でも信じら
れない力で、枝の先を背中に向けて突き刺していた。そして逃げた。もう思考はその働き
を止めていた。
「よっすぃー!」
さっきの場所から別の声が聞こえた。
(仲間がいる。そいつも殺さなきゃ、私はまだ助からない。)
紺野の足は独りでにUターンを始める。その手にはまだ紅い枝が握られていた。
597辻っ子のお豆さん:02/11/10 17:02 ID:z1MOHA6P
 私はあさ美の話を聞き、何も言い返すことができずにいた。こんなとき彼女に何て言っ
たらいいのだろう。叱責か、慰めか、軽蔑か、同情か?

「ののちゃん、私…人殺しになっちゃった」
「…」

 鳴咽を洩らしながら、あさ美は顔をあげた。正常な意識を取り戻したその顔は、凶悪な
殺人者のものではなく、ただ絶望と後悔に喘ぐ私の親友の顔であった。

「もう私に生きる資格なんてない…」

 その瞬間、辺りがスローモーションになった。あさ美がその手に持っていた尖った枝を、
自分の喉に突き刺し、鮮血を吹き上げて、バタンと仰向けに倒れた。目の前の出来事に、
私はポカンと口を開けていることしかできなかった。
598辻っ子のお豆さん:02/11/10 17:03 ID:z1MOHA6P
後ろによっすぃーの死体、前にはあさ美の死体。みんな、みんな死んでしまった。
(この島で一体何が起こっていたの、どうしてみんな死んでしまうの?)
(あさ美が殺したのはよっすぃーだけ。じゃあ、麻琴と里沙と真希さんを殺したのは…)
(今この島で生き残っているのは、私と…。)
色んな色んな考えが、頭を巡る。でももう考えられることはそんなにない。

「梨華…さん…?」

少し離れた所に石川梨華が立っていました。いつも明るくて優しい梨華さん。
でもそこに立っていたのは、私の知らない顔をした石川梨華でした。
石川梨華は何も言わず、私の方へ走ってきました。その手には細身のナイフがありました。
私は動くことができなかった。何もできなかった。
細身のナイフは私の胸を切裂き、紅い液体が服の下から吹き出しました。
そして私はようやく理解したのです。
すべての黒幕、皆を殺した人物、それが誰かということ。
599辻っ子のお豆さん:02/11/10 17:05 ID:z1MOHA6P
辻希美は深い眠りにつく。
何時目覚めるともつかない深き眠りに…
最期に見たのは、青く広がる空だった。


〜第八話 終〜

青の章 END
600次回予告:02/11/10 17:51 ID:5OCBgJ8a

赤と青が一つに繋がる時が近づいている
安倍なつみと石川梨華が再び出遭うとき
すべての謎は明らかになる