255 :
辻っ子のお豆さん:
石川は幽霊なのかと思った。
(そうだよ)
突然背後から声が聞こえた。振り返るがそこには誰もいない。
「まさかね」
気のせいだろうと思い深く考えはしなかった。そして長く辛い夜は明けた。結局警察は、
石川梨華を見つけるどころか、その目撃情報一つ得ることすらできずじまいであった。
愛の死により深いショックを受けた真里は、医師の判断でしばらく入院することになった。
楽しい思い出がいっぱい詰まった部屋に、私一人が帰ってきた。
「愛ちゃん、ただいま〜♪」
「なっちもう腹ぺこだよ、真里も?」
シーーーーーン。返事があるはずはない。独りなんだ。何もする気力が湧いてこない。
電気も点けず真っ暗な部屋で、私はシーツにくるまり死んだ様に眠った。
どれくらいの時が経ったのか、枕元に何かの気配を感じた。
夢……?
目の前にマキが立っている。悲し気な眼で私を見下ろしている。
夢じゃない!
私はシーツを跳ね飛ばし、ベットから飛び起きた。
いつも夢の中に現れていたあの娘が、間違いなく目の前にいた。
「独りじゃないよ」
今度は後ろから声がした。恐る恐る振り向くと、いるはずのない娘がそこにいた。
なんとか悲鳴をあげる事を堪え、私はその娘の名を口にした。
「石川…梨華……」
「そんな他人行儀じゃなくて、梨華って呼んで。いつもみたいに。」
訳がわからず混乱する私を尻目に、梨華は美しく微笑んだ。そして私は驚愕の事実に
気付く。マキにも梨華にも、足がなかった。
「幽霊……」
「やっと気付いてくれた?逢いたかったよ、よっすぃー」
「誰よ?よっすぃーって」
「あなた、私達のことだけじゃなくて、自分のことまで忘れちゃったの?」
「自分?私は安倍なつみだ!他の何でもない!」
「あの島での出来事も、全部忘れてしまったの?」
「島?何言ってるのかさっぱり!もういいから、どっか行って!ほっといてよ!」
梨華の表情から笑みが消えた。マキは相変わらず黙っていた。
「私とごっちんがどうしてこうなったのかも、覚えていないのね」
「知らない知らない!私は関係ない!幽霊に知り合いなんかいない!」
「待っていたのに、約束の場所で…」
「約束なんてしてない!」
「したよ。三人は一生仲間、ううん、例え生き絶えてもずっと仲間だ…って」
突然脳裏に古い映画の様なワンシーンが浮かぶ。
古い廃校の校庭らしき場所、三人の少女が輪になって指切りをしていた。
「行こう。約束の場所(死後の世界)へ」
言葉が出ない。体が動かない。梨華がゆっくりと近づいてくる。
「もう未練はないでしょ。片思いのあの子も、もういないんだし」
今度は脳裏に愛の顔が浮かぶ。まさか、まさか、愛を殺したのは本当に…。
「本当はこんな回りくどい事するつもりなかったの。」
「?」
「これで思い出してくれると思ったから」
梨華の腕が私の胸元に回る。梨華は私の内ポケットから一枚の写真を取り出してみせた。
それを見た瞬間、全身に衝撃が走った。体が勝手にその名を叫んでいた。
「のの!!」
すると震え上がる私の体に二本の腕が絡み付いた。突然マキが背中からしがみ付いてき
たのだ。物音一つ立てず、物凄い力で。さらに前からは梨華が覆い被さってくる。
「離せ!離せ!ののは!?ののはどこ!?」
マキと梨華にサンドイッチの様に挟まれながら、私は叫び続けた。
「やっぱり、あの子のことだけは思い出すんだ。」
「お願い!教えて!のの!ののはどうなったの!?」
「もうおしまい」
梨華が微笑んだ。
(これで三人はずっと一緒だよ)
「いやあああああああああああああああああああ!!!!!」
………………………………………
矢口家の寝室から、安倍なつみの変死体が発見されたのはそれから三日後であった。
END「幽霊編」
260 :
リプレイ:02/10/04 15:19 ID:1MWicSng
SECRET ENDを見ましたので選択肢が増えます
2.石川は脱走の名人なのかと思った
3.石川は透明人間なのかと思った
4.石川は始めから存在していないと思った