487 :
辻っ子のお豆さん:
嘘だ!嘘に決まってる!私は信じない!絶対に信じない!真希さんが死ぬはずない!
私を置いていなくなっちゃうはずない!嘘だよね!嘘だ!誰か嘘だと言って下さい!
「真希さん…」
真希さんはここで私を助けてくれたんだよ。
私に生きろって言ってくれたんだよ。
だから私は決意したんだよ。
お父さんもお母さんもお姉ちゃんもあいぼんもいなくなって
死んじゃいたいくらい、辛くて泣きたくてさびしくてどうしようもなくて
だけど生きていこうって、がんばろうって思ってたんだよ。
それもこれも全部あなたがいたからなんだよ
どうしてなの、どうしてなんだよ、どうしてこうなっちゃうんだよー!
もう何も見えない。まっくらな世界。私は何を頼りに歩いていけばいいの?
「駄目!ののちゃん!」
声が聞こえた。私は崖から身を乗り出していた。梨華さんが捕まえてくれなければその
まま落ちていたかもしれない。ゆっくりと振り返ると、梨華さんも泣いていた。
「ごっちんは落とされたんだよ」
「…」
「ごっちんはここに崖があること知っていた。間違っても一人で落ちる訳ないよ」
「…!」
「麻琴ちゃんを殺した誰かが、ごっちんも殺したんだ!」
震えていた。梨華さんも、私も。言葉にはしたくない恐怖が全身を突き抜ける。
「誰かが…私達全員を殺そうとしているんだ。」
もう頭が訳わからなくなっていた。おかしくなっていたんだ。
怖くて怖くて怖くて怖くて…ただ怖かった。
「もしかしたら、もう里沙もよっすぃーも…」
私は口に出してから、言わなきゃ良かったと後悔した。余計怖くなるだけだったのだ。
そして一人の友人の顔を思い返した。紺野あさ美。彼女を一人で置いてきたままだった。
「梨華さん、あさ美が!あさ美が危ない!」
私はすぐに立ち上がって元来た道を走り出した。
色々な事を考えている様な、何も考えてはいない様な頭の中。
ただがむしゃらに走り続けた。何かをしていないと辛くて死んじゃいそうだったから。
森の中をどれくらい走り続けただろうか。
途中で何度もつまずきそうになりながら、私は小屋へと戻って来た。
「あさ美!!」
扉を開けた…そこには…
変わり果てた麻琴の死体が一つ。それだけだった。
意識を失い眠り続けていたはずのあさ美の姿は、どこにもなかった。
静寂が耳を付いた。
小屋の壁には、赤く「アヤ」と書かれていた。
「?…梨華さん」
ふと我に返り、後ろを振り返る。梨華さんは付いて来ていると思っていた。
誰もいなかった。
「梨華さあああああああああああん!!!!!」
私は大声で叫んだ。また叫んだ。しかしどれだけ叫んでも返事は返ってこなかった。
1. 梨華さんは途中で迷子になったのだと思った
2. 梨華さんも何者かに殺されたのだと思った
3. 梨華さんはわざと姿を消したのだと思った