サウンドノベル5「赤と青」第六話〜

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479辻っ子のお豆さん
 この状況でこんな話題は不謹慎だけど、逆にそれくらいの方が怖さを忘れることができ
て良いと思いました。

「やせる方法教えて下さい」
「やせる方法?」
「うん、ののも梨華さんみたいにきれいになりたいんです」

 その気持ちは本当でした。背も小さくて、足も太くて、お腹も出てて、全然女の子らし
くない私にとって、梨華さんは理想そのものくらい輝いて見えたのです。

「ののちゃんは今でも十分可愛いと思うけど」
「駄目、かわいくないの。もっと大人っぽくなりたいんです」
「どうしたの、急に?」
「え、あのー」
「好きな人でも、できた?」

梨華さんはたまにするどい。
480辻っ子のお豆さん:02/11/01 06:49 ID:A4BSv9rW
 後藤真希さんは眩しかった。その振る舞いにはオーラがあった。二つ違いとは思えない
くらい、私の眼には彼女が大人の女性に写った。私はあの人の隣にいても恥ずかしくない
存在になりたかった。例えばよっすぃーや梨華さんの様に。こんな相談、恋のライバルで
あるよっすぃーにはできません。だから梨華さんにしか聞けなかったのです。

「うん、だからやせてもっときれいになりたいの」
「そっか、ののちゃんも女の子なんだぁ。いいよ教えてあげる」
「本当!」
「気持ち分かるから。実は私も昔、ちょっと太ってたんだよ」
「ええー!」

 すらっと伸びた細い手足、締まったウエスト、とても今の梨華さんからは、太った姿等
想像できません。私はお腹のお肉をぷにっとつまんだ。

(ののもあんな風になれるかなぁ)
481辻っ子のお豆さん:02/11/01 06:50 ID:A4BSv9rW
「どうやってやせたんですか?」
「特別なことはしてないよ、自分で決めたことを守り続けただけ」
「?」
「夜お菓子を食べないとか、毎日腹筋を続けるとか」
「なるほど」
「何をするにしても大事なのは自分の意志。決心を曲げない強い意志だよ」
「わかった。ののも決心した。もうお菓子食べない。毎日腹筋する。」
「アハハ…単純」

 自分で言うのも変だけど、私の決心は固かった。大好きなお菓子を止めてでも、私はあ
の人の隣にいたかった、それくらい好きで好きでたまらなかった。

「でもねののちゃん。やせるやせないより、もっと大事なことがあるんだよ」
「なに?」
「外見じゃない、ありのままの自分を見てもらうこと」
「きれいになったののを見てもらうことと違う?」
「ウーン、まだ難しいか、そのうちののちゃんにも分かるよ」

この時の梨華さんの言葉、その意味を知るのはずっとずっと後でした。
482辻っ子のお豆さん:02/11/01 07:00 ID:A4BSv9rW
 気が付くと、話が弾みずいぶんと遠くまで歩いて来てました。見覚えがあると思ったら、
ここは真希さん達と最初に出遭った場所の近く、茂みの先にあの谷が見えました。ここで
私は真希さんに助けられたのです。

「何か落ちてる」

 ふいに梨華さんが崖の手前を指差しました。そこに落ちていたのは赤い靴、私達はそれ
に見覚えがあった。

―――――――――――――――――――――――――――真希さんの靴

 全身から体温が抜けていく感じ、一瞬にして体が凍り付いていく。私は崖の際まで走っ
た。崖から下を恐る恐る見下ろすと、海へと通じる谷底で波が激しく岩を打ち付けていた。
何かが岩陰に引っ掛かり波に打たれていた。それにも見覚えがある。見たくない、信じた
くない。真希さんの上着によく似ていた。私は声にならない悲鳴をあげた。真希さんはも
うどこにもいなかった。
483辻っ子のお豆さん:02/11/01 07:01 ID:A4BSv9rW
「死ぬなんて言うな!あんたはまだ生きてるでしょ!」
真希さん…もう死ぬなんて言わない
「私が、あんたの生きる支えになってやる。」
真希さん…あなたが私を救ってくれた
「生きて日本に帰れたら、一緒に暮らそうか」
真希さん…約束したよね
「私は辻希美を愛している」
真希さん…

「どうしてだよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

天に向かって吠えた。家族を…親友を…そして今度は…

ワタシハスベテヲウシナッタ