517 :
辻っ子のお豆さん:
梨華さんも何者かに殺されたのだと思った。ガクガクと全身が震えてきた。
(もしかしたら、もう私以外の全員が…)
最悪の考えを取り払おうと、頭をブルルと横に振りました。
(そんなはずない!)
私は元来た道を再び走り始めた。震える体を両腕で包み込みながら…
――――――――――――石川梨華の死体――――――――――――
目の前にそれが転がっていた。胸にするどい木の枝が突き刺さっって絶命していた。
開いた口が塞がらない、もう悲鳴すら出ない。想像は現実となり、私の目の前に現れる。
さっきまで一緒にお話していた梨華さんが…
内緒でやせる方法を教えてくれた梨華さんが…
真希さんの死で共に涙を流した梨華さんが…
殺されていた。
私は逃げ出した。
何かに足が引っかかり躓いた。地面に転がった私は、振り返りその何かを見た。
――――――――――――新垣里沙の死体――――――――――――
ずっといなくなっていた友人が、皆と同じ様にやはり殺されていた。
もう感覚も麻痺していた。私はまた逃げ出した。
「いやああああああああああああっ!!!」
そのとき遠くで悲鳴が聞こえた。誰の声?いやもう二人しかいない。
よっすぃーか、あさ美である。
そしてずっと自分の中で考えない様にしていた疑問が頭を埋めようとしていた。
(殺人鬼は私達の中にいる)
私はずっと、この殺人鬼を私達以外の誰かだと信じていた、いや信じたかった。
私達の中にそんな奴がいるなんて、信じたくなかったから。
ずっと存在しない別の誰かのせいにしていたんだ。都合よく。でももう…
(麻琴も、真希さんも、梨華さんも、里沙も殺された)
(あと生き残っているのは私とよっすぃーとあさ美だけ)
(そして今の悲鳴、よっすぃーとあさ美、どちらかが被害者でどちらかが殺人鬼)
(つまり今この島にいるのは…私と殺人鬼だけってこと?)
考えたくない考えが次々と浮かんでは消えて行く。
私は恐る恐る悲鳴の聞こえた方へと向かった。
どうせ逃げ場はないんだからどこに居ても同じだと思ったのです。
そしてありえない現場に遭遇する。
――――――――――――吉澤ひとみの死体――――――――――――
――――――――――――紺野あさ美の死体――――――――――――
森の中の小さな広場で、血に染まった二人の死体が折り重なるように落ちていた。
(あれ?)
もう計算もできなかった。あと誰が生きているの?
私しかいない。そうなんだ。他に誰もいない。
訳がわからなかった。この島で何が起こっていたのか?どうして皆殺されたのか?
なんにもわからなかった。取り残されたみたいだった。
ナニモナイダレモイナイタッタヒトリノセカイ。
嫌。
「ののもみんなの所に行くね」
私は鋭く伸びた木の枝を拾い、それを自分の喉に突き刺しました。
血がピューっと吹き出しました。
これでののもみんなの所へいけるね、ワーイ。
めでたしめでたし。
END No.13「そして誰もいなくなった」