352 :
辻っ子のお豆さん:
チュンチュンチュン
表で鳥の鳴く声が聞こえた。閉ざされたカーテンの隙間からは光が零れ出していた。
「もう、朝か…」
私と圭織の推理は続いていた。だが未だに、決定的な答えは出せずにいた。第一事件は
判断材料に乏しいので、とりあえず第二事件に焦点を絞って考えていた。誰が犯人なのか?
音楽室の密室殺人のトリックは?
「やっぱり鍵を使ったんじゃないかな?別の鍵を持ち出すふりしてこっそり…」
昨夜、用務員室の鍵庫を見た時に気付いたが、大扉である体育館以外の部屋の鍵はどれ
も同じ種類であった。例えば、生徒会室の鍵を持ち出すふりをして音楽室の鍵を持ち出す
なんて事もできなくはないと思った。そこまでは外のカメラでもわからない。
「体育館以外の鍵を持ち出したのは柴田と福田だが…」
「生徒会室の鍵は確認したはずだから、じゃあ図書室の鍵を持ち出した福田か!」
「いや、日中図書室を使用したという生徒の証言も多数あった。それもない」
「やっぱり鍵は無理ってことか。となるとあとはあの窓しかないけど…」
そのとき圭織の携帯が突然音を立てた。圭織はすぐにそれに出る。
「うんうん…そう。あれは?うん、わかった、ありがと」
電話を切ると圭織はすぐに私の方をむき直り、徐に口を開いた。
「捜査課から、新情報がいくつか入ったわ」
「何?」
「まず一つ。あの時間、音楽室以外にも窓が開いている所があった」
「嘘、北校舎は全部締まっていたって聞いたけど」
「北校舎じゃない。南校舎の、音楽室から見てちょうど正面の窓」
「南校舎の音楽室向かい側…そこって確か」
「そう理科準備室前の廊下だ」
偶然?そんなはずはない。あまりにできすぎている。
「二つ目。焼却炉から髪の毛の燃えカスが見つかったそうよ」
「三つ目。高橋の死因は絞殺。首絞めね。死亡推定時刻は19:00〜20:00」
「最後におまけ、生徒会は今年の学校祭で仮装パーティーを企画していたって」
「それが何?」
「その為の衣装やカツラが生徒会室横の倉庫にたくさん転がっていたわ」
「なるほどね」
「これで、現時点で集められるだけの情報は集めたわ。あとは貴方の記憶次第よ」
「なっちの?」
「思い出して、あのとき現場にいた貴方にしかわからないこと」
「あのときの…」
「少しでも不自然な言動をしていた人物、その言葉と動きの一つ一つ」
私は頭を絞って思い出す。あの時あの場所にいた人物の動き、言ったこと。私が思い出
さなければ犯人は見つからないんだ。愛の仇を取る為にも、必ずみつけだすんだ。
「――――――――――!」
頭に閃光が走る。見つけてしまった。
な ぜ あ の 状 況 で あ の 娘 が あ ん な 言 動 を ?
でも、あの人が犯人だと、あそこでの辻褄が合わない。
いや待てよ。もう一つの矛盾。矛盾した台詞を吐いた人物がもう一人いる。
紐がほどけて行く。もしこの二人が組んだとすれば、密室の謎は解ける!
「犯人、わかっちゃった」