サウンドノベル5「赤と青」第六話〜

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197辻っ子のお豆さん


〜第七話 赤の章 独りの闘い〜
198辻っ子のお豆さん:02/09/30 19:40 ID:mYreeQ8Q
 スモークに包まれた都会の空に、うっすらと星が散らばっている。今はもう動かない、
愛する妹の体を抱きしめたまま、矢口真里は鳴咽し続けていた。現実と虚構の狭間で私、
安倍なつみは呆然と立ち尽くしていた。頭がグルグルと回り続けている。そんな中、私の
体と心が再び一つに戻るきっかけを作ったのは、遅れてやって来た一人の娘だった。

「なつみさん、真里さん。愛はみつかりましたぁ〜?」

 まだ何も知らない松浦亜弥が、いつもと変わらぬ間延びした口調で音楽室の扉をくぐっ
てきた。次の瞬間、彼女の右手からバックが無造作に床へと落ちた。その眼に写るのは、
変わり果てた姿の親友。亜弥は当然の様に悲鳴があげ、顔に手を当て崩れ落ちた。私はそ
んな彼女にゆっくりと近づき、肩に手を掛けた。顔をあげた亜弥は、泣きながら私に問い
掛けてきた。

「なつみさん。愛は!愛はどうしちゃったの?」

 悪いけど今の私に気の利いた答えは浮かばない。思い付いた言葉を、そのまま彼女に伝
える、それしかできない。

「…殺された」
199辻っ子のお豆さん:02/09/30 19:41 ID:mYreeQ8Q
 返事を聞いた亜弥の目つきが変わっていた。親友が殺されたという現実を受け止めよう
としているのか、すでに涙も止まっている。亜弥は再び私に問い掛けてきた。私はそれを
再びありのまま返す。

「誰に殺されたの?」
「石川梨華がいた」

 すると亜弥は立ち上がり、回れ右をし歩き出した。何処へ行くのと尋ねると、彼女は静
かに振り向いた。感情の抜けた顔、あの可愛らしい松浦亜弥の笑みと、同じ人物の表情と
は思えない程の…。亜弥はそのまま歩いていった。ゾクリ。背中に嫌な汗が流れていた。
しかしそのおかげで私の意識は完全に目覚めさせられた。失われた冷静さが戻ってきた。

(亜弥ちゃんの様子がおかしい、愛の死が引き金となって自我を失いかけているんだ)
(こうしちゃいられない、何にしても石川梨華をこのまま逃がす訳にはいかない)
(その為に私ができること。そうだ、署に連絡しよう)

私はポケットから携帯を取り出した。
200辻っ子のお豆さん:02/09/30 19:41 ID:mYreeQ8Q
「もしもし課長ですか。安倍です。夕女に石川梨華が現れました」
『なにぃ、あの石川か。』
「はい、生徒を一人殺害し現在逃走中です」
『くそっ!わかった。すぐに応援を出す。いいか、絶対に逃がすなよ』
「はい!」

 署から応援が来るまで私と圭ちゃんと真里で何とかするんだ。携帯を切った私は音楽室
の中を振り返った。真里はまだ泣いていた。流石に今の真里に声を掛けるのは気が引けた。
(私と圭ちゃんでやるしかない。)
 保田圭はすでに石川を追う為飛び出していた。藤本美貴も一緒のはずだ。松浦亜弥もお
そらく石川を探しているのだろう。私も急いで後を追わなきゃ。そう思い、音楽室を飛び
出し廊下を突っ切った。ちょうど階段の所まで来たとき、下から慌ただしい足音が聞こえ
てきた。福田明日香と少し年上のお姉さんだった。

「用務員さん連れてきました。」
「おたく刑事さん。どうも用務員の平家いいます。」

平家の手には一本の鍵が握られていた。音楽室の鍵だった。
201辻っ子のお豆さん:02/09/30 19:42 ID:mYreeQ8Q
「悪いんですけど、それはもう必要ないです。」
「どういう意味?この子から聞いたよ、中に石川がいて扉が開かないとか…」
「石川は窓から外へ逃げていました。高橋という生徒を殺して…」
「ウソでしょ!」
「許せない。先生の次は私の後輩まで殺すなんて!」

 再び殺人事件が起きたという事実に、平家さんの顔色は青ざめていた。生徒会長である
福田は、怒りを露わにしていた。急いで石川を追わなければいけないと事情を説明すると、
平家さんは一度音楽室を見に行くと言い、福田は私と共に石川を追うと言った。二人で階
段を駆け降り、校舎の外へと出た。石川はどっちに逃げたのだろう?この女子校は回りを
小さな山に囲まれ、外部へ出るには東側の校門か、南側の駐車場入口しかない。

1. 校門へ向かう
2. 駐車場入口へ向かう
3. 窓から石川を見た校舎の裏側へ向かう