サウンドノベル5「赤と青」第六話〜

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304辻っ子のお豆さん
 病院に運ばれたという真里の所へ向かうことにした。親友がこんな辛い時に、ほうって
おける訳がない。圭織の家へ行くのは別に遅くなってもいいだろうと思った。朝日奈警察
署と同じ通りに立地する痛井病院、一応この町では一番の大病院であるそこに真里は運ば
れたそうだ。私はタクシーを呼び一路真里の元へと向かった。

「たった今、鎮静剤を打って眠りに就いた所です」

 真里の病室に到着した私を待っていたのは、看護婦のその一言だった。殺風景な病室で
真里は穏やかに寝息を立てていた。起きていても、次から次へと悲しみが込み上げ苦しむ
だけなので、どんな形であれ今は寝ている方がいいと思った。真里の寝顔をしばらく見詰
め、私は病院を後にした。

「星がきれい…」

見上げると夜空に小さな星々が散らばっていた。
(愛ちゃんもこの星のどれかになったのかなぁ…)
自然に涙が込み上げてきた。私はまた一人ぼっちに戻ってしまった。
305辻っ子のお豆さん:02/10/07 18:16 ID:uBDrCJBY
「ただいまぁ」

 誰もいない家に向かって声を出す。結局私は、圭織のマンションには行かず帰宅した。
とても今日は圭織と、事件や犯人について話し合う気が起きなかったからだ。電気も点け
ず真っ暗な部屋で、私はおもむろに倒れ込んだ。このまま何もかも忘れて寝てしまいたか
った。目を覚ますとまた何でもない、普通の毎日が始まるんだ、そう信じていたかった。

(変わってないな私、あの頃と同じだ…)

 以前にも同じ様に現実逃避しかけた時期があった。そうあれは今から四年前の出来事。
ふるさとの北海道で、あったかい家族に包まれて、私は何不自由なく暮らしてきた。
16の夏、忌まわしいあの事件が起きるまでは。

(忘れよう忘れようと思っていたけど、やっぱり忘れられないよ…)

家族全員で初めての海外旅行、その飛行機は墜落し、生き残ったのはたった一人。
私だけだった。
306辻っ子のお豆さん:02/10/07 18:20 ID:uBDrCJBY
救助隊に助けられ、北海道の病院で意識を取り戻した。
幸せな生活から一気に地獄へと叩き落とされた様な感じ。
何度も死のうと思った。生きていたってしょうがないって思った。
そんな私をいつも止めてくれた子がいた。病院で知り合った親友。

(今何してるだろう)

過去を思い返していた私は、遠い地で暮らす親友の名を思い出した。
天涯孤独の身となり絶望にくれた私に、生きる希望と元気をくれた子。

あの子の名前を思い出した。

1. 紗耶香
2. 梨沙子
3. 亜依