サウンドノベル5「赤と青」第六話〜

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255辻っ子のお豆さん
石川は幽霊なのかと思った。

(そうだよ)

突然背後から声が聞こえた。振り返るがそこには誰もいない。

「まさかね」

 気のせいだろうと思い深く考えはしなかった。そして長く辛い夜は明けた。結局警察は、
石川梨華を見つけるどころか、その目撃情報一つ得ることすらできずじまいであった。
愛の死により深いショックを受けた真里は、医師の判断でしばらく入院することになった。
楽しい思い出がいっぱい詰まった部屋に、私一人が帰ってきた。

「愛ちゃん、ただいま〜♪」
「なっちもう腹ぺこだよ、真里も?」

シーーーーーン。返事があるはずはない。独りなんだ。何もする気力が湧いてこない。
電気も点けず真っ暗な部屋で、私はシーツにくるまり死んだ様に眠った。
256辻っ子のお豆さん:02/10/04 15:06 ID:1MWicSng
どれくらいの時が経ったのか、枕元に何かの気配を感じた。
夢……?
目の前にマキが立っている。悲し気な眼で私を見下ろしている。
夢じゃない!
私はシーツを跳ね飛ばし、ベットから飛び起きた。
いつも夢の中に現れていたあの娘が、間違いなく目の前にいた。

「独りじゃないよ」

今度は後ろから声がした。恐る恐る振り向くと、いるはずのない娘がそこにいた。
なんとか悲鳴をあげる事を堪え、私はその娘の名を口にした。

「石川…梨華……」
「そんな他人行儀じゃなくて、梨華って呼んで。いつもみたいに。」

 訳がわからず混乱する私を尻目に、梨華は美しく微笑んだ。そして私は驚愕の事実に
気付く。マキにも梨華にも、足がなかった。
257辻っ子のお豆さん:02/10/04 15:06 ID:1MWicSng
「幽霊……」
「やっと気付いてくれた?逢いたかったよ、よっすぃー」
「誰よ?よっすぃーって」
「あなた、私達のことだけじゃなくて、自分のことまで忘れちゃったの?」
「自分?私は安倍なつみだ!他の何でもない!」
「あの島での出来事も、全部忘れてしまったの?」
「島?何言ってるのかさっぱり!もういいから、どっか行って!ほっといてよ!」

梨華の表情から笑みが消えた。マキは相変わらず黙っていた。

「私とごっちんがどうしてこうなったのかも、覚えていないのね」
「知らない知らない!私は関係ない!幽霊に知り合いなんかいない!」
「待っていたのに、約束の場所で…」
「約束なんてしてない!」
「したよ。三人は一生仲間、ううん、例え生き絶えてもずっと仲間だ…って」

突然脳裏に古い映画の様なワンシーンが浮かぶ。
古い廃校の校庭らしき場所、三人の少女が輪になって指切りをしていた。
258辻っ子のお豆さん:02/10/04 15:07 ID:1MWicSng
「行こう。約束の場所(死後の世界)へ」

言葉が出ない。体が動かない。梨華がゆっくりと近づいてくる。

「もう未練はないでしょ。片思いのあの子も、もういないんだし」

今度は脳裏に愛の顔が浮かぶ。まさか、まさか、愛を殺したのは本当に…。

「本当はこんな回りくどい事するつもりなかったの。」
「?」
「これで思い出してくれると思ったから」

梨華の腕が私の胸元に回る。梨華は私の内ポケットから一枚の写真を取り出してみせた。
それを見た瞬間、全身に衝撃が走った。体が勝手にその名を叫んでいた。

「のの!!」

 すると震え上がる私の体に二本の腕が絡み付いた。突然マキが背中からしがみ付いてき
たのだ。物音一つ立てず、物凄い力で。さらに前からは梨華が覆い被さってくる。
259辻っ子のお豆さん:02/10/04 15:18 ID:1MWicSng
「離せ!離せ!ののは!?ののはどこ!?」

マキと梨華にサンドイッチの様に挟まれながら、私は叫び続けた。

「やっぱり、あの子のことだけは思い出すんだ。」
「お願い!教えて!のの!ののはどうなったの!?」
「もうおしまい」

梨華が微笑んだ。
(これで三人はずっと一緒だよ)
「いやあああああああああああああああああああ!!!!!」

………………………………………
矢口家の寝室から、安倍なつみの変死体が発見されたのはそれから三日後であった。


END「幽霊編」
260リプレイ:02/10/04 15:19 ID:1MWicSng

SECRET ENDを見ましたので選択肢が増えます

2.石川は脱走の名人なのかと思った
3.石川は透明人間なのかと思った
4.石川は始めから存在していないと思った